心に残る物語――日本文学秀作選 右か、左か (文春文庫 さ 2-16)

制作 : 沢木 耕太郎 
  • 文藝春秋
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感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167209162

作品紹介・あらすじ

根底に戸惑いや不安や怯えや恐れが潜んでいる。もしかしたら、それこそが「右か、左か」における人間の自然の姿なのかもしれない-芥川龍之介、山本周五郎から小川洋子、村上春樹まで、人生における「選択」をテーマに沢木耕太郎が選んだ13篇を収める。文春文庫創刊35周年記念特別企画・アンソロジーシリーズの最終巻。

感想・レビュー・書評

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  • 人が遭遇する分岐点「右か左か」の局面での選択をテーマに、作家・沢木耕太郎さんが編んだ13篇のアンソロジ-。 サブタイトルの〝心に残る物語〟のとおり、もっとも印象に残ったお気に入り作品は、小川洋子著の『風薫るウィ-ンの旅の六日間』、次いで山本周五郎著の『その木戸を通って』、阿部昭著の『天使が見たもの』は、いづれも人生の岐路に立つ人間の不安や怯え、恐れの心の様相が、切ないまでに表現された秀作短編。

  • f.2021/7/19
    p.2010/2/10

  • 沢木耕太郎のあとがきまで読み終えてから、良い短編集だったな、と思った。

  • どれもが実に印象深い短編集。全編ともあとを引く。

  • 2019年7月課題
    収録作品より
    「ダウト」向田邦子
    「レーダーホーゼン」村上春樹

  • タイトルの『右か、左か』というのは、ある時点の判断における分水嶺というようなニュアンスかな。
    著名な作家達の珠玉の短編集。芥川龍之介から、開高健、坂口安吾…、村上春樹まで。
    恥ずかしながら江戸川乱歩の短編を読んだのは今回がはじめて。『人間椅子』の落ちが意外である。

