- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163914190
作品紹介・あらすじ
伝説のフォトジャーナリスト最後の3年間
20歳の時、51歳のフォトジャーナリスト、ユージン・スミスと出会ったアイリーン・美緒子・スプレイグ。二人は、チッソの工場排水が引き起こす未曾有の公害に苦しむ水俣を目指した。
世界に衝撃を与えた、人生最後の一枚を撮るために。
物語はアイリーンの曾祖父、岡崎久次郎まで遡る。自転車製造業を起こし、明治の青年らしい立身出世を遂げた久次郎。その岡崎家の没落と、ユージンの破天荒な生い立ちが、二人を水俣へと向かわせた――。
取材開始から十年。近代化の傷と、再生を勝ち取った魂の闘いに迫る大河ノンフィクション。
感想・レビュー・書評
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日本公開記念!映画『MINAMATA―ミナマター』×グリーンピース・ジャパン SPオンライントークイベント - YouTube
https://m.youtube.com/watch?v=kvEcz0u8VkM&feature=youtu.be
「魂を撮ろう」石井妙子著/文藝春秋|日刊ゲンダイDIGITAL
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/294948
『魂を撮ろう ユージン・スミスとアイリーンの水俣』石井妙子 | 単行本 - 文藝春秋BOOKS
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163914190 -
映画MINAMATAから来た。圧倒的衝撃力で突き刺さった今年No. 1候補。こんなにも突き刺さったのは、何も知らずに生きてきた自分のなんというか無力感でもあった。教科書的なことしか知らないから、この非情な現実も会社や国の態度もそこで生きる人たちの葛藤もそしてそこに共に生きた写真家のことも、その全てに衝撃。そこで今も必死に生きる人々も、狂気的写真家ユージンも共に水俣を生きたアイリーンも、その必死な生き方が伝わる。
本の最初に差し込まれている数枚の写真に関する物語。最後の写真(それは水俣写真集の最後の写真でもある)の意味。ユージンが過去に賞賛を浴びた「楽園への歩み)との対比。ユージンと著者が問いかける、水俣からの学びは、少なくとも僕にはこれまで生かされていなかった。現代社会にはどうだろうか。月並みな表現力が歯痒いけど、出会えて良かった本。出会わなければいけなかった本。 -
読み終えたあと しばし放心してしまう
優れたノンフィクションに出逢ったときに
経験する
そんな一冊です
単なる固有名詞としてしか知らなかった
ユージン・スミスさん
アイリーンさん
ミナマタ
チッソ
有機水銀中毒
水俣闘争
それらの単語が
次から次へと
有機的につながっていく
それも密接な関連性を持ってつながっていく
石牟礼道子さん
渡辺京二さんの
著書の時とは また違った感動を
持つことができた
ユージン・スミスさんの一枚
アイリーン・スミスさんの一枚
石牟礼道子さんの著書に
出逢うたびに
思い起こす一冊になりそうです -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/784784 -
本書は、戦争ジャーナリストとして有名な写真家ユージン・スミスとその妻アイリーンの物語である。彼らは、1971年から三年間に渡って日本で水俣病の報道写真を撮り続けた。狂気を孕むほど写真にのめり込んだユージンはもちろんのこと、もう一人の主人公アイリーンの出自もとても興味深い。水俣は三十歳以上も歳が離れた二人を結びつけ、水俣プロジェクトの終了とともにその関係は終了した。そこで残された写真は『ライフ』に掲載され、水俣の悲惨な状況を世界に知らしめるとともに、環境問題の注目の高まりを後押ししたことだろう。
ユージンはジャーナリズムに関して次のように語っていたという。ジャーナリズムだけではなく、広くプロフェッショナルにも通じる精神ではないかと感じた。
「ユージンはジャーナリストには二つの責任がある、と、よく語っていたという。一つは写真を見る人たちへの責任、もう一つは被写体への責任である、と。この二つの責任を果たせば、自ずと出版社や編集者への責任は果たされる、とも。だから、編集者の言うことに惑わされてはいけない。そのために、出版社と闘い、自分の理想を貫かなくてはいけない。目指すものを撮る。自分の思う、いい作品を。それをすれば、結局は編集者や出版社への責任も果たせることになる、というのがユージンの考え方だった」
