アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ (文春文庫 S 8-1)
- 文藝春秋 (2011年11月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167651794
作品紹介・あらすじ
1901年、ギリシアの海底から奇妙な機械の破片が引き上げられた。小さな箱に多くの歯車を組み込む洗練された設計と技術。はじめは紀元前1世紀のものとは誰も信じなかった。いったいこれはなんのために創られたのか?百年にわたった謎解きを研究者たちのドラマとともに描く、興奮の科学ノンフィクション。
感想・レビュー・書評
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20世紀の初め、ギリシャの海底に沈んでいた、腐食して緑青に覆われたブロンズ製の「謎の機械」。その謎に取り憑かれた数多の学者・研究者たちの、100年以上にわたる探求のドキュメンタリーです。
テクノロジーが進むにつれて、少しずつ謎が解けていく凄さ! 驚愕のその正体! 天文学や数学やコンピュータ・テクノロジーについての記述はちんぷんかんぷんな自分が残念…。でも、人々の情熱、こだわり、苦心、競り合いなどなどがドラマティックに語られています。
謎が解けていくとともに、この凄い機械を創った学問・文化が、強い軍事大国の侵略によって衰退させられた歴史も明らかになっていきました。せっかくの高い技術が長い間忘れられ、活用されなかったのは確かに残念です。でも、「いまごろ人類は近くの星に到達していたはずだ(アーサー・C・クラークのコメント)」というよりも、軍事力が発達しすぎて、いまごろ人類は滅亡しちゃってたかも、なんてことを考えてしまう今日この頃です…。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
現代の時計に勝るとも劣らないアンティキティラの機械に魅了された多くの技術者、研究者が謎を解明するところもドラマですが、作成者の考察はさらに興味深かったです。天体の動きを手元にという古代ローマ時代の人間の思いが複雑な機械を作ってしまうとは。いつの時代にも天才はいるんですね~。
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面白かったです!
1901年、地中海の小島アンティキテラの海底に沈む古代ギリシャの難破船から、奇妙なブロンズの塊が引き上げられました。表面を掃除した後に見えてきたのはたくさんの歯車と古代ギリシャの文字。その精巧な作りは、計算機に匹敵し、1千年以上前の機械とは到底信じられるものではありませんでした。
アーサー・C・クラークは、この機械の知識が継承されていたなら産業革命は千年以上早まり、人類はいまごろ近くの星に到達していたはずだと語っています。
本書は、この機械の謎を追う歴史科学読み物の傑作です。
冒頭は20世紀初頭の海底探索。潜水病に悩まされながらも困難な海底探索に挑む人々の姿が描かれます。そして、本書は、機械の謎解きに移っていきます。
この本の面白さはふたつに絞られると思います。
1)謎解きに挑戦する人々の執念と葛藤。同じ難破船から発見されたコインを手掛かりに機械の製作年を特定するという地味な調査活動から、X線断層写真、三次元のCT断層写真やCGを駆使して、機械に隠された文字や歯車を探ってゆくというという最先端の研究活動までが描かれます。機械に魅了された人々は、科学史家、博物館学芸員、物理学者、映画製作者、企業家と、多岐に及びます。彼らは協力しあいながら活動するのではなく、時によっては妬みや裏切りも経験します。この辺りは、科学読み物であると同時に人間ドラマでもあります。
2)天文学に基づいた機械の仕組みや用途の推理。X線断層写真やCT断層写真から発見された歯車の歯数がポイント。53枚の歯数や223枚の歯数の意味するものは何か?そして、それが分かったところで、この機械は誰が何のために使ったのか?サロス周期とか、差動歯車とか聞きなれない言葉も出てきますが、この辺りはミステリー小説の面白さがあります。
個人的に気になったのは、これだけの機械技術がなぜ発展せず、イスラム文化開花まで断絶してしまうのかという点ですが、本書は一応の説明をしてくれています。
海洋冒険、人間ドラマ、天文学、からくりの面白さが詰まった1冊。おすすめの★★★★。 -
まず、アンテイキテラの機械の存在は知ってたけど、何かの間違いだと思っていた。
しかし、それはヨーロッパを主とした歴史観によるもので、ヨーロッパが1000年も学問から遠ざかる、などということがなければ、歯車機械はもっと早く発明されていてしかるべきであった。
いまより1000年進んだ世界は、果たしてどんな世界であったのか、想像することもできないが。。。科学は人類の叡智だが、科学を停滞させた宗教もまた、人類を進化させたひとつの要因、でもある。
それにしても、この機械の素晴らしさときたら!これがたったひとつだけ遺された奇跡に、とてつもない幸運を感じた。 -
(借.新宿区立図書館)
コンピュータという言い方は少々大げさだが(たぶんそれを狙っている)天文計算機という意味では近いのかもしれない。機会の仕組みの説明的な部分はちょっとわかりにくいが(たぶん私の頭がついていかないせい)、機器解明の人間ドラマとしての部分は大変面白く読める。ただし、原著者がイギリス人でありイギリスで出版されたもののようなので、かなりイギリスメイン(特にライト)の内容になっているところは割り引いてみなければならないだろう。 -
アンティキテラ、といえばオカルトのようなイメージがあって、この本を読む前はオカルトチックな本なのかなと思っていた。それは全くの間違いだった。古代ギリシャの偉人たちの天文学や数学などの水準の高さにただただ感服できる本であり、もっと詳しく知りたいと思わせる本であった。
文系には読みづらい部分があるかと思うが、アンティキテラの謎を解き明かすストーリーも面白いし、その背景にある歴史も学ぶことができるのでそこそこおすすめできる。 -
#藤村シシン講座 at 札幌で参考文献に挙げられていて興味を持った一冊。ダイバーが発掘して、その後、科学史家、学芸員、映像ジャーナリストと多くのものが発掘されたアンティキテラの解明に挑み、徐々に正体が解き明かされていくノンフィクション。「プライスは機械をカレンダー・コンピュータとして発表し、ライトは天体運行儀と表現した。フリースは、食を予測する機械と捉えたのだ」/それにしても、学芸員ライトがあとがきからすると一番取材に協力的だったためか、後半は主に彼の視点によって描かれているのだろうか。そのためか、彼の関わった人々は、優れた手腕もある反面、人のアイデアをあたかも自分のものとして語ろうとするクソ野郎としても描かれている。そう言われた側としては、それぞれ言い分はあるのかもしれないが。/そして、科学技術というのは線的に発展しないのだなという不思議を抱いた。もし古代ギリシャの技術が継承、発展されていたなら、人類は千年も前にとっくに宇宙に行ってたのかもしれないという夢想。また古代が「原始的」で現代が「先進的」と言う見方に一石を投じることでもあったと。古代ギリシャの技術が翻訳されて、保存されたという、イスラム文献にも、解読されてないものが膨大にあり、それらが解き明かされていくと、また違った古代ギリシャ像が刻まれるかも、という期待もあるのだとか。/また、チョーサー「アストロラーベの話」は探して読んでみたい思い。
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やっぱ難しかった。
発見された土地の人々、学者の人生、などちょいちょい人々の物語が挟まれるので読み続けられた。
モノを巡って、主人公が変わっていくんだなあ、と何となく思った。 -
なかなかトライする時間がなかったものの、
時間を作って読んでみました。
ジョーという名前ですが、
実際はとてもキュートな女性だったりします。
ちょっと時間なくて雑な感想になりますが、
これ今まで読まなかったことを後悔しているとだけ伝えたいです。