ネオサピエンス 回避型人類の登場

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163911342

作品紹介・あらすじ

人類は今、新たな進化の段階に突入している。産業革命は社会を変えたが、IT革命は人間の心を変えようとしているのだ。共に働き、共に生活していた「家族」が、都市化や産業化、核家族化を経て崩壊しようとしていた時、IT革命が起きた。IT革命は社会システムを大きく変えたが、もっとも重要な変化は、人間の脳神経回路を組み替え、愛着システムを変容させたことだ。通常なら数万年、数十万年のスケールで起きる生物学的な変化が、数十年の間に進行している。27年ほど前、医療少年院で一人の回避型愛着を示す若者に出会った。今や、そうした人々は普通の家庭や社会にあふれている。急激に増えつつある「回避型人類」とは・単独生活が基本・セックスをしない・子育てに関心がない・集団への嫌悪と恐怖・人より物、物より情報を好む・ルールと統制を重視する・キレると何をするかわからない・蔓延する依存症と刺激中毒・突然襲ってくる自殺衝動・死を悲しまない最前線の臨床医が最先端の進化論と出会って辿り着いた、驚愕の未来レポート。

感想・レビュー・書評

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  • 愛着を重視する共感型人類が多くを占める中で、愛着を重視しない回避型人類の発生を論じている一冊。
    小さな進化となるのか、共感力の欠如が目立つ現代への一時的適応の形となるのか。
    回避型は障害ではなく、環境に合わせた生物の反応に思えてなりません。
    社会と技術によって愛着を不要とする回避型人類の生存と繁殖は維持されているため、共感型人類と同数に近づいた暁には共存か排除の選択を迫られるでしょう。
    既存の人類でも格差の問題があり、AIとの共存の問題もありますが、更に新人類との軋轢も生じてしまうのでしょうか。
    しかし、私は個人主義を悪とは思いませんし、少しは回避型人類の気持ちがわかります。
    我々はホモ・サピエンス(賢い人間)ですので、賢く立ち振る舞うことができると信じています。

  • 「ネオサピエンス 回避型人類の登場」
    岡田尊司(著)

    2019 11/20 第1刷 (株)文藝春秋
    2020 2/15 読了

    なんとも空恐ろしい近未来のお話。

    親子関係にる愛着障害の健康的社会的弊害に警鐘を鳴らし続けている医学博士でもある著者の
    半ば諦めに近い本書。

    このままじゃ問題もあるけど
    この問題が人の進化を促し
    ネオサピエンスに相応しい社会になっちゃうよー。

    いやもうなりつつあるよー。

    って事らしいです。

    本書が描き出しているネオサピエンスと
    村田沙耶香の描いている「人間」が妙にリンクしていて

    恐ろしさ倍増です。

  • 自分も回避型人類に当てはまっているので、読んでいて何とも言えない気分でした。
    どうしたら良いのやら…。

  •  著者が定義されている「回避型人類」の存在と現状認識は大いに賛同できると感じた。実をいう自分自身にもいくらかあてはまる部分もあり、「回避型人類」に対する定義としてあげられている「共感型人類」との関係性などは、現実に体験していると思われる。
     しかし、著者がいわれる「回避型人類」の特性が、遺伝子に刻まれるとか人類の進化と関係するという議論には、どうも賛同できない。これらの特性は、社会構造や科学技術の発展における変化に対応する現象であり、ヒトの進化や遺伝子変異と結びつけるには、あまりに早計であろうと思われる。
     さらに両人類は、明確に区別できるものではなく、その人物が置かれている環境で様々な状況が存在する。やはり社会現象のひとつであろう。

  • 他者との情緒的な関わりに喜びも感心も持たない人類のことをネオ・サピエンス=回避型人類と呼び、回避型が2000年代以降急増して近未来には共感型人類(相手との関係性を重視する人類)がマイナーとなり、回避型がメジャーになる社会が訪れるとの仮説を唱えた著作。

  • 著者がこれまで発表してきた病理現象が行き着くところまで行った感を持つ。回避型愛着スタイルの人間が多数派を占めた様子をSF的に描いた章はディストピアとしか言いようがない。

  • 怖い。
    人手が足りなくなっている昨今、買い物に出かけても本屋さんでセルフで支払い、回転寿司でタブレットで注文し、レーンで流れてくるお寿司を取り、スーパーでもウォークスルー決済で済ませてしまえば、誰とも会話せずに過ぎてしまう。
    人と人との交流はなくなってしまうのか
    回避型の人達はそれに何とも思わずむしろ快適なのだろう

    ロボットによる子育てもそう遠くない日なんだろうか

    福祉国家と呼ばれるスウェーデンの人達がそんなタイプであるとは知らなかった 

  • 面白かった。回避型と呼ばれる人々が増えてきていて精神的な進化?なのか?と旧人類?の愛着的なものとのぶつかりとか揉めるというか、互いの断絶感とか。

    最後の方がディストピアっぽく書かれてるけどぶっちゃけこれもありだなって気軽に思えた。
    そこまで共感性が低くはないけれど、旧世代の一部の愛着はむしろ執着とか粘着に近いところがあるよなとも思ってるし。

  • 社会の変化で人とのつながりを必要としないもしくは避ける回避型人間が増えている

    もし、増え過ぎると殺伐とした温かみのない世界が到来する可能性を示唆している

    この本を読むとものすごく怖かったので、やっぱり人との温かい交流は欲しいんだな、人と関わってないと苦しくなるという自分の気持ちを確認することができた

    回避型を和らげるためには人と協力してできることをするのが大切

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著者プロフィール

岡田尊司(おかだ・たかし)
1960年香川県生まれ。精神科医、作家。東京大学文学部哲学科中退。京都大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。医学博士。京都医療少年院勤務などを経て、2013年より岡田クリニック(大阪府枚方市)院長。日本心理教育センター顧問。パーソナリティ障害、発達障害、愛着障害を専門とし、治療とケアの最前線で現代人の心の問題に向き合う。著書『悲しみの子どもたち』(集英社新書)、『愛着障害』『愛着障害の克服』(いずれも光文社新書)、『愛着アプローチ』(角川選書)、『母という病』(ポプラ新書)、『母親を失うということ』(光文社)など多数。

「2022年 『病める母親とその子どもたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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