退廃姉妹 (文春文庫 し 28-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167462031

作品紹介・あらすじ

1945年、東京。戦争で二人きりになった美人姉妹の有希子と久美子。生きるため、家を守るため彼女たちが選んだのは、家を進駐軍の慰安所にすることだった!「これからは私たちがアメリカ人の心を占領するのです」。破天荒な"戦後"を描いてラストまで全力疾走する、著者会心の大型ロマン。伊藤整文学賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 戦後食べていくために、自宅を米兵の慰安所とする姉妹。たくましい。ほんと、生きていればこそ、なんだよなぁ。戦中戦後を綴るのには、いくら頁があっても足りず、筆舌に尽くし難い事実がそこかしこにあっただろう。それに反するようなあっけらかんとした文体が印象的だった。面白かった。

  • 戦時中、父が捕まった。
    そして戦後になり、食べるものに困った。

    商品になるものがある、というのはありがたい話です。
    これを商品にするか否か、は勇気がいる問題ですが。
    食べるため、生きるため。
    楽しく生きながら、周囲に文句を言われながら。

    この時代さながら、他者はいいけれど自分の子供は…な
    勝手な言い分です。
    そこかしらから、女が生えてくるわけでは
    ないのですから。

    しかし…女はたくましい。

  • 戦後の日本の慰安婦を題材にした話。
    『退廃』とタイトルにあるだけに、どんな怠惰な姉妹が出てくるのか!と思っていたのだけれども、そんな印象は受けず。
    むしろ純情かと。奔放ではあるけれど。
    割と好みな話でした。

    解説で、映画に是非したい!と書いてあったのですが
    映像化しても面白そう。
    あの気だるい感じを映像でも味わいたい。

  • 同じお誕生日の作家さん。
    ちょうど8月6日にかけて読んでいたので、戦後70周年に読むにふさわしいかな、とは思った。
    けど・・・恋愛体質でない私には、姉妹の気持ちはわかりかねる。かも。
    というか、一家そろって奔放すぎるよ。

  • 戦後、騙されても体を売り逞しく生きる姉妹の物語。退廃の美学あり、引き込まれる中編小説。

  • 小さいおうちと設定が近いのかな。
    当時のままで話を終わらせるのではなく、きちんと後日談というかエピローグで現代まで繋げてある点が好き。
    何事もなく幸せに円満に暮らしてきているようにみえても、そうでないことってたくさんあるよね。辛い経験を経てこその平穏。

    わりとすきなおはなし。

  • 「戦後」とはなにか。なんだか、歴史をおもうとわたしはいつもその断絶と連続性という相反することを同時におもい、途方もない気持ちになる。わたしにとって第二次世界大戦というのはとても遠く、この小説の登場人物たちが経験した「戦後」日本はもはやわたしの知っている日本だとはおもえないような、でも確実に現代にも通じていて、不思議なんだけれどもフィクションを通じてわたしのなかの「戦後」がすこしずつ形成されていく。個人の歴史、社会的歴史的なものに形作られる精神構造、なんて不思議なものなんだ。

    小説としては、ひとりひとりの戦後を扱った、非常に酷薄な状況で必死に生きる個人を描いた、という意味においてまず価値がある。とわたしはおもう。けっきょくのところ個々人の歴史的文脈を強固なものにするのは個人史に他ならないとおもうから。にしても島田雅彦は引き出しの多い作家なんだなあ。社会派っぽいものを、こんなにおもしろいストーリーにのせて粋に語ってしまえるひとなのか。他の既読作では見られた毒があまりなく、正統派な印象。惜しむらくはその軽みのある文体が、舞台設定に馴染まないというか、もっと土煙を感じるような重みある文体で語られたほうが良い題材なのでは、と感じたこと。いやあでも面白かった。惹きつけられてするすると読了。

  • 戦後日本の慰安所を舞台に、女という特性を武器に米兵たちの中で逞しく生きる一家を時にユーモアと皮肉を交えつつ描いた一冊。
    終盤の夢の描写が幻想的で特にいいね。

  • 戦後の東京に生きる美しい姉妹の物語。
    姉と妹の見せる「女の強さ」は対照的だ。冒険心に富む妹はアメリカ人相手の売春婦となり、その報酬で家を守ろうとする。つつましやかな姉は、貞操を守り、愛する人との再会を待つ。
    ナイロンストッキング一枚と引き換えに処女を失うことの、せつなさ、あっけなさ、なんてことなさ。
    「どうやって疲れずに相手をいかせるか」話す少女たちの言葉は実質的で、いやらしさはない。それは、女子校の教室で聞こえてくるような、キャッキャした笑い声に近い。
    どうやっても生きられるなあ、強いなあ、強いって美しいことだ。姉妹は美しい。処女がなんだ、と私は思う。強いことは生きることだ。実質の問題だ。

    (あとやっぱ、島田雅彦ってかっこいいじゃん。もてるオヤジの余裕に満ちた女性描写を感じてしまうよね・・・。島田雅彦ってかっこいいじゃん・・・。この人の本を読むとそこから逃れられないのは私だけ??ああ・・・)

  • まず読みやすい文体である。敗戦国日本の戦後を性格のまったく異なる姉妹の生き様という形でリアルに描く。これが庶民の真実の戦後であると信じてしまう。

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著者プロフィール

作家

「2018年 『現代作家アーカイヴ3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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