おいで、一緒に行こう (文春文庫 も 20-8)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167903794

作品紹介・あらすじ

東北大震災、福島原発20キロ圏内のペットレスキュー取り残された犬や猫たちを救出すべく、女性ボランティアが無人地帯に潜入する。なぜ…? 人間とペットの、いのちの意味を問う名著。

感想・レビュー・書評

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  • 森絵都さんが、ノンフィクションを書いたのかーとちょっぴり驚いて手に取った一冊。

    福島原発事故後のペットレスキューについて。
    ボランティアの人たちと、犬猫を保護する様子が書かれている。
    時間と共に元気をなくしていくペットたちや、20km圏内への立ち入り規制の様子など。そんなに離れた場所ではないのに、想像に苦しんでしまう「今」がある。

    福島原発事故に関する書籍は、豊かに出版されていると思う。
    様々な視点から、何があったのか、どうなっているのかを私たちは知るべきだと思う。

    日本人は、怒りが持続しない民族なのかと思うくらい、流れに身を任せ、悲哀に転じる。
    そのことを非難しているわけではない。
    けれど広く世界を見ると、途切れぬ怒りを煮えたぎらせている人たちはたくさんいるように思う。
    そんなパワーもまた、生きるための一つのエネルギーなんだろう。

    現実を知ったからと言って、皆が皆、動けるわけではない。けれど、いつか、どこか、何かのきっかけは、知っていたことから始まるかもしれない。
    ボランティアスタッフの皆さん、ありがとう。

  • 少し読み始めてからすぐに一度本を閉じてしまい。
    これは読むのに覚悟がいるな、と。
    混乱の中でも、行動が責任問題となり動きたいのに動けない。それが命に関わる事であっても。助けられたはずの命が失われた方がよほど責任問題だと思うのだけれど。
    一言で感想がまとめられないけれども、現実を知るために読めて良かった。

  • 3.11以降に福島の犬猫レスキューの現実に迫るルポタージュ。文庫化したものを再読したが、ああ、私、全然コミットできていないなぁ...、と。震災当初は勢いでボランティアに参加していたけれど、ここ最近は様々な理由をつけて足が遠のいている...。ボランティア参加者は共通して「母性」だと言うが、それだけじゃないものがここにあるように思う。

  • 2019年10月6日読了。震災直後の福島・20km圏内に置き去りにされた家畜・ペットたちをレスキューすべく活動する人々と活動をともにした作家によるドキュメンタリー。何とも胸をつく話だ…。被災し避難した人々の抱える苦難、現地の経済活動、原発の是非、放射能被害の有無など論点は数あれど、このような事象が被災地で起きていたことは知らなかった…想像できてしかるべきことだが。これは、現地に入った人にとっては「知ってしまった以上は、何もせずにはいられない」ことなのだろうが…自分が当事者だったとして、これほど熱を持って関わることができたのかどうか。警察による検問、は必要なことなのだとは思うが…「助けられる命を助けられない」事態を産み出していた、と考えると、レスキューの人々の叫びを無視することはできないなと感じる。一度も被災地を訪れず、自分はこのまま日本で年をとっていってしまっていいのだろうか…とも思うが。

  • 命に順位があるのは仕方のないことだとは思う。あって欲しくないと思っていても、人間であっても命の順位が存在するのだ。
    ならば、ペットの、家畜の命にも順位はあるのか。
    おそらくあるのだろうと思う。
    そんななかで奮闘されるペットレスキューの方のドキュメンタリーだ。
    正しいことはしていないというレスキューの方の一言が重たい。
    でもその正しさは誰が決めたものなんだろう。
    命には順位がある、でも、命は平等なのも正しいことなんだと思う。

  • 20km圏内のペットレスキュー。頭が下がる思い。
    心身ともに大変だしお金もかかる・・・。
    切なくて呼吸が苦しい。
    「あとがき」に書かれた三年後の様子は、当時とは少し違ってきてる。
    あれから更に年月が経ち、このコロナ禍・・・。
    どうなっているのだろう。

  • 東日本大震災の後、福島原発警戒区域に取り残されているペットの救助活動を取材したルポルタージュ。
    2012年に発表され、本書は2015年に文庫化されたものですが、恥ずかしながらこのような活動があったことを、本書を読んで初めて知りました。
    文庫版のあとがきで、「読者の皆さんに伝えたいことは?」と訊かれた中山ありこさんが、「福島で起こったこと、今も続いていることを、どうか忘れないでほしい。」「どうすれば動物たちの命を守れるのか、福島での犠牲を通じて、ぜひ考え続けてほしい」と述べていたことが、東日本大震災から10年が経過した今、なお一層心に重く響きます。

  • 避難指示で取り残されたペットや家畜のことは、ニュースの端で少しだけ耳にしたことはあったけど、実態を知らなかった。

    ボランティアの方々の奔走、ペットレスキューのためでは通行許可がおりない現場のルール、政治的な規制。


    困っていた、という内容の本ではないけど、
    当時もっと広く知られていたら、援助や何か助けに手を挙げる人がいたんじゃないかなと思ってしまった。
    コロナ禍でも、報道されない狭いところで困窮している人、動物がいるのでは。

    目が行き届かないところにも、思いを巡らせる人でありたい、と思った。

  • 東日本大震災のペットレスキューの話と知って買ったのに、読もうと思ってもなかなか読めずにいた。避難所に連れていかれなくて置いてけぼりになっていたペットたちを救うため、立ち入り禁止ルールを破ってエリアに入り、保護している人たちの話。それもボランティアで。その人たちが素晴らしいと思う前に、ペットたちの惨状を読みたくなかった私は弱すぎるのかもしれない。生き抜いたペットたちの生きる力にバンザイ。

  • 知らなかったペットレスキュー。東日本大震災では被災者=ヒトが注目され、それは致し方ないことなのかも知れない。しかし、福島原発の立入禁止区域で強制避難後に取り残された犬猫や経済動物たちのことを、本書で改めて思い知らされた。警察を含む行政は、何故に彼女たちのようなボランティアと共に生き物を救おうとしないのか? 三毛猫を保護する時の台詞が本書のタイトルとなっていて、その部分を読んだ時には目頭が熱くなった。甲斐風犬カイと飼い主・静子さんの再会シーンも、やりきれない哀しさがあった。

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著者プロフィール

森 絵都(もり・えと):1968年生まれ。90年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞し、デビュー。95年『宇宙のみなしご』で野間児童文芸新人賞及び産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、98年『つきのふね』で野間児童文芸賞、99年『カラフル』で産経児童出版文化賞、2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞、06年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞、17年『みかづき』で中央公論文芸賞等受賞。『この女』『クラスメイツ』『出会いなおし』『カザアナ』『あしたのことば』『生まれかわりのポオ』他著作多数。

「2023年 『できない相談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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