等伯 上 (文春文庫 あ 32-4)

制作 : 安部 龍太郎 
  • 文藝春秋
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感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167904425

作品紹介・あらすじ

直木賞受賞作、待望の文庫化!天下一の絵師をめざして京に上り、戦国の世でたび重なる悲劇に見舞われながらも、己の道を信じた長谷川等伯の一代記を描く傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • 長谷川等伯、安土桃山から江戸初期に活躍した絵師。上巻では、信春。
    信春は、能登の武家に生まれたが、染物屋長谷川家の養子となり、長谷川家の娘と結婚して、息子が一人。絵の才能があった上に、養父母がその才能を認め厳しくも将来を見据えていた。
    信春は、絵師として都で認められたいと願っていた。そこを実兄に逆手に取られ、政権争いに巻き込まれて、養父母は自害、能登を追われる身となる。
    そこから、妻子を伴った流浪の絵師時代が上巻です。幾つかの寺に身を寄せながら、依頼された絵を描いていく。
    歴史小説としては、予備知識が無くても、読み進めれば、長谷川等伯の歩んだ歴史がじっくり読めます。ですから、多少伝記のような雰囲気になります。ここが、好きかどうかは、全く好み。日本史ポンコツ組としては、読みやすいですね。
    そして、信春は織田信長の比叡山の焼き討ちに巻き込まれます。ここが、興味深くて、絵師としては、きっと見たいだろうと思うけど、創作ですよね?と。
    信春には、すでに絵師として認めながら、表舞台に出てこない時期があるそうです。そこを、織田信長勢から逃げていたのでは、という予測のようです。
    よく出来た奥さんは病気で亡くなって、織田信長も本能寺で自決して、下巻へ。

  • 澤田瞳子著『若冲』を読み終えた勢いで(?)、その絵についてその生涯についてとんと不案内ながら、同じく絵師の長谷川等伯が主人公の本書を読む。
    絵師が主人公ゆえ、絵師の業界及びその創作が中心の小説かと思ったら、案に相違した。
    時は、信長の勃興する時代。その対抗する勢力の実家の出身ゆえ、信春(等伯)は画業を究めたいと思いながらも、時代の波に翻弄され、苦難の生涯となる。
    信長勢力からの逃避行は、波乱万丈の連続、さながら冒険小説を読むかのよう。
    信長暗殺の黒幕については、歴史書あるいは小説で、いろいろな説が流布しているが、この小説では公家の近衛前久としているようだ。

    書中ふれてあったが、京都先斗町の名の由来が面白い。洛中に住んでいた宣教師たちが「何と橋(ポンテ)の多い町だ」と驚きポンテ町と呼ぶようになったとか・・・

  • 直木賞受賞作を読む。

    織田信長が勢力を付けてきた時代に、武士の子として生まれたが、絵師に養子に出された長谷川信春:等伯。
    戦国時代の力関係の翻弄されながら、絵師としても成長していく。兄には、武士の子だのだからと、機密事項を実行するのに手を貸すように指示される。不本意のまま巻き込まれ、養父母を自死に至らしめることになり、妻にも申し訳なく思い続ける。
    妻と息子を持つことで、幸せな時間も過ごしつつ、自分の絵に魂を込めていく様も読んでいて、気持ちものめりこんでいく。

    現在放送中のNHK「どうする家康」を見ているので、信長の動きなどもラップしてきて、興味深い。
    史実は、文献によっても違うでしょうし…。

    上巻で、長谷川信春:等伯は、最愛の妻を亡くすが、彼女は信春が立派な絵師のなることを望んで支えてきたので、それにむけて今後も精進していくのかな?


    小説読了192冊目。ブクログ内で。

  • 長谷川等伯。これまでテレビ(美の巨人たちなど)で、代表作の「松林図屏風」を見たことはありましたが、彼の人生についてはほとんど知りませんでした。

    天才肌ですが不器用で一本気なこともあり、若いころから苦労が絶えません。戦国時代の時代の波にも翻弄されます。それでも、高い壁に阻まれる度に、悩み成長していく姿に感銘を受けます。ラストでは、代表作「松林図屏風」が描かれますが、まさに命を懸けた作品だったのですね。

    等伯は北陸七尾の出身で、作品の中にも出てくる地方社会の湿り気と粘着さに悩みながらも、生涯、故郷に思いを寄せ続けます。同じ日本海側出身の人間として理解できるところです。

    信長、秀吉、利休などの有名人も登場するストーリーに引き込まれて一気読み。いいですね。

  • 歴史小説の苦手意識消えそう。

  • 織田信長が天下統一を目指して東奔西走し、混迷を深める戦国時代。能登半島の七尾に暮らす絵仏師の長谷川信春は、絵師として大成したいとの野心と焦りから、自ら禍を招き、時代に翻弄されていく。
    信春の身に次々と起こる災禍、信春の心の葛藤や憤り、自責の念…。読んでいて疲れる。

    信長が討たれ、秀吉の代になってやっと平穏が訪れそうになったところで下巻へ。

    なお、本書では、信長は近衛前久の策略で討たれたことになっている。

  •  期待を裏切らない作品です。

    下巻も楽しみたいと思います。

  • 安土桃山時代から江戸時代初期にかけての絵師・長谷川等伯の生涯を描いたこの本、7月に読んだ「何者」と同じ時に直木賞を受けているが、文庫化なったので読んでみた。
    能登地方で絵仏師としてそれなりの評価を得ながらそれに飽き足らず、狩野派への強烈な対抗心に追い立てられ都で修行することを焦るあまり、浅はかな行動から養父母を死なせてしまい、故郷を追われるように京都へ向かう。
    敦賀から湖西の山中を経て比叡山に到る道行きは、かつてその辺りに住んでいたこともあって景色が目に見えるような親近感も含め、一気呵成に読み下す。
    都に住み着いてからも、信長が権力を恣にしていく中、一難去ってまた一難の展開は恰も冒険小説の趣。
    絵師としての才能に恵まれ、困った時には絵を描いて糊口をしのぎ、異常さや異様さの中に人間の本質を見極めようとする性により手痛い失敗をし都度悔やみながらも、それを忘れて同じ失敗をする。
    そうした行動がこれでもかと描かれ、主人公の人物像を際立たせるが、私には危なっかしくて、いまいち魅力を感じるに至らず。
    どうなることやら下巻に期待。

  • 以前から気になっていた本、そして安倍龍太郎氏。
    芸術家の想像を絶する生き様に
    一気に上下巻読み終えたところです。
    絵を見るのは大好きですが、
    等伯、狩野派、作品を見る目が変わりました。
    茶道の稽古を続けているので千利休の新たな面も
    かいま見え、阿部氏の歴史へのとらえ方が緻密ですばらしかったです。

  • 山本兼一『花鳥の夢』を少し前に読んだので、色々気になる。

    コケにされていた狩野松栄はこっちでは等伯と程良い距離感で良い味を出してる。
    更に永徳が一目惚れ(?)した設定になってた等伯の妻・静子。こっちでは絵を描く様子はないし、永徳との接点もなく亡くなってしまった。

    そして、いつでもどこでもスーパーなのが近衛前久だ(笑)

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