少年少女飛行倶楽部 (文春文庫 か 33-4)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 101
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  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167673048

感想・レビュー・書評

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  • 愉快痛快なんて書くと、怪物くんみたいだが、実際そうなのであって、更に、奇妙キテレツまで加わり、まるで藤子先生を讃える文章みたいになってしまった。が、あながちテイストは間違っていない、と思う。多分。

    冒頭の飛行クラブのヤバ・・いや、夢に溢れる内容を読んで、これはどういう方向に話がいくのか、逆に好奇心が芽生えたと思ったら、今度はバカ・・いや、個性的な登場人物たちに釘付け。そして、なぜかキラキラネームっぽいのが多い。

    巻きこまれ型主人公。くーちゃんこと、佐田海月(みづき)
    普段はくーちゃん任せで前に出ないが、恋は別の、ジュジュこと、大森樹絵里(じゅえり)
    高所平気症の怖いもの知らず。仲居朋(るなるな)
    両親から野球を期待されているが本人は嫌がっている。餅田球児(キュージ)
    いい人。中村海星(ヒトデ先輩)
    飛行クラブ部長。尊大。何様?神様?でおなじみの、斎藤神(ジン)
    人の悪口と噂話大好き。イライザこと、戸倉良子

    読んでいて、やや現実感に乏しい感はあったが、軽い感じには思わなかった。その理由として、子供と大人の関係性の大切さを書いていることと、ユーモアたっぷりな文章の内に、何か、力技や強引さも厭わない、憑かれたような熱量を感じたこと(そして、加納さんのダジャレが絶好調なこと)。

    ああ、これはもうテーマありきなんだなと思っていたら、あとがきで確信しました。意地でも飛びたいんだ。そう、私だって飛びたい。まあ、最後のエピソードは、本当に強引すぎるかなとも思ったが、それくらい何とかしたかった加納さんの思いを、私は感じ取りました。幼心に思ったことと馬鹿にするなかれ。子供は子供なりに、自分らの限界のようなものがある、もどかしさに気付いている。それにそっと手を差し伸べる大人の存在が、子供にとって素晴らしいものになることは、紛うことなき現実感。特に、くーちゃんの母は、その見本みたいな感じで、すごく印象的だった(働きアリのエピソードとか)。

    ちなみに、飛ぶ以外でもちゃんと青春しております。恋や友情や親子関係といった大切な要素が。私としては、久々に明るく楽しい物語を読んだ気分ですが、部長やイライザの意外な心の内の思いなどに、それだけではないものも感じて、やっぱり青春っていいなあ、と思わせられるのです。読もうかどうしようか迷ってる方は、清水の舞台から飛び降りるつもりで、是非(飛び降りるじゃ飛んでないか)。

  •  中学に入学したばかりの佐田みづき(あだ名は、色々あって「くーちゃん」)は、ひょんなことから「飛行クラブ」に入部してしまう。

    一、「自分自身が」飛行することを旨とする。
    二、「落下」は「飛行」ではない。
    三、航空機等での飛行は除外される。
    四、究極的には、ピーターパンの飛行を理想とする。

    これが飛行クラブの活動趣旨である。解説(金原瑞人さん)を先に読んでみたら冒頭にこう書いてあって、「この本を読もう」と決めた。
     だって、どうなってしまうのか気になる。成績ビリの子が東大合格目指すとか、寄せ集めのメンバーで箱根駅伝に出るとか、そういうのはまだなんかどうにか頑張って達成するという感動ストーリーが思い描けなくもないが、ファンタジーでもないのに「ピーターパンの飛行が理想」なんていうとんでもないゴール設定をしてしまって、いったいどういう結末を用意しているのか?
     もうひとつ、青春ものが読みたい気分だったというのもある。ここのところ、裏染天馬(高校生)→KZ(小六)と十代の子たちが活躍する小説を読むことが続いたから、この波に乗って中学生の部活ストーリーもいいなと思ったのだ。

     果たして読んでみて、大満足。気軽にサクサク読めて面白かった。しっかりものの主人公くーちゃんがクセの強い面々に振り回され全方位にツッコミを入れながらあらゆる物事を回していく。ツッコミキャラとかキレキャラでしかも仕事のできるタイプというのは、一歩間違うとウザキャラになりかねないが、くーちゃんはそうならない。うまく説明できないが、はっきりいって私の大好きなとある友人を彷彿とさせ、ああなんだか彼女っぽい…と思いながら読んだ。くーちゃんを取り巻く女の子友情パートも読み応えあった。
     でも一番見ていて面白かったのは二年生で部長の斎藤神(じん)くんかもしれない。色々とコミュニケーション面の問題点はあるが、「部活は全員強制参加、活動内容が内申書にも響く」という学校の窮屈な制度のなか、既存の部活全てに否を突きつけ自分の夢を実現するためにクラブを創設、クラブと認められるための規定の部員数(五人)に満たないまま泰然と一人本を読みながら一年間過ごし切ったこの強さ。序盤のうちは「なんだこの人ぜったいありえん」という印象だったのに、いつの間にか評価爆上がり、青春部活マジックを擬似体験してしまったかもしれない。いや、加納朋子さんマジックなのかな。
     どんな結末が待っていたかは…読んでみてのお楽しみ。

