- Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167192525
作品紹介・あらすじ
博奕に溺れたせいで夫婦別れしたおきくが、半年ぶりに訪ねてきた。再婚話の相談で、もう自分には関係ないと一旦は突き放す民次だったが、相手がまぎれもないやくざ者と分かるや、危険を顧みず止めに出る…雪降る江戸深川の夜の橋を舞台に、すれ違う男女の心の機微を哀感こめて描いた表題作他八篇を収録。
感想・レビュー・書評
-
9つの短編。
武家物4作、市井物5作。
それぞれ人々の悲しみややるせなさを描きどうしようもない人間の業のようなものを感じさせるのだけれど、それらの話の先には辛い思いをした人々が前を向いて歩いて行けそうな光が見え、身の丈に合った心地よい生き方をしていくだろう事が読み取れ、私はホッとした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2018/10/13読了。
やはり藤沢周平はいいなあ。人を驚かすような変わった言葉はひとつも使われておらず、ストーリーにも奇をてらうところは微塵もない。「語りすぎず、しかし黙さず」とは、どの本の帯に書かれたコピーだったか。 -
江戸時代の武家、商人、職人、農民の生活が取り上げられ、ちょっと悲しい結末のもの、希望を抱かせる爽やかなものと、バラエティに富んだ短編9編からなっている。
今回の話のテーマは、男と女のすれ違いから生じる心の機微が綴られている。
どの話にも哀感が漂い、これぞ藤沢周平の綴る素朴且つ素直な人間回帰のドラマを味わった。
特に心に沁みたのが『泣くな、けい』だった。
武家の相良波十郎は深酒をした夜、妻が湯治に出掛けて留守を良いことに、若き女中のけいを手籠にしてしまう。
事を済ませたすぐ後、当然のことながら波十郎は自分が犯した大きな過ちに心を痛めることになる。
そのような事があってまもなく、妻の麻乃は病が回復せずに亡くなる。
妻の死後、突然に生前の妻の行いが原因で波十郎は窮地に追い込まれ、場合によっては腹を召さねばならない事態を迎える。
その波十郎の窮地を、手籠にされたけいが身命を賭して救うことになる。
恨みこそすれ、憎き波十郎を救うけいがいじらしい。
また、自らの蛮行を悔いる波十郎にも、けいに対する強い呵責の念が宿り続けていた。 -
安定の内容。
兎に角文章が奇麗で心がいつも洗われる感じがする。
短い時間帯の時に読むのに最適の短編集。 -
内容(「BOOK」データベースより)
博奕に溺れたせいで夫婦別れしたおきくが、半年ぶりに訪ねてきた。再婚話の相談で、もう自分には関係ないと一旦は突き放す民次だったが、相手がまぎれもないやくざ者と分かるや、危険を顧みず止めに出る…雪降る江戸深川の夜の橋を舞台に、すれ違う男女の心の機微を哀感こめて描いた表題作他八篇を収録。 -
短編の中で【泣くなけい】が一番。それぞれの話の中に必ず胸キュンがある。やっぱ藤沢周平は面白い❗️
-
電子書籍
-
随分前に藤沢周平には思い切りハマった時期があって、散々読み散らかしたものなのだが、なぜか武家、お家騒動、浪人系ばかりに集中していた。
読書仲間の影響もあり、なんとなく手に取らなかった人間模様物もと思い手にとった一冊。
短篇集なので筋、感想はそれぞれなのだが、藤沢らしくどの一遍にも魅力的な人物と心を和ませるラストが用意されている。
別れた女房の再婚相手の正体を知り危険を顧みず助ける元亭主、殺された女房が裏切ったていたことを知った絶望の淵での再出発の予感、婚約者から理由も無しに決別されて他へ嫁ぐことになったが、そこに秘められた男たちの思いを知った女は、、、など、やはりうまい。
最も良かったのが「孫十の逆襲」。
近くの村が野伏に襲われて次は我が村だとなったとき、唯一の合戦参加経験者だった孫十は村人たちに担ぎ上げられる。しかし実際は逃げまわってばかりの参加者だった彼は、、、
いろいろとあるのだろうが、藤沢の良さは登場人物の心持ちの気持ちよさ、時代小説ゆえの状況に縛られた中での筋書き、そして沁みるような余韻を残す最後なんだろうかなと改めて考える。
最近紹介頂いて気に入っている葉室や乙川も、ここに通じるものがあると感じている。