悼む人 上 (文春文庫 て 7-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167814014

作品紹介・あらすじ

不慮の死を遂げた人々を"悼む"ため、全国を放浪する坂築静人。静人の行為に疑問を抱き、彼の身辺を調べ始める雑誌記者・蒔野。末期がんに冒された静人の母・巡子。そして、自らが手にかけた夫の亡霊に取りつかれた女・倖世。静人と彼を巡る人々が織りなす生と死、愛と僧しみ、罪と許しのドラマ。第140回直木賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 不慮の死ー事故・家事・喧嘩等々ーを遂げた人々を 死を迎えた現場で“悼む”旅を続ける青年。
    誰を愛し、誰に愛され、どんなことで人に感謝されたことがあったか。それを知り、そのことを覚えておく事で、悼む。
    彼が悼みの旅を続ける意味合いを、エログロ記者を目撃者・偽善者として、余命わずかな母親を保護者・代弁者として、望まない夫殺しの殺人者を随伴者・傍観者として、解き明かそうとしている。
    少なからず影響を受ける者、嫌悪する者、死者の記憶の共有を喜ぶ者。掴みどころのない彼の行為は、本人さえ理解できていないのか?
    うーん?どうなるのか、下巻へ。

    • おびのりさん
      そうなんです。悼む人は、良いんだけれど、その周辺の人がまとまりがないんですよ
      そうなんです。悼む人は、良いんだけれど、その周辺の人がまとまりがないんですよ
      2023/03/25
    • みんみんさん
      永遠の仔はドラマ観てたけどキツい内容だよね?
      永遠の仔はドラマ観てたけどキツい内容だよね?
      2023/03/25
    • おびのりさん
      ドラマ残念ながら見てないんです。
      悼む人は、掴みは面白いし、悼むって感覚と現場を旅する行程は、良いんですが、殺人者で悼む人を追随する女性が、...
      ドラマ残念ながら見てないんです。
      悼む人は、掴みは面白いし、悼むって感覚と現場を旅する行程は、良いんですが、殺人者で悼む人を追随する女性が、右肩に、殺した夫の霊をのせてるんですね。それが、霊か女性の幻想かも明確にしないで、意思疎通したりするんですよ。
      エログロ記者は、最初懐疑心いっぱいだったんですけど、影響受けて、犯罪者被害者に寄り添った記事を書いたり。悼む人に集中して読めば良いのかもだけど。直木賞受賞作を選んだのですが、そのドラマになっている方が良いかもしれません。
      2023/03/25
  • “悼む” ----- 人の死を悲しみ嘆く -----

    といっても、静人は各人の死亡現場で祈りを捧げ、「あなたのことを憶えておきます」と唱えるだけで、事件・事故のネタは新聞記事やラジオから拾ったもの。
    しかも祈りに際して死にいたる顛末には触れないと決めているため、唱える内容はどれも酷似したものになってしまいます。

    被害者の遺族や友人から罵倒されることも多いにも関わらず、薄っぺらい祈りを重ねて何になるのか。

    何より、他人の死を悼むあまり、何より大切な家族の死を身近で悼むことができなかったのは本末転倒ではないでしょうか。
    友人の命日を忘れるよりも罪深いように思えるのですが…

    「静人の悼む行為は理解され難い」と作中でも槇野に指摘されていますが、全くその通りで、
    最終的な行き着く先が見えず、困惑が残る結末でした。

  • 下巻へ。
    完全に高良健吾で再生されてる。

  • 人の死、様々な死因があるが死後には殆ど死者に対する営みが家族以外されず、忘れ去られる。家族、親戚、同僚、更に鳥の死から死後に報われる世界を見ていた静人は「悼む」事でその死を弔った。知りたかったことは3つ、生前、誰に愛され、誰を愛し、誰から感謝されたのか。僧侶が悟りを受けるまでの修行のような旅を続ける。

  • 不慮の死を遂げた人々が生前誰を愛し、誰に愛され、感謝されたかを聞き「悼み」の旅を続ける主人公、静人。
    彼の行動に心を揺さぶられる蒔野や倖世もまた、重い枷を背負っている。心を鷲掴みにされるような、怖いほどに純粋な静人の思いが描かれる。

