ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯 (文春文庫 キ 16-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167902803

作品紹介・あらすじ

「ある小さなスズメの記録」とは、第二次世界大戦中のロンドン郊外で、足と翼に障害を持つ生まれたばかりの小スズメがキップス夫人に拾われ、そして夫人の愛情に包まれて育ったスズメはすくすくと育ち、最期をみとるまでの12年間を綴った実話をもとにした作品です。
ヨーロッパやアメリカでベストセラーを記録した、著者とスズメの互いに対する愛情と尊重が暖かく描写されたノンフィクションです。

感想・レビュー・書評

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  • イギリスのピアニスト、クレア・キップス(1890-1976)は、対ドイツ戦で灯火管制の続いていた1940年、玄関先で障がいを負ったスズメの雛を拾う。その日から12年間、スズメのクラレンスが老衰で亡くなるまで母子とも友愛関係とも取れる2人の交友が始まる。

    マッチ棒の先のミルクを頼りに生命を繋いだ幼少期から、俳優のように地域の人気者になり、奇跡の歌声をむつみ出した青年期、卒中で倒れたあとシャンパンの「薬」によって奇跡の復活を果たし、眠るようにクレアの手のひらで亡くなった老年期。その一生は、本にされるや英国のみならず、世界中のペット愛好家から愛された。

    私はつい最近、同じく英国で拾われたホームレスでビッグイシュー売り子の飼い猫が、瞬く間にロンドン子の人気者になって、映画出演まで(しかも2回)果たしたエピソードを思い出した。古今東西愛されペットの話は多いが、英国の愛され方は質が違うように思える。売るためにプロデュースされたペットは、時代を跨がない。僥倖にも拾われたペットが、その存在だけで、人に希望を与えるのである。思えば、ペルーからやってきて途方に暮れていた熊のパディントンも「拾われた」のでした。

    その存在だけで?
    いや、今回の相棒、2年前に夫を亡くしたばかりのクレアにとっては、唯一無二の個性と才能と愛らしさを持ったクラレンスは、彼女の冷静かつ詩的な文章によって普遍性のある人格まで(鳥格?)高められている。梨木香歩さんの訳も素晴らしい。むかし手乗り文鳥の飼育に失敗して可哀想なこともし、後悔の檻がずっと溜まっている私にとっても、とても癒しになる読書だった。

    正月、ねおさんのレビューにより、本の存在を知った。ありがとうございます。

  • 第二次大戦下のイギリスで傷を負ったスズメと出会い、12年もの間一緒に暮らした女性の手記。詳細に書き綴る著者は冷静な観察眼と細やかな愛情の持ち主だったのがわかる。そして2人?はなくてはならない相棒だったのだろうな。訳・絵・解説が贅沢!

  • 表現力に惹き込まれた一冊。

    一人の婦人とスズメの時間を大切に言葉にのせて紡いだ物語。

    良かった…ただその想いが読後に溢れてやまない。

    見事な表現力で擬人化された小さな皇帝、スズメのクラレンスの姿が読み手の心に懐にくすぐったく忍び込んでくる、惹き込まれる時間。

    だもの、実際に彼の姿を目にした戦時下の人々はどれだけの癒しを、明日への光をいただいただろう。

    自分の救われた命を大切に最期まで全うすること。それが何よりの感謝の証…クラレンスの想いが伝わってくる。

    二人の尊い物語は語り継がれるべき"永遠♾の愛し愛される"物語。

    • 松子さん
      くるたんさん、はじめまして。
      フォローにいいね、ありがとうございます。
      本棚覗かせて頂いたのですが、すっすごいです!
      本の登録数も感想も!
      ...
      くるたんさん、はじめまして。
      フォローにいいね、ありがとうございます。
      本棚覗かせて頂いたのですが、すっすごいです!
      本の登録数も感想も!
      くるたんさんの感想を読んでいるとどの本も読みたくなります(^^)
      これから本選びの参考にさせて頂きます。
      どうぞ宜しくお願いします。
      2022/07/26
    • くるたんさん
      松子さん♪こんにちは♪

      私こそ、フォローいただいていたのに気付くのが遅くてごめんなさい。

      改めてこちらこそよろしくお願いいたします(*^...
      松子さん♪こんにちは♪

      私こそ、フォローいただいていたのに気付くのが遅くてごめんなさい。

      改めてこちらこそよろしくお願いいたします(*^^*)

      松子さんのようにうまく言葉にできなくて…簡単な感想になってます^^;

      こちらこそ本の好みも似ているようなので、いろいろ教えてくださいね♬

      ありがとうございます(*^^*)


