小さな場所

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 175
感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163911212

作品紹介・あらすじ

日台同時発売! 切なく沁み入る傑作連作集台北の紋身街は、日本でいえば新宿・歌舞伎町一番街の一角か、あるいは渋谷センター街の裏路地か――世界中のどの街にも必ず一本はあるだろうと思われる、細くて小汚い、猥雑な通りだ。昼間でも夜みたいに暗く、くさくて、洋服店やピアス店、そして刺青店がひしめく。大人たちは狡くて、いけしゃあしゃあと嘘をつくけど、大切なことも教えてくれる。この通りで、食堂の息子の「ぼく」は生きている――。少年が見つめる台湾の原風景。東山ワールドの到達点!

感想・レビュー・書評

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  • 台北の裏路地、ピアスの店や刺青店等ひしめく紋身街。食堂屋の息子・小武(シャオウ)はこの町よりたくさんのことを教わった。9歳の小武よりみた人間模様。6篇。
    子供の頃は自分の街が世界の全てと感じる。刺青屋の兄さん姉さんたち、街の噂で少年は街で楽しみながら成長してゆく。そして、より大きい世界へと目を向けて。そこのところ、最終章のカエルの話がうまく描かれています。東山さんが子供の頃はその近くで遊んでいたようです、心の拠り所になっているのかな。不思議なお話もあったけれど、街の活気や暖かさ、時には苦さがよく伝わる。

    • kuma0504さん
      検索すると、台北西門町に紋身街があるようです。1週間台湾を旅したときに、最初の日はそのあたりに宿を取ったのですが、夜しか行かなかったので全く...
      検索すると、台北西門町に紋身街があるようです。1週間台湾を旅したときに、最初の日はそのあたりに宿を取ったのですが、夜しか行かなかったので全く気がつきませんでした。5000円くらいの綺麗な安宿なんですが、今考えると迷路のような作りや、あまりにも厳重なドア、普通と違っていたなあ。もう一回行ってみたい。
      2020/02/17
  • 東山さん特有のノスタルジック感がとても良かった。
    なかなかひどい描かれ方(笑)をしているが、逆に台湾行ってみたくなった。

  • 「流」はとても勢いが有って、青春の切ない雰囲気と暴力的スピード展開が最高でした。本作は刺青街で産まれ育った小学生が、魅力的で猥雑でどうしようもない人々と送った輝ける日々を綴った作品です。
    少年らしい正義漢と、地域的に早熟な部分が混在して主人公がとても立体的です。連作なので時系列前後しながら、周りのバカ野郎どもが次第に近所の兄ちゃん姉ちゃんに感じられてきます。正直さほど期待していなかったのに読み終わるときなんだかロスな気持ちになりました。
    少年の成長と共に物語も終わりに近づいて行きます。寂しい。
    台湾の下町はどことなく日本の下町の40年前の雰囲気を感じさせます。懐かしい気持ちを刺激されるけれど現代なんだよなあ。最近台湾に行きたくてたまらない。

  • 星は3つにするか4つにするか、最後まで迷った。

    こういう猥雑な話というか、決して綺麗とは言えない場所でたくましく生きる人の話は嫌いではない。
    台北の紋身街は行ったことはない(実在するかも知らない)けど、読み進むにつれてその町の風景やそこに生きる人々がどんどん好きになっていって、いい話だな、とは思った。

    けど、何か食い足りなさが残ったんだよな。

    もともと、何気なく撮ったスナップ写真を並べるような感じで、軽い気持ちで読んでもらうことを前提に書かれたものだろうから、食い足りないという感想は的外れかもしれない。

    食い足りないのが何なのかよく分からないのだけど、ピンボケ写真を眺めているような、もどかしさが残った。

  • 小学3年生のぼくが語る物語も良かったけれど、「天使と氷砂糖」で垣間見えた高校生のぼくの物語ももっと読んでみたいなと思った。

  • 現実的な天橋上的魔術師みたいだった。台北って本当に世界の縮図みたいなところだなって何度も思ったな、ってこの本読んだら思い出した。

  • こんな世界があるんですね。
    知らないのに懐かしいような…

  • 台湾のタトゥーの店が多い商店街で暮らす男の子の暮らしの物語。いろんな人がいる。ニン姐さんかっこいい。

  • 台湾の紋身街に住む小学生の視点から
    様々な人間模様を見つめる物語。

    彫り師、探偵、タピオカ店主、ヘタレなヤクザ…
    小さな街の中に多様な世界観。
    そんな中で自分とは?大事なものとは?を考えされました。


    小学校の先生でラッパーのフオミンダオの言葉が心に残る。
    「自由とは孤独のことだよ。自由でいたいなら孤独を恐れちゃだめだ。理解されないことを恐れちゃだめだ。」

  • 台北の片隅の猥雑な横丁。ここが世界の全てと思う少年と、ダメすぎるけど悪党にもなりきれず憎めない大人たち。回顧形式で描かれているので少年期の懐かしさも感じるけど、実在の地名や人物やイベントも登場するので、台北の現在も感じさせられるし、実際歩いた町並みと一緒に物語の光景が思い浮かぶ。市井の人々のままならぬ人生も語られ、ちょっとしたハードボイルドさもあって良い。

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著者プロフィール

1968年台湾台北市生まれ。9歳の時に家族で福岡県に移住。 2003年第1回「このミステリーがすごい!」大賞銀賞・読者賞受賞の長編を改題した『逃亡作法TURD ON THE RUN』で、作家としてデビュー。 09年『路傍』で第11回大藪春彦賞を、15年『流』で第153回直木賞を、16年『罪の終わり』で中央公論文芸賞を受賞。 17年から18年にかけて『僕が殺した人と僕を殺した人』で第34回織田作之助賞、第69回読売文学賞、第3回渡辺淳一文学賞を受賞する。『Turn! Turn! Turn!』『夜汐』『越境』『小さな場所』『どの口が愛を語るんだ』『怪物』など著書多数。訳書に、『ブラック・デトロイト』(ドナルド・ゴインズ著)がある。

「2023年 『わたしはわたしで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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