望月の烏

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163918068

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった、面白かったが
    奈月彦がいないのが、やっぱりつらい。そして、
    雪哉(博陸侯)が悪者に描かれるのがつらい。
    本作の主役は落女澄生、そして今上凪彦。
    澄生がねぇ、、というところが面白くはあるが、
    今一つ澄生がどないしたいのかわかりづらい。
    オルテガの大衆の反逆をふと思い出し、再読したくなった。
    どこに置いてるんか、、


    「みんなで決めるということは、
    誰の責任にもならぬということなのですよ。
    右を向くか、左を向くかで何百万の民の
    命運が決まるような選択を迫られたとしても、
    間違ったところで自分の責任にはならぬと思えば
    その誤った決断はいとも軽く下されるわけです」

  • 凪彦のために集められ、登殿の儀に臨む、四姫。
    最初は四家の力関係に配慮していた凪彦だが、ある時、ひとりの女性に目を奪われ……。

    八咫烏シリーズ第12作。

    最初は、また登殿の儀で四姫の争いをやるのか、と思ったが、メインはそこではなく、途中から新たな展開に。

    女の戸籍を捨て、男として、主に官人として生きる〈落女〉。

    澄生のしたたかさと、俵之丞の貴族と仕事に対する距離感。
    宗家や宮烏を軸とした作品に比べると、庶民的な雰囲気で、視点が変わって新鮮。

    澄生が本性を現してからが、テンポよく、おもしろかった。

    澄生と博陸侯の今回の戦いは、ジャブといった感じ。
    今後、さらなる騒動に発展しそう。

  • 本当にワクワクする。
    どんな展開になるか、この先に何が待っているか…。読めば読むほど深みにハマってしまう世界だ。

  • 八咫烏シリーズ第二部4作目。
    金烏代の后選び、登殿の儀。四家の四姫が集う。
    だが、権力関係で桜花宮は、不穏な雰囲気に包まれる。
    しかも、凪彦が注視したのは“傾城の落女”澄生だった。
    序章 第一章 俵之丞 第二章 桂の花 第三章 凪彦
    第四章 松高 第五章 雪斎  第六章 澄生  終章
    用語解説、人物紹介、山内中央図有り。

    かの政変から10年以上が経過し、
    成長した金烏代の后選び、登殿の儀が行われることに。
    以前の登殿の儀とは違う、人間模様が繰り広げられてゆく。
    同時期、朝廷では“傾城の落女”澄生が登場し注目を浴びる。
    金烏代・凪彦もまた、彼女を注視することに。
    だが、澄生の視線の先にあるのは、政治を掌握する
    百官の長・黄烏である博陸侯雪斎(雪哉)だった。
    貴族本位で現在の政治を強権的に推し進める、博陸侯。
    貴族と平民の間にある歪みを感じ、民を守りたい、澄生。
    二人の舌戦による対峙は、山内の滅びを回避したいという
    同様の思いをも、浮き彫りにする。
    それにしても、滲み出る雪哉の孤独感。
    近しい者たちが離れてゆく中、彼は一人で何処へ
    向かおうとしているのか?満ちた月は、後は欠けゆくのみ。
    もしかして、自分を滅する誰かを待っているのか?
    そういえば、垂氷の親族はどうしているのだろう?
    今回は第一部からの登場人物のその後が、多く出てきました。
    菊野、双葉、うこぎ、千早、撫子、そして真赭の薄と澄尾。
    彼らの何人かは、これからの物語にも登場しそうな、予感。
    また、四家の四姫や俵之丞、松高、茜と弟たちも同様に、予感。
    そして、金烏代・凪彦。
    人を見極められる賢い彼が今後どう行動してゆくかも、楽しみ。

  • 今迄の既刊とは作風が変わった様に感じたと同時に次への新しい展開を感じる作品だった。是非続編を待つています。

  • はあ苦しいなんなんだこれ…

    「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」
    は平安時代栄華を極めた藤原道長が詠んだ歌として有名だけど、雪斎はそれと同じようなことを他人から言われている訳で、もちろん雪斎は賢いからそんな褒め言葉で気持ちよくなるはずもなく…
    彼の孤独を感じてしまって苦しかった。

    澄生は紫苑の宮だったことが雪斎の口から明かされたけど民を想う信念とか、真っ直ぐとした強さは父親の奈月彦そっくりで、絶対対峙したく無かったであろう相手と対峙しなくてはならないのがまた苦しすぎる。

