ありがとう、わたし 乃木坂46を卒業して、心理カウンセラーになるまで

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163913919

作品紹介・あらすじ

 乃木坂46に1期生として加入した中元日芽香さんは、「ひめたん」の愛称で多くのファンに愛された人気絶頂の中、2017年にアイドルとしての活動を停止しました。
 実はこの5年ほど前、アンダーメンバーの頃から、彼女には異変が起きていました。摂食障害(過食症)を経験したのです。選抜入りどころか、なかなかアンダーの最後列から前に行けないストレスが、彼女を食べ物に向かわせたのです。そのせいで太ってしまい、メンバーの中で悪目立ちするようになりました。
 それでもアンダーのセンターをつとめる頃には、過食症はいったんは収まります。しかし、なかなか選抜メンバーには選ばれず、握手会でファンから「次こそは絶対選抜だよ」と言われたとき、「もう期待しないで」応えてしまいました。彼女は期待されることに疲れてしまったのです。
 ようやく選抜メンバーに上がり、今度は1列目を目指す、という時期に彼女は、仕事を楽しめていないボロボロの自分に気づきます。家から出られない、涙が止まらない、リハーサルに行けない、笑えない、喋れない、伏し目がち……。ついには休業を余儀なくされました。医師の診断は「適応障害」でした。
 それからの彼女の大きな支えとなったのは、カウンセラーの言葉でした。
「(カウンセリングで)あなたは秀でたものが何もないと言ったけれど、五年間も頑張り続けてきたことがすごいことだと思うよ。誰もができることじゃないんじゃないかな」
「今まで自分が泣けなかったから、代わりに身体が泣いてくれていたんだね。辛かったでしょう。頑張ったね」……
 日芽香さんは心身が回復していくにつれ、カウンセリングに魅力を感じはじめます。そしてカウンセラー養成スクールに入り、カウンセラーとして、自分の辛かった経験を生かす道を歩みはじめました。
 アイドルとして何を感じ、いかにして適応障害を乗り越え、人の悩みを受け止める立場になったのか――。日芽香さんのこれまでの思いを余すところなく綴る、初の書下ろし作品です。

乃木坂46樋口日奈さん推薦!

感想・レビュー・書評

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  • 乃木坂46だった中元日芽香さんのエッセイ。デビューからの軌跡。いきなりの挫折。ストレスからの過食症。仕事への熱意が自分の身をも焼いていく。アイドルの魅力も過酷さも伝わってくる一冊。

    ぼくはこの本で彼女を知ったので、アイドル時代の姿をまったく知らない。それでも、今からでも応援したくなるような熱量に満ちている本だった。苦しかったことがたくさん書かれているけど、風が吹き抜けるようなさっぱりとした文体なので読みやすい。今だからこそ客観視して書き上げられたのかなと感じられた。ただ、いくら時間が経ったとしても、これほどの濃密な時間を振り返ることは凄まじい体力が必要だったと思う。本当に書いてくれてよかった。ファンの方には特にお薦めしたい。

    適応障害の苦しさは、ぼくが体験したうつ病の苦しさにも似てる。家でゆっくり休んでと言われても、不眠で眠れず考えごとは不安のことばかり。当たり前のことができなくなる絶望。そんな時だからこそ、カウンセラーが必要なんだよね。当たり前だったことを、努力や長所へ戻してあげるのは第三者だからできること。ぼくも家族のことで潰れていた時に、包括支援センターの人だけがぼくの心配をしてくれて泣き崩れてしまったことがあった。閉じられた心や人のルールに他人の目が入るというのは大切なんだよね。

    ファンの人たちとの交流も胸があたたかくなった。
    「ファンのために出てきてくれて本当にありがとう。ひめたんのそういうところが大好きです」
    「さようならと言われるのは悲しいから、またねと言ってほしい」
    頑張ってねではなく「頑張ってるね」
    交わされる一言、その瞬間にかけた思いの強さまで伝わってきてよかった。応援し合える関係性って素敵だよね。

    今はカウンセラーの資格で仕事をしつつ、大学で心理学を学んでるってことでいいのかな?新しい世界は不安も多いとは思うけど、楽しいよと言える日々を送っていってほしい。応援してます!

  • たった今読み終わったばかりの感想を。

    アイドル時代には語られなかったような心境が語られていて、物凄く心が動かされた。
    僕自身も過去に心を病んで環境を変えた経験があり、共感する部分も多く(ちょっとまだ頭の中まとまってなくて言語化難しい)。

    主題からは少し外れるけど、ここからは言語化しやすい部分をつらつらと。

    文章全体に、彼女の人となりというか癖が表れてるのが大好きで。ああこれは彼女が書いた文章なんだなと。
    例えば、「選抜に選ばれる」という言葉遣いは「頭痛が痛い」とは違うと説明したり、自分の書いたブログで「芸人」ではなく「コメディアン」と書くべきだったと反省してたり。
    あるいは自分の性格について、こういうところは「嫌な性格」と語っていて、読み手からすると人間的だしそんなに嫌でもないけどなあという部分でも、本人はそう言わずにはいられないんだろうなあという感じが伝わってくるのとか。それを言ってしまうことについても更にもう一歩俯瞰して説明してたり。
    僕もそういう説明をしたがるタイプなので、なんかそういうところも共感してしまった。
    こういう「丁寧さ」が彼女が辛い想いをしてしまった要因かもしれないし、それは僕自身もそうだなと。
    加えて言うなら、物語のオチの綺麗な感じも、なんというか僕が書きそうな文章に思えて共感しちゃう。

