偉くない「私」が一番自由 (文春文庫 よ 21-7)

著者 :
制作 : 佐藤 優 
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 310
感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167905989

作品紹介・あらすじ

佐藤優が選ぶ、よりぬき米原万里ロシア語会議通訳、作家、エッセイストとして活躍した米原万里の作品を、激動のロシアで親交を結んだ盟友・佐藤優がよりぬいた傑作選。メインディッシュは、初公開の東京外語大学卒業論文、詩人ネクラーソフの生涯。ロシア、食、言葉をめぐる傑作エッセイ、単行本未収録作品などをロシア料理のフルコースに見立て、佐藤シェフの解説付きで紹介する。没後10年米原万里を偲ぶオリジナル文庫。

感想・レビュー・書評

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  • <さあ、もっと自由に読んで語ろう!>


     チェコのプラハで育ち、ソビエト式の教育を受けたのち、日本に帰国。語学力を生かし、ロシア語会議通訳者として大活躍し、文筆活動へ移行。華麗なるプロフィールに彩られた米原万里書評集『打ちのめされるようなすごい本』(https://booklog.jp/users/kotanirico/archives/1/4167671042)に、あっさりTKOされた私です★
     ぜひ、この作者による他の作品も……と考えたのですが、著作リストに並んだタイトルは『ガセネッタ&シモネッタ』『ヒトのオスは飼わないの?』『パンツの面目ふんどしの沽券』『不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か』等々……★ なんという気取りのなさでしょう。きっと示唆に富む読み物に違いないというのに手が伸びず、私は数年間の沈黙に入っていました……

     ふたたび米原さんの本を手に取った理由は、皮肉にもロシアによるウクライナ侵略でした。いえ、遠慮する必要は何もありません。読書好きが親しむドストエフスキーやトルストイらは、19世紀の帝政時代の文豪。つまり、ロシア文学と言ってもそもそも「国」が違うのですから。ただ、何らかの圧力を感じると、もっとロシア文学を読みたくなったりもするのですが……!?
     あの力強い言葉に触れたらどんなに励まされるだろう、との思いで、久々に米原万里さんに向かいました。目に留まったのは『偉くない「私」が一番自由』。誰かにつきつけたくなるような言葉ですが、それはさておき……

     盟友・佐藤優氏が案内役を務めた、心憎き米原万里ベストセレクションが本書☆ 米原さんの、詩人ネクラーソフに対する熱い想いをメインに、日本とは異なる学校教育の実情、読書、食文化、猫愛、通訳の奥深さ、そして、例のご冗談! などを少しずつ愉しめる趣向がおいしい。
     ぴりっとスパイスの利いた語り口。教養に裏打ちされたユーモア。語りの軽妙さは意外に落語を思わせるところも……!? いま、読むと元気になれる一冊と言えます★
     そして、私たちはもっと自由に読んで語っていいのです。

  • 米原万里の作品群から佐藤優が編んだ選集。
    米原万里は少女時代をチェコのソ連学校で過ごし、ロシア語通訳者として活躍、のちに物書きとなった人。

    親は共産党員で地下活動が長かったという。通訳として国際舞台での実体験も豊富であり、読書量は一晩に7,8冊は軽いという知見の持ち主。

    ゆえにエッセイもそんへんの文人が雑感を書くものとは一線を画す面白さだった。
    (選集だからそう思うのかもしれないが)
    政治や文化に対し批判精神を持ち、自身の考えが基盤にしっかりあることが感じられ、心地よい。
    他の著作にも興味を惹かれた。

  • 米原万里没後十年を迎えた、今年2016年、米原さんをしのぶ本や、エッセイの傑作選などが何冊か出版された。
    これは、佐藤優氏の編による一冊。

    私は、佐藤優氏に関する知識が無かったので、単に「米原万里のエッセイの傑作選」だと思って読み始めた。
    読んだ事のある文を見つけて懐かしむのもいいな、読んだ事のないものが収録されていたら嬉しいな、そんな気持ちで。

    目次は、コース料理に見立てられ、それにふさわしい、米原さんの文章が紹介される。
    この、フルコースメニューに沿ってというのは、最近の流行だ。
    しかし、そういうオシャレな流行スタイルをとっているにしては、何か政治思想のにおいがする。

    作家の傑作選の編者は、普通、最初のご挨拶と、締めのご挨拶くらいしか書かないものだと思っていたが、コース料理の合間合間に、「シェフのご挨拶」が顔を見せる。

    つまり、「米原万里」は料理の素材であって、出来上がった料理は、“シェフ”佐藤の作品。
    この本は、そういう本だと私は思った。
    それをどう捉えるかは、読む人次第だ。
    正直に書きます。
    私としては、「別に、あなた(佐藤氏)の事を読みたいわけではない」

    純粋に米原万里を読みたいのであれば、今だっていくらでも手に入る。
    ただ、大学の卒論などはなかなか読めないかもしれないが。

    買ったまま、積ん読状態の米原作品が何冊かある。
    まず、それらをきちんと読まなくては、と反省させられた。

  • 米原万里が亡くなって久しい。散り散りの文章を集める編者は必要だろう。佐藤優セレクトでもいい。ロシア料理のコースになぞらえたアンソロジー形態でもまあ良かろう。けど、彼の逮捕劇の経緯はココで語らんでもいいと思うわあ。
    大学の卒業論文収録。本人生きてたらイヤがるやろなぁ。

  • 初めて触れるソビエトとロシア

  • 米原万里さんのエッセイが好きで、何冊か読んでいる。本書は、佐藤優さんが編纂した一冊。東京外国語大学の卒業論文が掲載されているのも、本書の特徴。
    今度、本屋さんに行ったとき、久しぶりに米原さんの書籍を手にしてみたいと思った。

  • 佐藤優さんが編者となって色んな抜粋したもの。
    卒論が載ってるのが一番の目玉かな。

  • 佐藤優氏が選んだ米原さんのエッセイ集。初公開の東京外語大学卒業論文が圧巻。最初は卒論だなんてつまらないなと思って読み始めたものの、後半はグイグイ引き込まれてしまいました。詩人ネクラーソフ…気になります。

  • 付き合いのあった佐藤優が米原万理の作品を紹介している。米原作品を読む前に読むと参考になるだろう。東京外大ロシア語学科の卒業論文も含まれていて、ネクラーソフの生涯について書かれてある。ネクラーネフって初めて聞いたが、米原万理が選んだのはよくわかる。

  • 図書館で。
    佐藤優選米原アンソロとでも言うべきなのか。時々読んだ事がある気がする小作あり、こんなのも書いてたんだ~と思うモノもありで楽しく読みましたが… 卒論はちょっと読み切れなかった(笑)

    宗教よりもアルコールを崇める方が良いってのはすごいなぁ。外国のユーモアセンスってさらりとしていてすごいと思う。確かにビール派とワイン派が殺し合ったりしないもんな~

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。作家。在プラハ・ソビエト学校で学ぶ。東京外国語大学卒、東京大学大学院露語露文学専攻修士課程修了。ロシア語会議通訳、ロシア語通訳協会会長として活躍。『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(角川文庫)ほか著書多数。2006年5月、逝去。

「2016年 『米原万里ベストエッセイII』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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