極悪鳥になる夢を見る (文春文庫 き 35-3)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 206
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167908409

作品紹介・あらすじ

これを読まずして貴志祐介は語れない!『黒い家』『悪の教』『新世界より』『鍵のかかった部屋』……あの緻密な作品群を生み出した知性の意外な素顔とは。ホラー、ミステリ、SFなど幅広いジャンルにわたって、挑戦的な作品を書き続けている著者による、デビュー以来の全エッセイから精選したエッセイ集。作家としての思索や社会への提言のみならず、ある時は、小説もびっくりのホラーな出来事を、ある時はブラックなユーモアを、ある時は謎の日常生活を、ある時は溢れる野球愛を、絶妙な文章で綴っています。謎多き“エンターテインメントの革新者”を、より知るための一冊。文庫特別収録として、韓国での講演会の原稿「文学におけるヒューマニズムと悪について」収録。エンターテイメント作品という立ち位置の中で、なぜ大量殺戮などを描くのかが、明晰に述べられた名講演です。

感想・レビュー・書評

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  • ホラー小説作家である貴志祐介によるエッセイ集。

    著者の描くホラー小説は、超常現象や心霊といったものではなく人間の持つ狂気をテーマにしたものが多く、多くの現象が理論的な説明で根拠が示されている印象だが、
    エッセイの中では自らを超合理主義者と説明しており、なるほどという感じだった。

    『新世界より』の発想が生まれた経緯が、『地球の長い午後』や動物行動学者コンラート・ローレンツの「悪=種内攻撃」という切り口から生まれているという内容が印象的。

    作者がホラーを書く理由として、希望や光を描くためには、絶望や深く暗い闇が必要と述べる。
    またこの世に存在する悪の存在をしっかり認識するべきで、本の内容を通した思考実験や登場人物が置かれた状況を擬似体験し想像力を育てる事が読書をする一つの意味だと説明する。

    娯楽を目的とした「エンターテイメント」作品にはミステリーやホラー、SFなど様々だが、作者の言うように1つの思考実験としての読書体験は重要だと感じた。

  • 貴志祐介氏のホラー作品を愛する者として、何を考えてどんな生き方をしたら、あんな作品群が生み出せるのか。それを知りたいというたった一点の衝動に則り、本エッセイを即決で購入した。"あんな作品群"と書くのは大層失礼ではあるが、決して悪い意味では無いことをここに付記しておく。

    ちなみに今回は再読である。
    読了した結果、失礼ながら存外普通の方だと思った。これは初読時から思っていたが、今回の再読に際して改めて思った。氏がホラー小説の中で描く"追いかけられる恐怖"はとても秀逸で、極めて恐ろしいものだと私は常々思っていた。その恐怖描写の印象と、今回エッセイで語られた氏の知性とユーモア、そして小説への惜しみない愛に満ちた日常が私の中ですんなりとは結び付かず、果てしなく意外であった。

    もちろん小説家は作品を体現するかのようでなければならない、などということはない。全く違う。仮にそうなら、犯罪小説の著者は殺人鬼、心霊小説の著者は幽霊、宇宙SF小説の著者は宇宙人でなければならない。勿論、そんな馬鹿げた話は無い。

    とは言え、である。
    まさか貴志祐介氏にギャップ萌えを覚えることになろうとは夢想だにしていなかったため、非常に驚いたことは否めない(しつこい)

    さて、内容だが。
    先に述べたように全体を通して小説への愛に満ち満ちていた。普段の生活・インタビューへの返答などに自然と小説の話が出てくる。思考を伸ばした先に自然と小説が点在しているかのような、そんな本読みの極致とも呼ぶべき氏のスタンスには憧憬すら抱いた。

    また、貴志祐介氏の半生と折々で影響を受けた小説の話を聞くにつれ、氏の思考のベース・作風のルーツにどんなジャンルの小説が有ったのかを知るに至り、興味深くもあったが、同時に自分の読書量の少なさを痛感して悔しくもあった…無論、読書量≠本への情熱であることは言うまでも無いのだが。

    本書は全8章から成るが、全体を通してユーモアに富んでいた。単に"面白いこと"に満ちていた、というだけではなく、氏の豊富な語彙と言語センスに裏打ちされた語りが面白さを助長しているのは間違いない。そういった、語彙の暴力で殴り合うかのようなユーモアは個人的に大好物なので、とても楽しめた。敢えて綾をつけるならば、氏が後書きで自ら記していたが、「面白いことを言ってやろう」みたいな気配が散見されたことだろうか…鼻につくと言うほどでもないし、実際面白かったから、減点対象足り得ない程度ではあったが。

    氏の本業はホラー作家であり、本書はエッセイである訳だが、本書に於けるユーモアのエッセンスから成る、氏のコメディ小説も読んでみたいと、恐れながら思ってしまった次第である。

  • タイトルに惹かれて。小説かと思ったらエッセイでした。でも面白かった。特に「日没の町」。ロンドンのとある町で一体何があったのか気になる(笑)小説における「悪役の特権」や「文学におけるヒューマニズムと悪について」など興味深い話も多数収録。「異形のまなざし」は凄かった。絵画にあまり興味なかったけど、こうやって紹介されると惹かれるところがある。なるほどなぁ~。恐いけど面白い。

  • 作家・貴志祐介のエッセイ集。初っ端ちょっとしたホラーよりも恐ろしいリアルな恐怖譚から始まり、どんな怖いエッセイなんだろうとビビリつつ読み進めると他はそんなに怖くなかったです(笑)。海外に行った時の話や野球の話、10枚の絵画についての筆者なりの解釈や、『新世界より』の時のインタビューなど色んなジャンルを詰め合わせた一冊でした。

  • ホラーSF作家、貴志祐介によるエッセイ集。
    生まれ変わったら何になりたいか、早口言葉の創作など、こんなことを考えているのかという自由な発想が面白い。
    個人的には「なぜ緑色の哺乳類はいないのか」というエッセイが興味深かった。
    考えたことはなかったが、言われてみれば確かにという着眼点。
    日々疑問を持って過ごしていたら生活は豊かになるだろうなと思わせてくれる。

  • 小説を読んでるかのように思わせる表現のエッセイ。最初にある『針金』と『環』。体がヒヤリとしてきた。そしてインパクトありすぎる絵画等も載っている。特にメリル夫人。強烈。

  • 今まで色んなところへ書いたエッセイを集めたもの…みたいなのですが、作品しか読んだ事なかったのでどれも初めて。
    しかもどれも大変面白い。
    通勤中のお供で読んでいたのですが、マスクごしに何度ニヤついてしまったことか…笑
    これからも手元に置いて、時折クスッとしたいと思います。

  • 普通のエッセイ。
    所々作者の主義主張が見られるので反感を覚える人もいるかもしれない。

    とりあえずエッセイよりも新作を早く。

  • エッセィの体をした,骨子のある主張が繰り広げられる.為人が垣間見えるあたり,エッセイストとしても読み応え十分.

  • 作家さんのエッセイは大好物、好きな作家さんならなおのこと。
    今まで人物像を知らなかったので興味深い1冊だった。
    1章に書かれてるものはうっすら恐ろしく、さすが!読ませてくれます。
    野球に一切興味のない私は7章すべて飛ばし読み。
    一応、字面は追いましたがね。

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。京都大学卒。96年『十三番目の人格-ISOLA-』でデビュー。翌年『黒い家』で日本ホラー小説大賞を受賞、ベストセラーとなる。05年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、08年『新世界より』で日本SF大賞、10年『悪の教典』で山田風太郎賞を受賞。

「2023年 『梅雨物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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