一切なりゆき 樹木希林のことば (文春新書 1194)

著者 :
  • 文藝春秋
3.68
  • (137)
  • (315)
  • (281)
  • (38)
  • (9)
本棚登録 : 3644
感想 : 363
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166611942

作品紹介・あらすじ

150万部突破!2019年9月10日の樹木希林さん特別番組「~おもしろうて、やがて不思議の、樹木希林~」も話題です。

樹木さんは活字において、数多くのことばを遺しました。語り口は平明で、いつもユーモアを添えることを忘れないのですが、じつはとても深い。彼女の語ることが説得力をもって私たちに迫ってくるのは、浮いたような借り物は一つもないからで、それぞれのことばが樹木さんの生き方そのものであったからではないでしょうか。本人は意識しなくとも、警句や名言の山を築いているのです。それは希林流生き方のエッセンスでもあります。表紙に使用したなんとも心が和むお顔写真とともに、噛むほどに心に沁みる樹木さんのことばを玩味していただければ幸いです。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 1.著者;樹木さんは、女優で文学座に入所。悠木千帆の名前でデビュー。ドラマ「七人の孫」で人気を博し、「時間ですよ」で不動の人気者になりました。「寺内貫太郎」で演技派女優の地位を確立。「樹や木が集まり稀な林を作る=みんなが集まり何かを生み育てる」を連想し、芸名を“樹木希林”に改名。内田さんと再婚後の離婚騒動は語り種。「人情深く、親近感の湧く女性」が個人的な思いだそうです。「わが母の記」で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を始め、数々の女優賞を受賞。
    2.本書;樹木さんが生前(2018年9月永眠)に語っていた言葉をまとめた本。本書のタイトルは、樹木さんが色紙に書いていた言葉=「私の役者魂はね“一切なりゆき”」から流用。6章154節の構成。「第1章;生きる事」「第2章;家族の事」「第3章;病の事、カラダの事」「第4章;仕事の事」「第5章;女の事、男の事」「第6章;出演作品の事」。平易な言葉で綴られた、数々の名言は噛み応え十分。書の専門家には語れない説得力があります。百万部超えのミリオンセラー作品。
    3.個別感想(印象的な記述を3点絞り込み、感想を付記);
    (1)『第1章;生きる事』より、「物事がうまくいかない時は、“自分が未熟だったのよ”でおしまい。・・目標は、自分が本当に望んでいるものなのか。他の人の価値観だったり、誰かの人生と比べてただ羨んでいるだけなのではないか。一度自分を見つめ直してみるといいかもしれませんね。お金や地位や名声もなくて、傍からは地味でつまらない人生に見えたとしても、本人が本当に好きな事が出来ていて、“ああ、幸せだなあ”と思っていれば、その人の人生はキラキラ輝いていますよ」
    ●感想⇒樹木さんの人柄が滲み出た一節です。何事も人のせいにせず、自分で受止め、ポジティブに生きた人です。私もよく言われました。「人生は問題だらけで悩みは尽きない。躓き失敗する事もある。しかし、原因を他人や環境のせいにしてはいけない。自分自身を反省し、物事に対処しなければいけない」と。私事です。振り返れば、大学受験を始め、思う通りにならない事が沢山ありました。学生時代には親からの経済支援は無理でした。マイカーを持って合コンに明け暮れる同級生を羨んだこともあります。私は、アルバイトと勉強・読書の日々でした。しかし、先の教えを受止めて、人それぞれと考え、前向きに生きれたと思います。アルバイトのお陰で、様々な出会いと学ぶ事に恵まれ、その後の社会人生活に役立ちました。“他人からの有形無形の支援に対する感謝”と“自助努力”あればこその人生と思いたい。
    (2)『第2章;家族の事』より、「外国で自動車同士がぶつかったら、互いに絶対に謝らない所からスタートするというけれど、私は昔から日本人がもつ、自分が悪いかどうか分からなくても“ご免なさい”という気持ちが好きです。“とんでもない。向こうが悪いんだ”と言い続けて、何が生まれるでしょう」
    ●感想⇒「とんでもない。向こうが悪いんだと言い続けて、何が生まれるでしょう」。いい言葉ですね。世の中には、自分の事は棚に上げ、他人ばかりを責める人がいます。自己中心の人は、他人の言う事に耳を貸さず、何事も自身を正当化しがちです。個人的にはそういう人にあまり関わりたくないのですが、そうもいきません。私の対処法です。先ず、相手のいう事をよく聞いてあげます。最後に、意見を言って、議論せず、それでお仕舞。あとは本人次第、自分の振舞いを正す機会になれば良いのですが。さて、自動車事故の件は、世間は善人ばかりじゃないし、責任割合が“0:100”というのもあまりないので、謝り方は熟慮した方が良いと思います。樹木さんは善人であり、そこが魅力です。
    (3)『第5章;女の事、男の事』より、「どの夫婦も、夫婦となる縁があったという事は、相手のマイナス部分が必ず自分の中にもあるんですよ。それがわかってくると、結婚というものに納得がいくのではないでしょうか。時々、夫や妻の事を悪く言っている人を見ると、“この人自分の事を言っている”と、心の中で思っています」
    ●感想⇒知人の息子夫婦の事です。新婚早々に離婚しました。原因は、モノハラだそうです。妻が夫の言い種に我慢の限界を超えたそうです。彼女は、夫の言動を数年間、ノートに綴っていました。「お前は教養の無い女だ」「・・」。夫はそれを突き付けられ、親を交えての話合い。離婚と言われても、言い訳出来ないですね。夫にも言い分があると思いますが、夫婦の事は傍からでは分かりません。親兄弟と言えども、「親しき中にも礼儀あり」が大切ですね。このような場合、樹木さんの「この人、自分の事を言っている」をどう解釈すればよいのか悩みます。「人のふり見て我がふり直せ」ですね。
    4.まとめ;樹木さんの出演作品を見ると、とても自然体な演技で、その言動に癒されました。本書を読んで、編集ものとは言え、樹木さんの人となりに感動です。「印象的な記述を3点絞り込み」に悩みました。3点以外にも、「人の人生に、人の命にどれだけ自分が多く添えるか」・・等、沢山あります。自分の人生に照らし合わせて読むのも良いでしょう。きっと、得るものがあり、これからの生き方に役立つはずです。ドラマやコマーシャルで活躍していた樹木さんを見ると、嫌な事があってもほっこりさせてくれました。樹木さんは好感度が高く、私も好きな女優さんでした。あの世でも微笑みを。(以上)

