理系の子 高校生科学オリンピックの青春 (文春文庫 S 15-1)
- 文藝春秋 (2014年10月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (437ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167902155
作品紹介・あらすじ
成毛眞氏、堀江貴文氏絶賛、感動の科学ノンフィクション世界の理系少年少女が集まる科学のオリンピック、国際学生科学フェア。そこに参加するのはどんな子供たちなのか? 感動の一冊。
感想・レビュー・書評
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邦題の違和感は無視して中身重視。必要は発明の母的なものから、知りたい、作りたい、世に知らしめたい、仮説を実証したい、などをエネルギーに変え、様々なテーマに取り組んだ彼ら彼女らがとにかく熱い! 1編が概ね30頁前後でまとまっているので飽きずに読める。真剣に打ち込む人には、必ずと言っていいほど協力者が現れるものだ。お気に入りは“核にとり憑かれた少年”“ロリーナの声に耳を傾けて”かな。自分が親なら核融合炉を作ろうとしている子を止めるだろう...。周囲の素敵な大人たちにも感動。
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高校生による科学オリンピック、インテル国際学生科学フェア。予選を勝ち抜いて世界から集った少年少女たちのここに辿り着くまでの軌跡を追ったノンフィクションです。
少年たちの生い立ち、境遇は恵まれている子ばかりではないし、実験研究を行う体制サポートなど決して満足いくものばかりではありません。けれど、器具機材がなければ作ればいいし、逆境を研究の対象にすればいいじゃないと考える、そんな彼らの理科に対する熱情や探求心は本物です。そして彼らの研究にかける想いはサポートする大人たちを引き寄せます。
逆にいえば、彼らの研究やこれからの科学の未来を担う子どもたちを育て伸ばしていくには、科学に対する理解のある大人たちの支えや研究環境が必ず必要になるということですよね。
そして、どの子どもたちの親も、彼らの実験や研究に対する一抹の不安を抱えながら、そこはぐっと堪え彼らが思う存分研究に没頭できる状況を作り出しています。危ない実験でも、頭ごなしにやめさせる親は出てきません。同じ親としてついつい口うるさくしてしまう私には、最大級の見習わなければいけない態度です。
そしてそれは大学という学びの場でも言えることで、例えば大学の食堂の電子レンジを実験に使った際、爆発させてしまった少年に対し、一方的に処分するわけでもなく、彼に24時間いつでも使用出来る実験室の鍵を渡すことにした大学側の対応はさすがだなぁと感心しました。
さらに言えばこれらは全て外国での出来事なのです。日本にも理科好きの少年少女はいるわけで、とても優秀な研究結果を残している子もいるのだから、ひとりひとりの個性や探求心を伸ばす教育が日本でも、もっともっと広がり増えてくれればいいですよね。 -
書くべきよき素材が見つかれば、その本が面白くないわけがない。
日本でも、数学オリンピックの話はよく耳にするが、科学オリンピックはそれほどでもない、毎年、日本からも出場者&受賞者がいるにもかかわらず。
そして、我々の生活を変えるような大発見の芽がこの大会にはある。
この本は若き科学オタクたちがなぜその課題に興味を持ち、そして成果をだせたのかを追跡したドキュメンタリーです。
そのエピソードの数々は、ふとした偶然のきっかけでつかみ取ったセレンディピティものものもあれば、必要に駆られて発明しなければならなかったものもあり、登場人物(家庭環境)それぞれに独自の物語があることがわかります。
家族が信仰している宗教で不浄なものとして忌み嫌われていた病気、ハンセン病にり患した少女のとった行動力(知識は力だと考え、事実を武器に恐怖と闘う)にはやはり頭が下がりましたし、第2のビル・ゲイツと呼ばれた天才少年は牧場で暮らす自宅学習組だったこと、しかもリンカーンやアインシュタイン、フランクリン・ルーズベルトやプリンストン大学長もみなそうだったことなど意外な事実のオンパレードです。
一読して思ったことは、子供の好奇心の芽をできるだけ潰さず育てる環境さえあれば、子供は勝手に学んでいくということです。そこにはもちろん、タイムリーな協力者や指導者、理解者という存在が必要不可欠な要素ではありますが、自分の研究が何らかの形で社会の役に立つという研究対象さえみつかれば、子供は自分で道を切り開くことができるということです。
