ヴァレンヌ逃亡 マリー・アントワネット 運命の24時間 (文春文庫 な 58-2)
- 文藝春秋 (2014年8月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167901653
作品紹介・あらすじ
王の嫉妬、王妃の焦り。運命の逃亡劇24時間を再現!目的地の手前で破綻した「ヴァレンヌ逃亡事件」24時間を再現、人間の「楽観」が招く致命的な結果を描き震撼とさせる傑作!
感想・レビュー・書評
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なりふり構わぬ逃亡より、優雅な逃避行を選んだせいで追いつかれた。それだけなのだが、それが凄い。ロイヤル魂、ここに極まれり。
しかし王太子のその後の地獄を知っていれば、何がなんでも亡命していただろうと思うと切ない。
当時の村民や護衛騎士団の様子、ヴァレンヌ村やブイエ将軍のその後のエピソードなども簡潔に書かれており、面白く読めた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
マリーアントワネットとルイ16世、そして王の一族たちが反王党派たちに追われ、ヴェルサイユ宮殿からチェイルリー宮殿、そして国外へ逃亡を図るもの、ヴァレンヌで見破られ、失敗に終わる。
その運命の24時間を物語仕立てで書かれた一冊。
最近、一気にNetflixで米国のドラマ「ベルサイユ」を観た。(すっかり夢中になってしまったが、シーズン3がまだ入っておらず、続きが気になって仕方ない…)それもあって、最近ルイ14世を始めとしたフランスの歴史に興味津々。
文中にも登場する貴族のフェルゼン始め、多くの愛人を囲い、派手好きで市民たちに嫌われた王妃と、愛人を持たず、一途にアントワネットを想いながらも、ルイ14世のようなカリスマ性も、ルイ15世のような美貌もなく、無能と言われたルイ16世と、その家族たちの逃亡中の束の間のほっこりするやりとりが数少ない癒し。
マリーアントワネットは今のところ個人的に友達にしたくない人だけど、でも気になって、もっと知りたい存在。
中野京子さんが小説調の本を書いていたとは。新鮮だった。中野さんの西洋史への愛情が伝わってくる一冊。
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高校では日本史選択だったこともあり(という言い訳をしつつ)、恥ずかしながら「ヴァレンヌ事件」のことは知らなかった。逃走劇をトレースするという本書の試みに惹かれ手に取ったのだが、いやはやなんとも呆れる結末だったものだ。「勝負は最後までわからない」「油断大敵」、その他諸々の教訓を再確認させられる。
本書はストーリー仕立てになっているので、僕のような門外漢の方にもわかりやすい内容となっている。 -
失敗に終わることが分かっているのにはらはらしながら読みました。
歴史の本では『ヴァレンヌ逃亡は失敗に終わった』程度に書かれた一日が手に取るように物語仕立てで書かれており、当時の敵味方の動きが良く分かりました。
ルイ16世の優柔不断であったり楽観的であったりする性格の複雑さが失敗に繋がったのでしょうが…フェルゼンの後悔を思うと遣る瀬無い気持ちになります。 -
ドキドキしながら読みました。追うものは殺気立ち、追われるものはのんびりというギャップも。歴史というのは紙一重の時間差で決まってしまうこともあるんだなと痛切に感じました。
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結末をわかって読んでいる分だけ、「何をやってるんだ~」みたいな感じで。ルイが失敗の根源になっている感がすごくありました。でも実際そうなんでしょうね。
この話は子どものころにマンガ(もちろん「ベルばら」)で読んで知ったところが原点なので、どうしてもベースにそのイメージが。
歴史にもしも、はないけれど、もしもこの逃亡が成功していたら、マリーアントワネットの名前はここまで人々の記憶に残らないかも、というのはすごく納得。人々の記憶というか歴史の記録にも、もっとさらっとした感じになっていたかもしれませんね。 -
マリーアントワネット史やフランス革命史でも名高い「ヴァレンヌ逃亡事件」があった日の詳細。本を見つけた瞬間手に取っていた。ヴァレンヌ事件で何があったか、詳細がよく分かったと思う。
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フランス革命の一大転機となった歴史的事件である、”ヴァレンヌ逃亡”の24時間を追う側と追われる側の立場に立って忠実に再現した息詰まるドラマ仕立てドキュメンタリーもの。優柔不断で臆病なルイ16世と、贅沢で傲慢な王妃マリーアントワネット。キャラが濃すぎる二人の逃亡の鍵を握る、スウェーデン人フェルゼン卿と二人の関係にビックリ。筆者は、フランス中世史の研究者だけあって、事実を効果的に配し、推測と事実の境を感じさせない納得のストーリー。雅な世界に潜む陰を覗き込む事ができた至極の一冊~。。
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ルイ16世よ、この人は本当に語る者によって評価が分かれるな。
先に読んだ『死刑執行人サンソン』では、サンソン自身が王を敬愛していたとは言え、それを差し引いても、王を擁護する書き方であった。
対してこちらは、重大な場面一つ一つで、王の判断のまずさが強調される。それに対比させるかのように王妃には好意的だ。
本書を読んだだけの感想で言えば、ルイ16世は驚くべき「無能」、この一言に尽きる。しかし歴史にifがない以上、彼が違う決断をしていたらどうなっていたかなど誰にもわからない。彼には彼なりの論理があった。本書は明らかに無能・優柔不断な王という評価ありきで書かれているため、そのままの印象を持つことには慎重になりたい。
ま、近年、アントワネットへの評価が見直されてる流れを受けて、ルイ16世への見方も変わるのではないかという期待があったため、従来のイメージ通りの暗愚ぶりにちょっと失望した、というのが正直なところだ。
それにしても、境遇としてはチャールズ1世も似たようなものなのに、後世でのこの取りあげられ度の違いは何なんだろう。日本においては「べるばら」があったから、だけでは説明つかないような。