金足農業、燃ゆ

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163910581

作品紹介・あらすじ

あいつら、普段はパッパラパーだけど、野球だけは本気だったから。(女子マネ)2018年夏の甲子園。エース吉田輝星を擁して準優勝、一大フィーバーを巻き起こした秋田代表・金足農業は、何から何まで「ありえない」チームだった。きかねぇ(気性が荒い)ナインの素顔を生き生きと描き出す、涙と笑いの傑作ノンフィクション。〈彼らは秋田大会から通じ計十一試合、三年生九人で戦い抜いた。その九人も特別な九人ではない。秋田県内のごく狭い地域、二つの市と一つの郡から集まった選手たちだ。ほとんどの選手が三〇分以内で通学できる範囲に住んでいる。しかも公立高校だ。その上、野球には不利だと言われる雪国でもあった。(中略)現代において、こんなチームが存続していたとは――。〉(プロローグより)(目次)ある日のインタビュー 「凶悪な集団」プロローグ 「二人の勝手」衝撃 2018年8月8日 1回戦 vs.鹿児島実業吉田輝星焼肉 2018年8月14日 2回戦 vs.大垣日大伝説のコーチ神風 2018年8月17日 3回戦 vs.横浜不器用な監督熱狂 2018年8月18日 準々決勝 vs.近江バカになる我慢 2018年8月20日 準決勝 vs.日大三小さな吉田たち大敗 2018年8月21日 決勝 vs.大阪桐蔭エピローグ 「最後の闘争」著者紹介中村計(なかむら・けい)一九七三年、千葉県船橋市生まれ。同志社大学法学部政治学科卒。ノンフィクションライター。某スポーツ紙をわずか七カ月で退職し、独立。『甲子園が割れた日 松井秀喜5連続経験の真実』(新潮社)で第一八回ミズノスポーツライター賞最優秀賞、『勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇』(集英社)で第三九回講談社ノンフィクションを受賞。また同書は、二〇一八年度「本の雑誌が選ぶ文庫ベストテン」第一位に選ばれる。他に『言い訳 関東芸人はなぜM‐1で勝てないのか』(集英社新書、ナイツ塙宣之著)の取材・構成も担当した。趣味は浅草放浪と、6時間弱で走るフルマラソン。

感想・レビュー・書評

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  • 2018年夏の甲子園で決勝まで勝ち上がった金足農業校の躍進を記憶されている方も多いことと思います。高校野球弱小県と言われた秋田県の県立農業高校が、鹿児島実業、横浜高校、日大三校といった甲子園強豪校に勝利し、決勝では春夏連覇を達成した大阪桐蔭と対戦しました。
    金足農業はこの夏、県予選から甲子園決勝までのすべての試合を先発メンバー9人だけで戦い抜きました。現在の投手分業制や、多くの戦術が駆使される高校野球では奇跡のような勝ち上がりです。このチームが、1年から3年夏に至るまで、どのような紆余曲折を経て甲子園決勝に至ったのかを、選手、監督、コーチなど関係者に密着取材してまとめられたノンフィクションです。
    投手の吉田君はものすごく激しい闘争心を持って、それを躊躇なく発散するタイプだったことが描かれています。一方その周囲のチームメイトも、その吉田君の行動に委縮することなく、チーム内でお互いのミスに対しては「ドンマイ」ではなく、遠慮なく指摘し合う関係が築かれており、追求の甘い選手には「同級生に嫌われるのが怖くて言えねぇのか!!」と指導者が叱責することもあったそうです。
    これだけを聞くと、ギスギスして辛いだけのような部活になりそうですが、この年の金足農業がそれをチーム結束のエネルギーに変えることができたのは、9人全員が”自信家”で、ピッチャーの吉田君はその中でも突き抜けて”自信家”でありながら、マネージャーいわく「(吉田君は)かまちょ(かまってほしいタイプ)」だったため、いつも練習中にチームメイトとふざけたりしていたため、チーム内で孤立せず、そしてチームの誰よりも練習していた姿を、チームメイト全員が認めていたということもあったようです。「吉田は『俺が王』って感じ。でも、なんもやんないで俺は偉いんだじゃなくて、人よりやって偉いんだ、なんで何も言えない」というチームメイトの証言がチームメイトと吉田君との関係を物語っています。
    筆者の中村氏は、本当にチームの雰囲気を物語る数多く様々なエピソードをくみ取っておられます。ミズノスポーツライター賞、講談社ノンフィクション賞など受賞されている中村氏が描く金足農業の軌跡、面白いはずと思って読みましたが、期待以上の内容でした。

