デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 (文春文庫 ま 34-1)

著者 :
  • 文藝春秋
4.11
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本棚登録 : 3191
感想 : 338
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167904203

作品紹介・あらすじ

今度は私があなたたちの“言葉”をおぼえる荒井尚人は生活のため手話通訳士に。あるろう者の法廷通訳を引き受け、過去の事件に対峙することに。感動の社会派ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • フォロー、フォロワーさんの本棚で高評価がつけられていた本書、帯に書かれた「絶対に読んでおくべき作品だと胸を張ってオススメしたい」言葉通りの作品でした。

    ジャンルで言えば社会派ミステリーですが、超越してますね。

    「コーダ」という言葉の響は知っていましたが、無知故にそれが「Children of Deaf Adults」(ろう者の親の子ども)という意味を持つことも、もっと言えば「デフ」という言葉、手話には「日本手話」と「日本語対応手話」の二つがある事、刑法四十条の事も知りませんでした。

    本作の主人公はコーダであり手話通訳士の尚人。

    17年前の事件で当時警察事務職員として勤務していた尚人はろう者である被疑者(門奈)の自白をもとに作成された供述調書の内容を読み聞かせる為に通訳人として関わった経験を持つ。

    そこで「こんなずさんな取り調べが許されていいのか」という怒りの感情を覚える。

    警察事務職員を辞め、手話通訳士として働き出した尚人に舞い込んだ依頼、それは法廷通訳士としての仕事。

    裁判の席で尚人は被告人が「黙秘権」の意味すら理解出来ていないことを感じとり...
    ↑「寄り添う」ことの大切さを感じたシーンです。

    単なるミステリー作品としても素直に面白いのですが、本当に色々と考えさせられる作品。

    単身赴任で大都会で生活をしていますが、手話を使う人々を目にすることはほぼありません。

    TVを見ていても手話で同時通訳をしているシーンはみんな目にした事があると思いますが、逆に言えば世の中にはそれだけ沢山の耳が聞こえない人々がいるということ。

    白杖を手に、車イスで、そんな姿は目にしますが、もしかすると耳が聞こえない人々は本作で描かれているように社会から距離を置き、閉じこもっておられるのかも知れません。

    無力な私には何かが出来る訳ではありませんが、「寄り添う」ことの大切さを学べたある意味で人生の教科書。

    大切にしたい作品です。




    NHKドラマ化、韓国映画化決定!

    仕事と結婚に失敗した荒井尚人。いまの恋人にも半ば心を閉ざしているが、やがて唯一の技能を活かして手話通訳士になる。
    あるろう者の法廷通訳を引き受け、過去の事件に対峙することに。現在と過去、二つの事件の謎が交錯をはじめ……。

    マイノリティの静かな叫びが胸を打つ、感動の社会派ミステリー。シリーズ通して読み継がれるロングセラーです。

    〈第6回 全国高校ビブリオバトル グランドチャンプ本〉

    ※NHKドラマ化決定! 草彅剛さんが荒井尚人を演じます。2023年冬放送予定。(前・後編、総合・BS4K)

    ※韓国映画化決定! 映画『無垢なる証人』、ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』のム・ジウォン脚本カ、長篇映画監督デビュー作。2024年クランクイン予定

    内容(「BOOK」データベースより)

    今度は私があなたたちの“言葉"をおぼえる

    荒井尚人は生活のため手話通訳士に。あるろう者の法廷通訳を引き受け、過去の事件に対峙することに。弱き人々の声なき声が聴こえてくる、感動の社会派ミステリー。
    仕事と結婚に失敗した中年男・荒井尚人。今の恋人にも半ば心を閉ざしているが、やがて唯一つの技能を活かして手話通訳士となる。彼は両親がろう者、兄もろう者という家庭で育ち、ただ一人の聴者(ろう者の両親を持つ聴者の子供を"コーダ"という)として家族の「通訳者」であり続けてきたのだ。ろう者の法廷通訳を務めていたら若いボランティア女性が接近してきた。現在と過去、二つの事件の謎が交錯を始め…。マイノリティーの静かな叫びが胸を打つ。衝撃のラスト!

    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

    丸山/正樹
    1961年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。広告代理店でアルバイトの後、フリーランスのシナリオライターとして、企業・官公庁の広報ビデオから、映画、オリジナルビテオ、テレビドラマ、ドキュメンタリー、舞台などの脚本を手掛ける。2011年、『デフ・ヴォイス』で小説家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 慧眼(物事の本質を見抜く、優れた眼力)

    さすがです
    さすがの慧眼の持ち主です
    好みが似てるのにあまりジャンルや作家さんが被ってない本棚を持ってる人
    こういう人を見つけられたらしめたもんですよね
    新しい扉開けまくりですよ
    今回はみんみんの本棚で高評価だった丸山正樹さんをチョイス
    やっぱり面白かった!さすがわしやな!目の付け所がさすがやな!(自分だけを誉めていくスタイル)

