ここじゃない世界に行きたかった

著者 :
  • 文藝春秋
3.96
  • (68)
  • (70)
  • (36)
  • (11)
  • (6)
本棚登録 : 1398
感想 : 84
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163913346

作品紹介・あらすじ

あたりまえに生きるための言葉を取り戻す。
出会うべき誰かと強く惹かれあうために――。

アメリカ在住のエッセイストが贈る、瑞々しいデビュー作!


「バズライター」が自分を取り戻すために綴り続けた文章は、ゆっくりと静謐で美しかった。ここじゃない場所へ移動できないときにも、世界を閉ざさないためのしなやかな本がある。
――ブレイディみかこ

日本の内側にも外側にもぽんぽんと弾んで飛びだしてゆく、ゴムまりを思わせるエッセイ集。まっすぐに思索し、いまという時代を映す勇敢なゴムまりである。
――江國香織


SNS時代の求愛方法/エシカル消費とBLMの繋がり/ホラ吹きグリーンウォッシュ/ポストラグジュアリーの潮流/大統領選、青と赤のあわいにある色たち/ミニマルな働き方/とびきり美しい傘/「良いことでは飯が食えない」への終止符を……etc.

note等で大反響を呼んだエッセイを大幅に改稿し、書き下ろし6篇を加えた一冊。
世界の諸問題への視点と生活への美意識が胸を打つ、〈多様性の時代を象徴する〉新世代エッセイ集!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2022年読みたい本BEST3のうちの2冊目!
    読みたい本として選んだ時は読む気満々だったのに、いつの間にか消し飛んでいた。
    読みたい気分が巡ってきたのはそれから約10ヶ月後。図書館の取り寄せサービスを利用する手もあったが、まだ読んでもいないのにどういう訳か側に置きたくなって購入。さすがBEST3の1冊というべきか、読む前からこちらの気持ちを手繰り寄せるようなパワーを感じた。
    ここでは本書の感想というより、そこで受けた感覚を中心に書いていきたい。

    歳が近いエッセイストさんの著書を読んだのはこれが初めてではない。
    エッセイにはご自身の短所や失敗談も盛り込まれがちだが、ドがつくほど不器用な自分からすればどれも可愛いもの。というかエッセイストさん達は(少なくとも自分より倍は)機転が効くから、彼らが「失敗」と呼んでいるそれも、自分では絶対にその程度では済まないものばかり。だから感心はしても最後まで共感できなかったエッセイも少なくない。
    本書の著者もポジティブ思考で人当たりの良い、自分とは真逆の性格。会社員時代は企業の広告やSNSマーケティングにも多く関わり、「バズライター」の異名まで勝ち得ている。
    彼女のこともよく知らず、異彩を放つ略歴ばかりに目が行く。この辺まではやはり感心一色だった。

    ご主人の帯同で‘17年に渡米、NYでの暮らしや心境の変化を綴ったのが本書。
    器用な成功者の話を聞いてまた落ち込むのかと覚悟したが、読めば読むほど、この人についてもっと知りたくなった。幾つもの共感ポイントが生まれた。
    例えば会社員時代は今のクリーンなプロフィール写真からは想像ができないくらいにボロボロなご様子。自分のダメダメだった働き方に相通じるものがあって、自分がこの世で一番不幸な人間なんだと言いたげな彼女が(文章を読んだだけなのに)面白いくらいにくっきりと浮かんだ。

    「現実を嘆いて存在しないユートピアを夢見るよりも、今を少しでもマシな方向に進めるほうがずっといい」

    ページを捲るたびに付箋したくなる言葉が顔を見せるのだが、早くもマーキングを諦めた。
    と言うのも不思議な言葉選びでありながら、ついつい読み耽ってしまう文章。そしてその中で”対話”している感覚。彼女の言葉に続いて「そうそう!私もさぁ…(ペラペラ)」と発言したくなる。
    まさか冒頭で書いた、「読む前からこちらの気持ちを手繰り寄せるようなパワー」の正体はこれだったのか⁉︎

    読者への教訓や「私はこう頑張ってきた」アピールが顕著でなかったのも、共感ポイントを増やせた秘訣なのかも。
    おかげで気分良く読了できたが、回帰したその時にまたレビューを書きたい。それがいつまた巡ってくるのかは予測できないけれど、今度はいつでも手の届くところにある笑

  • 著者のことは全く知らなかったがインタビュー記事で気になり読んでみた。題名からは現実逃避のような印象を受けるけど、そうではない、むしろ逆。インターネットの世界である程度影響力を持った塩谷さんが、自分の気持ちを表現する言葉を探しながら、とても責任ある態度で真剣に生きている姿がまぶしい。32歳、平成になる前年に生まれた塩谷さん。まだ若くて、もがきながら進んでいる感じ。
    数日前に読了した明治生まれの寺田寅彦氏の随筆…大正〜昭和初期、寺田氏40代後半〜50代、全てを達観したような文章。偶然続いて読むことになったのが、感慨ぶかいな。

