硫黄島 魂の記録 名をこそ惜しめ (文春文庫 つ 4-59)

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  • Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167314590

感想・レビュー・書評

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  • 一兵卒の視点からの硫黄島。とても丁寧に調べて、最大限の注意と敬意を持って描いたことが想像できた。
    臨場感があって何度も息を詰めながら読んだ。

    現在問題になっている海自のいじめ、海軍から続いてるのでは、と思ってしまった。

  • 読み終えるのに時間がかかってしまった。
    単行本では一度読んでいたのだが、文庫が出ていたので再読。

    とにかく逃げ場がなく苦しい、つらい。
    本の中の将兵に比べればなんてことはないんだけど、自分がその場にいるような錯覚を起こす。ぞっとする。

    でもあとがきがなぁ。
    戦争はこんなに惨いものだっていっつも言うけど、「むごくないとでも思っていたの?」ってむしろ思ってしまうのだが。

  • 日米開戦後70周年を迎えるに当たって、あの時代のことを少しでも知りたいと思い、読み始めた。

    硫黄島の戦記。小説というよりはむしろドキュメンタリー。
    前半は歴史背景などの描写が続く。補給の乏しい状況、物量面で圧倒的に不利な状況をよく描いている。繊細ではあるがデータの羅列でもあるため、はっきり言ってちょっと退屈。

    中盤からは硫黄島の苛烈な生活や栗林中将が登場する 栗林中将のエピソードを随所にはさみつつ、生還兵の証言や手記をもとに硫黄島での戦闘を描く。
    特に2月17日くらいからの詳細な戦闘描写は臨場感に溢れている。
    また、当時の軍の理不尽な内部体質もよく描かれている。一人の理不尽な中間権力者の非合理的な命令で多くの者が命を落とす。この箇所は必読。

    中村少尉の戦闘も必読。一人で多数の米兵を道連れにして戦死した人の記録がなぜ残っているのかを問うのは野暮である。不謹慎ながら、単純にワクワクしながら読んだ。
    それでもさすがに話が特攻に及ぶと、涙腺が刺激される。日本人の勇猛な姿に敬意を払わずにいられない。ただ、著者はけして日本人の死闘を美化しているわけではない。
    兵士の一人一人に母があり、慕う人がいて、それらの人々を思いながらも戦って死んでいかねばならない。
    時代という逃れられない巨大な運命のもと、それは必然であったかもしれない。後世から過去を見つめたときに、高所にたってそのときの時代を批判することは簡単である。
    しかし批判よりもむしろ、先人たちが何を思い、何を為していたかを知り、その困難な時代での精一杯の生き様を知ることのほうが余程大事だと思う。

    中盤以降は一気に読め、ページをめくる手がとまらなかった。

    現代日本人はこの時代の日本人にけしてかなわない。家族や故郷を思う気持ち、国家を思う気持ち、命とは何かを考える気持ち、また、それらについての考察が足元にも及ばない。
    物質的経済的な豊かさと引き換えに、精神的な豊かさを失ってしまっているように思えるのだ。

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著者プロフィール

1929年和歌山県生まれ。東北大学法学部卒業。78年に『深重の海』で直木賞受賞。その後、織田信長を描いた『下天は夢か』がベストセラーになる。95年『夢のまた夢』で吉川英治文学賞、2005年菊池寛賞受賞。1997年に紫綬褒章を、2003年には旭日小綬章を受章。剣道三段、抜刀道五段で武術全般に造詣深く、剣豪小説をはじめとして多くの武道小説を執筆。2018年5月26日逝去。著書に『明治撃剣会』『柳生兵庫助』『薩南示現流』『雑賀六字の城』『修羅の剣』『大わらんじの男』『龍馬』など多数。

「2022年 『深淵の色は 佐川幸義伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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