- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163911717
作品紹介・あらすじ
この男がいなければ、今日の東京の風景は、なかったかもしれない。日本銀行、東京駅、国会議事堂……経済、交通、そして民主政治という近代国家を象徴する建物を次々と設計した明治の建築家・辰野金吾。理想の首都「東京」を作り上げようとする辰野はまさに維新期ならではの超人だった。しかし、超人であるがゆえの破天荒さは周囲を振り回し……。下級武士から身を立てるべく学問に励み、洋行して列強諸国と日本の差に焦り、恩師ジョサイア・コンドルを蹴落としてでも日本人建築家による首都作りを目指した男の一代記は、今日の風景が生まれるに至った「東京のはじまり」の物語でもあった。今日誰もが見慣れた建築物の向こう側に秘められたドラマを知ると、東京を歩くのが楽しくなること間違いなし!『家康、江戸を建てる』の著者だからこそ書けた、「江戸」を壊して近代「東京」の街づくりを志した日本人初の建築家・辰野金吾の熱い生涯。
感想・レビュー・書評
-
日本銀行、東京駅の建築家・辰野金吾を描いた時代小説。
それまでに例を見ない、巨大な西洋風建造物ができるまでの道のり。
具体的な工法や困難など、その成立過程は興味深かった。
真に日本の力を見せつけ、外国に認めさせるには、日本人が筆頭に立って作業すべし、という金吾の考えには賛同する。
ただ、そのために恩師を陰で貶めるなど、金吾が取った手段には賛成できかねた。
ほかにも引っかかる言動がいくつかあり、主人公に共感しきれずに終わってしまった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
門井慶喜さんの本は『家康、江戸を建てる』を前に読んだので、
「今度は東京か。」と手に取りました。
「慶喜」は本名らしい。
ご両親はどのような気持ちで名前をつけられたのでしょうね?
閑話休題。
「東京」を作った建築家辰野金吾の生涯を
興味深く読みました。
幕末から大正まで「史実に基づくフィクション」として、
ある意味「自分とかけ離れた遠い世界」を楽しんでいたのですが…
まあ、終わりにきてビックリ!
なんと辰野金吾さん、ウイルスで亡くなったそうじゃないですか!
〈何しろすさまじい伝染力で、流行はなかなか終息しなかった。
いや、終息どころの話ではない〉
〈有名人もやられた。(中略)世間に甚大な衝撃をあたえた。彼らの死自体よりもむしろ、疫病の前には、
ー有名も無名もない。
という当たり前の医学的事実のほうに人々は恐怖したのだ〉
この本の発行が今年の2月25日
別冊文藝春秋2017年11月号から二年に渡って連載されたもの。
まさか今こんなことになろうとは
当時、夢にも思わなかったでしょうね。
体中に衝撃が走りました。 -
主人公の心情描写が、あっさりした印象。そのため、日銀と東京駅で大幅に様式を変えた建築家として想いの部分が、私には伝わりづらかったです‥。
--------------------------
◆日本銀行の建築について
主人公辰野金吾の師匠ジョサイア・コンドル氏本人がいる前で、鹿鳴館(コンドル氏設計)を批判し、伊藤博文を説得して日銀の設計を勝ち取った。
コンドル氏のイギリス風を否定し、バロック調のドイツ風の建築にした。均整美よりも躍動感をめざした様式。1896年竣工。
◆東京駅の建築について
イギリス式でクィーン・アン様式。赤レンガと白い大理石の縞々模様で、新しい近代日本の勢いを感じる建築。
イギリス人のコンドルが建てた「三菱一号館(1894年竣工)」と、辰野の「東京駅(1914年竣工)」を比べると、確かに雰囲気が似ている。
(※辰野氏の作品の中では、1906年竣工の日本銀行京都支店の方が先にクィーン・アン様式の採用だったかと。規模が異なる建築なので、もしかしたら東京駅の方が設計が先だったかもしれないと個人的には想像しましたが‥よくわからず。)
ちなみに当時の丸の内は、子どもが砂場遊びのように穴掘りをすると塩水が出たらしく、「三菱が浜」と例えられた。そのため、東京駅の基礎工事は一年三ヶ月かかっている。
--------------------------
「星落ちて、なお(澤田瞳子著)」で紹介されていた、絵師の河鍋暁斎の弟子がコンドル氏だったことに驚きです。他の本で、同じ偉人が別の視点で登場するのが、歴史小説を読む楽しみの一つです。
特に気になった登場人物
・片山東熊
元奇兵隊、戊辰戦争に参加。
代表作として迎賓館を建築。
・本多静六
辰野の弟子。公園建築に悩んだ辰野に、
日比谷公園の設計を任される。
人が快適に過ごせる適切な道幅を提案。
・松井清足
辰野の弟子。東京駅を地震に
強い建物にすべきと、師匠に苦言する。
・高橋是清
日銀の建設時、手腕を発揮。
大蔵大臣/総理大臣/日銀総裁を務める。 -