  • 2018年100回目の夏の甲子園。旋風を巻き起こした秋田県金足農業の準優勝。バント重視、声出し、全力校歌など昭和スタイルの戦法を貫き通した野球部の舞台裏に迫る。

    松井秀喜の五連続敬遠、佐賀北の決勝逆転満塁ホームランなど甲子園の名勝負に関する著作の多い中村計の作品。試合直後からどなかかノンフィクション作品にしてくれないか待っていたところ、個人的に最も相応しいと思う方が書いてくれたので即買い。

    甲子園での試合とメンバーの入学から卒業までを交互に展開する構成。選手、監督、コーチと時に戦った相手方への取材。

    本書の魅力は金足農業のチームという素材はもちろん、筆者の取材経験と知識があるからこそだろう。監督、選手との意志の疎通の誤り、同じプレーでも選手による捉え方の違いなど、試合展開に影響する勝負のアヤが見事に描かれている。
    出場メンバーは9人の3年生。実はもう一人だけベンチ入りすら出来なかった1名にもしっかり取材しエールを送っている。

    決勝は史上初の2度目の春夏連覇を達成した大阪桐蔭に敗れたが、平成対昭和、私立対公立、都会対田舎、エリート対雑草。あらゆる意味で対照的な戦いだった。

    前時代的な練習にもメンバーは「だって俺たち金農ですよ。」

    エースの吉田輝星くんは日ハムにドラフト1位で入団。ワンマンチームのようではあるが、やんちゃな吉田の実力を全て引き出せたのも仲間の存在があったからこそ。吉田のグラブのシャキーンの刺繍のエピソードが良い。
    金農メンバーの今後の活躍に期待したい。

    素材、筆力共に抜群な一冊でした。

  • 2020年 発行

    ずっと気になっていた本
    読んでみなければ知らなかった
    意外だった点が数々


    今はもう
    球数制限もあって
    延長戦までエース1人で投げる姿
    なんてのは見られなくなってしまったけど

    明徳の岸潤一郎
    の連投はすごかった
    今でも忘れられない
    エースの根性と気迫

    去年
    日ハム対西武をベルーナドームで観戦したとき
    ちょっとだけ吉田輝星選手が登板した
    ユニホームが似合っていて
    大人になったなぁ
    日ハムのプロ野球選手なんだなぁ
    と思った

    来シーズンはますます飛躍していきますように
    そしていつか先発ピッチャー吉田輝星となり
    エスコンフィールドで
    吉田輝星✖️高橋光成
    なんて
    最高の野球観戦をいつか見てみたい
    夢が実現しますように

  • 世間から20週遅れで金農フィーバーが起きておる
    こんなマンガみたいな人生を歩んでみたかった
    吉田輝星くんがイケメンなとこもマンガ
    3年生9人で戦い続けたとこもマンガ
    決勝で大阪桐蔭にボコボコにされるとこもマンガ
    甲子園第100回大会だったとこもマンガ
    今は投球制限とか厳しくなってるし、これ以上の甲子園はもうないだろうな〜

  • 2022/11/13

  • 「高校野球のファンは物語に弱い。そこへいくと金足農業は物語の宝庫だった。」


    初めて知ったけれど、金農はとんでもなく全時代的。練習も、指導も、何よりも部員がみんなどヤンキー。
    決して真似できるものではないし、二度とこんなチームが出てくることもないと思う。

