決断するペシミスト わが上司 後藤田正晴 (文春文庫 さ 22-8)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (442ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167560096

感想・レビュー・書評

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  • カミソリ後藤田について書かれた本ではあるが、どちらかと言えば佐々淳行の自伝の要素の方が強い。しかも自慢が大半。
    後藤田互訓はサラリーマンにとっても非常に示唆に富んでいる。
    1.省益を忘れ、国益を想え
    2.悪い、本当の事実を報告せよ
    3.勇気を持って意見具申せよ
    4.自分の仕事でないと言うなかれ
    5.決定が下ったら従い、命令は実行せよ

  • 「さっさ」と言っても、「サッサ」ではなく、「佐々」と言えば、戦国時代末期の武将「佐々成政」。
    豊臣と徳川の、その後の運命を決定してしまった「小牧長久手の戦い」に参加しようとしたものの、その前に秀吉・家康が和睦してしまったので、進退窮まって「アルプス越え」を決行したことで有名な、織田軍団きっての猛将。
    その直系ではないらしいけれど、一族の末裔に当たるのが、本書の筆者、佐々淳行。
    我が国における「危機管理」のエクスパートであり、初代の「内閣安全保障室長」。
    その方が、立場はいろいろ変わったものの結果的に長く仕えることになった後藤田正晴(元内閣官房長官、副総理)との関係を中心に、危機管理にまつわるさまざまなエピソードを紹介している。

    今から見ても、本書には読みどころが多い。
    いちいち紹介するときりがないが(できれば本物をお読みください。)、やはり注目いたしたいのは、後藤田五訓(140頁~)。
    中曽根内閣時に内閣官房を強化するためとして、新たに5室(内政審議室、外政審議室、安全保障室、情報調査室、広報官室)を設置した時の、後藤田官房長官の訓示がそれ。
    本書によると、これを「五訓」にまとめたのは筆者で、後藤田長官本人が「後藤田五訓って、何だ?」といった感じだったらしいのだが。

    1 省益を忘れ、国益を想え
    2 悪い、本当の事実を報告せよ
    3 勇気を以て意見具申せよ
    4 自分の仕事でないというなかれ
    5 決定が下ったら従い、命令は実行せよ
    (注:原文は漢字+カタカナ)

    確かに、この簡潔な指示がきちんと守られたら、多くの「組織病」が解決してしまうだろう。
    しかし、現実にはそうではなく、149頁にあるとおり、
    1 国益をそっちのけにして省益を争い
    2 悪い本当の事実は報告せずに上司に心地の良い情報ばかりあげ、
    3 大事なときには意見具申せず沈黙して不作為を守り、
    4 何か起きると「オレの仕事ではない」と消極的権限争議に耽り、
    5 決定が下っても従わず、命令はなし崩しにうやむやにする
    という、官僚主義が横行している。

    本書には、その「現実」に対する悲憤慷慨がこれでもかこれでもかとばかりに詰め込まれている。
    そのためか、あちこちに、ちょっと「?」を付したくなるような記述も見られるが、この手の本の宿命としてそれはそれで受け止められるべきであろう。
    まさにジェットコースターのような、上がり下がりの激しい役人人生であるわけだが、しかし、このような本を出せたということは、やはり、それなりに幸せな役人人生だったのではないだろうか。

    ところで、プロローグには、後藤田官房長官の退任挨拶が紹介されている(15頁)。
    涙を流さずに読めなかったのでありました。
    「一将成りて万骨枯る」とは対照的なリーダーがここにいるではないか。

    50年近い私の公職人生の中で、私には、大きな心残りがあります。
    それは、過ぎし第2次安保闘争という騒乱状態を鎮めるため、警察は延べ600万人の警察官を動員し、殉職者十有余名の負傷者を出しました。
    なかには生涯なおらない後遺症をのこし、今も苦しんでいる人々がおります。
    私は警察庁長官として、警察官たちに「忍耐」を求め、必要以上の実力行使を慎むように命じ、この騒乱を鎮めることができました。
    だが、その蔭にこうした大きな犠牲を警察側に課したということについて、私は心が傷み、これからも私にとっての心の重荷となることでしょう。

