国税庁の研究 徴税権力 (文春文庫 お 49-1)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167766016

作品紹介・あらすじ

膨大な「マネー情報」が集積される国税庁。その内情に相当程度に踏み込めたのは、長年の取材活動で当局の「内部文書」を入手できたことが大きい。漏洩すれば国家公務員法に問われかねない危険な極秘資料を、敢えて提供してくれた国税庁や国税局の幹部と職員。スクープ記者30年の取材成果がここに結実する。

感想・レビュー・書評

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  • 【286冊目】個別の行政機構のミッションは簡単に変わらないと思うけれど、その在り方は時代とともに大きく変わると思う。その意味で、2000年代前半に記されたこの本の頃から、徴税権力の行使の在り方も変化してるだろうからすぐに今日のニュースに当てはめてみることはできない。とはいえ、今まで勉強してこなかった「国家」や「行政」の基本的事務である徴税の我が国における在り方を学ぶにはとても良い本だった。

     徴税が弱い者いじめになってはいけないと筆者は言いつつも、本書の中心は「徴税権力vs超強い相手」という構図で、この超強い相手というのが、政治家、検察、大企業、創価学会というもの。政治家については、最大にして最後の国税金星といえる金丸信の摘発を冒頭に描写しつつ、その後与党が「経済警察たる徴税権力の横暴を許すな!」と言って反転攻勢に出たのが興味深い。小泉元総理など、有名政治家が支持者の陳情を受けて国税に圧力をかけている実態描写も、「ここまで書いて良いのかな…」とこちらが不安になるくらい笑
     税法違反で検察と連携しつつも、抜きつ抜かれつの緊張関係があるとか、大企業は規模の問題等で課税が難しいと言いつつ、国際取引に着目しつつ徴税しようと努力してるとか、創価学会に気を遣っているとか。

     刑事告発を目標として強制力のある調査ができる「査察(マルサ)」と、相手の任意協力をもとに調査する「資料調査(リョウチョウ)」の違いなども興味深い。

     あとは、徴税権力がいかに国民から嫌われているか端的に表す言葉も思わず笑う!
     「火事はどこだ?」「税務署だ」「じゃあ、ほっとけ」←国税局が教えてくれた小話
     「お父さんは悪いことはしていないから警察は怖くない。でも税務署は怖い」←商売人だった筆者の父の言葉
     「ハイジャック犯よりも、国税局の方がよっぽど怖かったよ。お前みたいな悪いヤツはいないといった調子でガンガンやられたからね」←国税局の捜索を受け、その後「よど号」に乗り合わせた社長の言葉

  • 国税と検察の微妙な関係が面白い。しかし、これを読んでいると摘発されるのは氷山の一角かなぁという印象を拭えない。そんななかで無力感に苛まれているかもしれないが、頑張っている国税の努力が感じられた。

  • よくもまあ国税の内部情報をこれだけつかんだものだ。ダダ漏れの感すらある。時代が違うとはいえホントかしら。

    マスコミ人らしいやや偏った視線もところどころ感じた気がするが、ここまでやれば立派。大企業への査察検討のあたりは興味深い。

  • 『乱脈経理 創価学会 VS. 国税庁の暗闘ドキュメント』(矢野絢也)で引用されていた一冊。第一章の「金丸信摘発の舞台裏」が出色。その後明らかにトーンダウン。最終章の「国税対創価学会」も尻すぼみの感が拭えない。
    http://sessendo.blogspot.jp/2014/05/blog-post_25.html

  • 結構面白い!
    題名的に堅いものかと思いきや、意外とそんなことはなくてすんなり読めた。
    勉強になります。

  • ドキュメンタリー大好き。とても興味深い内容。
    できればもう少し調査手口の部分を深堀してほしかったけど、まぁそこは連載のまとめという体を取っているので仕方ないかな…。