    垂氷郷雪哉が博陸侯雪斎になるまで、何故ここまで合理的で冷徹な独裁者然とした人物になってしまったのかを考えるとまた苦しい気持ちになるけど、年月が経っても「紫苑の宮の顔を見間違うはずがない」と断定する程に執着というか愛というかとにかく強い気持ちを奈月彦のいた頃の山内に持ち続けていること、今作の終盤で治真の問に対して反射的に「なるべく殺したくはない」と呟いたこと。
    たったそれだけだけどまだ少しは希望はあるかなって思った。(そう思いたい、の方が正しい)
    逆にその発言で雪斎ではなくて雪哉らしいというか、心の底にあるものが少し見え隠れした気がするのが痛々しい。

    最初は鶴が音の不遜な振る舞いにいらいらしてたけど雪斎や澄生、凪彦たちの立ち回りが混乱を極めてくると桜花宮の姫さま達の不憫さが一層際立つし鶴が音の思い上がり甚だしい態度もバカ正直で自信家なところも愛おしく思えてきたから不思議。
    けど鶴が音の傲慢さと真赭の薄が桜花宮に入内した時の傲慢さは全然雰囲気が違うなとも思った。
    真赭の薄は己の類稀なる美貌を1番の根拠に自信を持っていたけど鶴が音は自分の家の背景にいる雪斎や己の知りうる情報を1番の根拠にマウントを取るタイプなので。
    自信の根っこに己がいるか他人がいるかの違いは大きいなと感じた。
    ここから四人の姫たちがどうなっていくかも楽しみ。
    蛍が凪彦に耳打ちした内容も気になる。
    個人的に今回好きだった姫は桂の花。
    山吹、蛍、鶴が音と違って立場上目立つことはないけど奥ゆかしい、慎ましくてとっても可愛らしい姫さまだった。

    楽園の烏で山内の状況ががらりと変わったことを突きつけられた訳だけど雪哉や澄尾、真赭の薄といった面々が第二部で描かれるとやっぱりもう「あの頃」では無いんだなぁほんとに変わってしまったんだなぁということがまざまざと突きつけられて…
    もちろん変化することは悪いことではないのだけど、第二部で描かれている山内の変化はあまりにも失うものが多すぎて、ね。
    第一部も中々に辛かったけどそれを乗り越えた先の第二部にはさらなる地獄が待っていた感じ。

    とにかく私は真赭の薄が大好きなので、自分の信念に基づいて日々を過ごしていること、澄尾と夫婦になったこと、子を儲けて素敵な家庭を築いていること、それを知れただけでもう幸せ。

    あと4月からのアニメ化も楽しみ。

  • 対立の経緯が明らかに。
    互いに山内のためといっても、一方は苛烈すぎると思うしもう一方は理想が強すぎる気がして、どちらにも肩入れできずになんだか息が詰まる。
    彼が役割に徹しているだけなのか、それとも多少は本意なのか、どちらにせよ悪の部分が目立っているのも辛い。
    時系列としてはこれで第二部の一作目に繋がるのかな。続きが気になる。

  • シリーズを読み直さなかったので、忘れている部分も多々あって混乱したけど、無茶苦茶面白かった!
    止まらなくて一気に読んでしまった。
    雪哉ぁー!と何度思ったことか!
    凪彦が聡明な気持ちの分かる金烏代で良かった。
    それぞれが山内をなんとかしようとしているのに、どうにもすれ違うというか、理想がずれてしまう。
    博陸侯(雪哉)がえげつなくて、びっくりするんだけどそれよりびっくりしたのは、紫苑の宮がまさかの澄生だったこと!
    浜木綿と紫苑の宮は死んでるわけないと思ったけど、まさかだったー。
    物語が一気に動く!次作はいつ読めるのだろうか。
    にしてもあせびがやっぱり怖くてどきどきするし、北家の鶴が音がもーなんもいうか滑稽過ぎて笑ってしまった。

  • シリーズ最初からずっと面白いんだけど、巻を重ねるごとに面白さ加速しててバケモノじみている。終始雪哉おまえ…………とキレることしかできない。エピローグずるい。

  • 待ちに待った新刊は、帯の文言に軽い衝撃を受け最後の数ページで時の流れを衝撃をもって知る。
    読後すぐに楽園の烏を引っ張り出して再読。
    楽園の烏が初読と違う感想に…
    間違いないのはラストがいつなのか、どうなるのか全く分からないけどこれだけは分かる。

    その時わたしは絶対に大号泣する!

    その時まで読み続けていきたい。

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著者プロフィール

1991年群馬県生まれ。2012年早稲田大学文化構想学部在学中、史上最年少の20歳で松本清張賞受賞。デビュー作から続く「八咫烏シリーズ」は、松崎夏未氏による漫画化、中台翻訳など進行中。19年『発現』(NHK出版)刊行。

「2023年 『烏は主を選ばない(4)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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