決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163915524

作品紹介・あらすじ

辞任させられたCEOが挑んだ勝ち目のない戦いは類例を見ない大逆転劇を生んだ。ドラマよりドラマティックな企業ノンフィクションの新たな傑作!

コーポレートガバナンスとは何か?
会社とは誰のものか?

(目次・抜粋)
第一章 霹靂 
LIXILグループの社長兼CEOの瀬戸欣哉のスマートフォンが突然鳴った。「急な話だけれど、あなたには辞めてもらうことになりました」

第二章 齟齬 
なぜ瀬戸は辞任させられたのか。取締役会議長で、事実上のオーナーである潮田洋一郎とはいくつかの点で経営への考え方が異なっていた。

第三章 真相
電話での「通告」から四日後、CEO交代を発表する記者会見は異様な雰囲気に包まれた。その日の晩、瀬戸の事実上の解任の経緯が明らかになる。

第四章 波紋
瀬戸の辞任劇を異常なことと感じ、LIXILグループの幹部、マスメディア、機関投資家など、社内外の関係者が動き出した。

第五章 決断
第六章 蜜月
第七章 反骨 
第八章 仰天
第九章 秘密
第十章 共闘
第十一章 布告
第十二章 集結 
第十三章 正義
第十四章 援軍
第十五章 混沌
第十六章 深謀
第十七章 激突
第十八章 敗北
第十九章 不屈
第二十章 奇跡
ついに運命の日は来た。二〇一九年六月二十五日、LIXILグループ第七十七回定時株主総会で待っていたのは信じられないような大逆転劇だった。

感想・レビュー・書評

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  • 【決戦!株主総会。LIXIL死闘の8カ月】
    1.物語
    ノンフィクションです。2018年から2019年に発生した東証1部上場/LIXIL社の物語です。3%株主かつオーナー経営者と雇われ社長が経営方針と経営権をめぐり対立します。その一部始終が記載されています。

    2.購読動機
    株主総会は、会社が起案する議案と株主が起案する議案の2種が存在します。外部からはどちらの議案が決議されたのかは?判断することができます。
    一方で、議案が決議されるにあたってどのような議論がされたのかは?議場に出席した株主でない限り判断することは困難です。
    このLIXILの経営権をめぐる対立は、当時の報道を通じて目にする機会が多かったです。
    そこで、株主総会と経営権の2つを勉強する意味で手に取りました。

    3.学び
    LIXIL現CEOの瀬戸社長(Monotaro創業者)の考え方、行動、そして人となりが記者の取材を通して感じ取れる内容です。
    ①正しいことを行う。
    ②あきらめない。
    ③何がために、誰のために経営をするのか?
    この3点がぶれることはありませんでした。また、朝5時に起床してルーティンを行っていることも大変に関心深かったです。

    経営権を取り戻す過程についても学びがあります。
    1)臨時株主招集に向けて。3%株主をどう集めたか?
    2)元CEOとして、どのように事実・意見を公表していくか?広報活動。
    3)議案賛成の取得に向けて機関投資家とどのように対話をするか?
    アクティビスト、パッシブ、アクティブ。3タイプ使い分け。

    4.読み終えて
    瀬戸社長そして瀬戸社長を支えるチームが相当の量をこなしていたことが読み取れます。
    瀬戸社長は武蔵から東大に進学した実績をもつ方です。それほどの方が、情熱と努力をもって経営を為していることにまず感化されました。
    そして、経営権を取得していくにあたっての戦略策定です。会社側提案の議案事項のどこを弱点として戦いを挑むのか?
    LIXILで実際に起こったことがこうして書籍になり、読者として学び、感じ取ることができることに感謝します。

  • ひと言で言うと、べらぼうに面白かった。。

    LIXILという住宅系の建材の会社で起こった創業者と経営陣の骨肉の争い。
    言葉は悪いけど、ドロドロしていて、何でもありの世界。
    遠くから眺めている分には面白いけど、株主からすると「ふざけんな」だし、
    従業員とか取引先が可哀そうで仕方ない。。
    が、とにかく面白くて仕方がないノンフィクション。

