- Amazon.co.jp ・本 (120ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163912295
作品紹介・あらすじ
NHKスペシャル『コロナショック〜経済危機は回避できるか』著者出演、大反響!▼リーマンショックを超える経済危機は、3つの時間軸で襲ってくる。第1波 日本のGDP7割を占めるローカル産業の壊滅(飲食、小売、エンタメなど)第2波 自動車、電機など大企業 グローバル企業へ波及第3波 金融恐慌の発生・欧米でもローカル経済圏破綻の打撃が大きい(cf.リーマンは金融圏のみ)・中国による牽引役が期待できない ・ソルベンシー問題と逆石油ショックが金融危機へ・破産したくなければ企業は短期PLを本気で捨てよ・手元キャッシュが全て・最悪を想定・危機におけるリーダーの”べからず集”とは?・経済のグローバル化傾向は、このまま続くのか?・企業が、個人が、政府が、コロナショックを生き残る鍵とは?
感想・レビュー・書評
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『コロナショック・サバイバル』は、4/7に7都府県に対して出され、翌週4/16に全国に拡大された新型コロナによる緊急事態宣言もまだいつ収まるのかも不透明な4/30に急遽出版された。著者の冨山氏は、産業再生機構時代にカネボウ、ダイエー、JALなどの企業再生に関わった。
コロナショックは、20年前のバブル崩壊後の金融破綻、10年前のリーマンショックとその後の東日本大震災といった危機に続く大きな危機だが、これまでの危機とは大きく異なる点がいくつかある。それはまずコロナの影響がグローバルであること、それが日本のバブル崩壊や東日本大震災のときと異なる点だ。中国というグローバル経済の成長を牽引するような巨大市場が今回はないことも大きい(中国はすでに大きく成長し、成熟してしまった)。さらに大きな相違点は、今回の経済の影響が金融セクターではなく、観光、宿泊、飲食、エンタメ、小売り、住宅などのローカル経済をまず痛めるということだ。『なぜローカル経済から日本は甦るのか』において著者は、ローカル経済が日本のGDPや雇用に占める割合の大きさを示したが、今回そのローカル経済から影響が始まることが大きい。そういった考察から、今回のコロナショックは、過去の危機をその広さと深さと長さにおいて大きく上回る可能性があると指摘する。
著者らの分析では、今回の危機はまずローカル企業(L)から始まり、グローバル&ローカルな消費停滞によるグローバル企業(G)に影響が波及し、そしてグローバル企業の資金繰り悪化を受けて金融システム(F)の破綻につながるのが最悪のシナリオになる。この流れを何とか食い止める必要があるのだ。その中でも優先するべきは、「財産もなく収入もない人々」と「システムとしての経済」であるという。今の政府の対策は十分なものなのかはわからない。もちろん100点の回答はないことは明らかであり、今の手厚い対策は将来の負担増や打ち手を狭めるリスクも負っている。著者が強く主張するように、危機が去った後、不必要になった手当が残存するようなことは避けなくてはならない。下手な邪魔や、自己満足のための不満の表明などは控えて、個人としての対応策を練るべきなのだろう。
おそらく今回の危機で、もともとの基礎体力がなかった企業は倒れていくだろうと予測する。手元流動資金の潤沢さ、平時における稼ぐ力(営業キャッシュフロー)、自己資本の厚み、が命運を分けるだろう。きちんとした経営がきていない基礎疾患を抱えたゾンビ企業はここで息の根を止められることになる。しっかりとした経営をしてきた企業が、これを機会として優位性の確保や買収などを通してさらに強くなることが期待されている。
著者は、この危機に際して、TA (Turn Around)からCX (Corporate Transform)にまで進んだ企業が次の世代にも生き残るのだという。それはこれまでの日本におけるローカル企業の低生産性と低賃金、グローバル企業の停滞を転換するきっかけとしなければならないのかもしれない。基礎疾患を抱えている企業は退場を迫られるかもしれないと著者はいうが、日本という国家も基礎疾患を抱えていることは明白である。舵取りを誤ると、事態を回復しようもないほど悪くしてしまう可能性もありうる。今のコロナショックは、将来必ず歴史の教科書に書かれるものだ。その危機をどう乗り切ったのかが、企業、国、世界といったレベルで記憶されることになる。その中で通信産業が果たすべき役割もあるはずだ。
