モンテッソーリ教育は子を育てる、親を育てる お母さんの「敏感期」 (文春文庫 さ 46-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167717452

作品紹介・あらすじ

「敏感期」ってなんですか?おけいこごとや塾は、いくつぐらい通わせるのがいいのでしょうか?子どもはひとりでやりたいと望んでいるのですか?なんでも分けたがるのはなぜですか?-モンテッソーリ教育の第一人者が、子育てのポイントを親育てというユニークな視点から解説する。育児書のロングセラーがついに文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • お母さんの「敏感期」モンテッソーリ教育は子を育てる、親を育てる
    【評価】★★★☆☆

    【誰にオススメか】
    生後半年から3歳ぐらいの子を持つ親

    【メモ】
    ・子供が歩行に至る道、「第一段階:移動なき運動」「第二段階:腹ばい」「第三段階:四つん這い」「第四段階:歩行」… この時期に大事なことは、新しい段階へと順調に入っていけるかどうかは、その前の段階をうまく終了してきたかに、全面的にかかっている」
     → 脳の発達に上記の四段階をスムーズに終える必要がある。そのため、ハイハイしている赤ちゃんを抱き上げたり、四つん這いの機会を奪ったりしてはいけない。脳の発達に影響が出る。
    ・産まれた直後から3歳までニューロンは成長する。
    ・「これが出来る様になった」、「こんなよい評価をもらった」とか、子供がやったことの結果ばかり見る大人は良くない。幸せそうな子供の顔が見える(その瞬間に気付く)大人であることがもっとも大切。
    ・子供が幸せそうな顔をする機会をどのように作ってやればよいかを真剣に考えて、具体的に工夫すると子供はそれに反応する。
    ・小さい時にもっとも大切なのは、「日常生活のことをひとりですること」である。それによって自信がつき、自立する。なんでも手伝ってあげたらだめ、何度も挑戦する機会をあげてやる。
    ・子供が何かに集中することはとても大事。深く集中した後に幸福な表情をする。何かに集中していたら見守る。
    ・学齢期以上になれば、「困難を乗り越える苦しみ」を知る事は大切だが、幼児期は「喜んで」学べる環境を作るべき。
    ・3歳から7歳までは、聴覚の敏感期。絶対音感の習得はこの時期がオススメ。
    ・幼児期の子供は一生に一回きりの特別に敏感な感受性を発揮する「敏感期」という時期がある。
    ・【秩序感の敏感期】子供の不機嫌な反応は、敏感期にある子供が何かに強い興味や関心を抱いたにも関わらず、大人の鈍感さによってその興味が断ち切られた時に現れる。数ヶ月〜2.3歳まで。この時期は「順番・場所・所有物・習慣」に非常にこだわる。大人が急いでいるからといって子供の習慣を無視してはいけない。
    ・【感覚の敏感期】一生に一回きりの感覚を素晴らしく洗練していく時期。優れた感性を持つには外界から感じ取る感覚をこの敏感期に磨かなければならない。五感で何を感じ取っているかを常に認めてあげる。3歳から6歳。例えば、虫を観察したり(視覚)、やまびこを不思議がって何回もやったり(聴覚)、汚いタオルをずっと持っていたり(嗅覚)、サラサラ生地をずっと触ったり(触覚)、少しの味の違いに気づく、お袋の味(味覚)。
    ・【運動の敏感期】五感で情報を受け取り、運動機関で外界に働きかける。この時期は一生に一度だけ人間が全力を出し切ることを惜しまない。これ以降は「ラクしたい」と思い、動かないで済む方法を探す。3歳から7歳。①大きな動き…とにかくエネルギッシュ。②バランスを取る…重い物を持とうとしたり、白線の上やレンガの上を歩こうとする。③手腕を使う…雑巾の絞り方、ゴミ袋の口を結ぶ。④指先を使う…小学校に入る前に、摘む、ひねる、ねじるの動きを覚える。ファスナー、ボタン、洗濯バサミ
    、蓋を回すであそぶ。
    ・動き方を身につける事は学び方を身につけることでとある。幼児期に「学ぶ力」を身につけさせたいなら、「どう動けばよいか」を自分で学び取りたい「運動の敏感期」に、子供が自分で「動き方」をよく見て、自分で取り組めるような機会をたくさん提供する。
    ・この時期の子供は本当は「自分でやりたい!」。学びの場を奪ってはいけない。子供が出来ないからといって大人がかわりにやってあげたらだめ。

