- Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163910703
作品紹介・あらすじ
あの人といる時の居心地の悪さ。原因は「恥の感覚」の違いにあった!食べ放題での「元取り」食い。「お母さんに感謝」からのハグ。ブックカバーをしないで本を読むこと。SNSでの手作り料理自慢……本来恥ずかしがり屋だった日本人に、今、何が起こっているのか。フェイスブックでの自慢バブルを斬った「中年とSNS」が大反響!!共感の嵐を巻き起こす傑作エッセイ集。
感想・レビュー・書評
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本書は酒井順子さん本人が、恥ずかしいと感じることを綴ったエッセイです。
恥の感覚は人それぞれで異なりますが、それが恥ずかしいの?ということも結構ありました。
・「チョコ」「アイス」「パイン」が恥ずかしくて言えないという感覚は私にはない。
・シモ関係の感覚と恥ずかしい言葉のチョイスも違う。私が男だから?
・ブックカバーに対する感じ方も違った。
それが恥ずかしくないの?と共感できることの方が多かったかな。
・人前で「母」でなく「お母さん」と言う大学生。
・「自分の凄さ」について語らずにいられない社会人。
・「自分の知識」を披露せずにいられない老人。
・食べ放題での「元取り」食いに必死な人。
・電車で化粧する女性。
ところで、恥の感覚って何なのでしょうか。
誰しも持っている「自分をより良く見せたい願望」に反してしまう行動や言動への後悔?。
自分の常識の範疇で、情けないとか、みっともないと思うこと?
うまく説明できないが、「恥の感覚が共通するほど一緒にいて居心地が良い」ということは良く分かる。
どこか日本の居心地の悪さを感じ始めている今日この頃。
民主政治や資本主義経済を牽引する人達と「恥の感覚」が自分と違っているからでしょうか。 -
「恥の感覚」は、誰もが持っているものである。
しかし、何を恥ずかしく感じるかは、人それぞれであり、そこにも個性が表れているように思える。
このエッセイでは、そうした著者自身が「恥ずかしい」と思えること、そして何故そう感じるのかを、実体験を踏まえながら、著者なりに考察するのが主になっている。
エッセイの魅力は、本でありながらも、会話に近い感覚になれるところであると思う。
そうした魅力を感じつつ、首を縦に横に振りながら読み進めていったが、
「羞恥心とは、自分がどのようにありたいか、周囲がどのようにあってほしいかという意識の裏返しで、理想と現実の乖離が激しいほど羞恥心が激しくなる。」
「他人という存在があるからこそ、「恥ずかしさ」が生まれる。」
と結論づけた点は、言い得て妙だなと感じた。
根拠はないけれど、自分はこう考える、と緩やかに着地できるのもまた、エッセイのよいところ。
また、著者が赤裸々に自分が恥ずかしいと感じる事を書いていくのを読んでいくうちに、本に書くことと実際に言うことの恥ずかしさは、また異なる「恥の感覚」なのだなと。
自分もここに書評を書くことはできるが、いざ他人に感想を聞かれたり、知っている人に感想を見せたりするのはどうも恥ずかしく感じる。
なかなかに、下世話な話が多い内容だったため、読んでいて、人に見られていないか不安になった。
そうしたところもまた、著者との「恥の感覚」の違いなのかもしれない。 -
オール讀物一昨年4月から昨年末まで連載されたエッセイ。
一昨日林真理子さんの週刊文春エッセイが1615回目になりギネス申請するとのこと。
酒井順子さんにもエッセイストとしてずっと頑張ってほしい。
第二回の「中年とSNS」が文春オンライン上にアップされた時に、生まれて初めて「バズった」酒井順子さん。
この経験によって「生きることも書くことも恥ずかしい」ということに久しぶりに気づいたそうです。
私はこの機会に酒井順子さんの読者が増えるといいなあと思いました。
とても面白いから読んでみて。
「善行を妨げるもの」で〈そういえば私は性格が今ひとつよろしくない、というか端的に言うなら「悪い」ことが悩みなのですが、そんな私の周囲にいるのは善人だらけなのです。それというのも根っからの良い人というのは、他人の悪い部分に気がつかない、もしくは気づいても気づいていない顔ができるため、私のような者とも平気で付き合ってくれるから〉には今も考え続けています。
「死に支度」のところの〈今までしでかした恥ずかしい行為の数々の記憶も、薄れつつあります。恥を溜め込んでいる壺の蓋がたまに開くと舌を噛んで死にたくなりますが、そんな機会も減ってきた〉は、自分の心に光をくれました。
あらあら、ちょっと暗いことを書いてしまいましたが、ほとんど笑いながら読んだのです。 -
納得してしまうこと多々。酒井さんの感性の鋭さとそれを軽妙に構成する描写力に脱帽。ちょっとユルイ本だったけれど図書館にリクエストして買ってもらってよかった(僕の後に予約も入っているようだし^_^)
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「恥の感覚が共通するほど一緒にいて居心地が良い」ということになるのではないか。この言葉、凄く分かる気がした。異性同性問わず、人を好きになる時って自分と似ている部分がある、という要素以上に、「されて嫌なこと、許せないことが似ている」という要素がめちゃくちゃ大事だなと個人的に思う。恥ずかしいって、ダメだな・良くないな、と思う感覚に近しい気がする。
恥の感覚からその人のバックグラウンド等を想像し、好きだったのに距離を置いたり幻滅してしまうことって結構あるんだろうなー。時代や経済状況、国民性で恥の感覚が異なるのも面白かった。 -
酒井さん、最新エッセイのテーマは『恥』
身近に感じる内容とチョイチョイ挟まれた毒に何度も噴出しながらの読書時間だった。
「恥の感覚」「中年とSNS」「若者とSNS」「恥と集団」「恥ずかしい言葉」
「より良く見せたい」「若さという恥」「感謝に照れない世代」
「読んでいる本は」「善行を妨げるもの」「死に支度」など19篇収録。
取り敢えず登録してあるfacebookだが、今後も恥の意識を持ちながら自慢と承認欲求の為の投稿は止めておこうと固く心に誓った次第。
Instagramも然り。
恥の概念を改めて感じる事が出来た1冊。 -
酒井さんの文章は端正である。自分を相対化する眼差しは、清々しくも恥ずかしさを感じさせる。