本書で書かれたことは、まずは、簡単な現状分析と、それに臨むための危機における経営の心得やべからず集といった一般的なことがらである。具体的な提言について、著者は続編を準備しており、6月にも刊行予定だという。それまでにコロナの収束状況については今よりも見えてきているに違いない。日本的経営というものの病理をあぶりだし、いかにしてCXにつなげて生産効率を高めるのかということが論じられるのかもしれない。新しい働き方や人材獲得のロジックが語られるのかもしれない。その先に、都市集中から地方のコンパクトシティの推進というものを進めることを主張するのかもしれない。いずれにせよ、どういうものになるのか、期待したい。
(参考)
【修羅場の経営の心得】
(1) 想像力 - 最悪の装置を置き、最善の準備をせよ
(2) 透明性 - りそな再建の教訓: Bad Newsをあからさまにせよ、信用毀損をおそれるな
(3) 現金残高 - 短期的なPL目標は本気で捨てろ。日繰りのキャッシュ管理がすべてだ
(4) 捨てる覚悟 - 何を本当に残すか、迅速果敢な「あれか、これか」の「トリアージ」経営を行え
(5) 独断即決 ー 戦時独裁ができるトップ、姿が見えるトップを選び、真の「プロ」を集めて即断即決、朝令暮改
(6) タフネス - DRAM産業(エルピーダ)喪失の教訓 - 手段に聖域を作るな、法的整理でさえ手段に過ぎない
(7) 資本の名人 - JAL再建の教訓 - 2種類の「お金」を用意せよ
(8) ネアカ - 危機は、新たなビジネスチャンス!「国民感情」に流されず投資や買収に打って出よ
【修羅場の「べからず」集】
・見たい現実を見る経営
・精神主義に頼る経営
・人望を気にする経営
・衆議に頼る経営
・敗戦時のアリバイ作りに走る経営
・現場主義の意味を取り違える経営
・情理に流される経営
・空気を読む経営
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『なぜローカル経済から日本は甦るのか GとLの経済成長戦略』(冨山和彦)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4569819419詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
コロナ真っただ中の5月に出た冨山さんのコロナから生き残るための企業サバイバル本。
100ページほどの薄い本だが、とても勉強になった。
でも、この本ズルいわ、笑。
というのも、コロナ下における企業の危機管理のための(生き残るための)本かと思いきや、
どちらかというと、内容は企業が経営危機に陥った時の企業再生ストーリーの本。
著者はそのど真ん中を走りぬいてきた人。
道理でこんなに早く本が出版できる訳だ。
確かに、企業再生下もコロナ下で陥る危機も状況は同じだ、と言われてみればそうかもしれないのだが。
さらに、この本、続編の「コーポレート・トランス・フォーメーション」の前編にあたるという立ち位置だが、
どうも元々は後編の本を前々から執筆していたところ、
コロナが直撃してしまい、より後編の本を売るために、
後から前編のこの本を付け足した感がある。。
ダメな訳ではないけど、ちょっとズルい。
どうせなら一緒にしてくれよと言いたいところだが、
それではタイミングが間に合わなかったのだろう。
一方、内容はとても勉強になる。
企業再生のリアルを詳しく知らなかった自分にとっては、
ピンチに陥った際の企業の在り方などは、学びが深い。
一言で言うと、
「このピンチを乗り越えた後に、
CX(コーポレート・トランス・フォーメーション)を起こす絶好の機会がやってくる。
その機会を逃すな!」といったところか。
(でも、CXの具体的な話は、後編を読んでね(買ってね)、笑。)
でも、一点だけクレームがある。
book smartよりstreet smartという表現があったけど、
あの言い回しは好きではない。
そもそも冨山さんの会社IGPIって、ガンガンに海外MBAを採用しようとしているからね。
正確に言うと、street smartが重要なのはその通りなのだが、
street smartがある人はbook smartなんて当然に持っているものだ。
(book smartを持っている人全員が、street smartを持っている訳ではないのは事実だが。)
