天皇と東大 I 大日本帝国の誕生 (文春文庫 た 5-19)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (538ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167330194

作品紹介・あらすじ

現代日本の骨格はいかに作られたのか日本近現代史の最大の役者は天皇であり、中心舞台は東大だった。明治・大正・昭和を画期的な視点で解読する畢生の大作、遂に文庫化。

感想・レビュー・書評

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  •  近現代史の成り立ちが、天皇と東大にリンクすることがよく分かる。義務教育の歴史教科書では、日露戦争は簡単に説明されているが、本書で語られるディテールは多面的に精細に描写されている。まるで、自分の白黒のシンプルな歴史認識が、立体的に色を持って塗り替えられるようで、「歴史」というよりは「ニュース」に接しているような感覚。受験のために学んだ歴史が、いかに薄いものだったか、そして今後役に立つことがあるのだろうかと再認識させられた。

  • 相當出色的一部巨作,久違的知性喜悅。期待下卷。

  • 明治政府による学問の世界への介入と学内における一部の政府への反発、現在の官僚はこの歴史に反映されて国民に向けて良き社会へと結実するか否か、不祥事ばかり続くのは非常に嘆かわしく、一人ひとりが諦観する術を模索するしか明るい未来はないと感じる。知識の量ではない、本質を見極める力が大切なのだ。

  • 今の日本がいかに学問の自由や言論の自由が保障されているのかを、過去を振り返ることで思い出させてくれる本。今の学問の自由は、本当にかけがえのないものなのだと思った。江戸末期から、明治、大正時代を経て、帝国大学がどのように整備されていったのかが良く分かった。それにしても、国と帝国大学がここまで密接に関係しあいながら出来上がってきたのか、と改めて驚いた。特に面白かったのは、日露戦争開戦を訴えた法学部教授の抗議行動のところ。こんな時代もあったのだなあと思った。人事権も教授会にはなく、文部省、ひいては天皇にあった。現代の日本の状況を見ると、まさに、明治、大正時代の大学に逆行しているのだというのが、この本を読むとよく分かる。天皇との関係については、この本の半分もしめていない。これからもっと出てくるのだろうと思う。扱われている資料が幅広くて、すごい。旧字体は読みにくかったが。

  • 職場の先輩に借りて読む。切り口を変えてみることで歴史が厚みを増して立体的に見えるこの感覚が好き。
    基本ありきの本である気はしてやや難解なところもあったけど面白かった。

  • 大学で法学を専攻しているが、20代の僕の感覚だと学問の自由など当たり前すぎて、どうして、人事の自由が大切か分からなかった。
    しかし、本書を読み、政府・文部省がいかに学問研究に介入し、弾圧してきたかを学んだ事で学問の自由の重要性を認識できた。
    本書では、自説を撤回し、体制に迎合する学者や弾圧を怖れ沈黙する学者が登場するが、そんなヘナチョコにはなりたくない。

  • 題名とは内容が少し乖離しているようです。明治に東大が誕生した経緯、私学の雄として発足した兄貴分・慶応、そして東大の分家とも言うべき経緯の早稲田との関係。一橋だけでけではなく、全国の高商に頭が上がらなかった東大経済学部。大学が法学部を中心として発達してきた歴史も面白いです。東大の場合には経済は法⇒文⇒法と移った後、独立したというのは面白いです。そして、日露戦争のときの7博士の征露強硬論、特に戸水寛人教授の荒唐無稽ともいうべきバイカル進撃論など、それが政府の干渉により教授休職に追い込まれたときが最初の学問の自治の経緯であったというのも、今にして思えば皮肉を感じます。強硬論へ日本を煽るのは昨今の情勢も全く同じ危険を感じるからです。京大にも詳しく、沢柳総長による7教授首切り事件、河上肇の共産党との関係などは新鮮でした。大学制度が発足して僅かの間に教授会の自治などの考えが確立していたことも驚きです。そして美濃部達吉、森戸辰男などへの迫害を経て、日本が右傾化していき、東大にも右翼学生が跋扈する時代の記述が圧倒的になります。血盟団事件へ到る経緯が詳しいです。ここら辺りになると、昭和史そのものですね。なんと782頁の大作で、著者のバイタリティには感心します。

  • 明治以降の歴史で果たした天皇と東大の役割と変化を描いている。歴史の裏側とまでは言わないが、天皇観の変化が興味深い。

  • ものすごいディティール。

  • 最初の東大の黎明期の話は、面白く興味深く読めた。
    しかし、だんだんと左右両翼の話っぽくなってくると、気持ちが滅入ってくる。。
    まぁ、その時代を経て今があるのだから、否定したくはないが思想というのは何が正しいのか?中道がいいのか?後からでないと判断できないものなんだなぁ・・・と感じた。

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著者プロフィール

評論家、ジャーナリスト、立教大学21世紀社会デザイン研究科特任教授

「2012年 『「こころ」とのつきあい方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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