DXの思考法 日本経済復活への最強戦略

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163913599

作品紹介・あらすじ

累計9万5000部(電子含む)突破!『コロナショック・サバイバル』
『コーポレート・トランスフォーメーション』に続く「DX成功への決定書」!

「DXの真髄を見事に解き明かした。これからのビジネス、社会を考える必読書」
 ーー松尾豊氏(東京大学大学院教授・人工知能研究者)推薦!

「著者は、時代の数歩先を行く天才だ!」ーー冨山和彦氏(IGPIグループ会長) 絶賛!

会社、産業、社会、そして国家、個人までが
DX(デジタル・トランスフォーメーション)の「対象」かつ「主体」となる時代が到来。

天才ビジョナリーが描く「DX成功の極意」とは。「ミルフィーユ化する未来」とは。
    
†DXの要諦は「抽象化」にある
†抽象と具象を行き来する 
†タテからヨコへ、ピラミッドからレイヤーへ
†あなたも会社もエコシステムの一部に
†「相対性理論」の感覚を実践する
†人工知能と人間の距離をどう埋めるか
†日本の中小企業が真似しやすいのはドイツ
†アリババが自らをケーキにたとえる理由
†ネットフリックスには、なぜ上司の決裁がないか
†見たことのない「万能工場」のつくり方
†自社の製品・システムから発想してはいけない
†読者のUXを研究していた夏目漱石
†各国が注目するインド政府のデジタル化
†10億人に給付金とワクチンを届ける仕組み

感想・レビュー・書評

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  • DXの難しい専門書かと思ったら、違った。我々自身が将来エコシステムそのものになる可能性を示唆しており、これからの社会をどう生きるか警鐘を鳴らす、ビジネスパーソン必読の骨太な一冊。
    模式図(概念図)が沢山あり、読者の理解を促すように組み立てられた丁寧な解説である。
    DX→IX→CX→SX→LXと、壮大で大河ドラマのような展開の論説である。

    読み進めながら、これまでの読書遍歴が役に立った。(と勝手に感じている)

    「本屋の本棚にある本を探す」ことは、既存のモノを活用すること。さらに筆者は、「本棚に無い本を探せ」と力説する。つまり新たに何かを始めるためには、自ら白地図を描いていく必要がある。
    そうか、だから既存の地図(答えの一例)ではなく、指針(コンパス)が必要なのか!ここで、以前読んだ山口周の『思考のコンパス』を思い出した。

    さらに筆者は、物事を解決するために、「具体と抽象を行き来する」必要性を説いている。解決策ではなく課題を念入りに考えることに注力することが重要。これも、以前読んだ『具体⇔抽象 思考トレーニング(細谷功)』のエッセンスである。

    何とか読了できたのも、ブクログライフのおかげである。

    • おおはしつよしさん
      すごく似たようなこと(いろいろ読んできてよかった)を感じましたーー 確かに「思考のコンパス」もなるほどですね!
      すごく似たようなこと(いろいろ読んできてよかった)を感じましたーー 確かに「思考のコンパス」もなるほどですね!
      2023/01/08
  • 2冊同時投稿「DXの思考法」「アフターデジタル」

    必ずしもテーマが綺麗に重なっているわけではないが、私の中で一つのトピックなのでお許し頂きたい。

    で、まあデジタルトランスフォーメーションであるが、平たく言うとなんなのか。
    前者「DX」はその構造的理解を、後者「アフター」はその先端的実装事例を解説してくれる。
    「DX」の肝は、データは階層構造で把握すべき、というもの(本書の例えでいうなら、ミルフィーユ)。「アフター」の肝は、もうリアルの世界でデジタルをどう使うかの時代ではない、両者に境はなくユーザーはそれを意識していない、企業に求められるのは最適なジャーニーの提供だというもの。