book smartがない人が「うん、うん、そうだよね」と安心するための表現ではない。
その点は注意したい。 -
コロナというよりは危機一般における企業の対処の仕方、といった内容。皆さんご指摘のとおり多分に本編?のための販促的位置付けではあるものの、1,200円でセミナー聞いたと思えばまぁいいか、とも思える。
内容的に特に目新しい話があるわけではないが、
・コロナショックは未曾有の危機
・危機対処にあたってはトップが責任持って判断
・これを機会に真のCXできるか?がポイント
あたりを改めて強く認識。あとBook smartとStreet smartという言葉は初めて知りました。やはり実践経験は大きな財産ですね。
ビジネス書は久しぶりだったけど、たまに読むと刺激になって良いですね。 -
危機時において楽観的な想定を置いて対策を講じていると、現実が厳しい方向に転換したときに施策が後手に回り、戦力の逐次投入になり、会社はじわじわと、やがて坂道を落ちるようにどんどん窮地に追い込まれていく
人間というものは弱いもので、最悪の事態を具体的に想定するのは考えるだけでも恐怖であり、大変なストレスを感じる。
Bad newsをあからさまにせよ、信用毀損をおそれるな
日繰りのキャッシュ管理がすべて
何を本当に残すか、迅速果敢な「あれか、これか」の「トリアージ」経営を行え
真のプロをあつめて即断即決、朝令暮改
手段に聖域を作るな、法的整理でさえ手段にすぎない
国民感情胃流されず投資や買収に打って出よ
国民感情や社内の空気などという実態不明のお化けに惑わされず、理屈通りにするのが経営である
経営力は決断力x実行力で決まる
悲観的・合理的な準備 楽観的・情熱的な実行
緊急経済対策、守るべきは「財産もなく収入もない人々」と「システムとしての経済」
平時の頭のよさ、book smartだけでは役立たない
モノをゆうのは修羅場の実戦経験に裏打ちされたstreet smart度合いである
モノからコトへの流れは加速する
今を生き延びる胆力、決断力と次の時代を見据えて改革を始動する先見力の療法を兼ね備えているのか、今まさにリーダーの真価が問われているのだ
危機の時代は、まずリーダーの時代である。誰よりも体を張り、リスクを取り、ハードワークし、結果責任を背負うべきはリーダーである。そんなリーダーがいてはじめて、最前線を担う現場は思い切り闘える。現場力も生きてくる -
本書に書かれていることの軸になることは、L(ローカル)とG(グローバル)の経済であったり、産業再生機構やIGPIにおけるJALやカネボウ再建の話など、冨山氏の他の著書に書かれていることと重複することもあり、少し抽象的な内容も多い。
ただ、本書にも書かれているように、「歴史から学ぶ」ことの意義は大きい。
1997年の日本の金融危機や、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災などを機に、それまでの価値観や常識がどのように変化したのか。逆に、何が変化しなかったのか。
歴史は繰り返す。これから先、また10年後くらいに大きな危機がやってくる可能性は高い。
それまでに何をしておくべきか。
流行りのDXに乗っかるだけではなく、真にCXを行っていくためにはどのような行動が必要か。
今後、10年後20年後を生き抜くために考えるヒントになる。 -
あらゆる企業の経営危機の難局をいくつも乗り越えてこられた冨山和彦さんの、緊急提言本。経営に携わっている方や経営者を目指す方にとってはサバイブ・ノウハウとして非常に参考になる一冊と思います(今まさに経営危機を乗り越えようとしている方は読む暇ないと思いますが)。
この本は儲けのために書かれている訳ではない(と推察する)ので、既に冨山さんが各メディアで語っている内容も多分にあり、NewsPicksやNHKで冨山さんが出演されたコロナ特番をご覧になられた方は最初ほどの衝撃はないと思いますが、提言の根拠となる実体験が詳細に書かれており、よりリアリティと納得感をもって読めると思います。
※NewsPicksの番組は冨山さんの他に、Yahoo安宅CSO、慶大宮田教授、落合陽一さんなど豪華ゲストが集結し、withコロナ時代の社会や経済の在り方を議論しているのですが、目からウロコの見方が続出で大変興味深い番組でした。超オススメです。
【落合陽一】Withコロナ時代の日本再生ロードマップ
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