生命の未来を変えた男 山中伸弥・iPS細胞革命 (文春文庫 編 19-4)

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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167900823

作品紹介・あらすじ

夢の万能細胞が映し出す驚愕の未来生命の未来を変える万能細胞を発見、ノーベル賞を受賞した山中京大教授。画期的な研究の最前線を立花隆、国谷裕子らが徹底取材。

感想・レビュー・書評

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  • NHKが、2010年及びノーベル生理学・医学賞受賞後の2012年に、山中伸弥教授のiPS細胞研究に関するドキュメンタリーの作成のために行った取材をまとめたものである。
    本書では、1.iPS細胞発見までの道のり、2.夢の再生医療の扉が開かれた、3.万能細胞が開くパンドラの箱、4.iPS細胞で深まる生命の謎、5.激しさを増すiPS細胞WARS、の5章の後に、立花隆と国谷裕子キャスターによる山中教授へのインタビュー「iPS細胞と生命の神秘」が収められている。
    既存の細胞にたった4つの遺伝子を入れることによってその細胞が初期化され、iPS細胞ができるという発見は驚くべきもので、iPS細胞がこれまで医療や生命科学の世界をドラスティックに変えてきたという事実と、今後の再生医療や創薬におけるiPS細胞に対する大きな期待を、開発からわずか6年でノーベル賞を受賞したということが物語っていると言える。
    しかし、その一方で、私が改めて関心を持ったのは、生命科学の分野では避けて通れない倫理問題である。iPS細胞は、同様の「万能細胞」であるES細胞が持っていた「ES細胞を作るためにヒトの受精卵を意図的に壊す」という倫理問題を解決したが、同時に更なる問題を提起することになったという。一つは、「iPS細胞は誰のものか」、つまり「細胞を提供した患者はその細胞株をどこまでコントロールする権利を持っているのか」という問題、もう一つは、誰の細胞からも動物とのキメラやクローンが技術的には作れるかもしれないという問題である。生命科学の進歩により、人類は自らがコントロールできる境界線を超えつつあるのではないか、そんな恐ろしさすら感じるのである。
    また、山中教授は、自分の歩んできた過去を振り返り、若い研究者に「人間万事塞翁が馬」という言葉を贈るとともに、良いことにも悪いことにも一喜一憂せず、淡々と努力することの大切さを繰り返し語っている。
    生命科学の最先端、iPS細胞に関する全体観を掴むことができる。
    (2014年4月了)

  • 山中伸弥さんという人物を知ろうと手にとった本だけど、iPS細胞についてくわしく知ることができて、なるほどなぁと思う箇所がたくさんあった。

    iPS細胞の技術を応用すれば、難病を治す可能性がひらける一方で、たとえば人と豚のキメラができたり、死んだひとと同じ人間をつくりだせたり、同性同士の子どもができたりという可能性もひらける。だから、技術の発展と並行して倫理についての議論がすすめられてるそうだ。

    ただ、エネルギーの分野でもそうだったように、倫理は技術の後追いになることがおおい。際限なく研究と応用がすすめられていって、やがてSF映画のようにクローン人間やキメラ動物がまちなかを歩く未来がくるのだろうか。

  • 【小保方晴子さん発見の新細胞で改めて注目!】生命の未来を変える万能細胞を発見、ノーベル賞を受賞した山中京大教授。画期的な研究の最前線を立花隆、国谷裕子らが徹底取材。

  • 初心者にもわかりやすいiPS細胞の解説本。技術的側面のみならず生命科学の倫理的観点などにもふれる多角的な視点で進行。

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著者プロフィール

長年「ひきこもり」をテーマに取材を続けてきたメンバーを中心とする、全国で広がる「ひきこもり死」の実態を調査・取材するプロジェクトチーム。2020年11月に放送されたNHKスペシャル「ある、ひきこもりの死 扉の向こうの家族」の制作およびドラマ「こもりびと」の取材を担当。中高年ひきこもりの実像を伝え、大きな反響を呼んだ。

「2021年 『NHKスペシャル ルポ 中高年ひきこもり 親亡き後の現実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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