    前者は概念中心で使用実例はコマツやダイセルなどごく一部。後者はデータの構造よりは、そこにある何かしらのデータを分析することでユーザーはここまで満足感を味わってくれる、という事例がエキサイティング。一方、そもそもデータとは、という抽象論には立ち入らない。
    どちらが良いということはないが、私個人の関心には「アフター」がよりフィットした。

    ちなみにどちらもデータ分析そのものの指南書ではない。これを読んでも、自社の基幹システムに吐き出させた生データを前にして勝手に手が動き出すということはない。

    何が起きているのかをコンセプチュアルに把握できれば、あとはデータサイエンティストなどプロフェッショナルや人工知能を有効活用すれば良い、という割り切りだろう。
    うむ。
    その通りだろうが、なにかものすごくわかった気はするが、畳の上の水練でシステム予算を溶かしてしまったらどうしよう、そんな不安に駆られる経営層もいるのではないだろうか。

  • 本書で描かれるDXは「インダストリアルトランスフォーメーション」を前提としており、ハードウェアのゼロイチの世界から始まり、壮大な変革論に続いていく。実例や比喩表現も秀逸であり、何周も読み込みたい本であった。

    ・レイヤー構造でエコシステムが形成されている
    ・優良なグローバル企業の特徴として、①顧客の要望を直接伺うチャネルがあり、顧客対応を全て細部まで行なうわけでなく、要望を抽象化することで必要な対応のパターン化する。②顧客のいまの課題ではなく、2、3年後の課題やその先にいる顧客の将来を見ている③ギリギリの標準化を繰り返し、低コストで顧客層や提供価値を広げる

    ・エルブジという古い料理店の事例。世界中から食材を集めて、あらゆる方法で「いじる」(切り方や火の通し方を変え、素材の本質的な味(遺伝子)と形(表現型)を整理する。
    ・食材×調理法×ソースのような表を作る(メンタルパレット)、こういったことを研究するインベンションセンターを持つ
    ・レストランでは日々の天候などの環境や仕入れの状況、メニューを通じて表現される世界観が重視される
    ・インベンションセンターとレストランというレイヤーを分けた。具体的なメニューは流行り廃りがあるが、素材やテクニックのレイヤーは不変。がゆえに、基盤の方が重要。
    ・インベンションセンターとがOSであり、レストランはアプリケーションであるという
    ・バラバラにした素材を具体的に再統合して、ゲストを満足させる鍵は「顧客体験」zUXや世界観が大切という理由は、この時から先取りされていた

    全てのビジネスはこのようなレイヤー、アーキテクチャとして捉えることで、適切な技術導入を行なうことで、大きく産業の形を変えるという。

  • わかったようなわからないような不思議な本。

  • グロービスでお世話になった田久保先生が「必読!2回!」とのことだったのでポチッと購読。

    要するに、業種や職種といった「タテ割り」はどんどんなくなり、GAFAに代表されるように全てがミルフィーユ状の「ヨコ割り」になっていく。その中でどの部分を外部に頼り、自分たちがどこで勝負するか、横並びになっている本屋の本棚にまだない本をどう探すかが大事という話。

    例の一つとして、ネットフリックスはクラウドサービスに全面的に移行する代わりに、顧客の視聴経験の最適化には徹底して自前開発にこだわったものが挙げられている。

    しかし、解説の冨山和彦さんが「本気で危機感を持たなかったら、あなたヤバいでしょ」と書いており、そこまできちんと理解できているかというと怪しいので、やっぱり2回目が必要か。。

  •  この高度成長期を支えた発想、つまり「工場内ではヨコ割り、事業部門間・企業間ではタテ割りで経験を積み、熟練を磨きこむことが強い」「業種というタテ割りの中で戦う/政策を考えると勝てる」という、我が国官民に共通のふたつの発想を打ち砕いたのが、デジタル化である。政府もビジネスも、かつてはIT産業、いまでいうデジタル、スマートビジネスを上記の発想・ロジックの延長線上でイメージした。つまりは新しく「IT産「業」が既存の業界の外側にできたかのように考えて戦い、敗れた。それが我々の経験したことである。だからこそ、我々はいま新しいロジックを理解し身に刻まなければならないのである。

