数学者列伝 天才の栄光と挫折 (文春文庫 ふ 26-2)

著者 :
  • 文藝春秋
3.77
  • (27)
  • (47)
  • (38)
  • (5)
  • (2)
本棚登録 : 528
感想 : 53
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167749026

作品紹介・あらすじ

自らも数学者である著者が、天才数学者-ニュートン、関孝和、ガロワ、ハミルトン、コワレフスカヤ、ラマヌジャン、チューリング、ワイル、ワイルズ-九人の足跡を現地まで辿って見つけたものは何だったのか。この世にいて天国と地獄を行き来した彼らの悲喜交々の人生模様を描くノンフィクション大作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「数学者列伝」と副題にあるように、過去の天才数学者たちの人生を現地まで訪ねて追ったエッセイである。ニュートン、関孝和、ガロワ、ハミルトン、ソーニャ・コワレフスカヤ、ラマヌジャン、チューリング、ヘルマン・ワイル、アンドリュー・ワイルズという9人のドラマが描かれている。それぞれに巨大な業績を残しているが、人生も幸せだったとは限らない。著者のあとがきにあるように「天才の峰が高ければ高いほど、谷底も深い」のである。二十歳で決闘に散ったガロワ、初恋の人を思い続けたハミルトン、ナチスのために故国を去らねばならなかったワイルなど、栄光よりもその悲しみの方が胸をしめつける。

  • 稀代の数学者たちのお話。その時代・場所にタイムスリップしたかのような気分を味わえて面白い。

    読んでいると、なんとも言えない切なさ、救われない無念さを抱いしまう。
    人間はその生きる時代、環境にめちゃくちゃ規定されているんだなと、当たり前だけど。

    色々考えさせられた。プライベートを大事にしながら、それでも何かに没頭して卓越した成果を出すってなかなか両立しがたいのだろうな、、

    ぼくは、しあわせにいきたいです。はい。

  • 小学生の頃、我が家にあった『玉川児童百科大事典』の第一巻が数学だったので、何回か目論んだ全巻読破という野望のため、2~3回は通読した数学の巻のおかげで、数学者にはちょっと詳しい。
    なので、最初に登場するガロワも「ああ、若くして決闘で死んだ人ね」くらいにはすぐに分かった。

    だって、数学が好きだったことなど中1の1年間以外には人生で一度もないのだもの。(素因数分解が好きだった)
    数学にとりつかれてしまった人の人生なんて、想像がつかない。

    長男は数学が得意でしたが、計算をすることが好きなのであって、数学が好きなわけではないと本人から言われ、では、数学ってどういうことかっていうと、数字で、計算で世の中のまだ知られていない事実を解析していこうと考えるのが数学なのだそうです。
    大学で数学科を専攻した職場の後輩がそう言っていました。

    数学の素養が全くない私には、彼らの業績の偉大さはよくわかりませんが(説明文を読んでも理解できませんが)、例えば第二次大戦時のドイツの暗号を解読したチューリングや、フェルマーの最終定理を証明したワイルズなどは、その業績の結果にうっとりするわけです。

    けれども、天才というのは栄光も人の数倍なら挫折も人の数倍。
    親に愛されない、親との濃厚な関係ゆえ夫婦関係が上手くいかない、初恋を一生大切にし続けるなどの家族関係。
    または、同じ数学者に対する嫉妬、無視、それによる孤独などなど。

    人生って、結果オーライなら途中が不遇でもいいじゃんってもんではないのだから、最終的に勝つのはメンタルが強い人なんだな。
    ということを、自殺したチューリング、メンタルから病に負けていったラマヌジャン、自暴自棄のような決闘死のガロワなど、もっと活躍できたはずの人が死んでいく姿を読みながら思う。

    例えばアインシュタインがいなくても、相対性理論は発見されていたと言われるけれど、ラマヌジャンの発見については、どうやって彼がそれを発見することができたのかいまだわかっていないという。
    天才の上にいる天才。
    時代が生んだ天才と。時代を超えた天才。