  • 最近読んだ読書術の本に「ベストセラーは必ず買って積んでおくだけでもよい」というようなことが書いてあったのでまず、この本を買ってみました。
    色々なところで女優の樹木希林さんが発言したことばをまとめたもので、こころに染みることばはたくさんありました。
    私は、自身が病弱なので、特に希林さんの「がん」という病気に対する姿勢には身につまされました。
    私は、死に至るような重篤な病気はひとつもありませんが、1週間全部、通院でスケジュールが埋まるだけで、気が滅入り、病院で待っているだけでイライラしてきます(病院では気が散るので私は本は読めません)。希林さんとは年齢差や性格も全く違う方なので、そんな境地には至れない私ですが、あまり不幸に思わないようにしたいと思いました。

    希林さんの映画は『そして父になる』でお見かけしたのが最後でしたが、惜しい方が亡くなられて、もっと出演作を拝見したかったと思いました。
    娘さんの也哉子さんがエッセイストでいらっしゃることを初めて知り、お人柄を本書で知り、その作品も是非、拝読してみたいと思いました。

    本分P122より
    「私は最近、放射線治療の後遺症じゃないかと思うんだけど、肩がゴキン、ウアッてなることがあるの。そういうとき「痛い」じゃなくて「ああ気持ちいい」っていいかえちゃう(笑)。それが、当たり前なんだと受け取って生活していく面白さっていうのがあるなって思うんだ。私にはいい塩梅にがんっていうのがあるから、いろんな意味で有効に使ってるのよ。何かを断わるときには、「もうがんが大変なの」とさえ言えば、「あっ、そうですね」となるし。まあでも病気をしてから少し謙虚になりました、私」(「体はちょっとアレだけど、怖いのもがなくなって年をとるのも、悪くない」2016年6月)

