- Amazon.co.jp ・本 (426ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166612161
作品紹介・あらすじ
毎日が真剣勝負のジブリ戦記!公開延期、スタッフの取り合い、我慢比べ膨れ上がる予算、クーデター計画、引退宣言……『ナウシカ』 高畑プロデューサー曰く「間に合わないものは仕方がない」『ラピュタ』 「もう監督はやらない」からの再出発『トトロ』 はじめは原作脚本・宮崎、監督・高畑だった『火垂るの墓』 未完成のままの公開『紅の豚』『ぽんぽこ』 「俺が豚をやったんだから、高畑さんは狸だ」『もののけ姫』 「エボシ御前は殺すべきじゃないですか」『山田君』 「おもしろすぎるエピソードは外しましょう」『千と千尋』 壁一面のイメージボードを捨てた日ジブリの名作はこうして作られた!『風の谷のナウシカ』から『となりの山田くん』、『風立ちぬ』まで。二人の天才を最も間近で支え続けたプロデューサーがついに語ったジブリ19作品の内幕。誰よりも互いを認め合った二人の生々しい激闘、強烈過ぎる個性、創作の秘密が惜しみなく明かされる。最初で最後 高畑、宮崎、鈴木の特別鼎談収録
感想・レビュー・書評
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タイトルに違和感あり。本の内容とズレていると思う。もちろん、ここでいう天才とは、宮崎駿氏と高畑勲氏の二人を指している。二人ともその思考というか個性強すぎだよ。
本書は、もともと文春ジブリ文庫に掲載された「汗まみれジブリ史」を再編したもの。帯にもあるように「毎日が真剣勝負のジブリ戦記」といった内容。こちらを題名にすればよかったと思う。
天才と付き合うのは、本当に大変なことだと思う。鈴木敏夫氏には、その天才とうまく付き合う才能があったのだと思った。彼もまたある種の「天才」なのかもしれない。
それから、宮崎駿氏と息子の吾朗氏との話は興味深かった。大塚康生氏いわく、「蛙の子は蛙だったんだ」。いいんじゃない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
元ジブリプロデューサーの鈴木敏夫さんが、関わったジブリ作品ごとに、思い出や制作秘話を綴る。その中で、宮崎駿、高畑勲という二人の監督の特徴やエピソードが描かれる。
ゴールデンラジオにゲスト出演した際の紹介がおもしろく読んでみました。図書館で借りたのでいきなり弁当箱レベルの厚さでビックリ。新書と思って油断してましたが、内容的には、一作品ごとにまとまっているのもあり、サクサク読めました。
天才の思考というタイトルだが、1作品ごとのまとまりのため、系統だった話ではなく、こんな時に非凡さを感じたという点があつまった感じである。出会ったくらいに、徹底的に作品にこだわる姿や寝食忘れて取り組む姿から、作家には失われた作家性を感じたというのも印象に残った。
宮崎駿、高畑勲、それぞれのこだわりに対し作品を世に出すため、プロデューサーとして調整していく姿と、その中で判断がよかったかと迷う気持ちを読むと、鈴木敏夫自体の影響力も本当に強かったと思い知らされる。またジブリ全般なので、他の監督作も扱われており、その中に宮崎駿が絡みたくてみたいなところが出ていておもしろい。宮崎吾朗の評価も興味深かった。
とは言え、巻末の鼎談も含めて、高畑、宮崎の関係性はおもしろい。時に、本当に会社か?というような場面もあるし、互いのリスペクトも伺える。狸合戦ぽんぽこを見た宮崎駿が自分たちの若い時を思い出して涙したという話を読むと、そう言った視点で見返したくなる。
巻末の鼎談については、ゴールデンラジオで、二人とも嫌がったとか、内容についてもこんなことで批評し合うのかなどの話があったが、総じてそれぞれのリスペクトが感じられて、読めてよかった。宮崎駿のハイジへの思いや、高畑勲が自分の指摘したことについて、宮崎駿が気づかないわけがないから、意図はあると思うがとするところあたり、長年やってきてに互いの才能の認め合いかと思った。