    ■上がってから、はじめて下がる――まずは抽象化、そののち具現化してみる
     このビジコンとインテルとの出会いにはデジタル化の本質の全てがある、と私は考える。まずデジタル化のロジックとは「具体ではなく抽象」だということ、つまり「この手を打てばいま目の前にある具体的なもの以外のものも含めて、何でも処理・解決できてしまうのではないか」という発想である。1種類のものを、もし可能であれば1種類に落とし込めないか、そしてそのときに今は目の前にはない計算機、さらには他の電子機器のことも「探索」しイメージしようという発想である。


     少し脱線するが一つの経験談をお話ししたい。私が東京電力の経営に参画していた時代、旧知のスイス企業を訪ねたことがある。ランディス・ギアといってスマートメーターでは世界のトップ企業であり、訪ねたのは社長のウンバッハ氏である。一時はシーメンスの傘下だったのだが、当時は東芝と産業革新機構が株式を保有していた。サイモン氏も実はドイツ中堅企業にスイスのドイツ語圏にある企業を含める場合が多いので、「隠れたチャンピオン」企業の一つと言ってもよいのだろう。しかし、ウンバッハ社長を訪問した理由は、スマートメーターの件ではない。世界の電力会社、ガス会社、水道会社と取引のあるランディス・ギアの社長から見て、電力会社の次の10年の課題は何であり、どんなエネルギー企業の動きに着目しているか、それが聞きたい点であった。ウンバッハ氏は、独自の資料に基づいて雄弁に説明してくれた。そしてその話は、世界的なコンサルティングファームなどから聞く話とはまた一味違う「芯を食った」話であった。これもまた、隠れたチャンピオン企業は、顧客の将来課題から発想しているということを示す忘れがたいエピソードである。


     ミン・ゾンはアリババが担っているメカニズムは二つだという。一つがネットワークコーディネーションであり、いま一つはデータインテリジェンスである。それを中国的に「陰と陽」として表現している。ネットワークコーディネーションが陽、データインテリジェンスが陰である。ネットワークコーディネーションは、アリババが創業以来関わってきた、オンライン小売市場のタオバオに関係するプレイヤーの間のコーディネーションを指している。関係するプレイヤーは、売り手としての出店者、買い手である消費者、卸売、メーカー、決済事業、ソーシャルメディア、広告、そして出店者をサポートするサービスプロバイダーなどである。その間をデータでつないで最適になるよう調整することをネットワークコーディネーション、と言っている。


     …デジタル化とは、最も単純なゼロイチの物理的な表現から、現実に存在する複雑な人間の実課題を解決することの間を共通のレイヤーをいくつも積み重ねることで連結しよう、というメカニズムである。


     人間の実課題とコンピュータの物理的基盤がどんどんつながり始めている。それは、単なるゼロイチの計算の速さ故、半導体の能力故、そしてデータの量故ではない。アルファ碁の事例で説明したように、囲碁の盤面のパターンと勝ち筋の探索を純粋な計算能力だけで突破しようとすれば、超天文学的なことになる。もともとアルゴリズムとは(ディープラーニングまで持ち出さずとも)、できるだけ早く計算結果に到達できる手順のことを指している。ミン・ゾンがアルゴリズムで動いていない会社はスマートビジネスでないというのは、言い換えれば、会社自体が計算結果(データから価値を生むソリューション)に早く到達できるかたちになっているか、を問うているのである。その「早く到達できるかたち」を、アリババのようにかなり内製化しているか、あるいはクラウドサービスを利用して外部のものを大幅に利用するかは別として、どちらにしてもそれを実現しているのはレイヤー構造をしたソフトウェア群である。
     そして、このレイヤー構造をしたソフトウェア群は、データを処理すればするほど、使えば使うほど精巧になるという進化を指向する存在でもある。