    さて本編です

    耳の聞こえない人を親に持つ聞こえる人のことを“コーダ“と言うのだそうです
    そして本作はその“コーダ“の物語です

    知ってました?“コーダ“?
    恥ずかしながら自分は知りませんでした
    そして本作を読んだことで“コーダ“の人が抱える悩み、葛藤、ある種の疎外感みたいなものの一端に触れることができたような気がしました
    しかも自分の好きなミステリーというかたちで触れられたのも良かったです
    「親が聞こえないのに聞こえるって、へえ~良かったじゃん」って簡単に考えてました
    なんか無知ってだけじゃ許されないことがこのカギ括弧の中にたくさん詰まってたんじゃないかって今は思えます
    なんか始めの一歩を踏み出せた気がした物語でした

    • みんみんさん
      よっ!隻眼!
      よくぞこの地味なシリーズ笑に気づいてくださった\(//∇//)
      読む前は重松清か?って地味な表紙にちょっと怯んだわ笑
      読後に表...
      よっ!隻眼!
      よくぞこの地味なシリーズ笑に気づいてくださった\(//∇//)
      読む前は重松清か?って地味な表紙にちょっと怯んだわ笑
      読後に表紙みたら…シブい!
      シブい作品見つけてしまった!

      ってほくそ笑みました( ̄+ー ̄)
      2022/07/16
    • ひまわりめろんさん
      隻眼てわしゃ伊達政宗か!(いい方に受け取るスタイル)
      隻眼てわしゃ伊達政宗か!(いい方に受け取るスタイル)
      2022/07/16
    • みんみんさん
      あっ慧眼だった♪(´ε` )

      勇気出して東野圭吾に☆2ピンポンダッシュしてきます〜笑
      あっ慧眼だった♪(´ε` )

      勇気出して東野圭吾に☆2ピンポンダッシュしてきます〜笑
      2022/07/16
  • レビューを拝見して知った本です。ありがとうございます。

    作者あとがきによりますと「なぜろう者のことを書こうと思ったのですか」と、本作を読んだ方からは、必ずといっていいほどこう聞かれる。
    とまず冒頭でおっしゃっていて、その答えとして「手話には『日本手話』と『日本語対応手話』の二つがある」「先天性の失聴者の多くは誇りを持って自らを『ろう者』と称する」これは、私にとって非常に新鮮な驚きだった。と同時に、大きな感銘を受けた。と述べられています。
    世間一般にはまだあまり認知されていないはずのこの事実を小説を通してより多くの人に知ってもらいたいと思うに至ったそうです。

    また、文春オンラインの対談では、小説のタイトルとしての「デフ・ヴォイス」には3つの意味があるんです。1つは、そのまま「ろう者の声」。もう1つは「声」そのものではないですが、ろう者に限らず、言いたいことがあっても圧倒的な多数の前にあってその声が社会に届きにくい社会的少数者の声という意味もこめました。とおっしゃっています。

    私も、この作品を通して「デフ・ヴォイス」という言葉の意味や『ろう者』という方々の存在を初めて近しく知り得ました。
    読んで大変よかったと思います。

    この物語はミステリーですが、主人公の元警察勤務だった荒井は、家族全員が『ろう者』の家族に育ったただ一人の『聴者』でコーダと呼ばれる子供でした。
    ストーリーは最初、荒井の人間関係がいくつかあって少しわかりずらい気がしましたが、最後には1本の線にすべて繋がります。
    起きた事件は確かに胸の痛くなるいたましい事件でしたが、さわやかな読後感の残る佳作でした。

  • やはり。これは完全に読む順番を誤った。
    「龍の耳を君に」を読んだ後なので、すでに瑠美がどんな人物か知っている・・・しまったー。

    それでも今回もとても興味深く読んだ。
    「コーダ」という言葉をこのシリーズを読んで初めて知った。
    「両親ともにろう者である、聴こえる子」
    自分だけが聴こえるせいで感じる疎外感。周りの目や声を自分だけが敏感に感じ取ってしまうつらさ。
    いっそ自分も聴こえなければ、と思うのももっともだ。
    しかしコーダだからこそ手話通訳士としてろう者に寄り添うことができる。常に思い悩み、影がある荒井だが、彼にとって天職だと思う。

    このシリーズ、すでに4冊も出ているらしい。
    ここからはしっかり順番に読んでいこう。

  • 『龍の耳を君に』を先に読んでしまっていたので、何となく真相はわかっていたが面白かった。主人公荒井がコーダとしての自分にまだ鬱屈しているところや、益岡さんや方貝さん何森など渋い系キャラのここぞという出番も良かった。

  • 少し前のあやごぜさんの「龍の耳を君に」のレビューを見て読んでみたいと思ったが、そのレビューに『前作を先に読んでから本書を読むことをお勧めします』とあったので、この巻から買ってきた。