  • 塩谷舞さんは「バズライター」と呼ばれた方。SNSに疎い当方は恥ずかしながら今回本書を手にして初めて知った。2018年〜2021年秋の期間、アーティストの夫の帯同でアメリカ東海岸で生活し、このエッセイ集もその際に書かれたもの。生まれ育った大阪の千里ニュータウンのこと、子供時代や学生時代のこと、仕事のこと、コロナ禍、NYで感じたこと、米国内の格差のこと、地球規模の課題に対する自身の考えなど、さまざまなトピックが取り上げられている。本書を通じ、働き方や生き方に少しずつではあるが多様性が出てきていることを実感。塩谷さんはそうした新しい時代のインフルエンサーなのだと思った。これからの発信も楽しみにしたい。

  • アメリカ在住、塩谷舞のエッセイ集『ここじゃない世界に行きたかった』刊行 - 書籍ニュース : CINRA.NET
    https://www.cinra.net/news/20210219-shiotanimai

  • 一見クールでタフな人かと思ったら、賑やかな大阪のお姉ちゃんと言う感じで本の写真とイメージが違うなと。傷つきやすく、身体もあまり丈夫ではなく、とても繊細でナイーブ。大阪から京都、東京、ニューヨークやアイルランドと環境を変え成長していく様が良くわかる素敵なエッセイ。

  • めちゃ素敵な人による素敵なエッセイ。
    塩谷さんは存じ上げずに母親の勧めで読んだが、想像以上に面白く、不思議とゆったりと落ち着く気分になる本だった。
    「バズライター」という肩書きで紹介されることが多い作者だが、目まぐるしく変わっていくSNSに対する違和感や日本と海外の文化の差を綴っている。
    急遽29歳にしてニューヨークへ移住して、バタバタと生活しながら、感じた海外の文化や考え方、様々な人に触れて、自分を似たような思想や問題意識を持っていてとても面白かった。日本ではまだまだ話されないが海外では普通に生理やフェミテックの広告についてだったり、BLMのムーブメントが高まっていて、トランプvsバイデンの選挙中で、コロナ中のニューヨークというとても激動の中、実際に過ごした方の文章を読むのは初めてだった。
    この本を通じて様々な人と繋がったような気分になったし、本に書いてあったネトフリのドキュメンタリーが観たいな〜と興味の幅が少し広がった気がする。
    表紙も含めて全ての写真がおしゃれだった!

  • 自分の視野はまだまだ狭いなと実感。
    テレビのニュースを見ているだけじゃわからなかった大切なことをたくさん知れた。

    女性のルッキズムについての話が面白かったのでもっと掘り下げてほしい。
    日本の女性独特の息苦しさを感じた。
    社会の中で浮かないよう必死になるより、自分の精神や体を守ることの方が大切だと思う。

    どんな場所にも良さがあるのはわかるけど、どこかに行きたい!って思うなら行っちゃえ!って思うなぁ。本当に耐えられなかったら。

    ただ現実で起きている問題を受け止めることはどこにいても大事だと思った。

    私も家庭ゴミを徐々に減らしていこう。

  •  とても落ち着いていて、低い声のおしゃべりを聞いていたようなエッセイだった

     やりたいことを、やりたい時に、わーーーーーーーーっとやって、満足したか、しないかもわからないけど、次々と新しいことに気持ちが渡り歩いている時もある。
     そんなことを一通り気がすむまでやっていたら、やるべきことと、やりたいことがぐちゃぐちゃになっている事に気がつく。
     やるべきことはサッサと済ませて、やりたい事に時間を割くべきだ!と、今までも何度も思ったことがある。そんな事を思い出した。

     『世界のどこに行ったって、自分のために用意された理想郷は存在しない。だったら自分でやるしかない。内側の声に、そして地域の声に耳を傾け、自らの手で小さな理想郷をこしらえてく。それが一番まっとうで、真面目で、美しい在り方なんだろう。そうしてできたものをインターネットに乗せてあげれば、「ここじゃない世界」はあちらから、いまいる場所までやってきてくれるのかもしれない。』


     

  • 2021 塩谷舞
    バズライターだったそうです・・・知らなかったそんな名称も、バズっていたことも。笑

    「美しくあること」

    Nalata
    https://nalatanalata.com/?lang=ja

    「小さき声」

    Say Colllie
    http://saycollie.com/

    「自分がされた嬉しいことを、相手にもしましょう」と教わってきたけれど~~
    確かに、されて嬉しいことは人によって違うわ・・・笑

    美しさというギフトは、誰からももらえないし、どこに行っても買えやしない。親や家族から器や環境は与えられるかもしれないが、与えられてばかりの器では自ら輝きを発しにくい。美しさとはつまり、自分だけが自分に与えてあげられる、大切なギフトなのだ。自己卑下と慎ましさが混同される世の中で、その人らしい美しさを誇らしく思う人が一人でも増えて欲しい、と心から願う。P58

