悪いのはアメリカだ 日本は悪くない (文春文庫 経 5-1)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167753665

感想・レビュー・書評

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  • 大変面白く読ませてもらいました。元は昭和62年ごろに刊行されたということだが、内容はいたって新鮮。
    個人的には(あまり根拠なく)TPPをはじめとした自由貿易の枠組みは賛成していたが、自国の状況(国民経済)ももっと整理しておく必要があると痛感し、また他国の主張の背景も認識しておく必要があろうと考える。その上で最終的な結論を出せばよく、自由貿易=正義 という整理で拙速に答えは出していけないと認識を新たにした。
    マクロ経済の基礎的な考えを勉強した上で読む必要はあろう。

  • 元の本は80年代に書かれている。日本を肯定し、アメリカを非難している本だが、言っていることは間違ってはいない。

  • 今から30年以上前に書かれた本なのに、内容はいささかも古びていない。ということは、日本の経済をめぐる状況というのは、30年前と何も変わってはいないということだ(もちろんアメリカとの関係も)。
    それにしても、30年前にここに書かれているようなことを上梓するというのは、かなり勇気がいることだったのではなかろうか。それでもこのように主張せざるを得なかったということは、筆者がそれだけ切迫感を持っていたということであろう。
    同様の切迫感を今の経済学者は持っているのだろうか。

  • バブル真っ盛りの時期にこれだけの予測が出来ていたことに敬服する。

  • なるほど、と唸ること幾度。血の通った経済を語った名著です、これは。

  • TPPをきっかけに、世界と国家の経済というものについて考えさせられることが多い。自由貿易主義というものが正しい、という前提で議論がなされがちだけれども、本当なのか?池田内閣で所得倍増計画を実践するブレーンであった著者は、「経済の基本は国民をどう生きさせるかだ」と看破する。自由貿易主義の間違いは、「国民経済」という視点がすっぽり抜け落ちていることである。自由貿易はそれを推進する国〜アメリカ合衆国〜にとって有利な条件でゲームを行おうというだけのことであり、ほとんどの国が敗北するだろう。四半世紀前に書かれたこの本が今なお読むべき価値を持ち続けているのは驚くべきことである。

  • 平成になる前に書かれた本ではあるがTPPが叫ばれるようになった状況により文庫化。

    当時のアメリカとの貿易摩擦が主題に置かれた本なのでこんなタイトル。
    自由貿易は強国が弱国を支配するための格好の手段であると言い放つ様はとても力強い。
    原因と結果を読み違えないで見ていけばアメリカの言い分は間違いだらけだと見事に解説している。

    執筆された時代を考えると十分噛み砕かれたものもしれないが、現代だとやや読み辛い。
    また、過激な予言をしているがそれが完全に当たっているわけでもないのでこれを盲信せずに、どうして現状との違いが出たのかなど、考えて読む必要はある。

  • 自分だけが正しい、という思想がアメリカを間違いに導いている。
    株信仰がつくる株高現象はいつか崩れる。
    内需拡大論は日本経済を破滅させる。
    日米は縮小均衡から再出発せよ。
    1987年の刊の単行本を文庫化。

    下村治の名前にピンとこなくても、沢木耕太郎の「危機の宰相」の登場人物といえば、ピンとくる人も多いのではないだろうか。
    著者は、元大蔵官僚。池田勇人内閣の経済ブレーンとして高度経済成長の理論
    的支柱となり、戦後を代表するエコノミストとして活躍した。

    親本は、「ジャパンバッシングが盛んだった頃」に出版されたものであり、タイトルも当時の世相を反映したものとなっている。一見、きわもののようなタイトルではあるが、中身はいたって真面目な内容である。
    当時は、レーガン、中曽根時代で日米は蜜月時代であった。個人的には、中曽根内閣を高く評価するが、著者の見方は厳しい。

    日米貿易摩擦(アメリカの輸入超過)の原因を、著者は、レーガノミックス(大減税による経済活性化が柱)により内需が拡大したものの、国内産業が衰退していたため、輸入に頼らざるおえなかった事によるものとしている。
    逆に言えば、日本経済が強くなった訳ではなく、アメリカ経済の異常膨張に巻き込まれた結果、輸出が伸びただけであり、今後は、過剰設備が深刻な問題になる警鐘を鳴らしている。(当時がバブル時代だったこと、その後、不良債権処理に苦しんだことを考えると、卓見であったといえる)
    著者は、アメリカが財政赤字を減らすには、大幅な歳出削減と増税以外に道は
    ないとしている。二十年以上たって、同じ命題が、日本に突きつけられているのは、歴史の皮肉としかいいようがない。

    著者は、経済の根本は国民をどう生かさせるかにあるとしている。政治家や経営者は、「経国済民」の原点に立ち返って欲しいところであるが、自己責任の名のもとに、モラルを喪失した多くの現在人には、難しいのかもしれない。

  • 「現代の Apocalypse」とも言うべき、恐るべき一冊。本が書かれたのはバブル崩壊直前の 1987年だが、バブル崩壊、長期に渡るゼロ成長、サブプライム・ローンの崩壊を経験した 2012年の今読み返しても、なお下村治の洞察は 1987年当時と同じ価値を持って、否、それ以上の輝きを持って読者に迫ってくる。しばらく手に入りにくい時期が続いていたようだが、TPP 賛否の議論を受けて復刊され、現在は文庫で読める。

    下村は「経済の根本は国民経済」と解く。つまり、日本列島に住む一億二千万人の生活をどうするか、日本人によりよい就業の機会を与え、より高い生活水準を与えるにはどうするかが、経済、つまり経国済民の本質であると言うのだ。マネーゲームに一喜一憂する人々に対しては、「お金はアブクのようなものであって、経済の実体ではない。日本人は日本人らしく、平凡で堅実な生活設計を立てることだ」と諭し、買収による exit を狙うベンチャービジネスや、大量消費社会に対しては、「狂っている」と一言で判りやすく切り捨てる。

    米国主導の成長幻想に踊らされ、国民経済をないがしてきたツケは、今まさに具現化しつつある。いま一度、国民経済の、企業の、生活の根本に立ち戻るために、政治家や経営者はもちろんすべての日本人が手にとるべき一冊。

  • すごくまっとうなことが書いてありました。僕達は地に足を付けないといけないんだと腑に落ちました。

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著者プロフィール

横浜市立洋光台第一中学校

「2020年 『グローバル化とインクルーシブ教育』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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