日本に絶望している人のための政治入門 (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610105

作品紹介・あらすじ

「政治には何も期待できない」という国民の政治不信。そして経済の低成長、野党再編、地方・女性・非正規、沖縄・日米同盟など山積する難問。しかしこうした現状は、政治を甦らせる好機でもある。NHK「ニッポンのジレンマ」で注目を集めた、1980年生まれの気鋭の政治学者が「安倍政治」の急所を衝き、マンネリ化した「左」「右」双方に語りかける。「闘え左翼! 正しい戦場で」「共感せよ右翼! 寛容の精神で」と。【目次】はじめに――イデオロギー闘争から取り残された人々へ■1 不毛な左右対立を超えて コンパッションの思想とは 自由のあとに来るもの――時代性の中のリベラリズム リアリズムという宗教 総理の靖国参拝をどう考えるか 弱者認識の奪い合い 日本の右傾化?■2 日本政治を可視化する 野党再編について 戦後リベラリズムの担い手としての統治利権 「維新」と反エスタブリッシュメント感情 アベノミクスの歴史的位置づけ 歴史的偉業とは何か 開かれた保守の外交政策 「ちゃんとしている仮説」――自民党圧勝のアベノミクス選挙を振り返って■3 地方、女性、非正規 地方経営における共感と想像力――「維新」が回帰すべき方向 地方創生について 非正規労働者に未来を 共和主義者のジェンダー論■4 外交・国際情勢 集団的自衛権論争の本質 闘え左翼、ただし正しい戦場で Gゼロの世界 ガザと中東和平について ロシア/ウクライナについて ロシアのG8追放は禍根を残す 日韓関係の未来 日米同盟と沖縄 沖縄県知事選とアメリカとの付き合い方

感想・レビュー・書評

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  • テレビなどで見かけるが、判断が難しいので著書を読んでみようと手に取った。

    彼女はテレビで議論をする際、前提条件を確認し合おうとする姿勢をもつが、その点において私は好印象をもつ。
    ただ、議論中に、あまり根拠を示さないまま持論を展開し、その持論がなかなかエッジが効いているので周りからつっこまれ、つっこまれたから仕方なく?根拠を示すが、もう既にハレーションが巻き起こっていて双方応酬のグダグダに…
    そんな展開も多い人ではないだろうか。

    頭が良すぎるための短縮なのか、
    一般的な人の感覚とズレた人格なのか、
    コミュニケーションがあまり上手ではないのか、
    本当の意味で議論が上手ではないのか、
    学者ではないのか、
    疑問だった。

    本書を読むと、やはり「時代感」「切り取り」「相対化からの本質の抽出」は得意だが、最後の最後まで論旨の一貫性が保たない、つづかない文章。充分な「説明」というか根拠を示しながら述べないのは、口頭も記述も同じなんだな、と感じた。
    新書だから、一般書だから、という擁護もできそうだが…

    とりあえず、一章はしっかり読んだ。が、時代感の分析の最後に、「だからコンパッションの思想が重要」とくるのだが、つらつらと述べてきた最後に接続させただけで論理飛躍というか、説明がごそっと抜け落ちている。
    …残念だが、やはり国際政治学者というより、国際政治分野のエッセイスト、といった印象を受けた。

    読み物としては面白いんですけどね。
    切り取り方も独特だし、雰囲気で読ませてくれる(ただ微妙なラインで最後の最後まで論理性が担保されていないのが謎。…気ままなエッセイと思えばいいのか)。
    政治入門書、「勉強」として読むものではない(いちいち自分でも調べて検証する必要があるから)


    私は、研究者としてテレビに出ている人の、現職や過去の業績、論文、著書、所属学会等を当然だが気にする。
    本当に、その人が「研究者」なのか「学者=学問の徒」なのかは、大事なことだと思うから。

    三浦瑠璃さんは、特にどこかの大学の教授や准教授でもないようである。社会問題コメンテーター?の古市さんと似た感じのビジネスポジショニングなのだろうか。
    テレビ番組の起用の意図も捉えながら、ワイドショー的に楽しむくらいがいいのかもしれない、と思った。

  • 前著「シビリアンの戦争」が興味深かったのをきかっけに著者のブログもちょくちょくフォローしていた。ブログ読者にとっては既読の項目も結構含んでいる。

    ナショナリズムを嫌悪しつつ空想的平和主義にも懐疑的な穏健保守、といういわば「ビジネスパーソンの気持ちいいところ」が立ち位置の人、という印象を抱いていただけに、この割とラディカルな書名はやや意外かつ期待値は高かった。お、あえてこのタイトルなら予定調和でない何か新しい視点が得られるかも、と。

    その観点からいうと、安陪政権に対する評価が総じて肯定的なのはやや肩透かし。もちろん「肯定している」ことそれ自体への不満ではなく、それなら別にこの書名でなくてもよいのでは、という意味で。これだと文字どおり「日本に絶望している」想定読者層の一部は途中で投げ出してしまうのではないか。

