粘菌 偉大なる単細胞が人類を救う (文春新書 984)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166609840

作品紹介・あらすじ

単細胞で脳も神経もなく、大きさも性別も、生物学上の分類さえ融通無碍な生物・粘菌。その粘菌が人間でも難しい迷路を解き、現代の発達した交通網をも独自に作り上げてしまう。単細胞生物でありながら、どこまでも賢い。その賢さはどこからやってくるのか。

日々複雑怪奇な思考に挑んでいるようで、実はヒトがいつしか忘れがちな「単純に見えて賢い思考のプロセス」を、今こそ粘菌に学ぶべし。「人びとを笑わせ、そして考えさせる研究」に贈られるイグ・ノーベル賞を2度も受賞した著者が、粘菌の生態と秘密、そして生物の秩序づくりのしくみを明らかに。現代社会をもチクリと風刺する知的興奮あふれる1冊。

感想・レビュー・書評

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  • イグノーベル賞を2度受賞した粘菌研究者による粘菌紹介の本。
    ただし、本書では研究自体についての解説よりも筆者の研究哲学や、粘菌研究から感じたことについて語る部分が比率として多く、研究自体について詳しく知りたい場合は、同一筆者の「粘菌―その驚くべき知性」を参照する必要があります。しかし、研究の概要のみを簡潔に紹介しているため、要点のみでいい場合はこちらを読むことをおすすめします。
    むしろ、本書はかなりのページを割いてイグノーベル賞を受賞した後の授賞式の裏話などが記されていて、イグノーベル賞自体に興味がある人には興味深い話が多いです。

    【こんな人におすすめ】
    イグノーベル賞に興味がある
    粘菌について知りたい
    研究者がどんな事を考えているのかのエッセイが読みたい

  • ふむ

  • レビュー省略

  • 粘菌といえばアメーバ、くらいしか思いつけないものの、そのネットワークの構築力が首都圏の鉄道網に類似していたり、近似をとる(=おおまかなあらすじ)ことの動物的な知的感受性が高いという点では粘菌も原始的で単純な生物だと侮ることができない。
    イグ・ノベール賞の式典の内容をはじめとして、エッセイとしてとても読みやすい文章。
    不安定なものから答えを得るには明確な問いが必要、などなど、興味深い論旨が多く、勉強になった。
    粘菌研究といったら南方熊楠、名前が出てきたので今度はこの人の本でも読もうかと思う。

  • 単細胞。ひとつの細胞から出来ている生物のことだが、この言葉が
    人間に向けられると「考えが単純なこと」と、いささかバカにしたよう
    なニュアンスが含まれる。

    これまで何度言われたことか。「なんでそう単細胞なんだ」って。ええ、
    そうですよ。だって物事は単純に考えた方が楽じゃん。

    さて、本書は単細胞である粘菌のお話である。2008年に「粘菌が
    迷路などのパズルを解くことを証明した」として。そして、2010年に
    は「粘菌で関東圏の交通網を構築した」として、2度もイグ・ノーベル
    賞を受賞した著者。

    冒頭のイグ・ノーベル賞授賞式の様子が楽しい。本家ノーベル賞の
    パロディではあるが、本家の受賞者をはじめ多くの研究者が式典を
    心底楽しんでいるのが伝わって来る。

    本家の授賞式はよくニュースで流れるけれど、イグ・ノーベル賞の
    授賞式の中継をしてくれないだろうか。見ているだけで楽しそうだ。

    粘菌には脳も神経もない。ぐで~っとしている粘菌だけれど、迷路
    いっぱいに広げてふたつの出口にエサを置いてみると、あらあら
    不思議。

    半日ほどでエサ場を繋ぐ最短経路だけに管を残して、ふたつのエサ場
    を繋いじゃう。

    これだけでも面白いのに、関東圏の鉄道網の構築なんて「粘菌って
    鉄オタなのか」と思うくらい、現在の鉄道網そっくりのネットワークを
    作り上げちゃう。

    こういった実験・研究に論考が加えられているんだが、単細胞とは言え、
    その能力は奥が深い。脳も神経細胞もない。でも、ネットワークは構築
    する。エサ目当てだから本能なんだろうけれど、それは環境適応能力
    が高いってことにならないかな。

    粘菌の研究が進歩して、いつか人間に向かって発せられる「単細胞」と
    言う言葉は、褒め言葉になる日が来るかも。

    そうしたら自慢するんだ。これまで何度も「単細胞」って言われたよ~って。
    あ…これだから「単細胞」って言わるのかも。

  • 粘菌の研究でイグ・ノーベル賞を受賞した研究者の本。
    イグ・ノーベル賞の舞台裏や授賞式の様子は面白かったです。
    受賞した研究について詳しく書かれているのですが単細胞生物の粘菌が迷路の最短距離を求めたり、鉄道網と同じような道筋で管を作ったりと彼らの知性に驚かされました。文章も色々と例えを使う等、分かりやすく楽しく読めました。

  • イグ・ノーベル受賞者だと知って即買い。

  • イグノーベル賞の授賞式の模様など,他で分からないことが書いてあって面白かった。

  • 生物学的なエッセイという感じ。
    「ソーシャルブレインズ」「つながる脳」藤井 「粘菌」中垣 これら一連でよかった!本を読む順番の神さまありがとう! 賢い=頭がいいって、知識じゃなくて回転ってのは割りと言われることだけど、生物的に言うと「適応力の高さ」これ人間でも当てはまる表現だよね!とすごく納得した。

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著者プロフィール

中垣俊之 中垣俊之(なかがきとしゆき)北海道大学電子科学研究所 教授。1963年愛知県生まれ。北海道大学薬学部卒、名古屋大学人間情報学研究科博士課程修了(学術博士)。2008年、2010年、イグノーベル賞、2010年爆笑問題の日本の教養「爆ノーベル賞」、2010年函館市長賞。

「2015年 『かしこい単細胞 粘菌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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