コルトM1851残月 (文春文庫 つ 22-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167905866

作品紹介・あらすじ

大藪春彦賞受賞! まったく新たな時代小説の誕生。昼は廻船問屋の番頭。夜は殺しを請け負う〝残月の郎次〟。切り札は懐に呑んだコルト6連発。江戸の暗黒街を熱く描く渾身の時代小説。

感想・レビュー・書評

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  • コルトシリーズ第一作目。

    コルトを使う郎次とその非情さに引きつけられて最初の10ページはサクサクと読めたのだが、その後が進まない。
    2~7日おきに1~3ページ程読んだら止めるの繰り返しで ついには読むのを止めてしまった。

    理由は分かっている。
    先に読んだ「コルトM1847羽衣」にガッチリとハマった自分には本書はどうもイマイチ合わなかったから。
    これじゃあイカンと1月に再読開始。
    少し間を空けたのが良かったのか、最初に読んだ時よりも読むペースが上がってきた。

    しかしストーリーはともかく、主人公である郎次にどうも感情移入出来ない。
    強い思い上がり、自分の廻りだけが全く見えていない洞察力の無さ、自分に都合のいい事しか考えない思慮の浅さ。
    なんで、こんな奴が主人公なんだろう?
    もう間抜けを通り越して「馬鹿」だ。
    そう思いながら読み続けていくうちに、郎次のキャラクターがあるドラマにキャラクターとダブってきた。
    そのキャラクターとは「傷だらけの天使」の主人公 小暮 修(萩原健一)である。
    でも、修が「愛すべき馬鹿」なのに対し郎次はそうではないのだが。

    それでもクライマックスの大殺陣は読み応えがあった。

    「失ったもの」を取り戻すべく自分を見捨てた者達にコルトという牙を剥くも取り戻すどころか「全て」を失う郎次が切ない。

    そのラストシーンに「必殺仕業人」挿入歌「西陽のあたる部屋」をBGMにして読むと更に切なさが増してくる。

  • ・フォロワーさん達が月村了衛の『機龍警察』を読まれていたので面白そうだな〜たぶん絶対に面白いんだろうな〜と思い、気になった。が、ネーミングセンスの部分でどうしても引っかかってしまって食指が伸びない(機龍というと別の物を思い出しちゃう)。
    同様なのが上橋菜穂子先生の作品で、ご本人は好きだけどなかなか読むに至らない。少し違うけど『エウレカセブン』は、ネーミングは佐藤大が考えたのかな?となり萎えてしまう。

    ・その前に、別口で気になっていたのがこの『コルトM1851残月』だった。
    きっかけは時代劇での銃の扱い。『大江戸捜査網』では短筒を連射するし、若山先生の『賞金稼ぎ』シリーズでは色んな銃が出てくる。マカロニウエスタン以降なので時代考証なんか無視して、ぐちゃぐちゃなのが面白い。
    逆に、荒唐無稽なはずの必殺シリーズが意外とちゃんとしてたりするのに驚く。巳代松の竹鉄砲ジップガンに始まり、『必殺商売人』第8話には、コルトM1851ネイビーの兄弟、ウォーカーorドラグーンが登場。
    そのあたりを調べていてこの本を知った。

    ・「もし、幕末(のすこし前)にコルトが手に入ったら?そんな時代劇があったら?」。
    時代劇ファンやガンマニアが、誰しも一度は妄想することだと思う。西部劇を代表する銃、コルトSAAは1873年から。なのですでに明治時代でダメ。江戸時代ならそれ以前の、パーカッション式のコルトになる。
    思いつくだけなら誰でもできる。月村了衛さんは、我々のそんな妄想をちゃんと小説にしてくれている。

    ・実際に、幕末のリボルバーで有名なのが坂本龍馬のS&Wモデル2アーミー。そして桜田門外ノ変で使われた、コルトM1851ネイビー(を水戸藩がコピーしたもの)。映画では大沢たかおが持っている。

    ・小説の内容。
    ハードボイルド、江戸ノワールと言われるが、早い話が初期の必殺シリーズである。
    月村さんの過去のインタビューがとても面白い。早大文学部文芸学科時代に、先生(梅本洋一氏)に「映画的観点における必殺シリーズ」についてなどを語っていたそうだから、すごくよくわかる!そうなのだ、必殺シリーズ(に限らずだけど)は映画なのだ!

