あなたと読む恋の歌百首 (文春文庫 た 31-5)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167548056

感想・レビュー・書評

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  • 家の本棚にずっと眠っていた本です。
    朝日新聞の日曜版に1995年4月から1997年3月まで連載されていたもののようです。
    文庫版あとがきによりますと、俵さんが30代の初めのころに編まれたものだそうです。
    私は2012年に文庫版を買っていました。

    恋の歌が100首に俵万智さんの鑑賞文が見開きで二ページずつ載っています。歌人は旧くは1864年生まれの伊藤佐千夫から現在活躍中の1970年代生まれの歌人まで。
    古臭い感じは全くなくしっとりとしたいい雨が降った後の初夏の山道を歩いているような気分で読みました。
    歌もよかったけれど俵さんの鑑賞文も素晴らしいと思いました。
    以下特に気に入った歌。


    きみが歌うクロッカスの歌も新しき家具の一つに数えむとする   寺山修司

    春芽ふく樹林の枝々くぐりゆきわれは愛する言ひ訳をせず   中城ふみ子

    いつかふたりになるためのひとりやがてひとりになるためのふたり   浅井和代

    一度にわれを咲かせるようにくちづけるベンチに厚き本を落して   梅内美華子

    君の眼に見られているとき私はこまかき水の粒子に還る
             安藤美保

    ゆるされてやや寂しきはしのび逢ふ深きあはれを失ひしこと   岡本かの子

    観覧車回れよ回れ想い出は君には一日我には一生
              栗木京子

    一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております   山崎方代

    たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらつて行つてはくれぬか   河野裕子

    暖かき春の河原の石しきて背中あはせに君と語りぬ
              馬場あき子

    花水木の道があれより長くても短くても愛を告げられなかった   吉川宏志

    白い手紙がとどいて明日は春となるうすいがらすも磨いて待たう   齋藤史

  • 1995~97年の『朝日新聞日曜版』連載を書籍化したもの。見開き2頁が1首とそれにまつわるエッセイで構成されていて、計101人・101首が収録されている。現代版恋歌百人一首といえるだろう。

    エッセイは、歌の鑑賞、歌人のエピソード、筆者自身やその友人の体験談などで、個人的には鑑賞に関するものがもっとも読み応えがあった。河野裕子の「たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらつて行つてはくれぬか」を「果たし状のような迫力」、「自立した女性の歌」と評したところなど、説得的かつ魅力的な鑑賞を多数見出すことができる。

  • 気に入った歌がいっぱいあった。
    肌の内に白鳥を飼うこの人は押さえられしかおりおり羽ぶく 佐々木幸綱

  • ”恋愛ミーハー”俵万智が選びに選んだ恋の歌百首。
    それぞれの歌と歌人の解説と自分の赤裸々な体験を語りつくす!
    表題は百首となっていますが、取り上げられているのはもっと多い。
    これ一冊でかなりの数の現代短歌に触れる事が出来ます。
    俵さんの歌と恋に対する情熱たっぷりの解説も読み応えアリ。
    きっと自分の事を語ってるような歌に出会えるはず。

  • どの短歌からも今を生きる喜びが。(例え胸が引き裂かれるような痛みを伴う恋だったとしても)
    そして、恋に、というより生きることそのものに全力な俵万智さんの生命力溢れるパワーが、解説の文章から。短歌と俵万智さんの相乗効果で、この本一冊から赤子のような生命力をみた。
    普段「ヤバい」のたった一言で完結してしまう私の生活を、見直していかなければなあ。

  • 観覧車 回れよ回れ
    想ひ出は君には一日 我には一生

  • 今年になるまで私は、全く短歌の世界に踏み入ったことがなかった。読む技術も書く技術も初心者中の初心者だが、俵万智の解説をもとにそれぞれの短歌と向き合っていると、「分かるわ〜」と心から頷く部分がいくつかあった。
    「恋」と聞くと、つい乙女っチックで呆けたイメージを持ってしまうが、恋愛によって救われたり、教訓を得られたりということもあるのだと改めて思い知らされたように思う。
    本気で思えば思うほど、少しのことにも敏感になって傷ついてしまうということは、恋愛における特徴の一つだと思うが、それでも思い切って行動を起こしたいと私も思った。

  • (1997年にでた単行本(安野光雅の装丁による)が手元にあるが、ブクログで検索してもみつからないので(Amazonには古書あり)、まにあわせとして文庫版のほうで登録)
    初出は朝日新聞の土曜版/日曜版(どちらだったか)、安野光雅の切り絵のカットとともに楽しみに読んでいた連載。

  • この方とは、仮にリアルで知り合うことがあっても…
    年齢は近くとも、あまり気は合わないだろうな笑と勝手に思った。
    この方、本当に恋愛体質なのだろうな。
    そして、何かのコンプの裏返しなのか?
    ご自分の恋愛体験を引用しての解説が多く、胸焼けした。

  • 「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ

    この本の著者である俵万智さんの詠んだ一首です。冬になれば思い出して口にします。
    そんな風に、覚えていて口にしたくなる恋の歌がたくさん出てきました。

    難しい言葉や表現はさらりと解説され、俵万智さん自身の体験も交えた解釈・鑑賞文が妙にリアルで、楽しく読みました。
    あとがきでご自身も述べられていますが、随分な恋愛体質!きっとたくさんの恋をしてきたんだろうなあ。

    時が経ってから読み返すと、わかる!と思えるものが増えているかも、違う解釈ができるかも。
    心を詠んだものは古びない、その強さがかっこいい。




    いつかふたりになるためのひとりやがてひとりになるためのふたり 浅井和代

    美しき誤算のひとつわれのみが昂ぶりて逢い重ねしことも 岸上大作

    封筒を開けば君の歩み寄るけはひ覚ゆるいにしへの文 与謝野晶子

    重吉の妻なりしいまのわが妻よためらはずその墓に手を置け 吉野秀雄

    観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日我には一生 栗木京子

    一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております 山崎方代

    せつなさと淋しさの違い問ふきみに口づけをせり これはせつなさ 田中章義

    唇をよせて言葉を放てどもわたしとあなたはわたしとあなた 阿木津英

    花水木の道があれより長くても短くても愛を告げられなかった 吉川宏志

    君がふと冷たくないかと取りてより絡ませやすき指と指なり 角倉羊子

    その肩にわが影法師触るるまで歩み寄りふとためらひ止みぬ 永井陽子

    チェロを抱くように抱かせてなるものかこの風琴はおのずから鳴る 大田美和

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著者プロフィール

1987年の第1歌集《サラダ記念日》はベストセラー。歌集に《かぜのてのひら》《チョコレート革命》《プーさんの鼻》《オレがマリオ》《未来のサイズ》《アボカドの種》、評伝《牧水の恋》、エッセイ《青の国、うたの国》など。2022年、短歌の裾野を広げた功績から朝日賞を受賞。読売歌壇選者のほか、宮崎で毎年開催される高校生の「牧水・短歌甲子園」審査員もつとめる。

「2023年 『旅の人、島の人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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