    私も会社では多くの障害のある人と一緒に働いているのだが、聴覚障害の人はおらず、なので、ここに書かれてあることは初めて知ることが多くあった。
    「手話通訳士」という資格のこと、言語としての手話の種類のこと、「ろう者」と「聴者」という表現、「コーダ」という言葉、刑法第40条の経緯、そして、あとがきに書いてあった『ろう者の皆さんがご自身を「障害者」とはとらえていないこと』、等々。
    たまに聴覚の支援学校の先生から実習や就労についてのご相談を受けることがあり、しかし、うちの仕事の性質上そうした特性のある人の受入れが難しいため、いつもお断りするばかりで申し訳ない気持ちだったのだが、この話を読むとさらにその気持ちが募った。

    そうした障害の特性にまつわる話をベースに、主人公の荒井の個人的な事情、警察事務職員としての職歴、彼が手話通訳として関わった17年前の傷害致死事件の経緯、その被害者の息子が殺害された最近の事件の捜査状況などが絡まりあいながら少しづつ明かされていく構成で、物語にぐんぐん惹き込まれた。
    過去にこだわり危ない橋を渡り続ける荒井に気を揉みながら、彼が最後に取った行動に焦点となっていた親子が応えたラストには深く胸を打たれた。

    著者があとがきに書かれた『「何らかの障害を持っている」ことは確かに特別なことではあるにせよ、それをマイナスのものでも逆に賞賛すべきことでもなく、障害を持たない人でも共感できるような種類の葛藤として描けないか』という思いにとても共感した。

    • あやごぜさん
      ニセ人事課長さん♪ コメント失礼いたします。

      私の拙いレビューを読んで頂きまして、ありがとうございます。
      作品を手に取るきっかけにな...
      ニセ人事課長さん♪ コメント失礼いたします。

      私の拙いレビューを読んで頂きまして、ありがとうございます。
      作品を手に取るきっかけになったとしたら、とっても嬉しいです♪

      本書は、今まで知らなかった世界を見せてくれるといいますか、
      多くの気づきを与えてくれる作品ですよね。

      第二弾「龍の耳を君に」も是非読んでみて下さいませ(^^)
      2023/04/28
    • ニセ人事課長さん
      あやごぜさん

      こんばんは。いつもレビュー読ませていただいています。

      とても興味深く且つ面白い本を読むことができて良かったです。
      ...
      あやごぜさん

      こんばんは。いつもレビュー読ませていただいています。

      とても興味深く且つ面白い本を読むことができて良かったです。
      もちろん「龍の耳を君に」も読むつもりです。
      『前作を知っておいた方がより楽しめるかと思います』と言われていたので、楽しみです。
      2023/04/28
  • みんみんさんのレビューを読んでから、まことさんのレビューを再読し、Amazonでポチった(笑)

    多分みんみんさんレビューの、ミステリーという言葉でピンと来たのだと思う(笑)

    手話通訳士の話。
    家族がろう者で、自分一人だけ耳が聞こえる。
    ろう者の両親を持つ聴者の子供のことをコーダと呼ぶらしい。
    主人公はそのコーダの男性。

    手話には「日本手話」と「日本語対応手話」があるらしい。
    先天性で耳が聞こえない人は、「日本手話」という、日本語とは独立した言語で話すイメージのようだ。

    聴者で生まれたが、事故などで耳が聞こえなくなった人は「日本語対応手話」という、日本語にリンクした手話を使うらしい。

    自分があまり関わったことのない世界の話だが、物語もかなり引き込まれ、これまで全く知らなかったことを、自然に知ることが出来た良書だった。

  • 読んで良かった。知らなかったことばかりでした。
    聴者に近づけるためではなく、自我を育てる教育を。ろう者の言語や文化をもっと知りたくなりました。ラストの手話のスピーチシーンに痺れました。

    三宮麻由子さんの解説〝翻訳がうまくいくときは“ も、素晴らしかったです。

  • H29.7.13 読了。

    ・「手話には『日本手話』と『日本語対応手話』の2つがある。」
    ・「先天性の失聴者の多くは誇りを持って自らを『ろう者』と称する。」

    聴覚障害者の世界が垣間見えたような作品でした。

  • 涙無くしては読めない感動のミステリー。聴覚障害という極めて難しいテーマを扱いながら、見事なストーリーに昇華している。ここ数年の間に読んだミステリーの中では群を抜いて面白い。

    同じマイノリティーを主人公にしたミステリーに江戸川乱歩賞受賞作の下村淳史の『闇に香る嘘』があるのだが、それに優るとも劣らない。

    主人公の警察事務官を辞めた荒井尚人は手話の特技を活かし、手話通訳士となる。少しずつ明らかになる荒井の過去、過去の殺人事件と現在の殺人事件が交錯する時、全ての真実が明らかになる。

    哀しい結末であるが、柔らかな優しさを感じたのは、主な登場人物が皆、困難の中に生きる善人として描かれているからだろう。

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著者プロフィール

京都大学大学院理学研究科教授。

「2004年 『代数幾何学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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