  • 生き様、死に様が格好いい!内田裕也さんに負けず劣らずロックな方だと思った。
    なかなかまねするのは難しいけど、シンプルに自立して生きる姿は、真似したいと思うところがたくさん。
    也哉子さんの葬儀のご挨拶は、涙が出てしまう。苦悩もたくさんあったと思うけど、やっぱり素敵なご家族。

  • あまり芸能人をおっかけて読むようなことはないのですが、ブックオフで何冊かかった時に、一冊この本を加えました。

    希林さんが亡くなったのは、2018年9月15日だったようで、もう2年近くなるのですね。がんと闘い続けてこられた人生でしたが、亡くなったときの世間の衝撃は、まだ記憶に新しく感じます。

    希林さんは、60歳で網膜剥離、そのあと乳がんから、がんが全身に転移し、それでも決して思いつめることもなく、自分らしさを失わずに人生を走りぬかれたように感じました。

    闘病以外でも、夫婦生活の在り方が話題となった、あの内田裕也氏との生活においても、闘われていたように感じましたし、そのもっと前の育った家庭においても、子ども時代を闘ってこられたようにも感じました。

    「一切なりゆき」というタイトルが付いた経緯は知りませんが、人生を自分なりに噛みしめて生きてこられた人の「達観」が込められ言葉のように感じます。

    希林さんの人生を振り返る材料として、you tubeにあった内田裕也氏のロックンロールしている若いころの映像や、都知事選に出たときの政見放送の映像を見ましたが、やっぱり変わった男の印象はぬぐえず、がんになるストレスの主な要因はここにあったのではと勝手な想像をしてしまう反面、希林さんも同じレベルかそれ以上のユニークさの持ち主だったのかもとか、希林さんだからこそ、内田裕也氏を伴侶として、人生を楽しめたのかもとか、どんどん勝手な想像が膨らむエピソード本でした。

    勝新太郎氏に「お前を超えているのは一人もいない」と言わせしめ、北野武氏に「普通の役者と出ると差がつきすぎちゃう」と言わせしめた名女優の生き方を語る言葉が印象的でした。

    「人の人生に、人の命にどれだけ自分が多く添えるかという、その体験の豊富さが、いい役者かそうでないかというふうに思うんですよね。その人の悲しみを自分のことのようにして悲しめる。離れていてもちゃんと苦しみが・・・。そういうことの場数だと思うんですよね。」

    映画「あん」の中で、徳江の役を演じた希林さんが、作品(映画)について語った言葉も印象的でした。

    「映画の中の徳江さんもそうであったように、病気をして、72歳になった私がわかったことは、決して病気だからといってかわいそうなのではないということ。たとえ病気であっても、生きる希望をもって生きていく。そうやって命を使いつくしていったんじゃあないの、ということをこの作品を通じて伝えたいです。」

    作品を通じてだけでなく、自身の人生を通じて、そのことを伝えられたように感じます。

    • 夜型さん
      おはようございます。いいね!ありがとうございます。
      不登校新聞という小さなメディアに寄稿していたのを思い出しました。
      亡くなってからもう...
      おはようございます。いいね!ありがとうございます。
      不登校新聞という小さなメディアに寄稿していたのを思い出しました。
      亡くなってからもうそんなに経つんですね。

      https://futoko.publishers.fm/article/9204/

      https://toyokeizai.net/articles/-/238438
      2020/08/11
    • abba-rainbowさん
      夜型さん、いつもありがとうございます。コメントと、情報提供もありがとうございました。全部読ませて頂きました。

      特に癌を患われてからの希林さ...
      夜型さん、いつもありがとうございます。コメントと、情報提供もありがとうございました。全部読ませて頂きました。

      特に癌を患われてからの希林さんは、生老病死の四苦を超越した感がありますね。そういう方の自然なコメントには力がありますね。
      ご両親も素晴らしいなと感じました。
      2020/08/11
  • 「おごらず、他人と比べず、面白がって、平気に生きればいい」
    娘の内田也哉子さんによる喪主代理挨拶の中のこの一文(生前、希林さんから也哉子さんへ贈られた言葉)が樹木希林さんの全てを表している。
    希林さんの遺した言葉の数々は常に自然体でユーモアに満ちていて、我々の心に穏やかにじっくりと染み渡る。