また、少子高齢化を迎える日本であるがゆえに、より高度な技術(科学)立国を目指すべきで、若いうちからこうしたイベントで研究の楽しさや目標を与えてあげるのも大人の役目だと感じました。内部留保ばかりを積み立てる日本企業のやるべきことがこの本には書かれています。 -
東京オリンピック2020が終わりました。オリンピック期間中、泣くのが日課になってしまったので、涙なく1日が終わるのは寂しいです。本を読んで泣きたいと思い、このノンフィクションの傑作を再読しました。
この本を最初に読んだのは7年前のジャカルタのスタバ。日曜日の午後2時から読み始めました。
「ゴキブリは携帯電話ほどの大きさだった。最優先扱い郵便で生きたまま、送られてきたものだ」という書き出しからはまってしまい、蚊の羽音も忘れて読み耽り、気が付いたら5時過ぎだったと記憶しています。
原題は「サイエンス・フェア・シーズン」。アメリカでは盛んなイベントで、簡単に言えば、中高生が科学の自由研究を出品し、その成果を競うコンテスト。本書で取り上げているのは、「インテルISEF」と呼ばれているもので、賞金額は総額で400万ドルを上回るという大規模なものです。
中高生の自由研究といっても「核融合炉の製作」、「ハンセン病の真実に関する研究」、「馬を通じて、心を癒すホースセラピーの研究」、「蜂群(ほうぐん)崩壊症候群の研究」など、想像を絶する内容が並びます。
本書は研究テーマの解説ではなく、サイエンスフェアに挑んだ少年少女たちの生い立ちから、研究テーマを選んだ背景、研究に一心不乱に挑む姿を描くノンフィクション。そこには、家族や友情の物語、あるいは企業や偏見に挑戦する彼らの果敢な物語があります。
スポーツでも芸術でも、一生懸命に挑む姿は良いものです。本の帯に「感動と感涙の実話」とあるのは、決して大げさな宣伝文句ではありません。
例えば、ハンセン病に自らが罹病してしまった少女が、根拠のない恐怖や誤解を根絶やしにするため、友人の協力を得て懸命にハンセン病の真実を求めようとする勇気、喘息の妹のために太陽光を利用した巨大な熱水器をゴミ捨て場から生み出すネイティブ・アメリカンの少年の優しさ。本書に登場するのは単なる裕福な科学オタクのガキだけではなく、困難はあるけれど、科学が好きで好きで仕方がない純粋な少年少女たちです。
書評サイトHONZが選ぶベスト1。一食抜いても、絶対おすすめの★5つです。 -
面白かった!
タイトルをみただけでは自分は絶対読まない本(自分は文系なもので…)だったけど、読んだ方のレビューで興味を持ち、手に取りました。
幼いころから核融合炉を作ることに向かって進んでいた子、ハンセン病を患ったことがきっかけで、研究に進んだ子、モデルで女優の道を進んでいたのに、ひょんなことから研究に進めるきっかけを作った子、自閉症のいとことコミュニケーションをとりたくて、それが研究テーマになった子、子どものころから馬が好きで、ウマによるセラピーの研究をする子…。
まだまだ沢山の子どもが紹介されていますが、物心つくまでにもうすでに天才的な子もいれば、身の回りのちょっとした問題に疑問を持って、それを調べているうちに研究へと進むことになった子まで、様々な子どものサイエンスフェアに出場するまでの経緯、受賞後進んだ道が書かれています。
10代の子どもにこんなことができるんだ!と実に興味深かったです。
人って元々持っている才能でこういった道に進む人が多いと思っていた中で、出会った人、境遇がきっかけで大きな成功を成し遂げる人もいるのだな、と改めて感じました。 -
アメリカのサイエンスフェアに参加する子供たちのそれぞれのバックグラウンドやその研究に没頭する姿、そこから様々な気づきがあったり、子供がどんどん開花していく様子が純粋に面白い
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若くて才能を開花できたということなのだが、それを助ける周りの環境が整えられているということがうらやましい。
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邦題、なんとかならないですかね。中身はなかなかおもしろくて、刺激を受けました。自分もがんばろうという気持ちに、少しだけ、なれました。アメリカのサイエンスフェアに日本人も参加しているんですねえ。(2020年1月8日読了)
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とても面白かった。
親の視点で言うと、個性を認め、個性を伸ばすスタイルの重要性に思い至る。
何かを不思議がる気持ちを大事にし、根気よく追いかけることのなんとカッコ良いことか。 -
小説以外でのおすすめ聞かれたら間違いなくこれ勧める。科学本ではなく子どもたちが夢を実現していく話としても秀逸だと思う。