    甲子園観ている時はとにかく爽やかで素敵なイメージだったのに…
    マウンドでみんな集まって文句の言い合いしてるなんて思わなかったわ…


    ただ、これだけ「自分が主役!」と言い切れる人たちがいたことに少し安心した。

    今の若者は「いい子ちゃん」が多い。時代としても、暴力なんてもってのほか、褒めて伸ばすというスタンスが定着している。

    勿論暴力は絶対にいけないけれど、反骨心のようなものが、どんどんなくなっているように思う。
    訳の分からない理不尽さに耐えること。
    意に背くものには、上下関係を無視しても徹底的に反対すること。
    どれだけ非合理と言われても、多少は必要なのではないかと考えさせられる。

    野球のルールはさっぱりなので斜め読みしたし、時間軸が行ったり来たりするので多少混乱するが、よくここまでうまくまとめられたものだと感心した。(上から目線になってごめんなさい。)


    王道どストレートの正統派、キラキラした青春ストーリーが全てではない!
    とにかく全てに圧倒される一冊。

  • ふむ

  • あの秋田で、あのグラウンドで、あの雪の中で…

    彼らの背景に想いを寄せながら見入った甲子園。
    その思いがぶわっと思い起こされる本。

    あの夏のことは忘れられない。

    『佐賀北の夏』の著者だったんですね。
    あちらも素晴らしい本でした。

  • 金足農業の躍進の原動力は何だったのかを丁寧に説明している。ただし、その一方でありきたりな筋書きである点は否めない。
    コロナのために、甲子園大会が中止になった2020年。負けて高校野球生活を終えることができた年代は、幸せだったのかもしれない。

  • コロナのために図書館にリクエストしていた本をずっと受け取れず。
    昨日ようやく。そこでなぜかうるっとしてしまう。年のせいか?

    高校野球。好きな人にはたまらないが、興味のない人にはどうでもいい、むしろ大騒ぎが理解出来ないもの。
    自分はというと、すごく好きではないが、観始めると最後まで観てしまう。(必ず東北以北を応援してしまう…出身故)

    2018年の夏もそう。仕事もあり観る時間はなかったのだが、2回戦くらいになると東北勢がかなり少なくなるので、残っていた(というのも失礼か)秋田が気になり、チェック。最初に思ったのは「ピッチャー歯が白っ!」。マウスピースだった。

    横浜戦。
    さすがに無理でしょう(これも失礼か)と…が、しかし!!
    この頃からマスコミに金農旋風が巻き起こり始めたかと。
    東北出身者としても完全に最後まで巻き込まれたのでした。周りに共感してくれる人がいなくて寂しかったけど。

    実は読むまでは、あれから2年近く経つし、なぜ今?と思ったりもしたが、 今でもあの興奮を忘れていないことに気づいた。また、いろんなことを思い出させてくれたし、知らなかったこともたくさん教えてくれた。(金農パンケーキを思い出した)
    なんでこんな、たかが高校野球で胸熱になるのか、自分でもわからないのだけど。

    どれも良かったけど、特にエピローグでは、泣いたり笑ったり忙しかった。
    素晴らしい本にしてくださった中村計さんには感謝しかない。

    でも…金農ロス再び。(涙)

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著者プロフィール

1973年、千葉県船橋市生まれ。同志社大学法学部卒。スポーツ新聞記者を経て独立。スポーツをはじめとするノンフィクションを中心に活躍する。『甲子園が割れた日 松井秀喜5連続敬遠の真実』(新潮社)でミズノスポーツライター賞最優秀賞、『勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧幻の三連覇』(集英社)で講談社ノンフィクション賞を受賞。他の著書に『佐賀北の夏』『歓声から遠く離れて』『無名最強甲子園』などがある。

「2018年 『高校野球 名将の言葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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