- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163913346
作品紹介・あらすじ
あたりまえに生きるための言葉を取り戻す。
出会うべき誰かと強く惹かれあうために――。
アメリカ在住のエッセイストが贈る、瑞々しいデビュー作!
「バズライター」が自分を取り戻すために綴り続けた文章は、ゆっくりと静謐で美しかった。ここじゃない場所へ移動できないときにも、世界を閉ざさないためのしなやかな本がある。
――ブレイディみかこ
日本の内側にも外側にもぽんぽんと弾んで飛びだしてゆく、ゴムまりを思わせるエッセイ集。まっすぐに思索し、いまという時代を映す勇敢なゴムまりである。
――江國香織
SNS時代の求愛方法/エシカル消費とBLMの繋がり/ホラ吹きグリーンウォッシュ/ポストラグジュアリーの潮流/大統領選、青と赤のあわいにある色たち/ミニマルな働き方/とびきり美しい傘/「良いことでは飯が食えない」への終止符を……etc.
note等で大反響を呼んだエッセイを大幅に改稿し、書き下ろし6篇を加えた一冊。
世界の諸問題への視点と生活への美意識が胸を打つ、〈多様性の時代を象徴する〉新世代エッセイ集!
感想・レビュー・書評
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2022年読みたい本BEST3のうちの2冊目!
読みたい本として選んだ時は読む気満々だったのに、いつの間にか消し飛んでいた。
読みたい気分が巡ってきたのはそれから約10ヶ月後。図書館の取り寄せサービスを利用する手もあったが、まだ読んでもいないのにどういう訳か側に置きたくなって購入。さすがBEST3の1冊というべきか、読む前からこちらの気持ちを手繰り寄せるようなパワーを感じた。
ここでは本書の感想というより、そこで受けた感覚を中心に書いていきたい。
歳が近いエッセイストさんの著書を読んだのはこれが初めてではない。
エッセイにはご自身の短所や失敗談も盛り込まれがちだが、ドがつくほど不器用な自分からすればどれも可愛いもの。というかエッセイストさん達は(少なくとも自分より倍は)機転が効くから、彼らが「失敗」と呼んでいるそれも、自分では絶対にその程度では済まないものばかり。だから感心はしても最後まで共感できなかったエッセイも少なくない。
本書の著者もポジティブ思考で人当たりの良い、自分とは真逆の性格。会社員時代は企業の広告やSNSマーケティングにも多く関わり、「バズライター」の異名まで勝ち得ている。
彼女のこともよく知らず、異彩を放つ略歴ばかりに目が行く。この辺まではやはり感心一色だった。
ご主人の帯同で‘17年に渡米、NYでの暮らしや心境の変化を綴ったのが本書。
器用な成功者の話を聞いてまた落ち込むのかと覚悟したが、読めば読むほど、この人についてもっと知りたくなった。幾つもの共感ポイントが生まれた。
例えば会社員時代は今のクリーンなプロフィール写真からは想像ができないくらいにボロボロなご様子。自分のダメダメだった働き方に相通じるものがあって、自分がこの世で一番不幸な人間なんだと言いたげな彼女が(文章を読んだだけなのに)面白いくらいにくっきりと浮かんだ。
「現実を嘆いて存在しないユートピアを夢見るよりも、今を少しでもマシな方向に進めるほうがずっといい」
ページを捲るたびに付箋したくなる言葉が顔を見せるのだが、早くもマーキングを諦めた。
と言うのも不思議な言葉選びでありながら、ついつい読み耽ってしまう文章。そしてその中で”対話”している感覚。彼女の言葉に続いて「そうそう!私もさぁ…(ペラペラ)」と発言したくなる。
まさか冒頭で書いた、「読む前からこちらの気持ちを手繰り寄せるようなパワー」の正体はこれだったのか⁉︎
読者への教訓や「私はこう頑張ってきた」アピールが顕著でなかったのも、共感ポイントを増やせた秘訣なのかも。
おかげで気分良く読了できたが、回帰したその時にまたレビューを書きたい。それがいつまた巡ってくるのかは予測できないけれど、今度はいつでも手の届くところにある笑詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者のことは全く知らなかったがインタビュー記事で気になり読んでみた。題名からは現実逃避のような印象を受けるけど、そうではない、むしろ逆。インターネットの世界である程度影響力を持った塩谷さんが、自分の気持ちを表現する言葉を探しながら、とても責任ある態度で真剣に生きている姿がまぶしい。32歳、平成になる前年に生まれた塩谷さん。まだ若くて、もがきながら進んでいる感じ。