    ⇨お母さんの工夫、子供ができるようになる教え方
    ①対象を一つだけ取り出す。日常生活の中から教えたい一つの行為だけを取り出す。
    ②動作を分析し順序だてる。その動作をよく分析して、各部分ごとにどうなっているかを、はっきり見せながらゆっくり正確に実行する。
    ③難しいところをはっきりする。子供が行き詰まるところを丁寧に分析し、正確にゆっくり繰り返し見せる。
    ④動作を見せている間は言葉は使わない。言葉による説明にならないように。
    ⑤正確に実行し、精密なところに心を込める。
    ⑥教えながら、教える。子供の間違いを訂正しながら教えてはいけないという意味。とっさに訂正したり、責めたりすると子供は萎縮する。あくまで繰り返し教える。
    ⑦自分からする自由を与える。やり方を教えたあと、それを実行するかは子供の自由に任せる。自由に自分で考えて行動させる。
    ★子供の前でゆっくり正しい行動をすることが大切。123ページ
    ・【自律とは】…自分の頭で考え、自分の身体をよく使い、自分のやりたいことを追求したり展開出来る力
    ・【自立とは】…自分の奥深いところになんらかの自信、確信、安心が生じる。自分で決めたり、選んだり、責任を取ることができる力。







    【響いたフレーズ】
    ・子供は「環境に恋をし」「環境と恋仲になる」恋をしている人が喜び輝いているように、「敏感期」の感受性に促されて環境に関わる子供は喜びが輝く。
    ・大人は子供の心の中の深い秘密を知らなすぎる。しかし子供は大人にわからない心の要求を満足させながら生活したがる者である。




    【明日からTODO】


  • モンテッソーリ教育の第一人者の書
    内容が本質的で、環境に関わらず母親である人は、一度目を通す価値のある本だと思った。

    子どものイヤイヤ期には、夢中になれるような体験を多くさせてあげることを心がけ

    前半は脳科学的な観点での教育方法で、理論だってはいるが、脳科学はあくまでも時代で主張が変わることもきちんと書かれているのでバランスがよい本だと思った。
    脳科学の説の一部を曲がった形で利用する英才教育もあるので注意。


    以下備忘録

    真理をたどる道筋
    ハッとする、ひらめくといったような感性が感じたことをめぐって、「知性」が働き始める

    宇宙の中の進展はすべて左巻きに進行する

    <脳の発達>
    脳のもっとも下位にある1延髄からはじまり、2脳橋⇒3中脳⇒4皮質へと進む。

    <体の発達>
    第一段階 手足を動かすが移動できない
         移動しない運動期
    第二段階 決まった方法で上で手足を動かす腹ばい期
    第三段階 四つんばいの時期
    第四段階 歩行時期

    <各脳の部位によってできるもの>
    延髄が発達:胴体、腕、足を動かす能力をつかさどってる
       なので最初は移動なき運動
    脳橋が発達:床に腹部をおしつけて体を移動させるような能力をつかさどる。
    中脳が発達:四つんばいに必要な重力に逆らって床からはなして手やひざで支えるのに必要
    皮質:様々な人間の能力をつかさどる部分で歩行

    <脳と体の関係まとめ>
    上記の時期は次の段階に不可欠なものであるきちんと計画された秩序あるもの。

    新しい段階へと順調に入っていけるかどうかは、その前の段階をうまく終了してきたかに全面的にかかっていおり、脳の発達が密接にかかっている。

    おけいこごとも脳の発達と順位関係なく勝手におしつければ意味のない結果におわる

    脳細胞はニューロンとグリア細胞がある。
    三歳までにニューロンは外界からの刺激に応じて次々をシナプスをつくる。臨界期は三才と言われている。
    一方でシナプスは余分にあったものを必要な分に刈込よく使う回線が太くなるため、余計な刺激を与えすぎることはかえって脳の発達に悪い結果をもたらすという説もある。
    いろんな説が時代とともに変化していくので、短絡的に乳児教育にあてはめることはよくない

    シナプス形成は
    自然に起こるものと、生涯を通じて複雑な環境にふれることに関連して生じるものと区別しなければならない。
    自然発生型:体験予期型可塑性
    複雑な環境との接触:体験依存型可塑性
    があり、乳児期は予期型が多く、特定の期間に適切な体験をするとたやすく学習できる。

    まずは子供を観察し、自然のプログラムに沿ってその時期の、生命の課題に子どもが向き合うのを手伝う方法を探さなければならない。

    生物学者土ド・フリース1948~は、全ての生物は幼少期い自分の将来に必要な事の為に、ある事への感受性が非常に敏感になりそれを環境の中にみつけだし、強烈にかかわっていく特別の短い時期がある。その事を獲得するとその感受性は鈍感になり、また
    次のものへ感受性が高まる
    という。

    もちろん人間にも内面から押し上げてくるその特別な強い感受性やエネルギーを燃え上がらせ強烈に関わり始める。そのチカラを教育に利用することを始めたのがモンテソーリ。

    音楽の敏感期は3歳から7歳

    大人にはなんでもないようなことにこだわったり執着するので分からず屋にみえる
    子どもにとっては内面から押し上げられてくる生命力に導かれてその時期にこそしなければならない
    自然の宿題をしているので譲れない。


    秩序感の敏感期 2,3歳がピーク、6歳できえる
    順番、場所、所有物、習慣に非常にこだわる
    ⇒様々な事柄の中にひそむ関係を気づかせる最初のステップ。
    秩序感をコンパスに世界の中で混沌に溺れずに生きていける
    秩序が崩れることは大人でいう家の地盤に相当する事。
    幼児は乱雑の中で生活しえないのです。

