宮殿泥棒 (文春文庫 ケ 4-1)

  • 文藝春秋
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167661304

感想・レビュー・書評

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  • すごく良かった。一篇一篇読み終わるたび、切ない想いで胸がいっぱいになり、余韻に浸ってしまった。
    世の中で基本的に物語の主人公になり得るのは「バッド・ボーイ」ばかり。そりゃそうだ。どうせフィクションの世界に遊ぶなら、社会通念に捉われず、痛快な振る舞いをしてくれる人物の方がいいに決まっている。
    一方、「グッド・ボーイ」は物語では常に脇役だ。それも主人公のよき理解者の役として登場すればかなりましな方で、大抵の場合、鼻持ちならない嫌な奴として描かれることが多い。そういう物語に触れると、嫌味な敵役が主人公にやりこめられる様に胸がすくような気持ちになる一方で、何となくもやもやした違和感を覚えていた。現実問題、「グッド・ボーイ=優等生」ってそんなに嫌な奴か?と。

    この本は、フィクション世界でいつもヒーローの引き立て役にされる、「優等生」達を主人公にした中篇小説集。どの作品の主人公も日々を真面目に過ごし、こつこつと努力する人ばかり。周囲から見るとそれなりに成功もして、冷静に考えればそれなりに羨まれる立場にいる。
    だが、身近には必ず魅力あふれる「バッド・ボーイ」達がいて、彼らが放つ光の眩さの前に、主人公のささやかな光は簡単に飲みこまれてしまう。そのことを自覚しながらも、彼らは自分らしく、堅実に生きていく。
    どの作品も主人公の性格そのままに、あまり強烈な事件は起きず、はっきり言って地味な筋だ。でも不思議なことに先が気になって読み進めてしまう。それは主人公達が卑屈になることはなく、地味ながらも背筋を伸ばして自分なりに生きている姿が好感を持てるからだと思う。そして読み手である私が、基本的な価値観について、彼ら「グッド・ボーイ」寄りの人間だからだろう。

    どれもよかったが、中でも気に入ったのは「バートルシャーグとセレレム」、「傷心の街」。

  • 柴田元幸さん訳ものです。柴田さんの訳者あとがきにも書かれていますが、この本の主人公たちは子供の頃、トムソーヤでも、ハックルベリー・フィンでもなく、シド・ソーヤ(トムソーヤの弟。あの眼鏡をかけた真面目そうな子)タイプだった人たちです。

  • 「会計士」と「宮殿泥棒」の話が胸に突き刺さる…
    この二つは真面目な優等生が不真面目な不良に打ちのめされる話で、何だかもう中学生の頃思い出すのです

  • b oct 13,12
    r oct 16,12

  • 頭のいい人は、下手すると鼻持ちならない存在になりがち(僕みたいな劣等生は、ということですけど…)ですけど、このイーサン・ケイニンにしろ、柴田元幸にしろ、頭のいいことが人を心地よくする、という人が世の中には存在していて、この作家にしろ、この翻訳家にしろ、僕をとても心地よくしてくれる。だから、この作家が好きだし、この翻訳家の本についつい手が伸びる。要するに面白い本です。

  • 優等生の儚くほろ苦い人生の物語が4つ。

    自分もいわゆる「グッド・グッド・ボーイ」タイプなので、
    なんとなく分かるような気がした。

    おもしろいところを突いてる本なのだけど、
    ちょっと退屈。

  • もっとこの人の話を読みたい!!!

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    努力家タイプの謹厳実直な中年会計士、天才的な兄と比較される凡庸な弟、かつては劣等生でいまや産業界の大立者になった元教え子に翻弄される老いた高校教師…。普段あまり脚光をあびることのない優等生たちのほろ苦人生を、親身にやさしく、絶妙な筆運びで描き、単行本発表時に絶賛された珠玉の中篇集。

  • 努力家タイプの謹厳実直な中年会計士、天才的な兄と比較される凡庸な弟、かつては劣等生でいまや産業界の大立者になった元教え子に翻弄される老いた高校教師…。普段あまり脚光をあびることのない優等生たちのほろ苦人生を、親身にやさしく、絶妙な筆運びで描き、単行本発表時に絶賛された珠玉の中篇集。
    「会計士」「バートルシャーグとセレレム」「傷心の街」「宮殿泥棒」

  • 愚鈍な教え子に翻弄される高校教師、天才の兄をもつ弟、努力家タイプの会計士──
    優等生のほろ苦人生を親身に描いた傑作中篇集

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