     当時聞いた話で最も目から鱗であったことの一つは、製造業の仕組みは、とどのつまり二つのタイプに分類できる、ということである。一つが組み立て加工型、いま一つがダイセルを含むプロセス産業型である。この二つには大きな違いがある。
     組み立て加工は、ラインを組んだ流れ作業であり、その間で部品・中間材の受け渡しが行われて最終製品に至る。換言すれば、人が工具などを使って働きかける作業を幾重にも繰り返して成り立っているということになる。トヨタのカイゼン方式が活かされるのはこうしたケースである。この方式では不具合があるとラインを止めることになるのだが、その不具合の原因となった人の行動を洗い出し改善することで、ラインを止める時間がどんどん短くなり、かつ流れ自体も速くなる。第2章で紹介した小池和男の分析対象となった日本の熟練の典型的なケースはこちらであろう。
     プロセス産業はこれとは大きく異なる。これも単純化すれば、液体や気体が設備配管のなかを流れている工程だからだ。こちらの場合は、不具合があって設備の稼働を止めるというのは本当の最終手段であり、その時間の長短を梃子に生産性を改善するということはできない。稼働を停止しないために行われるのが、前述した安定化のための予兆監視と介入だということになる。
     また、組み立て加工産業の仕組みを模式化すると、工場の入り口には多種多様な部品があり、出口には限られた数の完成品が並ぶというイメージになる。N(多数)から1を作るという考え方である。これに対して例えば化学産業の工場やサプライチェーン全体を見るとその逆になる。極端にいうと、入口には原油しかない。これに対して出口でできる製品は多種多様である。1からNを作る作業だ、ということになる。


    ■アーキテクチャ理解の急所
    データの場合/夜食のラーメンの場合

    ・アーキテクチャの目的
    データを転換して価値、 ソリューションにする。
    /食材に手を加えて美味しいラーメンにする。

    ・コンポーネントの役割
    データを変換して、得たいデータの状態にすること。それで達成したい差分。
    /食材に手を加えること。それで達成したい差分。麺を好みの硬さに茹でること。

    ・間違ったコンポーネント理解
    ソースコード自体と同一視する。
    /「100℃のお湯で3分間茹でること」と同一視する。

    ・レイヤー構造とは
    データを転換するステップの積み重ね。
    /食材に手を加えるステップの積み重ね。

    ・レイヤーとは
    同じレベルのコンポーネントを並べたもの。
    /同じ段階の手順(「麺を茹でる」「スープを温める」)を並べたもの。

    ・インターフェースとは
    コンポーネントの中で行 われている処理を他のコ ンポーネント、上位のレイヤーから見て隠すこと。
    /スープは「温めたもの」 は「茹でたもの」といちいち言わずに済ますこと
    とは

    ・レイヤーを積み重ね、コンポーネントを増やすとできること
    人間の実課題のソリューションの多くをデータから作ることができるようになる。新しい価値を持ったソリューションも生み出すことができる。
    /ラーメンはもとより、世界中の料理が作れるようになる。新しい料理も生み出される。

  • 感想

    レイヤー構造で物事を考えるのはDXないし、システムアーキテクチャを考える以外でも必要だと感じた。3軸でものを考え、今までのレイヤー構造と違う軸を構築して価値提供の幅(軸方向)を変えていくイメージは、身近な業務でもあてはめられると思う。

    DXに後れをとっている日本はインディアスタックの思想を真似するのが最適なように感じた。既に支配的となっているプラットフォーマーが独占するレイヤーを、行政主導で挟み込むような戦略が必要だ。これら、国民や顧客への価値提供の高度化や質の高い成功体験につながると感じている。