    その意味では、圧倒的に迫力があったのは「非正規、女性」にフォーカスした労働市場の論考だった。こういう人々にまっとうに報いないで何のための国民国家か、民主主義か、という一連の主張はもっとも切実に響いた。繰り返しだが、読むべき人たちが外交・安保部分で「ちっ、政権万歳か」とここまでたどり着かないとすれば、それはもったいないという思いだ。

    要は、国民国家という形で経済の際限なきグローバル化を一定程度せき止める(そのための防衛コストも税金として国民に負担させている)以上、その枠内の人々の不公平は許容すべきでない、ということと理解した(結果としての格差もさることながら、「世代」とか「性別」といった基本的には変えようのない前提条件の不公平の是正)。私はこれに強く共感するし、この点の進捗のあまりの遅さこそが著者のいう「絶望」なのかもしれない、というようなことを思った。

  • 刺激的なタイトルで、平積みもされており、つい手に取ってしまった。
    現代日本の政治が抱えている問題、時事的テーマを、国際政治学者の眼を通して、アベノミクス選挙、地方創生から、非正規雇用、ジェンダー論まで、政治分野をオールラウンドに論及している。
    今、沖縄の基地移転が喫緊の課題となっているが、外交・国際情勢の章では、専門分野の読みとして、アメリカは優先順位の関係で、日本防衛のコミットメントから徐々に撤退していくと予測する。
    その場合の日本の生き残る道は、沖縄をアジア統合のハブにすることだと提案する。一読の価値ありか。

  • なんだか随分メディアで叩かれまくって露出がなくなってしまった著者だが、ちょうどメディアに出始めた頃の発表か。
    タイトルは絶望している人のための政治入門とあるが、絶望が解消されるような本ではなかったが、さまざまな角度から政治と歴史についての考察を加えているといったところか。個人的には非常にフェアな分析がされているように感じた。確かにメディア上では稀に疑問を抱かざるをえない発言をしていたような記憶があるが、個人的には楽しめた。歴史の本とも言えるが、事実を羅列するような面白みのない歴史の教科書と違い、その背景や流れに言及してあり、その辺りは特に興味深かった。

    P.40
    世界は摩擦に満ちており、互いへの無理解と反感は当分なくなりそうにない。だからこそ、私たちは自分の立場を相手に分かってもらおうというナイーブさをある程度あきらめなければならないのです。今ここにあるのは、戦争が起こりそうにないと感じられているからこそ、東アジアの人々が互いに摩擦を高めている現状であり、それは望ましくはないかもしれないけれど、当分付き合っていかなければならないリアリティーであると言えます。

    P.72
    戦後日本は、統治利権を担うエリートを世界的に見ても非常にフェアな方法で選別、育成してきました。統治利権の担い手たち=官僚+官僚出身の政治家一世は、基本的に試験の成績が良かった人たちで、お金はないけれど、権力を持つ人たちです。新興国はもとより、先進国でも経済的な特権階級と権力を有する階級には大きな重なりがあるのが通常ですが、日本ではこの重なりが非常に小さい。(中略)戦後リベラリズムの成果を誇る観点からすると、名もなき多くの財務次官や外務次官達が中産階級出身であり、大きな権力を振るってきたことの方が世界史的に稀有な現象です。統治権の担い手達は、経済的な特権階級をそれだけでは権力に近づけなかった代わりに、彼らを過剰に排斥もしませんでした。結果として日本には、これまでのところ持続的に権力を行使する政商も、祖国を捨てて大々的にキャピタルフライとする層も生まれなかったのです。

    P.108
    保守とは(中略)、世の中には守るべき価値があるということであり、それは必ずしも功利主義では説明できないものであるということです。(中略)経済発展を超えた価値の源泉は、通常歴史と分化の中にしか求められないので、歴史と文化のどのような要素を強調するかが大切になります。

    P.139
    グローバル経済がそのまま労働者に影響しない最大の理由は規制です。それは、例えば、国民国家が定める最低賃金、雇用や、待遇や、安全に関する諸々の労働基準などです。世界をグローバル経済の側から見ると、その最大の障壁は国民国家なのです。国民国家は、国民の最低限の福祉と国民の間に一定の公平性を担保するために規制を作ってきました。そして、その規制の枠組みをグローバル経済が飛び越えようとしているのです。ですから、世界を国民国家の側から見れば、最大の脅威はグローバル経済という状況が生じているのです。

    P.179
    冷戦思考の最大の問題点は、その実、世界的にはたいして重要ではなかったはずの地域紛争に戦略的な意味付けを与えてエスカレートさせてしまうことでした。朝鮮半島も、キューバも、ベトナムも、アフガニスタンも、実はそれほど重要な場所ではなかったはずなのに、イデオロギー上の、そして陣営全体の利益の象徴になってしまったことで悲劇が拡大しました。

    P.251
    政治とは、とても人間的な営みであり、サイエンスの部分とアートの部分があります。評者にも知識だけではなくセンスが求められます。きれいごとではどうにもならないことも多いけれど、理想を失ってもいけない世界です。