  • 人生は選択の連続とは誰が言ったか。
    その選択の場面をテーマに選んだ短編集。
    すでに読んだものもあれば、初めてのものも。
    「風薫るウイーンの旅六日間 小川洋子」
    ウイーンを旅する「私」が、昔の恋人を探す女性につきあわされ養老院に行く。
    末期的な状況にあるその恋人を、共に看取ることになるのだが……。
    ロマンティックな旅行記のようでいて、
    現実の人生なんてそんなもの、とにやっとする、
    アイロニーに満ちた結末だった。
    「魔術 芥川龍之介」
    「私」がインド人の魔術師に習った魔術。「魔術は誰にでも使えるが、習おうと思うなら慾を捨てよ」
    と言われる。さっそく習った魔術を友人の前で披露するが……。
    エキゾティックな魔術師との出会いから、
    刹那に変わって行く運命。 
    スパイシーなチャイを味わったようなコクのある爽快感。
    さすが、なのである。
    「黄金の腕 阿佐田哲也」
    博打好きだが盛りを過ぎた主人公が麻雀に誘われる。
    一癖も二癖もありそうな面子と一戦を交えることになるが、
    金は賭けないという。
    さてその彼らが賭けるのは……。
    麻雀がわかるともっと面白いのかも知れないが、
    唐突に腕の話が始まる序盤と緊張が漲る勝負が相まって、
    何ともスリリング。
    そして最後まで嘘か本当かわからない終わりがまたよし。
    「その木戸を通って 山本周五郎」
    訳ありの記憶喪失らしい娘ふさの面倒を見ることになった正四郎。
    どうやら育ちが良さそうで気立てのいいふさと夫婦になるが、
    妊娠。出産を機にふさの記憶が途切れ途切れに甦る。
    不安を覚える正四郎だが……
    切ない結末、その先こそ気になる。
    「プールサイド小景 庄野潤三」
    優雅な生活をしていると思われている青木一家。
    本当はスノッブな生活のつけで職を追われ、明日の生活にも事欠いている。
    現実を知らない家族との退廃的な生活、それを象徴するプールの情景。
    古いフランス映画を見ているような。
    「寝台の舟 吉行淳之介」
    人生に疲れた女学校の教師が、酒場で知り合った和服姿の女性。
    と思っていたら彼女は男性だった。
    その彼女との奇妙な交流とその果て。
    非現実をさまよっているような主人公の生活の中、
    不確かな存在であるはずの彼女?だけが生々しい現実に見える。
    「ロマネコンティ1935年 開高健」
    幻の酒、1935年のロマネコンティ。
    37歳と言っているから主人公がいるのは1972年、
    ロマネコンティを持って来た重役は40歳、主人公は41歳。
    蘊蓄を交わしながら飲むその酒の味は、意外な結末だった。
    そしてその酒を飲みながら思いだした、
    スウェーデン人のジャーナリストだという女性グンヴォールとの夜。
    開高健の底知れぬ知識に裏付けされた、メタファーの数々。
    酒の味、女との暗闇での情交を表す、
    その言葉の、なんと豪勢で豊かなことか。
    この話を初めて読んだのは高校時代、
    ヴゾワイエ、テュトワイエなんていうフランス語もこの短編で知った。
    「散る日本 坂口安吾」
    将棋の名人と挑戦者の、名人を賭けた戦い。
    その勝負を見守る主人公が、
    勝負のあり方、思想、名人としての立場、などから
    最終的に日本が負けていった姿、
    駄目になっていく姿を憂いている。
    将棋がわかるともっと面白いのかも知れない。
    ヒロポンや薬剤を多用する主人公に時代を感じる。
    「ダウト 向田邦子」
    父親が他界したその葬儀に来た従弟、乃武夫。
    得体の知れない風来坊のような彼だが、
    主人公塩沢は乃武夫に弱みを握られているかも、という予感に怯える。
    家族の闇、葛藤をまるで見ているように読者の前に差し出す向田節の妙味。
    「賽子無宿 藤沢周平」
    とある事件で江戸を追われた壺振り喜之助。
    体調を崩した彼が屋台の女に助けられる。
    そこから物語が動き出す。
    女性のはかなさ、一途さ。
    そしてそれを命がけで守ろうとする主人公、その男気。
    その生きるさまが美しく無駄のない文体で語られる、
    それこそが藤沢周平である。
    「人間椅子 江戸川乱歩」
    外務省書記官の妻であり、作家である佳子。
    その彼女の元に届いた、不気味で長い手紙。
    読者は佳子と一緒にその手紙を読み進み、
    最後にはやられた! と舌打ちをする。
    初めて読んだときのあの感覚は忘れられない。
    「天使が見たもの 阿部昭」
    母親と暮らす小学4年の少年。
    地に足が着いていない生活力が無く身体の弱い母。
    そんな母との生活の中で、彼は彼なりの居場所を探している。そしてその最後。
    実話に基づいているらしいが、なんとも切なく胸が詰まる。
    「レーダーホーゼン 村上春樹」
    この題名のつけ方からしてうまい。
    こういう一般的に得体の知れない物をもってくるのがうまい人だなあ。
    そして得体の知れない女心を描くのも。

  • 作者が違う短編集ってなんだか読みにくい。ひとつひとつの作品が別々の重さ、暗さを抱えていて深い

  • 文春文庫創刊35周年記念企画として、人気作家が選んだ「心に残る物語」シリーズの中の1冊。芥川龍之介、江戸川乱歩から、向田邦子、村上春樹まで、沢木耕太郎さんのセレクトということで、どれもさすがという作品揃い。こういう機会があると、普段あまり読まない昔の作家に触れることができるのもありがたい。13作からひとつ選べば、阿佐田哲也さんの「黄金の腕」かな。

  • 沢木耕太郎氏が選択した短篇集。

    人生の中の選択をコンセプトに、年代を問わずチョイスした作品集。

    読み方として間違えているかもしれないが、それぞれの作品を読了後、あとがきから沢木耕太郎氏が何を思いその作品を選んだのかチェックしながら読み進めた。

    それぞれの作品とも読後にふっと考える作品が多かった。

    ベストを上げるとすれば阿部昭氏の作品が、あとがきのコメントとともに考えさせる内容になっていた。

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