    • たださん
      akikobbさん
      私も、全ての作品を読んではいませんが、「ななつのこ」と「掌の中の小鳥」は、その固定観念も含めて良かったですよ。
      よろしけ...
      akikobbさん
      私も、全ての作品を読んではいませんが、「ななつのこ」と「掌の中の小鳥」は、その固定観念も含めて良かったですよ。
      よろしければ、ご参考までに。
      2023/10/15
    • akikobbさん
      作品情報ありがとうございます♪
      作品情報ありがとうございます♪
      2023/10/15
    • たださん
      どういたしまして♪
      どういたしまして♪
      2023/10/15
  • この作者、去年の今頃から読み始め、本棚の縦一列に並ぶように9冊に1冊のペースで読んできて1年経った。

    突拍子もないクラブに変わった子ばかりが集まって、最初はどういう話だい?という感じだったが、話が進むに従って少しずつ面白くなってきた。
    少年少女向けの微笑ましいお話だが、さすがにこの作者、ただ飛んだというだけで終わらないところが良かった。
    ★は3.5くらい。

  • 楽しかった!

    この小説も昔に「読みたい」登録して読んでいなかった。
    読んで良かった!
    セリフ回しのテンポもすごく楽しめた。
    めんどくさい面々が、ステキなチームに見えてきた。
    助演女優賞のお母さんも楽しかったしw

    読んでみたいと感じた、その時を大切に「読みたい」と感じた小説を読んでいこう。
    私は物語が好きだから。

  • 個性的な登場人物が生き生きと書かれ
    楽しく読めた

    小学生や中学生におすすめ

  • 軽く読めて、読んだ後の爽快感もあじわえる青春小説。
    夢に向かって突き進む中学生っていいな~と思う。
    自分が夢に向かって頑張ってたのはいつの頃だったかな・・・

  • とんでもない性格の登場人物たちばかりで、主人公が可哀想なほど苦労している。しかし、ラストまでの展開は惹きつける構成ですっきりする。中学生から

  • しっかり者中学一年女子が飛行クラブとういう変なクラブに入ることになってしまい、周りの変人と関わりながら青春する話。とにかく個性的な面々と関わった主人公海月の心の叫びが面白すぎ。
    最後までスカッと読める。映画にできそう。小学生でも大丈夫な内容なので、青い鳥みたいなふりがな付文庫にならないかな。
    解説の金原瑞人の文も良かった。

  • わー、これはいい。すごくいい!
    青春だなあ。青春だよなあ。
    青春時代をこれほど郷愁を持って感じさせてくれるお話はそうはない。
    それぐらい傑作だと思う。

    もちろん自分の好きな部活モノということもある。
    変な連中が集まってひとつの目標に向かっていくさまはとてもステキだ。
    主人公のぼやきながらも結局やってしまう頼もしさも、さりげなく育っていく恋心も、なんて眩しいんだろう。
    そんな頑張っている青春の真っ直ぐさがとても好ましい。
    先生への主人公の啖呵と言うかマジギレも楽しかった。

    そしてクライマックスでのハプニングと、ラストの先輩とのさりげないやり取り。
    いや、完璧だな。
    うん、とても面白かった。

    それにしても主人公のお母さんの性格がとても好きだ^^

  • この物語は、人数が足りずクラブにもなっていないクラブが、
    目的である飛行をするまでの物語である。

    って要は、中学校のクラブ活動なのだが、
    活動を通して、人からみた自分を確認したりして成長していく物語。

    この物語の登場人物のほとんどが、いわゆるキラキラネームを持つ。

    主人公、海月(みづき)に始まり、
    幼馴染の樹絵里(ジュエリ)、
    部長の神(ジン)、
    副部長の海星(カイセイ)、
    元野球部の球児(キュウジ)、
    高所平気症の朋(ルナルナ)、
    超性格の悪いイライザ(こちらはあだ名)。
    そしてカミサマ部長の姉、天使(エンゼ)。

    登場人物の親(主人公とその母以外)は、
    自分の願いを子供に押し付けるような親ばかりが出てくる。

    野球選手になってほしいと願い、自分の夢を子供に託す球児の両親、
    るなるなの両親だって、るなるなが高いところが平気で落ちて危ないと
    心配するぐらいなら、高級車なんかに乗ってないで、
    さっさと高層マンションから平屋に引っ越せばいいのに、そうしない自分本位な親だ。

    子供なりに、そんな親の期待から解放されて飛び立ちたいという願うお話でした。

    主人公の愚痴が多いのと、
    登場人物の名前がキラキラネームが多いので、
    読む人は選ぶお話かもしれません。
    (青春小説だから若者向けなのかな。)

    私は、正直、部長は最後まであまり好きになれませんでした。
    なぜなら口ばっかりで自分で行動しないから!
    やりたいことがあるなら自分で行動しようよ。

    どんなに純粋でステキな夢でも、
    自分でやらなくては意味がないと私は思います。
    くーちゃんがかわいそうだよ。ほんと。。

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著者プロフィール

1966年福岡県生まれ。’92年『ななつのこ』で第3回鮎川哲也賞を受賞して作家デビュー。’95年に『ガラスの麒麟』で第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)、2008年『レインレイン・ボウ』で第1回京都水無月大賞を受賞。著書に『掌の中の小鳥』『ささら さや』『モノレールねこ』『ぐるぐる猿と歌う鳥』『少年少女飛行倶楽部』『七人の敵がいる』『トオリヌケ キンシ』『カーテンコール!』『いつかの岸辺に跳ねていく』『二百十番館にようこそ』などがある。

「2021年 『ガラスの麒麟 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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