    乃木坂ファンとしては、実際に1メンバーが選抜アンダーという枠組みの中で感じる苦しみだとか、あるいはファンの中で囁かれるような指標や言説を気にしている(例えば、アンダーセンターの2作次は選抜に入るなど)というのを知れて興味深かった。
    近年は選抜-アンダーという対立構造によるエンタメは少なくなってきているが、彼女たちのパーソナリティを消費している構造に変わりはなく、考えさせられる部分もある。
    エンタメとして成立させてくれているのは有り難いし僕はそれを楽しんじゃっているんだけど、でもまずは彼女たちに負担がかかりすぎないことを第一に思っていたいなと。

  • アイドルからカウンセラーに転身って、どういう感じなのだろうと思って読んでみた。

    アイドルグループは、バラエティ番組とかで見てて、面白いなぁとか頑張ってるなぁとか思う程度で推しがいたりとかそういうのは無いけど、凄いと思うんだよね。
    著書の中でも、その葛藤や大変さが分かる。

    自身も、そういう体験から心を崩してしまい、その時にカウンセラーと話した経験からもそちらの道に進むきっかけとなった。

    アイドル活動を、いわゆる卒業した他の彼ら彼女らは、今頃何をしているのだろうか。

  • ライブにも握手会にも行ったことはないけれど、かつて憂鬱な日曜日の深夜に観ていた深夜番組での「ひめたん」のキャラと笑顔が好きだったので読んでみた。

    アイドル時代はやはりかなりの頑張り屋でどこにも吐き出さず取り組み続けた結果、オーバーヒートしてしまったようだ。
    夢に向かって頑張っている人の頑張りすぎを止めるのは難しいとは思うけど、10代20代の子達のエンターテイメントの残酷性を売りにして商売してるのなら会社の大人はもうちょっとちゃんとケアしてあげてほしいなぁと思った。頑張っても頑張っても報われず、目指すべき次の目標がわからないのは辛いと思う。

    第2章、第3章で過去の自分やトラウマに向き合って一歩前に踏み出した様子が読めて良かった。努力を人に見せないタイプの努力家の若い人が葛藤や苦しみを文章にしてくれる本はあまりないので、今色々なことで悩んでいる人が読むと等身大の自分を受け入れて一歩踏み出すきっかけになるかもしれない。
    あの頃の日曜日に笑いと癒しをくれてありがとう、と伝えたい。

  • 適応障害という病気は身近にあり、わたしもなりうる病気なんだ。いくら頑張って仕事場へ行こうとしてもいけないというところが共感できました。そんな中、引退を決めて、自分の時間を作り、この体験を心理カウンセラーとして、そんな人たちを助けたい、と、行動に移すことは、ひめかちゃんしか出来ないことだと思いました。

  • 読みやすくて数時間で読了した。ひめたんはこの本ではじめて知りました。アイドルでも悩みの根底は同じだと知り、元気をもらえました。アイドルの実体験が興味深く、またカウセラーとして自分を客観視し振り返っている部分が説得力がありました。ひめたんは完璧主義なところがあって頑張り屋さん。周りからみるともっと気楽にやれば良いのにと思うが、本人にとっては夢中で走り続けていることが幸せなんだろうなあ。

  • 適応障害を患ったアイドルが卒業(引退)し,今は心理カウンセラーに。私は当時かなり応援していましたが,それがちょうど彼女が悩み苦しんでいた時期と重なっていたことを知り,我々の気持ちが重荷になっていたのかもしれないと考えると,少し複雑な気持ちです。この本は,読者に対して細やかな気配りを持って書かれていることが,端々から読み取れます。そして,苦しんでいた当時はともかく,今は,自分・周りを冷静に見られるようになったこともわかり,安堵しています。今いる環境と何か違和感を持って生きている人に読んでもらいたい。

  • 自分と色んな出来事と友達と重なって辛すぎて読みながらたくさん泣いてしまったけどすっきりした

  • 「ひめたん」こと中元日芽香さんがアイドルになってから乃木坂46を卒業、芸能界を引退し、心理カウンセラーになるまでのことを振り返り、これまでに感じ考えてきたことを綴ったエッセイ。
    中元日芽香さんは適応障害になった経験があり、書かれている内容は、元アイドルのエッセイから連想されるような、明るく軽いものでは決してありません。
    選抜メンバーに落選し続け、ようやく選ばれてもすぐにアンダー降格、再び選抜チーム入りした時も3列目で、さらに前に行ける自信がなくなり、目標を失うといった挫折体験、心の葛藤が赤裸々に綴られていて、結構重い内容です。
    この本が書かれた理由は、作者が悩んだようなことは、どの環境・立場にいても根っこにある部分は似ているのではないか、悩んでいる誰かの心に実体験という形でそっと寄り添えたらいいな、という思いだったとあとがきに書かれています。
    読んでいて印象的だったというか、ハッとしたことが2つあります。
    1つ目は、中元日芽香さんは、「ひめたん」は自分とは別の人格であり、「ひめたん」という役を演じていたのだと客観的に見ていることです。心身の調子を崩したのは、「ひめたん」をコントロールしきれなくなったからだと語っています。
    2つ目は、中元日芽香さんは卒業してからしばらくの間、「乃木坂に触れると胸がザワザワする」と感じ、乃木坂に関するものに接することを避けていたという話です。その理由が「わたしにとって乃木坂はトラウマになっている」ということに気づきます。トラウマが解消される過程は第3章に書かれています。

    他人の苦しみに寄り添う心理カウンセラーという仕事は、中元日芽香さんにぴったりだと感じました。
    中元日芽香さんのファンだけでなく、多くのアイドルファンの方、現役アイドルの方、アイドルを目指している方、日常生活に生きづらさを感じている方など、大勢の人に読んでほしいと思います。

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