      2022/07/26
  • kuma0504さんのレビュー拝見して図書館予約

    イギリスのピアニストの老婦人と
    スズメの細やかな暮らしの記録

    単なるペットを超えた存在
    誇り高きクラレンスは幸せに逝った
    きっと

    こんな小さな存在に胸を打たれる
    梨木果歩さんの訳とあとがきもよかった
    小川洋子さんの解説も

    それにしても最近スズメを見ないのです
    どうしたのでしょう

    ≪ 大戦の 暗闇の中 ともしびに ≫

  • 本来、いのちとはこのように磨き、輝かせ、
    最後の最後まであきらめず、たたかい、
    味わい尽くすものなのだろう。

    スズメとか人間とかもはや種などは問題にならない。
    いのちの輝きや今日を生きる歓びが圧倒される量で
    本の中から溢れて出てきた。

    第二次世界大戦中のイギリスで、
    キップス夫人の家の玄関先で助けられた
    スズメのクラレンスの生涯の記録。

    キップス夫人がクラレンスに対する距離感。
    とても丁寧に、クラレンスを尊重する生活。
    こんな風に相手に働きかけることが、個性と豊かな表情を育むんですね。

    この本のクラレンスの晩年の写真を見ればわかります。
    生まれつき障碍がある上に、生死を彷徨う大病をし、
    自慢の美しかった体の模様も
    高齢でボソボソになっているのに
    あの生き生きと目が輝いていることったら!

    毎朝起きた時、今日は何をしようと
    ワクワクソワソワしていたんだろうなって。

    自分の人生なんだから、自分主体で生きなさい。
    やれないことを悲しむのではなく、
    やれることを存分に発揮して工夫して楽しもうと
    クラレンスから次から次へとアドバイスしてもらえた一冊です。

    実は私も知ってます。
    生後半年しか一緒にいられず、
    事故でお星さまになった猫「ぬり」ちゃん。

    生まれつき目がほとんど見えず、
    でも毎日こちらまで楽しくなるぐらい
    生命力にあふれ、何をしようかじっとしていなかった猫。

    「階段のぼれたよ」
    「階段をひとりで降りられるようになったよ」
    「見てみて!木に登れるようになったんだよ」
    毎日が冒険で、毎日が新しい挑戦で、
    毎日が失敗で、そして成功したときの
    爆発するような歓喜。

    そして遠く離れた今でも
    生きることってそれだけで楽しいんだよと
    小さい体で教え続けているわたしの大切な猫の先生。

    だからクラレンスの話も大げさな表現ではなく
    こういうスズメだった…というか
    こういう「いのち」だったんだろうなと。

    クラレンスもキップス夫人も
    「いのち」を輝かせる良き手本の先生として
    手元に大切に置いて定期的に再読したいと思います。

    挑戦しつづけること。肝に銘じます。 

  • 軒先で手にした小さな小さな命。
    第二次世界大戦中のロンドンでキップス夫人と小さなスズメのクラレンスとの交流を描いたノンフィクション。

    鳥と人間にはまず言葉という圧倒的な壁があり、さらに振る舞いや生き方にも大きな違いがあります。
    キップス夫人はこの小さなスズメ・クラレンスに対して一個人として礼を欠かしません。小さな声に日々耳を傾け、ささいな変化に気を配り、声を掛けます。そこに感じるのは命への敬意と尊重。時に寄り添い、時に見守り、日々の積み重ねを通して互いの心に深いつながりが生まれていく様子が伝わってきます。
    ……とここまで書いてみて、結局「自分」と「自分以外の他者」の関係も同じだなと。大切にしたいのは「親しき仲にも礼儀あり」の精神。そこに種の差はありませんし、いりません。

    また、小さなスズメの健気な振る舞いは不穏な時代に生きた人々の表情を和ませます。ささやかだけれどポッと心が温かくなる場面に当時の人々はどれだけ救われたことか。
    思わず現在進行形の先の見えない世の中に重ねてしまいます。いつも傍らにあると思っていた日常が揺らいだときに思う、当たり前への感謝。
    まだ出口は見えにくい日々が続きますが、小さな幸せをしっかり噛みしめながら前を向いていこうと改めて思います。

    抑揚がある展開はないけれどそれが心地よく丁寧な言葉でつむがれた本作は心を穏やかにしてくれます。
    ゆっくりとした読書の時間を送りたいときに。

    • nejidonさん
      放浪金魚さん、こんにちは(^^♪ちょっぴりお久しぶりです。
      またレビューを拝見して、嬉しくなりました!
      私も大好きなお話で、図書館で読ん...
      放浪金魚さん、こんにちは(^^♪ちょっぴりお久しぶりです。
      またレビューを拝見して、嬉しくなりました!
      私も大好きなお話で、図書館で読んでから自分用に買いました。
      クラレンスとキップス夫人の関係は、生き物と暮らすひとたちのお手本のようですね。
      本棚には入っていないのですが、こちらを読んで再読したくなりました。
      ありがとうございました。
      2020/04/08
    • 放浪金魚さん
      nejidonさん、こんにちは♪そしてご無沙汰しておりました!
      隙間で本を手にしているものの、なかなか振り返る時間が取れずヤキモキした日々...
      nejidonさん、こんにちは♪そしてご無沙汰しておりました!
      隙間で本を手にしているものの、なかなか振り返る時間が取れずヤキモキした日々を送っていました…!