数日前に読了した明治生まれの寺田寅彦氏の随筆…大正〜昭和初期、寺田氏40代後半〜50代、全てを達観したような文章。偶然続いて読むことになったのが、感慨ぶかいな。 -
塩谷舞さんは「バズライター」と呼ばれた方。SNSに疎い当方は恥ずかしながら今回本書を手にして初めて知った。2018年〜2021年秋の期間、アーティストの夫の帯同でアメリカ東海岸で生活し、このエッセイ集もその際に書かれたもの。生まれ育った大阪の千里ニュータウンのこと、子供時代や学生時代のこと、仕事のこと、コロナ禍、NYで感じたこと、米国内の格差のこと、地球規模の課題に対する自身の考えなど、さまざまなトピックが取り上げられている。本書を通じ、働き方や生き方に少しずつではあるが多様性が出てきていることを実感。塩谷さんはそうした新しい時代のインフルエンサーなのだと思った。これからの発信も楽しみにしたい。
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アメリカ在住、塩谷舞のエッセイ集『ここじゃない世界に行きたかった』刊行 - 書籍ニュース : CINRA.NET
https://www.cinra.net/news/20210219-shiotanimai -
一見クールでタフな人かと思ったら、賑やかな大阪のお姉ちゃんと言う感じで本の写真とイメージが違うなと。傷つきやすく、身体もあまり丈夫ではなく、とても繊細でナイーブ。大阪から京都、東京、ニューヨークやアイルランドと環境を変え成長していく様が良くわかる素敵なエッセイ。
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めちゃ素敵な人による素敵なエッセイ。
塩谷さんは存じ上げずに母親の勧めで読んだが、想像以上に面白く、不思議とゆったりと落ち着く気分になる本だった。
「バズライター」という肩書きで紹介されることが多い作者だが、目まぐるしく変わっていくSNSに対する違和感や日本と海外の文化の差を綴っている。
急遽29歳にしてニューヨークへ移住して、バタバタと生活しながら、感じた海外の文化や考え方、様々な人に触れて、自分を似たような思想や問題意識を持っていてとても面白かった。日本ではまだまだ話されないが海外では普通に生理やフェミテックの広告についてだったり、BLMのムーブメントが高まっていて、トランプvsバイデンの選挙中で、コロナ中のニューヨークというとても激動の中、実際に過ごした方の文章を読むのは初めてだった。
この本を通じて様々な人と繋がったような気分になったし、本に書いてあったネトフリのドキュメンタリーが観たいな〜と興味の幅が少し広がった気がする。
表紙も含めて全ての写真がおしゃれだった! -
自分の視野はまだまだ狭いなと実感。
テレビのニュースを見ているだけじゃわからなかった大切なことをたくさん知れた。
女性のルッキズムについての話が面白かったのでもっと掘り下げてほしい。
日本の女性独特の息苦しさを感じた。
社会の中で浮かないよう必死になるより、自分の精神や体を守ることの方が大切だと思う。
どんな場所にも良さがあるのはわかるけど、どこかに行きたい!って思うなら行っちゃえ!って思うなぁ。本当に耐えられなかったら。
ただ現実で起きている問題を受け止めることはどこにいても大事だと思った。
私も家庭ゴミを徐々に減らしていこう。
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とても落ち着いていて、低い声のおしゃべりを聞いていたようなエッセイだった
やりたいことを、やりたい時に、わーーーーーーーーっとやって、満足したか、しないかもわからないけど、次々と新しいことに気持ちが渡り歩いている時もある。
そんなことを一通り気がすむまでやっていたら、やるべきことと、やりたいことがぐちゃぐちゃになっている事に気がつく。
やるべきことはサッサと済ませて、やりたい事に時間を割くべきだ!と、今までも何度も思ったことがある。そんな事を思い出した。
『世界のどこに行ったって、自分のために用意された理想郷は存在しない。だったら自分でやるしかない。内側の声に、そして地域の声に耳を傾け、自らの手で小さな理想郷をこしらえてく。それが一番まっとうで、真面目で、美しい在り方なんだろう。そうしてできたものをインターネットに乗せてあげれば、「ここじゃない世界」はあちらから、いまいる場所までやってきてくれるのかもしれない。』