ぼくのキャノン (文春文庫 い 39-4)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167615048

作品紹介・あらすじ

豊かで美しい村の守り神である、帝国陸軍の九六式カノン砲「キャノン様」。だが、そこにはある秘密があった。村を統べるマカトオバァら三人の老人とその三人の孫たちは、村の開発を企む謎の美女や、怪しげなアメリカ人と対決する。戦争の記憶を、奔放なストーリーに乗せて希望に満ちた未来へと託す、マジックリアリズムの傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 登場人物がみんな濃すぎてまるで少年マンガを読んでいる様だった。ハニートラップに特化した女性工作員集団寿隊は、笑いを狙ってるとしか思えない。なんだよ「コトブキ♡」って。
    スパダリ色男ジジイこと樹王オジイがいろいろと凄い。

  • 現在の秩序を作り上げた老人たちと
    秩序の危機と崩壊。
    そして少年少女による新秩序の再構築。
    物語の骨格・構造はシャングリラに通じる要素多数。

    読んでいるうちにいやおうなく巻き込まれていく物語の力は
    池上永一ならでは。

    面白かった。

  • ハチャメチャな設定ながらも、沖縄上陸戦の阿鼻叫喚の情景と戦後の復興に尽力した人々の想いを感じられる。次の世代にその想いを紡いでいく...。戦争を知らない世代の成長記だ。
    ちなみに九六式十五糎加農砲が沖縄に配備された記録はない。

  •  戦後、村に残されたカノン砲を守り神「キャノン様」としてあがめ、独自に復興、発展をとげた村…という設定が、まず、すごい。
     実質的に村を支配するノロ(巫女)のマカトオバァと樹王、チヨ。3人には、長年、隠し続けてきた秘密があった。村を探る謎のアメリカ人、小野寺トラストによる村の開発計画…村を守るために、3人の老人は…。そして、3人の孫の雄太、博志、美奈は…。

  • 戦争の傷跡が残る村。沖縄の暑い空気が伝わってくる。
    ひとつの村としてありえない設定なのに、妙にリアリティーがある。

    文章が説明的で、はじめの方はそんなにおもしろいとは思わなかったんだけど、中盤からは盛り上がりを見せて一気に読んでしまった。

    この村のすべての人たちを通して、明るい未来への希望を見せてくれた。落ち込んだときに読みたい1冊。

  • 池永作品は、この本の次に出版された『シャングリ・ラ』が初めてでした。そこで池永ワールドに惹かれ、この『ぼくのキャノン』に手を伸ばしたんですが、こちらもなかなか面白かった。

    両者に共通するのは、主人公である少年少女たちの成長を丁寧に描きながら、彼らの過ごす世界の背景に秘められた謎をじわじわと解き明かしていく、繊細なストーリー展開にあります。また、どちらの作品も、現実世界を舞台にしつつ、一見しただけではちょっと有り得ないような、でもひょっとしたらこういうパラレルワールドも有り得るのかも、という絶妙な世界観のもとで、話が進めています。
    こういう紙一重のスレスレ感は、自分の好きなジャンルです。

    著者は、どうやら「完全無欠でスタイル抜群、才色兼備の万能選手の女性」を物語に登場させるのが好きなようで(笑)この作品にも『シャングリ・ラ』にも、そういう女性がしっかり出てきます。

    ただ、中盤から終盤に向けた展開については、ちょっと物足りなかったというか、納得しがたい部分があったのも事実。ここまでしっかりと、クライマックスに向かうまでの「秘密」を描いていたんだから、最後の展開に至るまでの「仕込み」も、もうちょい丁寧に描ききってほしかった。そこだけ不満なので、☆は1つだけ減らして☆4としておきます。

  • この作者さんのマジック半端ない!!

  • ・老人が元気で有能。
     または、かっこよく描かれている。
     嬉しくなってくる。

    ・「投下された爆弾のうち、 2%は不発弾となっている」
     というのは事実のようだ。
     「ファンタジー小説」をツールに、
     今もなお戦争の爪あとがあることを伝えようとしている。

  •  若書きなのだろう、いろいろ消化不良な部分はある。それでも、わきあがってくるマグマのごとき生命力、生まれ育ったコミュニティーを愛するあたたかいこころ、きらきらした未来へのイメージ。池上永一はほんとうに素敵な物語を読ませてくれる。
     守り神が帝国陸軍の九六式カノン砲というのが奮っている。その歴史の浅さも、その暴力性も神にふさわしいものではない。それでも、圧倒されるのだ。キャノン様を尊び、心の拠り所にできる彼らがうらやましくもあり、ああ、宗教って何だろう。
     沖縄旅行のお供に持っていき、読めずに持って帰ってきた。その土地で、青い空の下で読むことができればよかったな。

  • 石垣島などを舞台とした作品です。

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著者プロフィール

池上永一
一九七〇年沖縄県那覇市生まれ、のち石垣島へ。九四年、早稲田大学在学中に『バガージマヌパナス』で第六回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。九七年刊の『風車祭』が直木賞候補に。二〇〇八年刊の『テンペスト』はベストセラーとなり、一一年の舞台化をはじめ、連続テレビドラマ、映画にもなった。一七年『ヒストリア』で第八回山田風太郎賞を受賞。他の著書に『シャングリ・ラ』『レキオス』『ぼくのキャノン』『統ばる島』『トロイメライ』『黙示録』などがある。

「2023年 『海神の島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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