    読んでいて、気持ちのどこかがしんどくなってくる程に、自らの死生観を問われているよう。

    どう結末を迎えるのか、下巻に続く。

  • 人の死とはどういうものなのだろうか。
    この世にいなくなった人をずっと思い続けることはできるのだろうか。
    僕も大切な人を亡くしたのに。
    その時は胸が張り裂けるような思いをしたのに。
    今は日常の生に追い立てられ、大事な人の存在も希薄になっていく。

    静人の悼むということは何を意味するのか。
    生とは死とは。

    徐々に明らかにされていくエピソードがどう帰結していくのか。

  • すごく面白い!
    次から次へ気になる話が出てきて早く下が読みたい!

  • 死者を悼む旅を続ける青年の物語。

    ここで言う「悼む」とは、弔うことでもなく冥福を祈ることでもない。

    忘れずに覚えていると言うこと。

    とても単純なことのように思えるがこれがものすごく心に突き刺さった。

    確かに死んだ人とは二度と会えないが、覚えてくれる人がいる限りその人の存在が消えることはない。

    そこにスポットを当てた作品だと感じた。

    死ぬとはなんなのか、生きるとはなんなのか、存在するとはなんなのか、その全てに一つの導きを与えてくれているような気がする。

    どれが正しいなんて分からないが、主人公は全て分かっていて、母に会いに行かず、倖世に託しのではないか、誰かが覚えてくれていればその存在は消えることはないのだから。

  • 「悼む人〈上〉」
    第140回直木賞受賞作。


    ゴロウデラックスにまさかの天童荒太登場!を見てから、作品を読もう読もうと時は過ぎ。代表作の一つである本作を漸く読了。


    個人的な想いで不慮の死を遂げた人々を悼むため、全国を放浪する坂築静人。彼の行為に疑問を抱く人と抱かない人、貴方はどちらだろうか。


    静人は死を遂げた人間が悪人だろうと、その悪人もきっと愛されたことがあるに違いないと考え、であれば、死を悲しんだ人がいるはずだからその人の為にも悼む。死んだ人はどんな人だったのかを死者の関係者に聞き回る為に、変人や不審者扱いをされる。死を弄んでるかの様に見え、不謹慎だと怒鳴られることもある。しかし、静人は悼むことを続ける。


    確かに静人は善人ではあるが、同時に異様さを感じてしまうのは仕方がない。だから、彼の行為に疑問を抱く蒔野の気持ちは理解できる。更に自らの過酷な経験を通じて静人に「もう悼まないで。少なくとも愛なんて言葉で覚えないで」と訴え、静人が蕭然と改心を表明するのを待った奈義の気持ちも無視は出来ない。


    しかし、静人は彼らの疑問や想いに対して明快な回答を出す訳ではない。だから彼らは答えを見つける為に静人に付きまとう。静人は何故そこまでして悼むのか。不明で奇怪で謎めいた行為を紐解きたくなる。それは仕方ないことだ。誰だって静人を見たらそうなる。

  • 何とも突飛な発想で、以前から気になっていた直木賞受賞作。映画化されるとの情報に、その前に読んでしまわなければと(笑)
    読み進むうちに、主人公に同化されるのか、気持ちが静かになって行く。

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著者プロフィール

天童 荒太(てんどう・あらた):1960(昭和35)年、愛媛県生まれ。1986年「白の家族」で野性時代新人文学賞受賞。1996年『家族狩り』で山本周五郎賞受賞。2000年『永遠の仔』で日本推理作家協会賞受賞。2009年『悼む人』で直木賞を受賞。2013年『歓喜の仔』で毎日出版文化賞を受賞する。他に『あふれた愛』『包帯クラブ』『包帯クラブ ルック・アット・ミー!』『静人日記』『ムーンナイト・ダイバー』『ペインレス』『巡礼の家』などがある。

「2022年 『君たちが生き延びるために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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