グランドシャトー

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163911229

作品紹介・あらすじ

「楽しいことは、みんな大阪から始まった!」
大阪京橋のキャバレーで、導かれるように出会ったふたりの女。
昭和から平成へ、家族を超えた絆を描く女と街の物語。

【あらすじ】
日本中が高度経済成長に沸く昭和38年。
大阪京橋のキャバレー「グランドシャトー」に流れ着いた家出少女のルーは、
ナンバーワンの真珠の家に転がり込む。
下町の長屋に住み、ささやかな日常を大切にして暮らす真珠を
家族のように慕いながらも、彼女に秘密の多いことが気になるルー。
そんな中、人を楽しませる才によって店の人気者となった
ルーのアイデアが苦境のグランドシャトーに人を呼ぶが――。

『トッカン』『上流階級』『政略結婚』の高殿円最新刊
「産経新聞」大阪本社版で連載がはじまり、あまりの反響の大きさから、
急きょ東京本社版でも掲載が決まった話題作が書籍化!

感想・レビュー・書評

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  • 昭和38年、家出少女のルーは、大阪京橋で真珠と出会う。真珠はキャバレー「グランドシャトー 」のNo.1ホステス。ルーは彼女が住む下町長屋で共に暮らし、グランドシャトーでも働き始め、ついには店で地位を確立してゆく。昭和から平成へ、二人の女の絆の物語。
    活動的で明るいルー、読んでいるこちらも元気になる程。謎めいた真珠、二人の絆に熱くなり、そして何よりキャバレーの運命の物語でもあり、時代の流れを感じさせ、悲しくもあり、力強い物語でもあったな。高殿さん、私より少し年下のようですが(昭和38年はまだ生まれていない)、しっかり取材されて、素敵な物語となっていました。素晴らしい光をいただきました。
    内容ももちろん装丁が見た目、色合い、素敵で大変気にっています。

  • 関西の書店と問屋で立ち上げた「ほんまに読んでほしい1冊」を決める文学賞 、大阪ほんま本大賞の今年の受賞作のハードカバー版です。
    大阪の京橋が舞台になっています。

    昭和35年、ルーは父をがんで亡くして人生が一変した。母が朝から晩まで働き詰めるが生活は楽にならず、ルーは家族のために17歳で高校を中退して働き始めた。母は親戚に勧められて再婚するものの再婚相手との間に子供ができず、舅らによって代わりにルーと再婚相手が結婚させられそうになる。
    逃げたルーは1年後、京橋グランドシャトーの不動のトップホステス、真珠と出会う。グランドシャトーで働き、やがて真珠と一緒に長屋で暮らす。誰も知らない真珠の過去とは…

    機転を利かせて生き抜くルー。ルーと真珠の関係-友情でもあり、姉妹のようであり、親子のような関係―に人恋しくなりました。

    大阪の地名が多く、企業名などが実名で出ます。
    なので、大阪の地理や企業名がわからないと読むのが面倒くさくなるかもしれないし、大阪が一番、という思いが強い主人公なので、大阪以外にお住いの方には面白くないかもしれません。

    京橋は大阪環状線で大阪駅から3駅目。北東へ向かって郊外へ向かう路線への乗り換え駅で、大阪府内では4番目の乗降者数となっています。
    駅の周りはショッピングモールがあります。北側は商店街の先に静かな住宅街。そして駅の東側は、キャバクラや飲食店が並び、朝から立ち飲み屋が繁盛しているオヤジたちのパラダイスです。

    この本のグランドシャトーのモデルは関西の方なら個性的なCMでご存じのグランシャトーです。
    ♪グランシャトーはレジャービル、です。近鉄バファローズと日本ハムファイターズの元監督、梨田昌孝さんがCMに出演されていたぐらい、ちゃんとしたところです。
    随分前に時代の波に押されてキャバレーは閉店しましたが、ルーがはじめに働こうとしたサウナは今も健在です。

    京橋は日々綺麗な町に変わっています。
    グランシャトーの黄色の外壁(この本のグランドシャトーはピンクの外壁)は、どんなに古く汚れていても京橋乗換民にとっての大切なランドマークです。