    著者がやっていたように、あらゆる成功事例も勉強しながら、具体と抽象を繰り返して、アイデアを創出したいと思った。

  • DXに関する骨太な本。本質をついた論旨展開。
    正しく外部環境理解しておくべく読書


    メモ
    ・探索のスピードをあげるには地図を持ち、少し遠目をみて運転すること。
    ・IX時代の経営ロジック、デジタル化ロジックを個人と組織の身体に刻み込む。それがDXの本質。
    ・ix時代の地図のようなものを描くこと
    ・自分が中心ではなく相対性理論のように関係性の中に自社がある世界観認識をするべき。
    ・縦型、ピラミッド型ではなく、レイヤー型になることで、できることは広がり、イノベーションも起こりやすくなる。
    ・各社が独自のシステムをまず作り、その一部を共有化するという発想から、共通のレイヤー構造を提供する仕組みが産業、社会の中にあって、それをベースに各社は取捨選択を考え、真に自分で手をかけて作る価値があるものだけ自前で作るという発想に変わっていく。
    ・デジタル化による社会変化はハード発達やデータ量なのの量的な変化だけでは説明できず、ソフトウェアドライヤー構造がもたらす部分が半分以上ある。
    ・ix時代のの白地図はサプライヤー軸のデータ解析層、計算処理基盤層から構成されるとともに、横軸はユーザー軸uiux軸がとおり、課題設定側と利用側の両サイドから構成される。
    ・Netflixが自前開発にこだわった部分。顧客の視聴体験の最適化。マイクロサービスの強化。
    ・本屋の本棚の前でそこにない本を探すこと。
     世界をベンチマークし、少し先のトレンドをみることになる。自社が真に集中すべきポイントが明らかになる。本棚にない本を見つけて開発すると他社に売れるプロダクトに。
    ・開発、カスタマイズ、プロダクト
    ・解決策から考えるとありものでなんとかしようとなる。型にハマらない骨太の解決策につながらない。
    ・IX時代の発想テスト
      課題から考える 解決策に囚われない
      抽象化する 具体に囚われない
      パターンを探す ルールや分野に囚われない

  •  いや面白かった、すごかった、文句なしの★5つです。

     昨年に読んでいたのですが、読書レビューもしたく再読したのですが、よかったです。すごく理解が深まりました。実際に自分で何か行動に移せる(アウトプット出来る)かは不明ですが、読み終えての達成感がありました。 あとは、この本が読めるまでにいろいろと個人的に勉強してきてよかったな、いきなりこの本を読むのは相当難しいんだろうな、とも感じたのが印象です。

     私が営業で担当している企業様より「この本を軸に考えたい」と紹介をいただいたことがきっかけで読んだ本なのですが、改めてこの本に出会えてよかったと思いました。紹介してくださったご担当者様に感謝です。 しかしながら前述しましたが、この本を読んで手触り感を得られるには、相応の事前知識が必要なんだろうなと感じました。この本を読む前に自分が読んできてよかったと思う本は以下の通りです。
     
     -東大准教授に教わる『人工知能って、そんなことまでできるんですか?』
     -人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの
     -両利きの経営
     -世界標準の経営理論
     -シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成
     -コーポレート・トランスフォーメーション 日本の会社をつくり変える
     -アフターデジタル - オフラインのない時代に生き残る
     -アフターデジタル2 UXと自由

     上記をひととおりこれまで読んできた上で、今回の本を読ませていただいたので、(あとは実際自分がもともと計算機を扱ってきていたり、ディープラーニングを勉強してきていたり、DXを提案してきたりしてきた背景も当然あるのですが)、コンピュータがゼロイチで認識する層から人間の課題に直接接する層まで、というレイヤー構造の概念などは比較的理解ができました。読み終えて改めて表紙の写真を撮ろうと帯を眺めた際にウエディングケーキらしき概念物を表現しているところもなかなか味があるなと思いました。

    解説でも冨山 和彦さんがおっしゃってましたが、わかりにくい概念を、極力わかりやすいメタファーとして表現していて読者への理解を進めようとしているところはよく伝わりました。

    「天才西山圭太が、彼の数歩後からついてくる私たちにも分かるように親切に、しかも議論の質を落とさずに仕上げてくれたことに敬意を表するとともに、著述家としての彼の新たな才能を見たように思う。」 