「客観なんてない。人間は主観でしか物を見られない。だからジャーナリストが目指すべきことは、客観的であろうとするのではなく、自分に責任を持つことだ」
著者は『女帝 小池百合子』を書いた石井妙子。よく取材されていて、とても読みやすく過去のドラマに没入できた。ユージンを決して善人ではなく、問題を抱えた人物として描いている。水俣における住民の葛藤や、高度成長に水を差す決定をできなかった通産省やチッソの行動もよく説明されている。お薦め。
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この本を読んですぐに昨年度公開されていた『MINAMATA』を観た。ジョニー・デップ主演で、真田広之や浅野忠信もキャスティングされた作品だが、あまり話題にはならなかったのかもしれない。遺族の意志を尊重したアイリーンがその使用を封印した「入浴する智子と母」を事前に遺族に相談することなく使用を許諾したことがどこかで取り上げられていたことを思い出した。
映画は悪くはないが、それだけでは住民の苦悩や葛藤、ユージンとアイリーンの背景などが伝わりきらないと感じた。それは枝葉ではなく、このプロジェクトの核でもあったであろうからだ。
映画を観た人にこそ読んでもらいたい本。そして、ぜひとも『苦海浄土』を読んでほしい。いつかまた『苦海浄土』を読まなくてはと感じた。
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『苦海浄土』(石牟礼道子)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4062748150
『女帝 小池百合子』(石井妙子)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/B0873YLSWN -
水俣被害がこんなにも複雑な事件だったなんて
まったく知らなかった
高度経済成長期の真っ只中、国は未来を担う企業としてチッソを擁護、チッソは廃水のことを知りながらも廃水を流し続ける、地域住民は仕事を失うことを恐れ病を隠したり被害者を差別した者も数多くいた
負のスパイラルがすべてを飲み込み、未曾有の惨劇となった
本書は“水俣被害”を中心に、報道カメラマン ユージン・スミスと水俣によって人生の扉を開いたアイリーンの3つが重なり合う
ユージンの生い立ちから第二次大戦で戦場カメラマンとしての功績とその後の苦悩、ハーフに負い目を感じていたアイリーンがアイデンティティを確立する過程が描かれ、すべてが水俣に集結する
水俣闘争はあまりにも深く悲惨な事件
たしかにユージンの写真はものすごいインパクトがあり、一瞬にして公害の恐ろしさが伝わる
ユージンが撮った水俣被害の写真は世界的に有名になった、けれどその影で辛い思いをしている人たちも少なからずいる
被写体になった水俣の人たちはいつまでも悲惨な姿を写した写真を見せたいだろうか
公害は恐ろしい、こんなことあってはならない
世界はSDGsな社会を目指している、SDGs自体には賛成だけど過去を見過ごしての未来はあり得ないと思う
水俣被害の闘争はまだ続いている -
尾道の図書館で読む。
ジョニー・デップ主演映画「MINAMATA」鑑賞時、ネットで背景を確認して入浴図が遺族の意向により公開が停止されていることを知った。本書では遺族の言葉を引用して詳しく書かれているのだが、映画にはなぜ使われたのか、そのあたりははっきりしない。
土門拳の被爆者を撮影した写真の被写体となったひとたちも、土門が数年後に再撮影を求めたときには拒否したときく。土門はそうした被害者たちの姿勢に怒ったらしい。
本書によると撮影した写真家に著作権があり、被写体にはなんの権利もないと書かれている。
https://wan.or.jp/article/show/9731
魂を撮ろう ユージン・スミスとアイリーンの水俣 石井妙子著:東京新聞 TOKYO W...
魂を撮ろう ユージン・スミスとアイリーンの水俣 石井妙子著:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/article/135841?rct=book
https://ddnavi.co...
https://ddnavi.com/serial/879311/a/