      私も最初は借りて読んだのですが、手元に置いておきたくなり購入しました。
      愛情深いキップス夫人とそれに応えるように数奇な生涯を全うしたクラレンスに自分たちを重ねる方も多いと思いますし、まだ読んでいない方にはぜひ手にしてほしい一冊です。

      コメントいただき嬉しかったです☆
      遅筆ですが少しずつレビューも書いていけたらと思います。
      改めてよろしくお願いします♪
      2020/04/08
  • キツネは王子様に言いました。

    「君にとって僕はただのキツネでしかない。
     でもね、
     絆を作れば、絆さえ作れば
     俺と君はお互いに無くてはならない存在になる。
     俺は君無しではいられなくなるし、
     君も俺無しではいられなくなるんだ。」

    生まれたスズメも最初はただのスズメでした。
    でも彼は
    育ての親である人間のクレア(著者)が
    自分にとってかけがの無い人だ、と気付いた瞬間、
    キツネ同様の思いにかられたのでしょうね。

    臆病で警戒心の強いスズメが
    人とコミュニケーションをとろうと、
    絆を結びたいの。と、歩み寄り、著者と共に生きてきた奇跡の様な生涯の記録。

    星の王子様のキツネの話も良くわかった。
    自分以外の誰かと絆を結ぶ、
    かけがいの無い存在になる事以上に素敵な事は
    この世のどこにもないのだ。
    たとえ、それが言葉の通じない小さなスズメであろうともね。

  • 生まれて間も無く巣から落とされ障碍を持ったスズメの雛鳥が力強く成長し、病気を経ても今ある状況を受け入れ、生きる歓びに満たされながら生き抜いた十二年間を親であり相棒であり、観察者でもある音楽家の筆者が知性溢れる文章で綴った書籍。梨木香歩さんの訳文は格調の高さとユーモラスがちょうどよく調和したもので、酒井駒子さんの表紙の絵をはじめとして本の装丁も愛らしさと厳格さを兼ね備えている。挿入されている写真は、筆者の記録が「飼い主」として自分のペットを溺愛した誇張表現ではないことを裏付ける。クラレンスが持つ意思を尊重しクラレンスの変化を受け入れて静かに記録を残す筆者は、クラレンスという一羽のスズメを通して自然を見つめていたのだと思う。人と動物が共生することの美しさと残酷さ、そして一つの命が生まれ、生き、老いて死んでいくことの意味を教えてくれる。

  • 【7月の注目】担当編集者の一押しコメント! クレア・キップス 梨木香歩(訳)『ある小さなスズメの記録』 梨木香歩の名訳が光る、世界的名作 | コラム・エッセイ - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/articles/-/5648

    文春文庫『ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯』クレア・キップス 梨木香歩訳 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167902803

    • りまのさん
      すずめ、かわいいですね。にゃんこまるさん、おやすみなさい…。
      すずめ、かわいいですね。にゃんこまるさん、おやすみなさい…。
      2020/07/30
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      >りまのさん
      おやすみなさい、、、
      >りまのさん
      おやすみなさい、、、
      2020/07/30
  • 人間もスズメも、長く生きられるにこしたことはないなあと思った。いくつになっても学ぶことやあたらしい発見は絶えずつづいていく。

    • りまのさん
      こんにちは。ラララライブラリさん。すずめは、大好きです。
      フォロー頂き、ありがとうございます!どうぞよろしくお願いいたします♪ りまの
      こんにちは。ラララライブラリさん。すずめは、大好きです。
      フォロー頂き、ありがとうございます!どうぞよろしくお願いいたします♪ りまの
      2021/02/06
    • ラララライブラリさん
      こちらこそフォローありがとうございます!
      この本には、ふだん何気なく見ていたスズメがこんな行動も取るのか〜と驚かされました。
      よろしくおねが...
      こちらこそフォローありがとうございます!
      この本には、ふだん何気なく見ていたスズメがこんな行動も取るのか〜と驚かされました。
      よろしくおねがいします!
      2021/02/06
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