「家康、江戸を建てる」を読み、面白かったのでこちらも手にとってみた。
辰野金吾の建築家人生を描いた物語。
大名屋敷だらけだった江戸の町を西洋建築中心の"東京"にする、その礎を作った苦労が伝わってきた。
それと、下級武士出身の辰野の向上心(良くも悪くも)も描かれていた。
師であるジョサイア・コンドルもなかなか魅力的に描かれている。
日銀本店と東京駅建設の話が主になっているが、この物語を読んで辰野金吾という人物に興味がわいたので評伝本でも読んでみようと思う。 -
人生をかけて何かを成し遂げるっていう話はやっぱりいいですね。
薄っぺらくない。内容に厚みがある感じで。
建物を見るのも結構好きで、辰野金吾は外せないですよね。
東京を代表する建物と言ったら、やっぱり東京駅。
明治の時代にあれを作ったなんて信じられない。
関東大震災でも壊れなかったなんて・・・
この時代の建築家たちは本当に素晴らしい。
こんな破天荒な男の家族も大変。だけど、いい家族だった。 -
明治維新後、江戸を東京にする。
日銀本店、東京駅、旧両国国技館、など有名な建築物を手掛けた日本を代表する最初の近代建築家、辰野金吾の物語。
名を残す人の中にはこういう破天荒なタイプの人っているよね。
自分を前面に出しちゃうから敵も作ってしまう。
でも認められるだけの努力を惜しまない。
たびたび関わりがあった高橋是清の方がもっと波瀾万丈の人生を送っているので彼の物語も読みたい。 -
明治時代、第一人者として建築学会・業界に君臨し、日銀本店、東京駅舎などの設計を手掛けて日本の近代都市造りを担った辰野金吾を巡る歴史物語。
時代の空気なのか、金吾をはじめ当時のエリート達はとにかく、西洋に追いつこうと背伸びして見栄を張っている。微笑ましいような見苦しいような。辰野金吾はその尖兵だった。傲岸不遜というか、慎みの欠片もなく、恩師や友人を能力よりもその強引さで蹴散らしていく。「東京を人間の整理箪笥にする」とのたまわって江戸時代の古き良き町並みを無惨に壊していく。現代から見ると、決して尊敬すべき人物とは言えないが、そのエネルギッシュで強烈な個性は、まさに時代が求めていたのかもしれない。なにしろ辰野金吾は、日本初の海外留学生、日本初の大学教授、日本初の民間事務所開設者として国家に育てられたエリートだったのだから。
当時の駐日イギリス大使が本国宛ての書簡に「いったい日本人は、文化的には、厨房でちょいちょい各国料理をつまみ食いする無遠慮な下男のようなところがありますが」と嘲るように書いている。日本全体がそれだけなりふりかまわず必死だったんだろう。
「なりふりかまわぬ人間」、名誉欲に駆られた尊大な人、辰野金吾が明治日本の姿と二重写しに描かれていて、なかなか読み応えがあった。
金吾、唐津時代の高橋是清(当時の名乗りは東太郎)の教え子だったんだ。 -
時代を進めたくて、食らいつくように生きた辰野金吾の生涯。
その頃、東京の風景はまだ江戸のままで木造平屋が並んでいる。西洋のように縦に空間利用するべきだと、人を首都に集めるためには建物が必要だと東京自体を建築する。日本近代建築の父と言われた辰野金吾。
やっぱり、師であるコンドルを押しのけて東京駅を建てるところが気になる。
日本政府が、17の鉄道会社を一気に(1年半で)国有化。コンドルが丸の内をクイーン・アン様式のビルのまちにしているから、東京駅もクイーン・アン様式で合わせて辰野が建てる。そこは、300年前に徳川家康が建てた江戸城大手門のまもりの地域。…この前読んだ、『家康、江戸を建てる』からの流れ…痺れる〜。
弟子の一人松井清足は、煉瓦はもう古い、コンクリートにすべきだというが、それには首肯できず、煉瓦にこだわった。
コンドル→辰野→松井という流れというか世代交代の対比も時代の躍動を感じる。
国会議事堂、建てたかったろうな。
この時期の建築、下関や北九州にも門司港駅を始めとしてたくさん残っている。普段意識しないでいるが、見に行ってみよう。
あと、高橋是清、凄いな。 -
高橋是清、コンドル、妻木頼黄
辰野金吾の周辺人物が興味深い。
今の東京の街並みを見て、辰野金吾はどう思うだろう。 -
「銀河鉄道の父」以来の
読者です
隈研吾さんの本を読んでいて
何度も出てきた日本の建築家
ということで
辰野金吾さんを知りました
ぼんやりと
「東京駅」を設計した人ぐらいの
認識でしたが
いやいや
この本のおかげで
「江戸の風」ならぬ
「明治の風」に
包まれたような気にさせられました
作中に登場する
人々もジョサイア・コンドルさん、高橋是清さん、
品川弥次郎さん、渋沢栄一さん、
川田小一郎さん 等々
あの時期の人々の様子も
また 興味深く読ませてもらえました
そして
このコロナ禍の今、
その当時の流行りの感染症、スペイン風邪で
辰野金吾さんが斃れられたことを知ったのは
なんということでしょう
いやはや感慨深い一冊になりました