- Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163910079
作品紹介・あらすじ
「キーンさんの言う通り、オペラにのめりこむと面白くてしょうがなくなっちゃう。魔法ですね」――小澤征爾(指揮者)「そこにはかつてキーンさんが本誌のほか「音楽の友」や「音楽芸術」などに寄稿した文章のいくつかが、新たな形で再録されている。読み返してみると少しも古びていない。論じられている歌手たちの多くは、カラスを筆頭に、二十世紀半ばに活躍したアーティストたちであるが、今日では及びもつかないそうした超一流スターたちの姿が生き生きと甦ってくる。みずからが味わった感動をできるだけ多くの人たちに分けあいたいという、キーンさんの熱い思いがひしひしと伝わってくる文章には、むしろ新鮮な印象さえ受ける」――中矢一義(音楽評論家)キーンさんが初めてオペラを観たのは15歳のとき。友達と連れ立って野外劇場で《カルメン》を観たキーンさんは、それまで上流社交界のものだと思っていたオペラが、ほかの舞台芸術にくらべてこんなに感動的だったのかと驚き、夢中になります。15歳から96歳まで、長きにわたり、日本とオペラをこよなく愛したキーンさん。東劇のMETライブビューイングでは、上映前に一般のお客さんに向けて上演予定のオペラ作品の解説をなさることもしばしばでしたし、かつて雑誌『レコード芸術』などの常連筆者でもありました。日本文学研究の第一人者というだけでなく、熱狂的なオペラファンというもう一つの顔があったのです。オペラがかかると、嬉しくなって踊りだすキーンさんはまるで少年のようで、目がキラキラ輝いていました。いまのオペラは外国語がわからなくても字幕が出ますし、生でオペラを観なくても、映画館でオペラを楽しめる時代になりました。オンラインでも楽しむことが可能です。オペラは手の届かない高尚な芸術ではなく、もっと気軽に楽しめる芸術なのです。戦時下、ナチスがヨーロッパを支配しているときに見た『フィデリオ』の思い出、マリア・カラスの声を生で聴いたときの驚き、三島さんと語りあったオペラのこと、光源氏とドン・ジョヴァンニの比較論……。日本と芸術をこよなく愛した、D・キーンさんからの最後の贈り物です!
感想・レビュー・書評
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借りたもの。
キーン氏のオペラ・エッセイ。
オペラに魅了され、METの会員になった経緯や、名作の解説、往年の声楽家たちへの敬意など、読みやすく読み応えのある一冊。
METの歴史も垣間見れる。
先の大戦で戦禍を逃れるためアメリカに渡ったヨーロッパの芸術家たち。それが戦後アメリカに質の高いオペラをもたらしたこと。
そしてオペラには新しい試みをする機会を与えたことを理解する。
モダンな時代設定への変更が、現代人へ親近感を持たせるものではない、という苦言も呈している。
オペラにある古典王道の安心感や、その異界(今、私たちが生活しているリアルとは異なる)への冒険があること
上演時と同時代設定の場合、当時の価値観を知らないと、その本質が伝わらないのではないか……
オペラに関する問題提起や解釈が投げ掛けられる。
光源氏(女性への繊細な心遣いがある色男)とドン・ジョパンニ(女を取っ替え引っ替えするだけの好色)の対比。
『第四章 オペラへの誘い 作品論』は必読。
名作のあらすじ、解説が読みやすく、読んでいてワクワクする。
オペラの奥深さを知る導入として、良い。
プッチーニ『蝶々夫人』創作時の考察など。
アメリカの古きよき時代?の文化の片鱗をみた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
また読みたい。
キーンさんのオペラ愛が伝わってくる -
オペラの楽しむ観点や一般的な作法や、それと対比して語られるキーンが考えるところの本質が書かれていて面白かった
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書いている時代が違って、ピントこなかった!オペラはやはり苦手!
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今年亡くなったドナルド・キーンさんの最後のエッセイ。
彼はオペラの愛好家で、本職の日本文学と同様にオペラを愛し、深い洞察力を持った聴き手だったようです。この本には、彼のオペラとの出会いからニューヨークメトロポリタンオペラ(MET)でのオペラ鑑賞の日々、コンサートの記録、曲の内容や歌手の評価など、人生に大きく影響を与えた音楽の世界を紹介しています。
音楽の聴き方や歌手の特徴等には、多少マニアックなところがあって、正直、私のような素人にとっては、彼が取り上げた全く知らないオペラや歌手の評価を読んでみても実感が伴わない感じがあります。でもオペラ好きの人にとっては、とても楽しめる内容ではないかと思います。
今年亡くなってとても残念ですが、最後にこのような本を残してくれて、彼のファンとしては、大変有難く思いました。紹介されている曲のいくつかは聴いてみたいと思います。
因みに、私が好きなオペラは、モーツァルトの「魔笛」です。
オペラ初心者向けのファンタジーで、何度も聞いた大好きな曲ですが、キーンさんにはこのオペラは眼中に無かったようで、一言も触れられていなかったのが残念でした。 -
読了。とにかくドナルド・キーン氏のオペラ愛が溢れてる本。好きなことを好きと言うことがこんなに素敵なことなんだと教えてくれる本。オペラ鑑賞の多さ、そしてそれを記録しているのも素晴らしい。METの会員で数多くのMETの舞台も鑑賞されていて、昨今の時代設定を変えた演出にはやや辛口批評。そこにも愛が溢れてる。
ドナルド・キーン氏の言葉を借りるならば「優れた芸術には、観客を引き込み、感動させ、陶酔させ、呪いをかける力がある」まさにこの本もそう。
人の「好き」と言う気持ちを聞くことはこんなにも人を笑顔にさせるのだと気づいた。この本を読んで、また観たいオペラが増えた。 -
故ドナルド・キーンさん、遺著刊行決定
死の直前まで創作を死の直前まで数冊の書籍の出版計画を進めていたそう。
その一冊、オペラの魅力を伝える本が発売決定。 -
キーン氏のオペラ愛が伝わってくる。
マリア・カラスについては、新人の頃からキャリアの最後までずっとファンだったようで、彼女の芸術性の高さを深く理解し、貴重な感想が述べられている。
とにかく鑑賞歴が長い人なので、往年の名歌手の名前が沢山出てくる。
フラグスタートやメルヒオールは知らない歌手だったので、さっそくYou tubeで聴いてみた。
直接氏の話を聞きたかったかも。
オペラは音楽の専門家ではなく、多少偏っていてもいいので熱狂的なファンの話の話が一番面白い。
登場する録音のCD買ってしまいそう。