    THINX シンクス
    http://saycollie.com/

    Alla
    https://alla-studio.com/

    わたしたちが、人の話を聞けないのは、自分の正しさを証明するのに、精いっぱいだからです。お互いが、「私は正しい」と主張しているからです。
    自分の正しさを主張するもっとも簡単な方法は、相手の間違いを指摘することですから、とても相手の話など受け入れられるはずがないのです。P99

    この不毛なリサイクルを止める方法はただひとつ。、どちらかが、相手の話を聞くことです。正しさの証明を続けていることが、自分の体に、感情に、どのような影響があるのか、自分の内側の声に耳を傾けることです。相手に十分聞かれていると感じたとき、人は、それ以上の自己主張はしないものですから。
    伊藤守『こころの対話 25のルール』

    自分が饒舌に話すよりも、相手の話をちゃんと聞くほうがよほどむずかしく、創造的な行為である。しかし多くの人は、相づちを打ったりしながら、次に自分が何を話すかということで頭がいっぱいになってしまっている。P102

    お茶に向き合っていることは、自分にむきあっているようなものなんですP119

    競争社会で闘わない 私のルールで生きる

    ミニマルに働くということ

    晴れた日に、傘を買ったお話
    FOX umbrellas
    http://greenwich-showroom.com/brand/fox_umbrellas

    礼儀1.0 相手のために自分の時間を犠牲にして働くこと
    必要以上に高価な物を買ったり、物丈に合わない消費をしたりする「物」の消費

    礼儀2.0 相手の時間を奪わないようにすること
    自分の心地よいものや、時間や、関係性をしっかり見つけて、それを大切にする「心」の豊かさ

    櫻井焙茶研究所
    https://www.sakurai-tea.jp/

    だからもう、価値のものさしは他者に委ねず、自分の五感に置いていくのはどうだろう。そうしていけば、舌が、肌が、耳が、心が、たくさんの感覚を取り戻していく。自分が「ここからここまで」と決めこんでいた五感がひょいと拡張したならば「あぁ、自分は生きていて、ちゃんと生き物だったんだ!」と至極あたりまえのことを、猛烈に思い出すに違いない。窮屈に耐え、すっかり閉じてしまった五感をふたたび拡張させてあげることが、、これからのラグジュアリーなのだろう。そして自分が生き物であることを取り戻すのと同じだけ、目の前にいる人が自然の生き物であることも尊重したい。目の前の相手と厳重な上下関係の中に押し込まれているのであれば、上にいたとて、下にいたとて、五感は縮こまってしまう。互いに好きにやりながら、飾らない文化圏をともに広げていきたいものだ。P163

    茶香炉

    13TH | FULL FEATURE | Netflix
    https://www.youtube.com/watch?v=krfcq5pF8u8

    映画「ザ・トゥルー・コスト」
    https://www.youtube.com/watch?v=krfcq5pF8u8

    本)『ヒルビリー・エレジー』2016光文社

    ドキュメンタリー「アメリカン・ファクトリー」

    働く選択肢を知っているということは、そのまま自由度に比例するP195

    メガギャラリー
    Gagosian
    https://gagosian.com/

    Hauserr&Wirth
    https://www.hauserwirth.com/

    Peace Gallery
    https://www.pacegallery.com/



    グリーンウォッシュとは エコもどき?

    CINRA.NET
    https://www.cinra.net/

    FM802

    高木正勝「大山咲み」フル
    https://www.youtube.com/watch?v=yQJL003y2o0

    LUCA「摘んだ花束 小束になして」Japanese old folk songs ダイジェスト
    https://www.youtube.com/watch?v=sr9kAE8Ctjs

  • 同年代である著者の塩谷さん。
    よくTwitterでお見かけしていたので、本を見つけてすぐ手に取ってしまった。Twitterでは鋭いけどしっくりくるようなひと言を投稿されているイメージだったが、こうして本という形でまとめられていると、ご自身の思いが丁寧に、そして探るようにまとめられていて、より著者の考えを深く理解できた。
    前半の働く事やSNSに対する考え方は、同年代ということもあり、頭が取れそうなくらい頷きながら読んだ。
    一方で後半は塩谷さんのこれからの世の中に対する考え方と世の中をよくしていきたいというモチベーションには、さすがに世界の最先端でインフルエンサーとして活躍させている方は違うなぁと、自分のの不勉強さを痛感してしまった。

    たまにはこうして同年代の方の文を読むのも刺激になっていいなぁ。

全84件中 1 - 10件を表示

塩谷舞の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
カツセ マサヒコ
伊坂 幸太郎
カズオ・イシグロ
エーリッヒ・フロ...
アンデシュ・ハン...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×