夢をまことに

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 122
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (515ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163942056

作品紹介・あらすじ

日本初となる反射望遠鏡や筆ペン「懐中筆」、照明器具「玉燈」を作ったのは、江戸時代の鉄砲鍛冶・国友一貫斎だった! 従来の火縄銃づくりにとどまらず、空気銃や弩弓も製造、さらには空を飛ぶ船や潜水艦の建造まで思いを巡らせたという一貫斎はいかなる人物だったのでしょうか? 物語は村の訴訟に関わったため、一貫斎が近江国友村から江戸にやってきたところから始まります。好奇心旺盛な一貫斎は、江戸で大名をはじめ各藩の鉄砲方や職人たちと交わり、見分を広めます。そして創意工夫の精神に富み「仕事が生きる楽しみ」の一貫斎は、鉄砲鍛冶の矜持を保ちながら、度重なる失敗にもめげず、発明家としての才能も発揮してゆきます。やがて長くなった江戸の滞在を終え、村へ帰った一貫斎は、疲弊した村を救おうと、あらためてものづくりのことを考えるのでした――。 どうすればものづくりを通して「夢をまことに」することができるのか? 仕事とものづくりの喜びを国友一貫斎の生涯を通して描いた、山本兼一最後の傑作長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • (借.新宿区立図書館)
    国友一貫斎の技術者・発明家としての姿についてかなり詳しく書かれている。あまりにも詳しすぎてその工夫のあたりは読み飛ばし気味だったりして(^^;
    フィクションとはいえ一貫斎再評価の参考になりそうな小説である。
    国友村の年寄鍛冶との訴訟のため江戸に向かうところから始まり、いろいろな発明品にまつわる経緯を描いている。先日読んだ仁志耕一郎『玉兎の望』よりは史実に近そう。
    ただし、あえて言えば晩年に本格的に取り組んだグレゴリー式望遠鏡に関して著者の天文に関する理解が少々不足しているように感じた。宵の明星と明けの明星(金星)が一夜のうちに見られるような記述とか、太白星(金星)、木星、土星と並べるところ(太白ならば歳星、鎮星になるだろう。あるいは最初に注を付けるとか)、間重新が間重富の子であることも書かれていない。坂本鉉之助が後に大塩の乱で活躍することも触れられていない。その辺はあえて余計なことを書かないということなのかもしれないが読者に対しては不親切なのではなかろうか。
    あとは技術者としての側面を強調しすぎて文化人としての側面は平田篤胤との交流以外はあまり書かれていない。史料がないのかもしれないがその辺は想像を膨らませて書いてもよいのではなかろうかフィクションなのだから。(最後の方は個人的な勝手な要望であり、著者が故人なので無理なのではあるが)

  •  江戸時代末期に実在した近江(滋賀県長浜市)で発明家であり鉄砲鍛冶の国友一貫斎の物語です。

     鉄砲鍛冶の年寄り衆と鉄砲の受注で諍いとなり、江戸て裁判となった。一貫斎は江戸では見聞を広め技術向上に励んでいた所、オランダ製空気銃と同じ物を創る事になった。何事にも勉強熱心で技術や発想に柔軟で知識を吸収した。

     空気銃の次には距離測定器、万年筆もどき、油足し不用のランプ、望遠鏡。

     職人として志しが高く常に前向きで人間としても奢る事なく他人を慮る、尊敬できる素晴らしい男です。空想を現実の物に創り上げる、本書の題名である''夢をまことに''を具現化出来た職人でした。

  • 望遠鏡を作った日本人の話。
    挑戦し続けることで実現できるというメッセージ。
    まじめに取り組む人に人は惹きつけられる。

  • 江戸時代に実在した鉄砲鍛冶、国友一貫斎が様々な新しいものを作り出す物語。
    私自身、物造りでいろんな工夫をするのが大好きなのですが、どこか共感できませんでした。確かに反射の理論を知ることなく、トライアンドアラーの経験則だけで反射望遠鏡を再現してしまうのは素晴らしいのですが、でもそのアプローチはなんか違うだろうと思ってしまうのです。
    何かそういう事が重なって、どうも作品全体が冗長に見えてきてしまいました。

  • 山本兼一の遺作とあって期待をして読みました。
    山本作品らしく、日本のダヴィンチと呼ばれた稀有な人物、鉄砲鍛冶・国友一貫斎を取り上げています。
    鉄砲鍛冶職人として、物づくりへのこだわり。村を背負うものとしての生き様。見事、あっぱれと言うしかないのだけれど、説明的過ぎる部分が多く流し読みしてしまい、これまでの作品と比べると評価を低くせざるをなかったのが残念!

  • 死の直前まで書き続けた作品は「平安楽土」だが、山本先生最後の発表作品はこの

    「夢をまことに」

    である。主人公の国友一貫斎の物語をつづった本作は筆者の魂を感じることができる。国友と言えば堺や根来に劣ったとされるものの戦国時代から始まる有名な鉄砲鍛冶の村である。そこの棟梁たる一貫斎が鉄砲ではなく、多くの物に興味を示し多くの物を考えていく。

    死を目前とした筆者がまるで自分の分身を描いてるようだった。そしてもっと多くの物を描きたいという魂の叫びが聞こえてくるような作品でした。今までの作品とはほんのわずかだが、どこか違うんですよね…

  • わくわくドキドキ知ることの楽しさと発明する喜びに溢れてます。

  • -2015/4/22

  • mixiにレビューしました

  • 職人ってすごい!!江戸時代後期、鉄砲鍛冶でありながら、望遠鏡や潜水艦など様々なものをつくろうとした、国友村の一貫斎のお話。実在した人物。いつまでも明るい灯明や、墨がなくても書ける筆があったらいいな。それを夢物語で終わらせず、思いついたことはやってみる一貫斎。失敗するのは当たり前、何十回、何百回失敗して、そこから掴めるものがある。彼の物作りにかけるまっすぐな情熱が周りを巻き込んでいく。一貫斎の作った望遠鏡の主鏡と副鏡は、現在でも錆びず輝きを失っていないそうだ。

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著者プロフィール

歴史・時代小説作家。1956年京都生まれ。同志社大学文学部を卒業後、出版社勤務を経てフリーのライターとなる。88年「信長を撃つ」で作家デビュー。99年「弾正の鷹」で小説NON短編時代小説賞、2001年『火天の城』で松本清張賞、09年『利休にたずねよ』で第140回直木賞を受賞。

「2022年 『夫婦商売 時代小説アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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