    頑張れ、グランシャトー。頑張れ大阪の下町。

  • 訳あって家族の元へは戻れず、行く当てもない、家出娘の〈ルー〉。
    ひょんなことから、大阪京橋随一のキャバレーのホステスとなる。

    高度経済成長期からバブル景気、そして不況の波。
    昭和から平成の、時代の変遷が味わえる。

    支配人・大路の目が行き届き、ナンバーワンホステス〈真珠〉が若い女の子たちを守る。
    キャバレー〈グランドシャトー〉の雰囲気も、独特でよかった。

    静かで不思議な魅力のある真珠と、積極的でアイディアマンのルー。
    個性の異なるふたりの、おだやかな日常が心地いい。

    コミカルでテンポのいい作品だが、ふたりの絆と最後にはジーンとくる。

  •  読みながら、これは絶対ノンフィクションだよな?と幾度となく思い、何度も登場人物を検索してしまいそうになったほど。

     ルーは義理の父親と結婚させられそうになり、大阪に逃げ、一人路頭に迷っている時に真珠と出会う。真珠はキャバレー、グランドシャトーのナンバーワンだ。
     ルーもグランドシャトーで働くようになり、真珠に次ぐナンバーツーにまで登り詰める。

     ルーには才覚があり、常連の芸能人やぐらソージに再三口説かれ、上京し、芸能人として成功する。

     やがて、母親が亡くなった報せを受け、再び大阪に。真珠と再会したルーは芸能界をあっさりと投げ出し、大阪に残ることに。

     ルーの目を通して見た30年の歴史。ルーが妬みなどなく、純粋に真珠のことを好きで、真珠も純粋にルーのことを好きなのが良かった。

    『楽しいことは、みんな大阪から始まった!』

    コロナを吹き飛ばして楽しい、勢いのある日本を取り戻してほしい。

  • 主人公のルーが
    気風がよく 毒舌だけど愛嬌があり
    頭がよく 男気がある
    本当に読んでいてスカッとします
    ポンポン飛び出す大阪弁が気持ちいい
    対照的に 戦後の女性の忍耐を
    体現したもう一人の主人公真珠が
    水商売のもの悲しさを感じさせてくれます
    痛快な女の友情です

  • キャバレーの時代を1人の女性を通して語っているんですね。
    水商売の話なのにダークな部分が無いのが自分は好きです。
    少し物悲しいところはあるけど。

  • 大阪のキャバレーに生涯をかけた女性。
    昭和という時代の流れに乗って大きくなったキャバレー、そして廃れていったキャバレー。
    そのキャバレーで育ちやがて華やぐ人となった。
    一時は東京のテレビに出て一躍人気者にんったが、また大阪キャバレーに戻ってくる。
    女性としての生き方、時代の流れも感じ面白かった。

  • イントロダクションは、時代外れ的に感じて入りづらいなぁと思いましたが、第1章に入ると引き込まれました。

    大阪で生きていくルーと彼女が慕う真珠ねえさんとの生活。
    家を出ることになったルーと家族の関係が切ない、けど、ルーのたくましさにほっとしたりもする。

    第2章は、ルーが東京に出てから20年経った頃からの話。

    長い長いルーの生き様、そばにいて優しく変わることのない真珠、読んで良かったなぁ~と思う1冊でした。

  • 帰る家を失い、大阪に出てきたルー。
    ホステスの仕事をしてなんとか居場所を作ろうとするが、
    すぐに騒動を起こしては追い出されてしまう。
    そうして行き着いたのが、
    京橋のキャバレー・グランドシャトー。

    なにわっこならみんな知ってるグランシャトー。
    だけどほとんどの人が入ったことのないお店でもある。(多分)
    今も残る地名からわかるように、
    橋だらけだった昭和中期の大阪。
    その頃の京橋とグランシャトーはこんな感じだったんだと
    すごく興味深かった。
    大阪を中心に、高度成長期、バブル期、そして平成まで、
    時代の移り変わりを一気に読ませてくれる。
    娯楽のあり方が変わり、
    大阪の町と暮らしが変わり、
    でも、変わらない空気があって、あたたかい人がいる。
    古き良き時代を懐かしみつつも、
    やっぱり大阪っていいなぁと
    最後はなぜかしみじみ思ってしまうのです。

  • 2024/03/02

    戦後のキャバレーの話。ちょいちょい戦争の話がでてきた。キャバレーとキャバクラの違いも分からんけど読んでて面白かった。

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著者プロフィール

1976年兵庫県生まれ。2000年『マグダミリア三つの星』で第4回角川学園小説大賞奨励賞を受賞しデビュー。主な著作に「トッカン」シリーズ、「上流階級 富久丸百貨店外商部」シリーズ、『メサイア 警備局特別公安五係』、『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』、『マル合の下僕』、「カーリー」シリーズ、『剣と紅 戦国の女領主・井伊直虎』、『主君 井伊の赤鬼・直政伝』(文藝春秋)など。2013年『カミングアウト』で第1回エキナカ書店大賞を受賞。漫画原作も多数。

「2023年 『忘らるる物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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