    簡単なあらすじを言うと、LIXILでプロ経営者として雇われた瀬戸氏が
    突然、創業者の潮田氏から解任を告げられるというところから話はスタートする。
    しかも潮田氏は二枚舌を使っていて、経営者を決める指名委員会では、
    「瀬戸氏は辞任したがっている」と伝え、
    瀬戸氏には「指名委員会の総意で辞任してもらう」と伝えたところ。
    この本は瀬戸氏サイドに立った本なので、潮田氏の言い分もあるのかもしれないが、
    これだけ読むと悪徳代官の創業者 潮田氏といったところか。
    そこから瀬戸氏は泣き寝入りせず、「正しいことをする」と心に誓って、
    活動を開始するのだが、潮田氏サイド(会社側)から色々な妨害を受けていくというストーリーです。
    まさにリアル半沢直樹的な話の展開な訳で、面白くないはずがありません。

    この本では、潮田氏寄りの登場人物は結構辛らつに書かれていて、
    潮田氏を初め、元マッキンゼーの山梨氏とかボロクソです。
    潮田氏サイドかどうかは微妙ですが、前CEOの藤森氏もしかり。
    そんな一般的には「優秀だ、すごい」と評判の人たちも
    「いやいや、そんなことないよ」と化けの皮をはがすようなラディカルな本ですが、
    INAX側の創業家である伊奈氏は男前すぎてカッコイイ。
    こういうところで、人の素性って滲み出るものなんですね。。

    「瀬戸さん、それは違うよ。瀬戸欣哉は正義の闘いをしようとしているんでしょ。伊奈家が支えなかったら、あなたの闘いが本当に正義なのか分からなくなる人もいるでしょう。伊奈家が機関投資家のみなさんと手を携えるのは、あなたの闘いが私欲にまみれた独り相撲ではなく、正義を貫いていることを保証することなんだと考えてください」

    (瀬戸氏の伊奈家と潮田家の闘いと見られる懸念に対して、)
    「サステナブル経営とコーポレートガバナンスの進化」を読んで、
    コーポレートガバナンスの全体像について何となく理解したので、
    次は具体事例が知りたくて、読んでみた本だったのですが、
    セットで読んで理解も深まってとても良かったです。

    ※サステナブル経営とコーポレートガバナンスの進化
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4296110640#comment

  • 冒頭に「コーポレートガバナンス(企業統治)に関する本」と言われると、小難しい制度の解説本なのかな?と思ってしまうんですが、さにあらず。
    本著、カッコいい大人たちが、ルールに則ってやったケンカ(笑)の一部始終を纏めた本です。
    創業家出身の実力者が、わざわざ外から呼んできたプロ経営者を追い出し、しかし追い出されたプロ経営者が泣き寝入りせず戦いを挑み、勝つことはほとんど不可能と言われる株主総会で勝利を収めた、というのを「温度高め」に纏めていて、読みだすとこれが止まらない…。

    しかし絵に描いたような勧善懲悪の美しいストーリーで、創業家出身の実力者が恣意的に経営者を追い出し、最初はうやむやにされそうとしていた中で、徐々に仲間を得ていき、ついには株主総会で会社提案と株主提案が激突する…。
    おかしいと声を上げた機関投資家ポーターキャピタルと、「知ってしまった以上、行動するしかない」と決断した機関投資家マラソン。こういった人たちが実名で本に登場するというのも凄い。

    しかし、コレでコーポレートガバナンスについて知った気になれるかというと、ストーリーが面白過ぎるんだよなぁ。。
    ただ、本著の発端は人事権の濫用であって、LIXILという会社がこの1件から学び、指名委員会が健全に運営される環境を整えたのも事実です。
    願わくば、多くの企業において名ばかりではない、実のあるコーポレートガバナンスが根付きますよう。

    ちなみに、創業家の潮田氏も前CEOの藤森氏も、本著では完全に悪役ポジションであったにも関わらず、取材を無視するのではなく文書での回答は返していたというのは、経営者としての責任と胆力を感じました。
    この2人からすると、別の言い分もあるんでしょうか。

  • LIXILで約3%の株式しか持たない創業家出身者が、外から呼んできたプロ経営者を追い出すという事件。勝目の薄い戦いに臨んだプロ経営者がこの戦いを勝ち取った。経済小説やドラマのようなノンフィクション。凄まじい攻防に臨場感あり、ページを捲る手が止まらない。