    ・他に、あまり良い例えが思いつかないが『特命係長 只野仁』というか(只野仁もスーパーマン+必殺)、『闇金ウシジマ君』というか……ハードボイルドを語る、私の語彙力のなさ!泣

    ・この小説は、極めて映画的である。
    冒頭にまずアクションを持ってくるつかみ。そしてその後の展開、ラス立ち。頁数も、ちょうど映画1本分ぐらいの尺。だ、だれか映画化してくれ〜〜〜!!月村さんご本人に脚本を書かせて!

    ・しかしその反面、序盤で「こうなるんだろうな」という展開がだいたい読める。読めてしまうから、前半部分はあまり面白くなかった。ただひたすらに耐える、高倉健のように。サナギマンのように。後半からやっと面白くなる。なので★4。関連して、たまに中二病的な表現だと思うところがある。

    ・パーカッション式なので、装填に時間がかかる(いま現在、弾薬としてイメージされる一体型の金属薬莢式ではない)。月村さんはこの点を、いわば「無敵のヒーローの唯一の弱点」として、話の中で上手く使っている。
    実際は装填済シリンダーをマガジンやスピードローダーのように所持しておけば、再装填は素早くできる。しかしそうするとせっかくの「弱点」がなくなるので、予備シリンダーなどは持ってないという設定。
    逆に「ヒーローの必殺技」は、シングルアクションなので当然ファニングである。

    ・私の好きな時代劇要素がちゃんとある。
    ひとつは、大川の中洲(三俣、現在の日本橋中洲)。『大江戸捜査網』『必殺商売人』『斬り捨て御免!』……この中洲の話は大好き。中洲萌え。
    もうひとつは、銭屋五兵衛。有名なのが市川雷蔵の『眠狂四郎殺法帖』(シリーズ1作目)。これのパクリなのが『斬り捨て御免!』3の第4話。

    ・また、コルトの入手方法として密輸、清国、アヘン戦争……と、来たる幕末の動乱期を暗示させるのも上手い。たぶん、月村さんはコルトネイビーから逆算して書いてるんだろうなと思ったら、ご本人もそう言っていた。

    ・私は、時代小説やミステリの類は基本的には読まない(嫌いではない)。読むならやはり池波先生から……と思っていたが、この作品で時代小説デビューしてしまった。

    ・長々と書いたが、この作品は映像化に向いている。こんなお宝が眠っているのに、なぜしないのだろうか??
    理由はある。バイオレンス要素はテレビでは無理な内容だし、Vシネでも時代劇はお金がかかるだろう。コルトネイビーのステージガンを用意する必要もある。海外に売ろうにも、外国人にはガンアクションよりもチャンバラの方がウケる……。
    それ以前に、こういうエンタメ時代劇をやろうという会社や人が、今はないのでは。昔の東映ならすぐにできたはずなんだが……キムタクと綾瀬はるかで信長やってる場合じゃないのよ。トヨエツで梅安やってる場合じゃないのよ。いつの間に日本映画はこんなにセンスが無くなったんだろう?