  • ふむ

  • 流し読みして、この本の評価というか、この本に書かれていること、つまり政治への私の関心度が星二つ程度なのだと理解した。

    外交・平和とか経済対策とかどうでもよい。日本は平和だし、お金もある。地方創生もどうでもよい。わたしは東京で生きていく。

    出生率上げたいなら子育て支援改革せよ、と思うけど、もはや私の問題ではない。

    おじいさん政治家が子育て女性を理解できないように、他のグループに共感することが難しいという。

    日本全国で貧困化がすすんでいているから、彼らがいずれ現れるポピュリズム政権を支持して、それによってなにか起こるのだろうか。私の生活が脅かされるのだろうか。。。

  • いろんな政治の出来事に持論を話す本
    なんか読みにくかったおすすめはできないかも。まあフラットな立ち位置。少し自民よりかも。

    わかる人には良いのだろうけどずっと語り口調なのは読んでいて辛い。入門書を名乗るならわかりやすくする工夫みたいなのが欲しかった。

    右派左派、弱者、地方、女性、非正規、外交、自衛
    自民党、キャッチオール
    野党再編、分断が少ない日本、統治利権:地方重視か経済利権:大企業主義か
    国内の平等のために、国外の平等には目をつむる

  • テレビで見て著者に興味を持ち、読んでみた。テレビでの印象の通り、基本的には自民党政権を自明のものとし、そこに改善を提案するスタンス。
    リベラルを自認するも立民党の力不足は明白でお話にならないといったところか。
    内容は分かりやすく現状(2015当時まで)のおさらいに役立った。しかし、タイトルから期待した現状打開の提言についてはさほど感心するところはなかった。そこは物足りない。


    内容メモ
    ーー自分の感想

    ●著者の基調ーコンパッション(共感)
    ーー著者の言わんとするところが今ひとつわからない。共感はいいとして、もうひとつ踏み込んで論じて欲しかった。というか、共感に熱がない。

    ●日本の二大政党制は
    日本の社会福祉制度などはリベラルの努力の成果でなくほとんど保守政権の政策の都合から推進されたものである。
    リベラルの政策はいつも自民党に取り込まれてきたからリベラルの存在意義を示すことが難しかった。
    日本の政争は従来保守と保守のせめぎあい。経済利権vs統治利権だ。
    ーー確かに自民党はずっと中道左派だったと思う。しかし安倍さんのもとで右翼思想が強く示され、グローバル化で状況も変わった。そろそろこの体制も終わるべき。リベラル弱すぎる。結局自民党を超える理想の高さすら示せていない

    ●リベラルとは
    国民国家の枠組みで身を護るのが保守
    国境を越えて世界の人に共感するのがリベラル
    ーー日本のリベラルは内向きで世界で起こっていることに無関心では? 人権や平和を守るための軍事介入が行われているとき日本は国際協調すべきかなど他人事すぎて考えてないだろう

    ●集団的自衛権議論の泥仕合
    安全保障論議を法律論に押し込めて議論する伝統
    それぞれの勢力が勝利宣言するためにも、論点を字句解釈に矮小化する手法をとった。それこそ日本の政治的、知的伝統の積み上げであり、本質的でないことが本質的という複雑な状況
    ーーこうして敵を殲滅することなく和をもってウヤムヤのうちに決着。和を尊ぶ美風のようであるが建設的な議論が展開されにくい。報道を見てるとイライラする。論点がずれているので、後に役立つ議論にならない

    ●闘え左翼 ただし正しい戦場で
    いつまでも平和と憲法に拘泥すべきでない。
    闘うべき論点は
    非正規・女性・地方。
    国民の4割が今や非正規労働者。
    ーー非正規が4割もいるのか。(本書は2015年出版)
    なんでこれを最大の争点にしないのか。最低賃金は1,500円から2,000円にすべきだしできることはたくさんあるだろう。リベラルならではの政策をアグレッシブに打ち出せばいいのに。

  • 沖縄の米軍基地問題、右派ポピュリズム、過度なくらいアメリカの下に着く忖度。

  • 講演などの話を聞くと分かりやすい話をしてくれるのだが、Amazonプライムの件などネットでは叩かれている。三浦さんとはどんな人なんだろうと読んでみた。
    感情に訴えるタイトルは嫌だったが、分量も少なそうだったので。

    内容について
    なるほどそう言う見方か!と言う学びも所々あった。
    しかし、全体を通じて個々のセンテンスの修飾が強過ぎて、内容を追うのに疲れた。
    話は上手いが文章はあまり上手くない感じ。人にはお勧めできない。

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著者プロフィール

国際政治学者。1980年神奈川県生まれ。東京大学農学部卒業。東京大学公共政策大学院修了。東京大学大学院法学政治学研究科修了。博士(法学)。専門は国際政治。現在、東京大学政策ビジョン研究センター講師。著書に『シビリアンの戦争』(岩波書店)、『日本に絶望している人のための政治入門』(文春新書)、『「トランプ時代」の新世界秩序』(潮新書)。

「2017年 『国民国家のリアリズム 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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