    プロ経営者というのが瀬戸欣也。東大ではあの村上世彰とも同級生。本著には村上ファンドも瀬戸欣也の見方として登場してくる。瀬戸は住友商事出身でモノタロウを立ち上げたやり手社長だ。

    対して創業者側。そもそもLIXILは、2011年に誕生。トステムとINAXが統合した後、住生活グループに社名変更。その後、サンウエーブ工業や新日軽、東洋エクステリアとくっついて今の形。相手はトステムの創業家で現役のLIXIL経営者。

    外遊中の瀬戸に一本の電話。「指名委員会の総意で、あなたには辞めてもらう」物語はここから始まる。片方には、瀬戸が自ら辞めたいと、片方には皆んなの総意だと。偽計によって人事を左右した結果として株価を下げたのであれば、株主代表訴訟の対象にもなる。経営陣が割れる。

    コーポレートガバナンスの是正に挑む死闘の記録。お家騒動とも異なる、権力と組織の私物化の果て。どんな集合にも、ルールで他者を操る構造には誤った支配が及ぶリスクはあり得る。戦うなら、戦う意志と力が必要だ。

  • 面白い。

  • ハゲタカじゃないですか。
    いや、相手の言い分もあるのかもしれないけど
    こう本当に創業者一族による利益確保とか、やりたい放題ってあるんだなと驚き。
    偉くなった人って不遜になってしまうんだなあと残念だ。

    フィクションか?と思うほどで、事実は小説より奇なりだ。
    不謹慎かもしれないが、面白くて一気読みでした。
    覚悟がある人がいるかどうかで局面は変わるんだとつくづく思った。

  • 何というか、事実は小説より奇なり。あっという間に読み進められた、興奮した!

  • 日本社会で「正しいことをする」のがいかに難しいかがよくわかる。瀬戸氏がここまで自分を貫くことができたのは、すでに起業に成功し、「お金」「余裕」があったからだ。それほど、莫大なお金を費やさないと「正しいことをする」ことは日本では不可能なのだと思い知らされる。大きな組織に有利になるように「会社法」や「株主総会」の仕組みは煩雑になっているから、前CEOとはいえ、一個人が組織ぐるみに対抗するのは「金銭的なハードル」が高い。かくして世の中には「泣き寝入り」が横行することとなる。

  • 経営者として招聘してくれた創業者の方針と対立する経営を進めるのは、それが会社にとって正しいと思っていたとしても、神経が削れて辛いよなあと思う。活躍する経営者は、合理的な判断はもちろんだけど、強い精神力も持ってないとダメで、それは色んな修羅場を経て養われることもあるだろうけど、周りの目が気にならないような心構えを生まれつき持ち合わせてたりするのかもなと思ったりする。
    一般的には、法人にとって正しい判断をすることが大事だし、上場会社は株主や債権者に説明責任を負ってるので、やっぱり創業者の想いが優先され過ぎるのはダメなんだろうなあ。基本は一族経営の会社って、その一族の想いに賛同する人たちが集まればいいから、創業者の好きなことやっちゃいなよ、人生一回きりだからね、っていうのもそれはそれでありだと思うんだけど、それするんだったら上場したあかんでって話なのかも。
    日本と韓国で歴史の解釈が異なるように、過去の事実は各個人の見方があるので、潮田さんや会社提案の取締役には彼らなりの振り返りがあって、この本を読んだときに公正な目線で書かれてないなと思ったりもするのかも。名だたる会社の経営者になる人って相当な経験を積んでるはずで、当たり前だけど合理的な判断を積み重ねてきた人たちだから、違うストーリーがきっとあるんじゃないかと思っちゃいますねー。
    総じて面白かったです!仕事って意見持って進めないと面白くないけど、意見持ち始めると人とぶつかること不可避だから、気持ちが廃れちゃう時ありますが、瀬戸さんの力強さに励まされるところありました。あんがと。

  • 一気に読了しました。
    Do The Right Thing(正しいことをする)という理念に従って行動することで、多くの方々の協力を得られた様子が描かれています。
    仕組みがあっても、それを使いこなすのは「人」てます。その「人」が不正を働いては、せっかくの仕組みも台無しになってしまう。
    Do the Right Thingを実践していきたい。

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