    350年間、誰も証明することができなかったフェルマーの最終定理。
    1993年にワイルズが証明できたのは、谷村=志村予想と、岩澤理論という、日本人の業績があったからだ、というのはよく聞く話だけれど、世界的にそう評価されているのかは私は知らない。
    だけど、著者がこのエピソードを最後に持って来たのには、さもありなんと思いました。

  • 著者との出会いは場末の変哲もない古本屋の百円均一。「若き数学者のアメリカ」。大した期待もなく読み始めたがこれが面白い。直ぐに新刊書店に走り「遥かなるケンブリッジ」を購入。但し「国家の品格」を読んで以来離れた。専門外のことを語るのが悪いとは言わない。ただ共感できなかっただけ。久しぶりの藤原本。やっぱり著者には数学モノがよく似合う。天上より舞い降りし無垢の天才ラマヌジャン。そして「罪と罰」のソーニャがここに居た。さらに、あのワイルズに関孝和。次なる読書は当読書メーターでも評判の和洋各一冊。至福の数学週間なり。

    同著の元となったNHK教育テレビ人間講座「数学者列伝」を見る。ついでに「魔性の難問~リーマン予想・天才たちの闘い」も続けて視聴。「100年の難問はなぜ解けたのか ~天才数学者 失踪の謎~(ポアンカレ予想)」も見たくてネット検索するが見つからず。^^;

    「ポアンカレ予想」もついに発見!お隣の国の画像アップロードサイトにありました。感謝^^

  • 2冊の自伝を読んで以来久しぶりの藤原さん。
    当該2冊を読んだ当時、妻と生まれたばかりの長男と一緒に駐在していて、どの時代も同じような苦労をするものだと感じいったものだ。

    数学も文学も、数と文字という違いはあれど自分の考えを他人に分かりやすく説明するという点では共通しているのだ。全体に貫く先人に対する尊敬の念が、年を重ねてすこしだけ柔らかくなった氏の筆致で記されていて、通勤時間に読むのにちょうどよい内容だった。

    ラマヌジャンの業績の数学的価値、あるいは、欧州で数学の発展の表裏一体となった神学や哲学が、この本を読んで私の読書リストに入ったジャンルである。

  • 数学入門の対談で触れられていたので読んでみた。
    数学の功績の所はちんぷんかんぷんだけど、どの天才の話も興味深いものばかり。数学的に天才でも私生活は孤独を抱えてる人が多く、人間味あふれる姿で書かれている。


    この中の3人がもっと詳しく書かれてる本があるとのことでそちらも購入しました。

  • 数学者、藤原正彦先生が描く天才数学者列伝。実際に藤原先生が天才数学者生誕の地などを訪れながら描きリアリティがある。多くの数学者があまり幸せな人生を送っていないようなのが印象的。特にガロアやラマヌジャンなどの天才数学者が受験で失敗しているところなど印象的で、数学の才能が突出すぎると他の部分が足りなくなるのだろう。フェルマー予想を証明したワイルズで締める。フェルマー予想の証明には日本人数学者の功績が大きく関わっているとのことで誇らしい。

  • やっぱラマヌジャンやな。

  • 南インドの“摩術師”―シュリニヴァーサ・ラマヌジャン

  • 数学者といっても、われわれと同じように悩み生きている存在だということを感じる作品だと思います。ニュートンといったよく知られた数学者から、ガロワ、コワレフスカヤ、ラマヌジャンといったぜひ知ってほしい数学者まで、さまざまなエピソードが取り上げられ、読んでいて面白い。

    (数学科 ペンネーム「鮒一鉢二鉢」先生おすすめ)

全53件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

お茶の水女子大学名誉教授

「2020年 『本屋を守れ 読書とは国力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

藤原正彦の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部みゆき
ヴィクトール・E...
村上 春樹
冲方 丁
フィリップ・マグ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×