歳三 往きてまた (文春文庫 あ 44-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (546ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167717278

感想・レビュー・書評

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  • もうね、かっこいいです…。
    歳三さんがすげー慕われているのもなんかいい。

    王政復古の大号令の行われた直後からお話は始まります。
    章の名前もずばり「落日」。
    旧幕府軍は敗戦につぐ敗戦…な、訳です。
    会津での戦いも詳しくかかれてますが、やはり状況が厳しい。
    その中で、優しくなっていく土方さん…!
    かっこよすぎやろがぃ!!
    小さなエピソードもいいです。素敵じゃ!
    あとは会津の老中、西郷頼母の娘として出てくる細布子と土方さんの話が切ないです。というかこの西郷家の女たちの最期が悲しすぎるよう!

    土方さんの死に向かっていく過程がほんとかっこよく、悲しく書かれててすげー好き。理想の土方像かもしんない。

  • しんどかったです。
    だって、この小説の結末はわかっているのですから。
    絶対幸せにならない。
    負けて負けて、それでもなお全身に疵を負いながら戦い続ける男たちの姿を、もっと若かったら胸を熱くして読むことができたのかもしれません。
    だけど、胸が熱くなるよりもまず、胸が痛くなってしまう。

    特に新選組のファンというわけでも、土方びいきの訳でもないのですが、この作品は辛い。
    特に、生きることに、人と接することに不器用な土方に、どうしてあれだけ大勢の人が慕ってついて行ったのかを考えると、もっと違う時代に生まれていればなあと思えてしまう。

    誰よりも侍になりたかった男。
    そして侍として死んでいった男。

    ちょいちょい間が悪いというか、運に恵まれないところがあって、それが時代の勢いというものなのかもしれないけれど、やっぱり惜しい男ではあったよなあ。
    負け戦を重ねるなかで、鬼の副長時代には見えなかった人の心の機微を知る土方。
    そんな状況の中でも成長できることが素晴らしい。

    だからこそ、ページが進むごとに近づく土方の最期を思うと、読み進めるのが本当にしんどかった。
    永倉新八と斎藤一のところだけ、ちょっとほっこり。

  • 幕末の殺戮集団として恐れられ多くの志士を葬ったので、一般的にはイメージが悪いが書き手の捉え方や見る角度によって魅力的に生まれ変わると実感した一冊でした。函館で劣勢のなかでの土方歳三は滅茶苦茶格好いいです。鉄砲の弾が降り注ぐ中、抜刀して斬り込みをかける後ろ姿をみたら、たとえ命を落としてもこの人についていこうと思わせます。

  • 負け戦の繰り返しで、奸賊呼ばわりされ、仲間は次々にいなくなって、それでも『士道背キ間敷事』を貫き通した土方さんに胸を打たれた。

    新選組ものだとだいたい近藤さんの死までや、短くて池田屋までのものなんかが多い印象だが(その辺までがやはり華やかで扱いやすいのだと思う)、これは近藤さん亡き後の新選組、土方さんの話。
    私も実際この辺についてはあまり知らなかったのだけど、この頃の土方さんの魅力に気づかせてくれた本書。

    鬼と呼ばれてた京都時代とは打って変わって厳しさの中にも思いやりや他者を尊重することが増えた。
    それはいいことだと思う。現に隊士達に慕われていた。
    それでも無理してバラガキから鬼になって、またその鬼を捨てたときの胸中を思うと悲しくも切なくもあると思った。

    戦い続けたことは賢い選択ではなかったかもしれないけど、それでも最期まで侍であることを貫き通した姿は正しさとかそんなのを超えて素晴らしかったと思えた。

  • 今日土方さんが戦死されました(3度目・・)。ということはこの本は3回読んだということなんですけどね。
    どんな本を読んでも土方さんが亡くなる終盤、函館に近くなる度胸が痛くなります・・。
    小説です。伝記ではありません。
    この本は女性から見た理想像の土方さんだと思う。
    終盤に近づくにつれ。
    子供に優しく 部下や同士に愛され 完全なる指導者として尊敬される 理想の男性像が書かれています。 
    「燃えよ剣」ではあまり詳しく書かれていない斉藤・相馬・島田などとの関係も織り込んでいていい本でした。1度目はさらっと。2度目は登場人物の関係がわかり。3度目はウィキペディアで時系列を調べながら読みました。小説としては強烈な印象は持たないものの 読み込めば読み込むほどいい本だなぁ・と。

  • 戊辰戦争から五稜郭までの土方歳三の話です。

    土方さんかっこよすぎます。
    前から好きだったんですが、もっと好きになりました。

    土方さんが戦争を通して、どんどん優しくなっていくのが伝わってきて、周りの人が憧れるのもわかります。

    土方さんの周りの人がどんどん死んでいくのには泣きました。

    最後の伊庭さんの言葉にまた涙しました。

    沖田さんの「土方さんこそ、皆の光だ」の言葉が土方さんの全てを表していると思います。


    この本に出会えてよかったです。
    土方歳三の魅力がたっぷり詰まったこの本は最高です。

  • 司馬遼太郎風の文だなと思ったら短大で研究していたんですね。どうも野坊の衆たる新撰組が好きになれない人間としては土方歳三のどこに惚れるんやら、容姿かなという描写が多く鼻白んだ 土方の新撰組からの人生を描く意欲作ではある

  • 土方歳三がいかにして戦い抜いたか、これぞラストサムライとも言うべき姿だった。鉄砲や大砲に頼る戦に形が変わり、仲間を失っていくなかで土方自身に変化が現れ、死に様よりも生きる事を意識する。それでも自分自身は武士として死んでいった。胸が熱すぎる。

    この後、官軍である新政府軍が、味方であったはずの薩摩と戦争、日本最後の内戦が起こるが、負ける軍の不運さが、戊辰戦争にもみえた。

    土方は実は死んでいなくて、金塊探しをしていたと信じたい。

  • 土方歳三の大政奉還以降の闘い、生き様を描く。
    幕藩体制から近代国家への移行に際し、徳川体制下での武士を否定するわけであるから、戦争は避けられなかったのであろう。
    土方歳三の意地、新撰組の局中法度である、士道に背きまじきことを貫いた生き様であった。

  • 登場人物たちが容姿端麗に描かれていて、小説でありながら目にも鮮やかです。
    主人公である土方歳三はさもありなん。
    美しく、戦うために生まれてきたような才能溢れる土方は、箱館に散ることを知っていても、その生を願ってしまうほど魅力的です。
    ボリュームのある小説ですが、文体は読み易いです。

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著者プロフィール

1968年福岡県生まれ。活水女子短大卒業。2002年『歳三往きてまた』でデビュー。2017年『龍が哭く河井継之助』で第6回野村胡堂文学賞受賞。柳生新陰流居合道四段。主な著作に『伊庭八郎凍土に奔る』『密偵』『獺祭り白狐騒動始末記』などがある。

「2022年 『氏真、寂たり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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