     私も理解力が乏しいので完全に人に教えられるレベルまで至ったかというと疑問なのですが、「天才」に咀嚼していただいた内容を少しは吸収できたのではと感じています。 具体と抽象の行き来の表現や、AIにおける多層構造のディープラーニングの話・パターン認識の話、と読み進めてきたところでの『カレー粉』のメタファーは最も腹落ちしました。 ソフトウェアとか仮想化とかの話で「隠蔽する」とか「ラッピングする」とかの表現が用いられますが、『カレー粉』は、めっちゃありがたかったです。

     読む前に一通り事前知識があったほうがより理解が深まる本ではございますが、非常に勉強になる本なので、ぜひ多くの方に読んでいただきたいと思います。


     ふせんはいろいろ打ったのですが三点のみ引用抜粋します。
    =========
    P39 日本の弱み、日本のカイシャのロジックとデジタル化のロジックがずれてしまっていること、を理解するために重要なのは次の点である。 つまり、「単純な仕掛けをつくると、目の前にないものも含めて何でもできてしまうかもしれない」という一般化・抽象化の思想が、デジタル化の根底に常にある、ということである。そして、そのことがもつ破壊的ともいえるパワーがデジタル化を貫いていて、現代にいたるまで、そして今後ますますそれが影響すを広げつつあるという点である。

    P42 デジタル化のロジックとは「具体でなく抽象」だということ、つまり「この手を打てば目の前にある具体的なもの以外のものも含めて、何でも処理・解決できてしまうのではないか」という発想である。


    P229
     DXのスタートラインは、自社のシステム構成を理解することではなく、まず本屋の本棚の前に立って、その本棚を見渡して、それで自社のビジネスをどう組み立てるかを考えることであるべきだ。自社のシステム構成や業務フローの最適化から発想すると、自社の置かれた競争環境=白地図を見失うことになる。


    P269 解説(冨山 和彦)より
     もし、本書を読んでデジタル化の本質的な意味合い、そしてIXの衝撃の実相を理解できない、実感できない、さらには(危機感であれ、わくわく感であり)マインドリセットをできないとすれば、今後、ビジネスの最前線で闘い続けるのは難しいかもしれない。
     この本に書いてあることが響くか⁉ そして心は奮い立ったか⁉ 本書は著者と私からすべてのビジネスパーソンへ、IX時代の生き残りと飛躍的成長をかけた応援的挑戦状なのだ。
    =========

    以上

    • Sintolaさん
      おおはしつよしさんのレビューを拝読しまして、再読する意欲が湧きました。恥ずかしながら、前回は「何とか読み切った」だけであり、実質的に積読状態...
      おおはしつよしさんのレビューを拝読しまして、再読する意欲が湧きました。恥ずかしながら、前回は「何とか読み切った」だけであり、実質的に積読状態でしたので。。
      2023/01/08
    • おおはしつよしさん
      シントラさん、コメントありがとうございます! ほかの方もコメントされてますが、二回三回と読んでよい本だと思います。 概念的なところでわかりに...
      シントラさん、コメントありがとうございます! ほかの方もコメントされてますが、二回三回と読んでよい本だと思います。 概念的なところでわかりにくいところもあるので、そんなときには、とにかくメタファー部分で、あぁそういうことか!と自分を納得させましょう。
      2023/01/08
  • DX化は単なる既存の業務の置き換えではない。構造そのものの捉え方を変える必要がある。それがレイヤー、アーキテクチゃという発想なのだろう。

    そのために本質的な課題の探求、具体と抽象の行き来、特に抽象的に考えることが一層大切になる。

    世の中を見るための大きな白地図を提示してもらったように思う。自分の中で意味を繋げて統合しなければならないように思う。

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著者プロフィール

経済産業研究所コンサルティングフェロー、経済産業省商務情報政策局長

「2020年 『相対化する知性』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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