- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166612734
作品紹介・あらすじ
敗戦の責任を一身に背負わされた東條英機。しかし、その実像は、意外に知られていない。日本の航空事情を知り尽くし、メディアを使った国民動員を実践した宰相は、なぜ敗れ去ったのか。「総力戦指導者」としての東條を再検証する。
感想・レビュー・書評
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メモ魔で、敵と見なせば影で策謀をめぐらせる陰険な印象があったが、意外に大衆性があり水戸黄門的な庶民ぽさもあった。
直情型で、部下を始終怒鳴りつけているイメージも、実はお人好しで騙されやすく、部下の一部から御しやすいと見られていた。
能力は人並みで度量も狭くカリスマ性も乏しい男がなぜ戦時のリーダーに上り詰めたのか、読みながら常に付きまとった疑問だが、当時の国民の東條評を読むと、今となっては窺い知れない一面があるのだとわかる。
考えてみれば、なぜいまの首相が日本のトップになったのか説明してみろと言われても答えに窮する。
つまりそういうことで、本人の実力というより、日本特有の組織内権力闘争に勝ち残り、たまたましかるべきポジションにいたから、ということなのだろう。
もう一つの疑問、誰が開戦を決定したのかというのも、従来は東條が主導して対英米戦に日本を引きずり込んだというのが通説だったが、実は東條も何が何でもと強硬に主張したのではなく、「天皇が白紙に戻せといえば戻したし、仮に海軍が戦争はできないと明言すれば、話はそれまでで戦争はなかったろう」。
要は戦争を回避する決断の口実を、陸軍以外が引き受けてくれるなら喜んでそうしたというのだ。
だが、「天皇は対米英戦絶対不可とまでは発言しなかったし、海軍はある段階から戦争はできると言い出した」ため、全会一致の開戦決断となったわけだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
キャラクターの強さゆえに東條英機ほど毀誉褒貶が激しく、イメージで語られがちな人物は稀と思う。そのバックグラウンドや思想、事績を追っていくと、天皇への忠誠を前提にしつつ、陸軍の権益を追い求める、典型的な軍官僚という姿が浮き彫りになる。ことに、開戦後の要職の独占を、第一次世界大戦の戦訓に鑑みた総力戦体制の具現化とする見方は、権勢欲と捉えるより(権勢を振るったとはいえ)、腑に落ちる感じがした。頭の鋭さ、真面目さ、頑固さ、視野の狭さ、狭量、そういう個性を持った人間が、日本の重大局面におけるリーダーとなった事が、必然か偶然だったかは、個人的に興味深い。いずれにせよその個性が、責任所在が曖昧な国情にあって、敗戦の責任を背負わされた(または自ら背負った)要因になった事は確か。人に好かれるタイプでなかった(人徳の低さ)ゆえに、悪者になりやすく、戦後日本国民は長らくそれに乗っかり過ぎてきた。近年東條英機を取り上げる企画が増えている事は、それらの妥当性を精査する時期が来ているという事かもしれない。本書では航空戦力の推進者だった点にもスポットを当て、竹槍や精神論を振りかざした錯誤者のイメージ払拭を試みたり、一方で従来有名な憲兵政治や恣意的人事にも言及するなど、フラットに東條英機の人物を語っている点、評伝として安心して読める一冊。
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辻さんの「ガダルカナル」に書いてあることを参考文献にもってくるのは、どーかと思うんだけどw
それに、鈴木貞一氏の「朝日号」は富嶽の勘違いではなく、キ-77の勘違いでは?
朝日新聞がからんでいる長距離飛行機なので、この機体のことを言っていると思う。
富嶽なんて知っているわけがないw
ロシア戦争の戦訓で火力軽視が生まれたとする説は寡聞にして知らないが、どこからその結論をもってきたのだろうか。
一ノ瀬先生の本は好きだけども、この本はかなり荒い感じがした。ザラツキを多く感じたし、そもそも東條英機の再評価は手垢のついてしまった内容ではないかと思った。
一般啓蒙レベルではそうでもないのかなぁ~ -
A級戦犯だということで、好戦的で残虐な人だと勝手に想像してしまっていたけれど、印象が変わった。
総理大臣になるくらいなので、勉強熱心で人の話を聞く姿勢ももっていることにおどろいた。
太平洋戦争に至った経緯に関しても、陸軍と海軍の両軍が本音で話ができないせいであり、決して東条英機が好んで進んだわけではなかった。
また総理大臣の決定でも、現場の指揮権はなく詳細にコントロールできるわけでないことも知った。
結局は誰か1人が原因ではなく、空気感によるものが大きいのだと改めて理解できた。 -
既存の研究や同時代の人々の回想手記だけでなく、最新の研究にまで当たっている。これまで一面的に見られがちであった「東條英機」を前述の資料を活用して再考察している。内容的には至極穏当なものとなっているが、一人の人間としての「東條英機」の限界という面を再確認出来る。人物評伝としてはバランスの取れた良書だと個人的には思う。
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「人情宰相」という日本的な「総帥」像の演出に腐心した「総力戦指導者」としての東條英機の評伝。
東條を軸に太平洋戦争開戦の過程を瞥見し、組織の利益追求や責任のなすりつけあいに終始していたことを再認識した。また、やはり東條は、指導者として「小人」の評価は免れないと感じた。 -
東2法経図・6F開架:289.1A/To27i//K
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単に東條英機の言動をまとめたのではなく、総力戦の指導者として航空戦や国民との信頼関係を重視した彼の一面を中心に描いている。
本書の内容を理解するにはある程度の前提知識が必要となってくると思われるが、通読することでアジア太平洋戦争指導者の筆頭である東條の生涯・実像、ひいては派閥の対立、海軍との駆け引きといった昭和陸軍の軌跡を概観することができるだろう。また、特攻作戦と東條の考え方との間の因果関係、換言すれば、なぜ特攻という愚策が実行に移されたのかを理解することができる。 -
東條でなければ違った結果になっていたのか?
恐らくそうではなく、他の人でも開戦に至ったのではないかと思われる。日本全体がそういう方向性であったからだ。
その後の経過は、違ったものになった可能性はあるが、いずれにしても国民が選んだ部分は大きく、東條一人に責任を負わせる事は出来ない。