    ・妄想するキャスト。
    主人公・残月の郎次は誰が良いだろうか?昔ならこのキャラクターを演じられる人は沢山いたと思うが、今はなかなか思いつかない。ひとりだけ思いついたのは桐谷健太。
    途中出てくる大場頼母は北村有起哉。しかし、こういう役は皆やりたくないだろう。
    お蓮。難しいところだが、大西礼芳。もしくは、桜庭ななみのポテンシャルに期待。
    儀平のイメージは、もう完全に藤村富美男(虎)でしかなかった。もしくは須賀不二男。

  • 「機龍警察」でもその一端はのぞかせていたものの、まさかここまでとは思わなかった。

    どこからどう読んでもこれはノワール。
    しかも、江戸時代を舞台にした大江戸ノワール。

    先込めの六連発銃「コルトM1851」
    この銃あっての発想だったと言う。

    それでも、出口の無い暗闇に向かって突き進むような疾走感。生への飢えと逃れられない過去。

    夢中になって読ませてもらった。

    馳星周「不夜城」と同じくらいの衝撃。

  • 一味も二味も違う、他の作品とも違う、面白さ

  • これまでの時代小説の概念を覆す全く新しい大藪春彦賞受賞の驚愕の時代小説。解説で馳星周が時代小説ノワールと呼んでいるが、作品の素晴らしさを表す見事な表現だと思う。

    舞台は江戸時代。昼は廻船問屋の番頭、夜は裏金融を牛耳る儀平一味の大幹部、残月の郎次は裏切りの果てに一味に孤独な闘いを挑む。

    少しずつ明らかになる郎次の過去と最新式のコルト六連発銃との邂逅。そして、まるで銃に魂を操られるかの如く硝煙と血風の真っ只中に身を投じていく郎次。果たして、結末や如何に…

  • 江戸を舞台としたガンアクションノワール!?

    昼間は廻船問屋の番頭!
    夜は江戸の闇の金融を牛耳る一味の大幹部!
    そして、コルトを相棒に組織の邪魔者を消し去るスイーパー!

    主人公の郎次は残月の異名を持ち組織での将来が約束されていた・・・

    はずが・・・

    ある殺しで暗転!?窮地に立たされる!
    味方が寝返り、誰も信じられない中、相棒のコルトだけを信じ自分の為に突き進む!

    郎次カッコいいです!

    因みに本作との出会いはラジオでした。

    それと、全然違う物語ですが何故か中村文則の『掏摸』を思い出してしまいました。

  • 江戸ノワール、新鮮

  • 大藪春彦賞というのもうなずける。まだ、文章に硬いところはあるが、アクションシーンはさすが。ただ、コルトの操作方法が、実は最後まで完全に把握できなかった。この銃を手に入れても死んじゃうな。

  •  久しぶりに「傑作」と思えた作品。「機龍警察」の頃から、よく耳にしていたので気になっていた作家だけど、読むのは本作が初めて。

     主人公を含めて悪人ばかり出てくる江戸時代を舞台にしたギャング小説。どちらかというと苦手な分野だけど、はじめは謎めいている主人公の背景が、ストーリーの進展とともに徐々に明らかになっていく構成の巧みさに、一気に読んでしまった。また、殺しのシーンの緊迫感の作り方など、とにかく作者の上手さが光る作品だった。

     読後すぐに書店に行って、文庫化している作者の作品を買い込んでしまった。これからが楽しみ。

  • ダークで渋い時代小説で江戸時代末期なんだけど、チャンバラではなく、ガンアクションがめちゃめちゃカッコイイ。
    主役も含めて、一癖ある男女のオンパレードで、腹の裏の探り合いばかりゆえに、緊張感がずーっと継続。だからこそ焦るようにどんどん読み進めてしまう。救いがないようだけど、読む人しだいで感想は変わるかも。
    とにかく面白かった。この人の作品は、1つ読むと他の作品も読みたくなる。癖になる感じがする。
    身近な人に読んでもらい、語り合いたい気分になっている。

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著者プロフィール

1963年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年『機龍警察』で小説家デビュー。12年『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、13年『機龍警察 暗黒市場』で第34回吉川英治文学新人賞、15年『コルトM1851残月』で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』で第68回日本推理作家協会賞、19年『欺す衆生』で第10回山田風太郎賞を受賞。近著に『暗鬼夜行』『奈落で踊れ』『白日』『非弁護人』『機龍警察 白骨街道』などがある。

「2021年 『ビタートラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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