    混迷の世を憂える世の中の方々に一読をおすすめしたい。

  • 面白いけど、自慢話が多すぎて
    どこまで信じていいんだろう?
    というのはある。

    後藤田5訓と、非常時に
    腹心を現地に送る、は参考になった

  • 2005.9.26 ~ 10.5 読了

  • 本書は、上司、後藤田正晴を佐々氏が語ると言うより、佐々氏の波瀾万丈な役人人生の後半部を、後藤田氏を絡めつつ語った書、と言った方がしっくりする。著者は、上司から嫌われ、陰湿な嫌がらせを受け、左遷されること数度。警察機構や防衛庁のどろどろとした人間関係に翻弄されるものの、本人の実力とそれを理解する心ある上司に引き立てられ、初代の内閣安全保障室長(次官級ポスト)まで登り詰めた。著者の潔い身の振り方は、後藤田の切れ味のよい差配とも通じるところがあり、読んでいて気持ちいい。
    著者は、カミソリ後藤田から「抜身の日本刀みたいな奴だ」と言われたという。二人は同類ということなのかもしれない。

  • 佐々淳行相変わらずの自分語り。面白いから全然いいけど。

  • 後藤田正晴に興味を持ち、その部下であった佐々 淳行 から書かれた後藤田像を見たくなり図書館から借りる。佐々淳之の本は初めて。中曽根内閣での安全保障室長だった佐々淳行氏と、その上司であった官房長官、後藤田正晴氏との働きぶりを中心とした回顧録。
    特に後藤田五訓示がいい。
    一.「省益を忘れ、国益を想え」
    二.「悪い、本当の事実を報告せよ」
    三.「勇気を以って意見具申せよ」
    四.「自分の仕事でないというなかれ」
    五.「決定が下ったら従い、命令は実行せよ」

    また、中曽根総理にペルシャ湾掃海艇派遣をやめるよう諌める際に、わざと佐々に対して叱る素振りで、中曽根を諭す(英語でこのような役割をWipping Boyと言うらしい)くだりには、クスリとさせられる。
    後藤田や佐々の人の使い方は参考にしたい。

  • 著者が表題の通り、上司であった後藤田氏とその周辺の時事について記した著。回顧録の類に入る。

  • 東大講堂事件やあさま山荘事件で現場指揮をとった佐々淳行氏から見た、上司後藤田正晴氏について書かれたものです。

    佐々氏の経歴や危機管理についての話しと同時に後藤田氏との特別権力関係についてなどなど、国家公務員という道を考えていた私にとっては非常に参考になりました。

    国家公務員でもソリの合わない上司に会うと十分に仕事ができないことがあるんだなと思いましたが、世の中ってそんなものなのかな。

    にしても国家の危機への対処と予防は大変だなぁと思いました。

    この本のなかで印象に残ったのはやはり「後藤田五訓」でしょうか?
    この五訓はどの組織でも使えると思われますが、通用するのは嫌なことも聞いてくれる上司がいるからこそなのかなと思いました。

  • カミソリ官房長官と言われた
    後藤田正晴氏の意外な一面が見られた一冊。

    佐々さん独特の表現がちょっと鼻につく部分も
    ありますが、政治や国際情勢などの要所要所で
    リーダーと言うのがどの様に決断すべきなのか?
    よく勉強になりました。

    ペシミストと書いていますが
    同時にリアリストでもあるなって感想を持った本です

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著者プロフィール

1930年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、国家地方警察本部(現警察庁)に入庁。「東大安田講堂事件」「連合赤軍あさま山荘事件」等に警備幕僚長として危機管理に携わる。86年より初代内閣安全保障室長をつとめ、89年昭和天皇大喪の礼警備を最後に退官。2000年、第四八回菊池寛賞を受賞。2001年、勲二等旭日重光章受章。著書に『東大落城』(文藝春秋読者賞受賞)等がある

「2016年 『重要事件で振り返る戦後日本史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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