タイトルには現れないが、プロデューサーとしての興行の差配についても、いろんな話があり、おもしろく読めた。看板の付け替えだなんだと、シネコン全盛ではなかなかないような話が多く、これも映画史の一つだと感じた。
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笑えて学べるところもある最高な一冊。
正しさみたいな概念に少し前までは飲み込まれそうになっていたけれど、これを読んで軽くなった。
どうにでもナレー! -
風の谷のナウシカから風立ちぬ、かぐや姫の物語まで。
二人の天才の創造の秘密、強烈すぎる個性のぶつかり合いを、もっとも間近で支え続けたプロデューサーが惜しみなく語る。
ジブリの20作品がいかに作られたか、秘話満載、スリル満点のドキュメント。
(あらすじより)
宮崎駿と高畑勲の天才ぶりに目が行きがちだけど、この二人を相手に興行を成功させてる鈴木敏夫も天才なんだよなぁ。 -
良く観て、良く内省し、良く感じて、良く対話する、相手を恐れつつも決して議論することを諦めない2人の巨匠。そのプロセスの先に、名作があったのかなと思わさせられる。
きっと一人だったら、あれだけのものは作り出せなかったのだろうな。
本気で自分をぶつけ語らわないことには、見えない自分の底があるのかもしれない。深淵は一人では覗けない。
p394
スリランカの悪魔祓いの効用も、この辺り(ファンタジー性の共有)にあるのかもしれないね。人は希望を一人では思い描けない生き物なのかもしれない。 -
天才たちをどうにか動かして、きちんと結果を出させた著者もやはり天才だ。ともすれば芸術に振れて一般大衆を置き去りにするところを、興行的に成功するように持っていくところはさすがである。
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「魔女の宅急便」
広告代理店が絡んだ最初の映画。
片渕須直監督でウェルメイドに作っていたらどうなっていたのか。実はターニングポイントな作品だったのかもしれないな。(当時劇場で観た時、飛行船のシーンに蛇足感を感じてたけど、なるほどなと思った)
「紅の豚」
女性スタッフの器用。短編を無理矢理長編にする 行き当たりばったりの作り方。宣伝、配給、広告さえうまく行けばヒットする法則。
「狸合戦」
遅れるスケジュール、高畑を甘やかすジブリの体質に心と体が壊れる宮崎監督。試写会で号泣するエピソードがいかにも宮崎さんぽくて最高。
「千と千尋の神隠し」
江戸東京博物館、NHK「ふるさとの伝承」から発想を得て仲良くしてる子供のために作った作品。鈴木Pから聞いたキャバクラの話だけであんなに壮大な物語を行き当たりばったりで作る宮崎監督恐るべし!
「踊る大捜査線」で現代作家と宮崎作品の差を感じる鈴木P。
チャゲアスのことを知らなかったり、キムタクの演技力を知らないまま人から聞いた情報だけで主演に抜擢したり、世間とのズレを感じざるを得ないエピソード。この世間ズレが「となりの山田くん」を映画にしようとするセンスにつながってるんだと思う。 -
ジブリのプロデューサーが、作品をひとつひとつ語る。それほど各作品を深く掘り下げてはないのに、気がついたら普通の新書2冊分のボリュームを時間が経つのを忘れるほど読み進めていた。ジブリ作品への関心もさることながら、著者の語り口の上手さだろう。著者本人も葛藤を感じているように、プロデューサーとして売れる(ウケる)作品にする為に、作品の質を下げかねないアイデアを出した(通した)点は、商業と芸術の狭間のせめぎ合いを感じた。特に「魔女の宅急便」のラストは原案の方が良かったのは間違いないところ。また何気ない雑談や一言から、作品の路線やストーリーが決まったエピソードなどは、何かが生まれるきっかけは案外単純なものだとういう実情が(良し悪しはともあれ)興味深かった。一番の読みどころは巻末の高畑勲と宮崎駿を交えた鼎談で、この内容なら一章でなく一冊分欲しかった。