    感覚の敏感期
    五感の器官を完成させ、持っている機能を洗練する。
    一生に一回きりの感覚をすばらしく洗練していく時期

    触角の敏感期にいる子ども
    ツルツル、スベスベ、ザラザラ、つめたい、あったかい、フワフワなど肌触りを楽しむ

    運動の敏感期
    一生に一回だけ人間が全力をだし着ることをけっしておしまない珍しい時、この時期を過ぎると人間は常に力を倹約する方に働き、なるべくラクしたいと願い動かないで済むような工夫をこらす時期にはいる。

    運動の種類
    1大きな動き
    2バランスとり
    3手腕を使う
    4指先を使う

    からだを100%使って精一杯の努力を惜しまないのは一生に一度この時期だけ、全力投球した経験は小学生以後何事にも力をだしきることができる。出し切らなかった人は小学生になってから粘り強さにかける。

    体のぜんぶを使いこなして大きな動きをし、とことん挑戦したり、のりこえたりする経験をさせましょう。

    知性のエネルギー
    知性の働きは「区別する事」
    知性の性質は自発性

    この宇宙におけるすべての動物には調和があり、法則に従って動きながらしかえあっている。
    人間は知性の法則に従って動く

    動き方を知ることは知性をつかって学ぶこと

    幼児期に学ぶ力を身に着けさせたいのであれば、どう動けばいいのかを自分で学びとりたい運動の敏感期に自分で学べるような機会を提供する事

    自分の動きを完成させたい敏感期なので、より完全により美しくという望みの力を活かすことが最大限学びとる力を真に育てることになる。


    子どもができるようになる教え方
    モンテソーリでは【提示】という
    1 対象をひとつだけとりだす
    2 動作を分析し、順序たてる
    3 むずかしいところをはっきりさせる
    4 動作を見せる間は言葉は使わない
    5 正確に実行し、精密な所にこころをこめる
      子供は行為を完成する条件として
      子供のこころを強くひきつける
    6 教えながら教える
      子供が委縮するため間違いをていせいしながらおしえてはいけない
    ⁷ 自分からする自由をあたえる
      自分がして見せたことを子どもがすぐはしなくても
     子どもの自由にさせる、自由にじぶんで考えて実行したとき、初めてその行為は自分のものとなる

    自律と自立
    モンテッソーリをひとことで言えば自律と自立をそだてる教育 命令やはげましで育つのではなく心身の必要が満たされたときに内面から現れてくるもの

    じりつがあらわれるためには「知性」が正しく方向づけられることが必要

    知性の働き方

  • モンテッソーリ本の新刊をいくつかパラパラと読んできたけどこの本が一番モンテッソーリ教育の魅力と理念が伝わってきて、実際の事例を読むたびに胸が熱くなった。何度でも読み返したい

  • 私の子育てのバイブルです。子育ての概念が変わります。

  • 著者の書き方が私の好みに合わないだけかもしれないが
    モンテッソーリの概念と著者の思いが入り混じっていてわかりにくい

    例も色々と出てくるが
    都合の良いことばかりに感じる

    モンテッソーリの考え自体は納得できるものがあるがこの本はそれをさらに深めてくれるものではなかった

  • 2018年1月読了。
    (142ページ)「モンテッソーリ教育は、ひとことでいうなら「自律と自立を育てる教育」だといえます。「自律」も「自立」も、命令や励ましで育つのではなく、心身の必要が満たされたときに、内面からあらわれてくるものなので、モンテッソーリは、まず心身の必要性や必然性をよく観察し、それを満たす方法を生みだしました。」
    現役のお父さん、お母さんは日々子どもの成長と格闘されていることと思いますが、こういう人間観に立って子どもと接したいと思います。

  • モンテッソーリ教育をベースに子供の敏感期を解説。初めて子を持つ母親もある意味で敏感期であるという切り口も含む。

  • 子供にとって「何かに敏感に反応できる時期」があり、その時期に子供の興味関心をいかに尊重してあげられるかが大切なのだとわかった。子供がやっている、無意味に見える行動には子供なりの譲れない秩序があるとのこと。
    子供が興味を持った眼差しにあるときは、それをやらせてあげること。子供の好奇心を尊重して伸ばしてあげたいと思った。

  • 90年代らしい(?)口語調が気になるけれど、そもそもの脳の働きから、モンテッソーリの元々の著書の引用、少しの実践方法まで、「自立と自律」のための基本的な考え方や系譜がよくわかった。

  • とてもおもしろかった。

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著者プロフィール

相良敦子(さがら あつこ)
1959年生まれ。脚本家・作家。
学習院大学文学部史学科卒業。
制作現場を経て、NHKの脚本懸賞入賞を機にデビュー。
以後、テレビドラマを中心に、ラジオ、映画、舞台、小説、絵本と、幅広いジャンルで執筆している。
主なテレビドラマに、連続テレビ小説「ウェルかめ」、「バッテリー」、「七子と七生」、「昨日の敵は今日の友」、「シングルマザーズ」、「サイレント・プア」(以上NHK)など多数。

「2022年 『感動する、を考える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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