新装版 深海の使者 (文春文庫) (文春文庫 よ 1-49)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (427ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167169497

作品紹介・あらすじ

太平洋戦争が勃発して間もない昭和17年4月22日未明、一隻の大型潜水艦がひそかにマレー半島のペナンを出港した。3万キロも彼方のドイツをめざして…。大戦中、杜絶した日独両国を結ぶ連絡路を求めて、連合国の封鎖下にあった大西洋に、数次にわたって潜入した日本潜水艦の決死の苦闘を描いた力作長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 戦記。
    求めてたの(潜水艦エンターテインメント)と違ってたので3点にしたが、歴史に詳しい人にとっては、裏で(海面下深くで)こういうことも行われてたというのは非常に興味深いことなのではないか。 残念ながら歴史に詳しくないので、戦争ってのは愚かで悲しくて恐ろしいということを改めて思い知らされた、のみ。
    海に浮いてる無抵抗の商船を水中からこっそり狙い撃つ。打たれた方は為す術なく沈没する。なんだそれ。

  • ドイツまでの3万キロを潜水艦で往来していたという事実に驚きました。片道2ヶ月以上、いつ敵に襲われるかわからない状態で、しかも狭い艦内で過ごす精神力。昔の軍人さん達はこのような過酷な状況下でも命懸けでお国のために任務を果たす姿に胸を締めつけられました。
    また、読者にその時の状況を思い描くことができるほどの文章を書くには、とんでもない量の取材や綿密な調査をしていたのだろうと推察します。
    それを1冊の本にまとめていただき、私たちは史実として知ることができています。感謝です。

  • 第二次世界大戦での太平洋上でのミッドウェイ海戦、ラバウル、ガダルカナル等の島々での悲惨な戦いは知っていたのだが、日本からドイツまで潜水艦で往来していたなんて、本当にビックリしました。詳しく、詳細に描かれており感動しました。

  • どうしてこんなにも細かな記述ができたのだろうと思いつつ読んでいたのだが、巻末の半藤一利氏による解説を読んで納得した。作者は、何より当事者の証言を丹念に取材することを第一にして記述に取り組んだということである。
    それは、長期間の潜航による艦内の様子など、まるで映画を見ているかのような、迫真の表現となって結実しているのである。
    太平洋戦争のあまり知られざる一面を取り上げた作品として、特筆すべきものであると確信する。

  • いつもながら著者の綿密な調査と淡々特にした筆致に、戦争体験者の執念と気迫を感じる。深海に没した潜水艦乗組員の過酷且つ惨憺たる状況を、活字を追いながら想像し艦員の心情に思いを馳せた。ドイツとの密なる関係も、歴史の小片だったが本書により実感を伴うものに上書きされた。日本国のために死力を尽くした英霊に心より敬意を表す。


  • 随分前に、何かで
    第二次大戦中、ドイツと日本を
    潜水艦で往復するというのを読んだコトがあって
    マジかーと思った記憶で止まってた

    kindleがおすすめしてくれたんで
    コレは良い機会だと早速


    日独伊三国同盟以来
    同盟関係にあった日本とドイツだったが

    独ソ開戦によって、シベリア鉄道経由だった
    陸上輸送が途絶し
    日本と英米の開戦によって
    海上船舶による輸送も困難になった

    制海、制空権を奪われた両国にとって
    ドイツは南方資源を
    日本は軍事技術を
    潜水艦によって供与しようとした

    基本的な航路は
    日本→マラッカ海峡→インド洋→マダガスカル海峡
    →喜望峰沖→東部大西洋→

    1942年から1944年にかけて
    5隻の遣独潜水艦を派遣し
    日本ドイツ間を無事往復できたのは
    第二次遣独艦である
    伊号第八潜水艦のみ

    第一次遣独は
    往路は無事ドイツに到着
    復路もシンガポール迄は到着したものの
    日本に向けて出港する際
    自軍の機雷に触れ沈没

    第三次遣独は
    往路のマラッカ海峡にて
    イギリス海軍の潜水艦に沈没させられる

    第四次遣独は
    復路のバシー海峡にて
    アメリカ海軍の潜水艦に沈没させられる

    無謀としか思えないこの作戦が
    何故実行されたのか

    連合国側は、共同作戦を行うため
    必要に応じて、頻繁に幕僚会議を行なっていた
    時には、首脳会議まで行われており
    兵器技術や、軍需物資の交換も
    活発に行われていた一方で

    三国同盟を結んでいた
    日本→ドイツ、日本→イタリアは
    無線通信以外に方法が無くなっていた

    制海、制空権を奪われた以上
    ドイツが開発した
    機密兵器の存在や、技術を
    潜水艦によって運ぶという
    奇天烈な発想となった

    結局、無事任務を遂行できたのは
    一隻のみ

    積載されていた物資は元より
    乗務していた海兵や
    ドイツから引き上げてくる
    民間人を含む、優秀な技師達が
    海の底に沈んでいったコトは
    やり切れない


    本書のあとがきで
    実は、正式な記録は殆ど無くて
    僅かに
    遣独第二便の艦長が保存していた
    行動日誌があるのみ
    関係者の断片的なモノしか残されていなかったと

    そんな中、実際に遣独潜水艦往来に関係した
    生存者の証言を元に
    調査資料を提供してもらったと記していた

    吉村氏が、戦前生まれだったコトが幸いし
    数々の戦争歴史小説を生み出していた訳だが

    途中から、パタリと同テーマでの執筆が途絶えたのは
    戦争体験者が次々と他界されたからとの事

    戦史公式記録などは、補強材料に過ぎず
    体験者の話を徹底的に取材して
    多角的に作り上げる手法をとってきたからこそ
    素晴らしい作品に仕上がる


    改めて、吉村作品の重厚さを実感したな




    #吉村昭
    #遣独潜水艦作戦
    #日独伊三国同盟
    #深海の使者
    #吉村昭にハズレなし

  • 太平洋戦争末期、同盟国ドイツとの物理的な交流は潜水艦での往来しか手段がなくなっていた。片道2ヶ月を要する航海の苦悩を描いた小説。
    氏の小説は過度な脚色はなく、史実にのめり込めるのが良い。

  • この書籍は、第二次世界大戦(太平洋戦争)当時に日本からドイツへ一隻の潜水艦が行く話。

  • 戦時中の潜水艦の話だ。枢軸国側の通商路は破壊され、特に日本と独伊は要人の往来や技術交換もままならない。そこで、インド洋経由で遠路はるばる潜水艦で忍んで行くのだが、往復を全うできたのは1艦に過ぎなかったという。
    久しぶりに『沈黙の艦隊』を読みたくなった。

  • 第二次大戦下、遥かヨーロッパまでの航海に挑み続けた旧日本軍の潜水艦群の奮闘を、娯楽作品として盛り上げようなどという意図は皆無、ただただ状況説明に徹して綴り上げたほぼノンフィクション。
    決して読み易くはないが、自分の中で読み方が定まってくればグッと入り込むことができる。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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