- Amazon.co.jp ・本 (510ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167900939
作品紹介・あらすじ
戦後の浅草を生き抜いた愛すべき人たちの物語昭和二十一年、浅草の劇場・ミリオン座に拾われた万歳芸人の善造、活字好きな戦災孤児の武雄、万年映画青年の復員兵・光秀。年齢も境遇も違う三人と財閥令嬢を自称する風変わりな踊り子のふう子は共同生活を始める。戦争で木端微塵になった夢や希望を取り戻しながら、戦後を生き抜く人々を描く傑作長編。
感想・レビュー・書評
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生かされているという
謙虚さを
現代人が失念していることを
思い出させるような
言葉が物語の中で
さらりと、自然に
交わされています。
稀代の現代作家木内昇
にしか書けない
生活感満載の人情物語の
世界の住人に
気づけば自分もなっていて
登場人物たちと最後は
また逢う日まで
とさよならするのでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いい本に出会うと登場人物にぴったりの役者を思い浮かべて、投影しながら読むのだが「善造」だけは誰もしっくりこない。時代遅れのお笑い馬鹿、超善人で唯一無二の人。戦後荒んだ世の中にこんな善人がいたらいいように扱われて、ボロ雑巾のように捨てられてしまうのが常かもしれない。最初は武雄もカモとして見ていたわけだし。でもそういう闇とか腹黒さとかを全部凌駕してしまう善造に心を掴まれた。まっすぐな言葉に幾度となく泣いた。武雄も立派になったし。もう安心。すかーんと晴れた空のような読了感をもたらす、浅草の忘れ難い時代の物語。
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すごくよかったけれど、勝手に、昭和のお笑いの気軽な話かなと思い込んでいたら、戦争や戦後の話をすごく悲しく重く感じた。もちろん、そういう意図あってのお涙ちょうだいとかではまったくなくて、文章はユーモアがあって笑えるし、さくさく読めるし、基本明るくラストも希望があってさわやかなのだけれど。それでも、まだ空襲で家族全員亡くして孤児になって、食べるものも住むところもかまってくれる大人もいなくて、飢えと寒さに苦しんでいる子ども、なんて状況を考えるとなんとも悲しくて。今の時代じゃ考えられない。激戦地で戦争を体験した復員兵の体や心の傷も深い。なんというか、軽々しく戦後だの復興だの言えないな、と思う感じ。はしょったテレビ番組とか見てると、戦争終わったら高度経済成長がきて、みたいに思えるけど。戦争終わってすぐ復興して豊かになったわけじゃまったくなくて、戦後もずっと悲惨な苦労の多い生活を送ってた人がものすごくたくさんいたわけで。白いごはんと卵を食べるのが夢、とか。しかも、だれもが心に傷を負っているというか。それが遠い昔じゃなくて、わたしの親世代くらいの話なんだな、と。なんだか戦争の恐ろしさをやたら強くしみじみと感じてしまった。作品には、それがメインで書かれてるわけじゃまったくないんだけど。
浅草のお笑い芸人や映画や写真の話がいろいろ出てきて、それぞれモデルとかいるんだろうか。参考文献もたくさん巻末に出ていて、相当調べて書いたんだろうな。
あまり時代物は読まないんだけどやっぱり木内昇さんは読んでいこうと思った。 -
【戦後の浅草を生き抜いた愛すべき人たちの物語】浅草の劇場に拾われた万歳芸人、戦災孤児、復員兵の三人と風変わりな踊り子が共同生活を始める。戦後を生き抜く人々を描く傑作長編
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読み応えのある内容でした。
著者の作品は数冊読みましたが、今までと雰囲気も違い、
戦後の悲惨さや混沌とした日常を知ることができました。
映画 or ドラマ化してほしいです。