  • 本書は長年国税庁担当記者だった著者が内部文書を駆使して国税庁の実態を記したものである。
    有名なマルサだけではない政治とカネに関する貴重な内容であるが、事の性質上、情報の鮮度があせているのが残念なところである。単行本は2006年の刊行であるが、騒がれた記憶がない。巻末の対談を読むとマスコミの本質がわかる。

  • 国税庁についての話。雑誌に連載された物をまとめた本らしく、とても読みやすかった。国税庁の人の気持ちの持ち様や、他の国家機関との力関係が分かる。
    でも所得の多い人の所得税率って恐ろしい。脱税したくなる気持ちが分からなくない。

  • 国税庁を長年担当した記者が書いた本なので、深い分析のもとに書かれているのが分かり、大変興味深く読めた。
    国税庁の内部のことや専門用語が分かって、勉強になった。

  • 税金の監視役である国税庁についての一冊です。

    やはり国税庁の鬼門といえば、
    非課税の特権を持つ政治家と宗教法人。

    政治家と宗教法人の事例を
    いくつか教えてくれます。


    ・いったん査察が動き始めると、政治家が介入するケースは
    さすがに少ない。査察は検察も連動して動いており、
    政治家の方々も下手に動けばやけどすることを知っている(p70)



    ■宗教法人については、
    やはり創価学会。

    1990年の調査では、
    墓石販売について6億円の修正申告しています。

    一般に知られているところでは、有名絵画の代理取引や、
    金庫がゴミ処理場で見つかるなど、
    話題を提供しています。


    ・三菱商事の税務申告には目をひく項目があった。ルノワールの
    名画「浴後の女」「読書をする女性」の購入である。・・・
    絵画が実は、創価学会から依頼されて三菱商事が代理購入を
    したものであることが判明し、しかも購入先のフランス人
    二人は実在せず(p193)



    ■私は、いっぱい稼いで、いっぱい納税するのが、
    自分にとっても国家にとっても良いことだと
    思っています。

    政治家と宗教法人はどう思っているのでしょうか。


    新大阪駅前の支店で毎月多額の割引債を買う人物があやしい
    というので、マルサ三人で後を追ったら、新幹線で小倉まで
    行ってしまった。どうやら福岡のパチンコ業者が脱税のために
    割引債をわざわざ大阪まで買いに来ていたんです。(p21)


    ・日債銀にむかった二人の捜査官・・・
    行員が席を外したすきを見計らって、営業部次長の
    机を開けると「金丸」の二文字が入った資料が見えた。
    もちろん行員にコピーは頼めない。ひとりが
    その「紙」を手に取って、麹町税務署へ走った。
    日債銀本店から直線距離で約六百メートル。(p27)


    読売テレビの元看板プロデューサー・・・
    「ダウンタウンDX]などの人気バラエティ番組を手掛け・・・
    弱い立場の下請け会社に「使ってやる」と持ちかけては、
    月に数百万ものリベートを受け取り、銀行口座に入金させていた(p215)


    ・帝国ホテルでの取引終了後、二点のルノワールは
    東京・八王子の東京富士美術館まで運ばれた。
    その運送をしたのが「日本図書輸送」で、三カ月後の
    「中西金庫事件」に絡み、一億七千万円入りの金庫を
    聖教新聞社地下倉庫から運び出しゴミ処理場に捨てたことから
    日本中を騒がせることになる。(p254)

    税務調査の最大の難物は何だと思いますか?
     非課税の金を使える政治家と宗教法人ですよ。
     宗教法人の中でも、公明党が細川政権に入ったことで、
     その支持母体である創価学会の調査には
     神経を使うことになるでしょう。(p234)


    国税庁にとっても、
     創価学会は鬼門と言えるもののようで、
     最近は、創価学会の脱税などは
     聞いたことがありません。


    ■創価学会は適正に税金を支払っているか、
     うまくやっているいるかの
     どちらかなのでしょう。

     宗教法人には納税義務はありませんが、
     国家のためにお金を寄付しようという思いは
     まったくないようです。

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