- Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163913629
作品紹介・あらすじ
2016年から駒場の東京大学教養学部で開講されている人気講義「ボーカロイド音楽論」。
毎年初回の授業は東大生数百人が受講、オンラインでの同時中継では千人を超える視聴者が聴講することも。
もはや東大一の人気講義と言ってもよい。
16回にわたって行われるその講義の世界は、ボカロそのものはもちろん、ボカロシーンを通じて学ぶ音楽・歌・ジェンダー・哲学と、縦横無尽に広がっていく。
初音ミクでスタートした講義の世界はフロイトやラカン、ソシュールも蹴飛ばして、いったいどこまで広がっていくのか……。
つまりは、2020年代の「教養」のすべてがこの一冊にあるのだ。
学芸書として読んでよし、教養として読んでよし。娯楽書として読んでもいける。20代には20代の、50代には50代の「気づき」があるワンダーランドをぜひ体験してください。
感想・レビュー・書評
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「ボーカロイドは、無限そのものではない。けれども、そのような特別な時間に接している。だからその触感が、アンチ・クロノス的、あるいはポスト・クロノス的である。テクノロジーによって寸断されることによってこそ、逆説的に、声は時間の拘束から解き放たれ、真の現在=無限に接近する。しかしその指向性は、恐るべきことに、音楽という大きな営為が長らく目指してきたことと、寸分違わず同じだったかもしれない。魂を鎮めること、時間を鎮めること。あまりに愚直なほどに、ボーカロイド音楽は、真に音楽なのです。」
ー本文より引用
ボーカロイド?初音ミク?なんかよく分からないけど若い人が好きななんか早口で歌うふざけた曲でしょ?
そう思っている人はいませんか。
しかし侮ることなかれ。ボーカロイドの奥深さを本書は音楽論として構築し、教えてくれる。
今をときめくYOASOBIもヨルシカも米津玄師も、みんなボカロシーンを駆け抜けたアーティストだ。現在ドラマやアニメの主題歌、Adoへの楽曲提供をしているのもボーカロイド楽曲を数々手がけてきた(ている)人たちであることも、ご存知だっただろうか?
ボーカロイドは二次創作性の強いものだ。ボーカロイドの元となる声を提供する人がいて、初音ミクなどに関してはキャラクター概観が多少ならずともあり、それらを通して楽曲や動画を作る人がいて、それを聞く人がいる。さらにはそれらの楽曲をカバーする文化もある。
本書は、優しく、すべてのボカロシーンに関わる人たちを包み込むようにして、ボーカロイドとは、ボーカロイドのシーンとは、ボーカロイド作品を通じてアンチ・セクシャルや(セクシャル)マイノリティ、時間、生と死…様々な題材について縦横無尽に語り尽くす。学びの多い一冊だ。
私はボカロが大好きなので、それもあって本書をとても楽しく読めたのだが、ボカロ楽曲を知らない人でも楽しめると思う。
濃密な内容で、じっくり一週間かけて40万文字…500ページを読んだ。
(ボカロシーンを駆け抜けた何人かを著者は本書を通して弔っていたが、読んでいて泣けてしまった。)
本書を先に読んでもよし、YouTubeやニコニコ動画で気になるボカロをいくつか聞いてから読んでも良し、ボカロがすでに大好きだと言う人は言わずもがな、ぜひ読むべし。
ボーカロイド音楽論だが、これは私たちの人生を映した鏡のような本であり、私たちそのものだ。
ぜひたくさんの人に読んでほしい。
そしてボカロシーンの隊列に一緒に加わろう。私たちの物語に。
「ボカロ最高。
だから、自分たちの世代のカルチャーに自信を持ってください。それがたとえマイナーなものであったとしても、自分の感性に自信を持ってください。ジェンダー、セクシュアリティについてももちろんそうです。ひた隠しにしてもいいから、守り抜いてください。あなたはあなたの味方でいてあげてください。そして、できれば…ずっと時間が経ってあなたが大人になったとき、今日の日をいつか思い出して、その時代の若者とマイノリティの声に、耳をそばだてようとしてください。」
イキらないアライを自称する著者はそう語る。