    「自分の身の丈にあったレベルで、そのくらいでよしとするのも人生」
    「年齢に沿って生きていく、その生き方を、自分で見つけていくしかない」
    「自分の最後だけは、きちんとシンプルに始末すること」
    「楽しむのではなくて、面白がる」
    「存在をそのままに、あるがままを認める」

    自分を含め周知の人を俯瞰的に冷静に見据える希林さんの、すっきりとシンプルな生き方。
    希林さんのどの言葉も的を得ていて私もお手本にしたいけれど、「それは依存症というものよ、あなた。自分で考えてよ」と表紙のお写真のように軽やかに笑いながら、希林さんに突っ込まれるに違いない。

  • 内田裕也が何故この人を愛し
    なのに何故いっしょに暮らせなかったか
    よくわかる気がした
    この人めちゃくちゃロックンロールだもん 笑

  • 独特の感性を自身の言葉で。

    地上にすぽーんといて、肩の力がすっと抜けて、存在そのものがはっと息を飲むような人間になりたい。
    相当な境地だけど、なんかわかるなー

    おごらず、他人と比べず、面白がって平気に生きればいい。楽しむんじゃなくて、面白がって、ってとこがポイント。

    2020.9.18

  • 個性的で好きな女優さんでした。
    ガンが見つかってからの言葉の一つ一つが沁みますね。

    ・人生なんて自分の思い描いたとおりにならなくて当たり前
     いつも「人生、上出来だわ」と思っていて、
     物事がうまくいかないときは「自分が未熟だったのよ」
     でおしまい。

    ・モノを持たない、買わないという生活は、いいですよ
     暮らしがシンプルだと、気持ちもいつもせいせいとしていられます。

    ・幸せとは「常にあるもの」ではなくて「自分で見つけるもの」
     何でもない日常や、とるに足らないように思える人生も、
     おもしろがってみると、そこに幸せが見つけられるような
     気がするんです。

  • どうやったら希林さんのように朗らかに生きれるのかな
    どうやったら悲しいことを乗り越えられるのかな

    「それは依存症というものよあなた 自分で考えてよ」




  • 自分を客観的に見る事が出来る人かつ自分の感覚を信じられる人だったから、芸能界で長く活躍出来たのかな。それは見習いたい部分もあったけど、振り回された家族・特に娘さんは辛い部分も多かったでしょうね。最後の也哉子さんの喪主の挨拶が感動的でした。

全363件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

樹木希林(きき・きりん/役者)
本名:内田啓子(旧姓:中谷)。1943年生まれ、東京都出身。61年に文学座附属演劇研究所に入所、芸名「悠木千帆」とし、女優活動をスタート(77年、「樹木希林」に改名)。64年、森繁久彌主演のテレビドラマ『七人の孫』にレギュラー出演、一躍人気を博す。66年、津野海太郎らと六月劇場を旗揚げ。また、同年、テレビドラマ『とし子さん』に主演。以後、『時間ですよ』『寺内貫太郎一家』『ムー』『夢千代日記』『はね駒』『向田邦子の恋文』などのテレビドラマに出演。また、富士フィルム、ピップフジモト「ピップエレキバン」、味の素「ほんだし」などのテレビコマーシャルに出演。00年代以後、映画出演が増え、「歩いても 歩いても」( 08)、「わが母の記」(12)、「そして父になる」(13)、「神宮希林わたしの神様」(14)「あん」(15)「モリのいる場所」「万引き家族」「日日是好日」(18)などに出演。「人生フルーツ」(17)『転がる魂 内田裕也』などドキュメンタリー作品のナレーターも務めた。企画・出演をした映画「エリカ38」(19)が遺作となった。夫はロックンローラーの内田裕也、長女に作家の内田也哉子、娘婿に俳優の本木雅弘。2018年9月15日に逝去、享年75。

「2019年 『いつも心に樹木希林~ひとりの役者の咲きざま、死にざま~』 で使われていた紹介文から引用しています。」

樹木希林の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村田 沙耶香
辻村 深月
朝井 リョウ
瀬尾 まいこ
平野 啓一郎
恩田 陸
宮下奈都
新井 見枝香
ヨシタケシンスケ
三浦 しをん
辻村深月
アンデシュ・ハン...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×