その優しさに包まれ、わたしもまたその優しさのバトンを受け取って次へ繋ぎたいと思う。励まし合いながら、共に生きていこう。自由になろう。
生でこの講義を聞きたかったものだ。
ブクログのあらすじ紹介も素敵ですね。
それでは、
「さよならに、終わりの意味しか知らなかった昨日に、さよなら。」
備忘録がてら、目次をば。
第一部 アンチ・セクシュアルの時代
第一章 ハチ=米津玄師論
第二章 近代的主体と「裏表ラバーズ」〜wowaka論〜
第三章 厨二病はなぜ中2で発症するのか?〜初音ミク小論〜
第四章 人のセックスを笑うな〜DECO*27小論〜
第五章 成熟と喪失〜みきとP小論〜
第六章 融ける世界とフロイト〜kemu小論&はるまきごはん小論〜
第二部 2020年代のジェンダー/セクシュアリティ論
第七章 2020年代のジェンダー/セクシュアリティ論入門〜flower小論〜
第八章 (言語という)かなしみのなみにおぼれる〜あるいは「Neruによるラカン」〜
第九章 「東京テディベア」論〜あなたの身体は誰のものか〜
第十章 サブカルチャーと書いてフェミニズムと読む
第三部 あらかじめ思い出だったすべての声のために
第十一章 身体のディスコミュニケーション〜表象文化論入門〜
第十二章 声の肌理という神話(を引き剥がす)〜現代押韻論〜
第十三章 残響論〜Orangestar小論〜
第十四章 音楽と涙の区別がつかない〜録音音楽と時間〜
第十五章 ポケットが虹でいっぱい〜ぽわぽわP論・前編〜
最終章 Human〜ぽわぽわP論・後編&ボーカロイド音楽論〜
エピローグ
参考文献
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鮎川ぱて『東京大学「ボーカロイド音楽論」講義』を読み終えた。
本書は、その名前のとおり、東大教養学部で開講されている、ぱてゼミこと「ボーカロイド音楽論」講義を書籍化したものである。
初音ミクなどで有名なボーカロイドによって歌唱される曲、ボカロ曲について、ジェンダー論や記号論などを交えながら、作品と作者個人を切り離して批評していく。
特に印象に残ったのは、ジェンダー論についてで、あくまで本書(本講義)のジェンダー論は入門であるとされていたが、
セクシャリティに「他称」はないと述べられているところなど、その人の性はあくまでその人自身のものなのだが、「男の子/女の子だから……」「男/女なのに……」など、普段から無意識に「他称」していないかと反省させられ、
きちんと理解していなかった内容も多く、自分のジェンダーに対してのリテラシーの無さを反省させられた。きちんと勉強しないといけない。
その他、様々な論点についてボカロ曲批評を通して述べられており、読みごたえのある本だった。
本書は「外野」に理解してもらうことを目的としていないとはあったが、米津玄師が「ハチ」という名義で、ボーカロイド曲を多く作ってきた人だと知らなかった人は、是非読んでみてほしい。 -
ポストモダンな批評理論からボカロ曲/Pの批評している感じ、かな。
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物性研の所内者、柏地区共通事務センター職員の方のみ借りることができます。
東大OPACには登録されていません。
貸出:物性研図書室にある借用証へ記入してください
返却:物性研図書室へ返却してください -
桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/1312068 -
P67「凡人はジャンルを否定し、天才はジャンルを創出する」
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【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/779192
東大一の大人気講義が待望の書籍化!
本日が誕生日の米津玄師さんももちろん話題になっています。(※3/10投稿時点)
学術書・教養・娯楽書、どう読んでもよし。
対象年齢は10代以上の全員!が謳い文句の1冊です。 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/779192